第53回:お金をかけずにできる中小企業の省エネを提案/エナジー311・小野村一博さん | 全国ご当地エネルギーリポート!

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-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー


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こんにちは!全国ご当地エネルギーリポートです。先日もお伝えしたように、文化放送の「大村正樹のサイエンスキッズ」に2週にわたり出演して、ご当地電力についてお話してきました。音声はリンク先からPodcastで聴けますので、ぜひご利用ください。

さて今回のリポートのテーマは、中小企業の省エネです。エネ経会議には、たくさんの中小企業が参加されています。多くの方がエネルギーや省エネには関心があると思いますが、自分の会社の省エネ化をどうするかということになると、お金や手間がかけられないということで、躊躇してしまう現状があるようです。しかし、今回のインタビューに登場いただいた「株式会社エナジー311」代表の小野村一博さんによれば、それほどお金をかけなくても十分に効果的な省エネ法があるとのこと。エナジー311は茨城県を拠点にして省エネサービスを行っている会社ですが、具体的にどのようなことを勧めているのでしょうか?小野村さんの話を聞いてみましょう。

ちなみに今回インタビューした小野村さんは、エネ経会議のテクニカルアドバイザーの一人でもあります。小野村さんが参加するエネ経会議エネルギーなんでも相談所はこちら


エナジー311が低料金で貸し出ししている「電力見える化」機器

◆省エネの会社をつくった理由

私は2014年の4月に省エネの会社を独立開業して、まもなく1年になります。もともと大学でエネルギーの研究をしていたこともあって、以前務めていた会社でもエネルギー管理士(※)をしていました。そこで会社の省エネについては真剣に考えていましたが、あくまで仕事だからやっているという範囲でした。現在のように、社会に省エネを広めようという意識はまだありませんでした。自分でリスクをとってでも起業して何かしようという使命感を感じたのは、会社名にも現れているように3・11の震災と原発事故がきっかけです。

事故の後、電力会社のでたらめな対応ぶりを見ていて腹が立ちましたし、それまで彼らが絶対に安全だと言っていたのは何だったのかと感じました。でもそれは、エネルギーのことを自分たち消費する側がちゃんと考えず、電力会社に任せきりになってしまっていたことにも原因があるのではないかと思いました。

エネルギーのことを自分たちで考え、取り組んでいく民主的な社会を築かないと、この状況は変わらないんだなと実感したのです。やるべきことはわかっていました。私の経験や能力を活かせるのは、企業の省エネ化です。2013年3月には当時の会社を辞めましたが、はじめは起業しようとは思っていませんでした。どこかに就職して、週末起業とか、副業という形でやろうと考えていたのです。

ところが、テスト的に省エネ診断をさせていただいた会社の社長さんから、「そんな中途半端な気持ちでやるのなら応援できない」と言われました。それを聞いて、私も確かにそうかもしれないと思い直しました。食べていくためのお金はどうするのか?という不安はもちろんありましたが、挑戦する覚悟を決めて、2014年4月に会社を設立したのです。

震災直後に、鈴木悌介さんたちがエネ経会議を立ち上げ、中小企業の経営者という立場でエネルギーを考えていくと宣言したことは知っていました。当時はいち会社員として、それを素晴らしいことだと外から眺めていましたが、いまは会社経営者として、エネ経会議に参加させてもらっているのは嬉しいことです。

※エネルギー管理士とは
電気や熱、燃料といったエネルギーを一定規模扱う企業や工場で、エネルギー使用の管理や効率化について担当する人で、国の省エネ法で定められた国家資格のこと。

◆中小企業の電力を「見える化」したい

省エネサービスといってもいろいろなポイントがあるのですが、私の会社では、、「エネルギーの見える化」に軸足を起きました。「見える化」というのは機器を取り付けて、まずは自分の会社がどこでどれくらいエネルギーを使っているかを把握することです。


「電力見える化」機器を設置する小野村一博さん

まず10分刻みで使っている電力の量を確認できる機器を貸し出します。見える化の機器は、大掛かりな配線工事が不要な無線式のものを選びました。これは1日で取り付けができるし、終わったらすぐに外せるので便利です。

そこで得られた電力、温度、圧力などのデータを総合的に読み解いて、省エネのアドバイスを行います。ちょっとした工夫で大幅に省エネできるようなケースもあります。弊社ではできるだけお金をかけない省エネサービスをモットーにしていますが、それでも手をかけた所では10%程度の光熱費削減は不可能ではありません。

日本では、企業の省エネの話をするとすぐに「すでに乾いた雑巾を絞っても何も出ない」と言われます。しかし、実際はそうでもないのです。私が以前勤めていた会社もそうでした。エネルギー管理士だった私自身が、もうこれ以上の省エネはできないと考えていました。ところが2009年に「電力の見える化」をやったら、結構な無駄があることがわかりました。やり尽くしたと思っていても、まだまだ無駄はあったのです。

大企業は、国の規制で導入せざるを得ない面もあり、比較的省エネに積極的です。でも中小企業では法律で縛られていないので、手を入れていない所が多いのです。また、中小では専門的な担当者を置くわけにはいかないので、どこから手をつけていいかわからないという実情もあります。逆に言えば、きちんと対策をとればまだまだ省エネできるのです。


パソコンでデータを分析する

◆数日でコストが下がるケースもある

具体例として、私が手がけた事例を紹介します。それは油圧機の設備を調査したケースです。データを調べてみると電力を1時間に25キロワット使用していました。ところが、同じ作業を行うのに8キロワットの電力で充分だったことがわかりました。機器の圧力設定を初めから間違えていたのです。製品ができるという意味では故障ではないので、長年3倍以上エネルギーを消費していたことに誰も気がつかなかったのです。この設定を見直したことで得られたコストは、なんと月13万円でした。年間では156万円もの節約が、圧力設定を見直すだけで実現したのです。こういったケースは、データを調べればすぐにわかる場合もあるので、経済性を考えても機器のエネルギーの効率化についてはこまめにチェックするのがお勧めです。


油圧機の調整事例。普段は気づかなくても、チェックすることで改善の余地が大きいことがわかる

◆中小企業が省エネに熱心になれない理由は? 

そうは言っても、毎日の経営に精一杯の中小企業の経営者さんたちからすれば、省エネは優先順位が高くなりません。設備投資のお金がなかったり、見えないコスト負担があるのがその理由です。「見えないコスト」というのは、そのために人手がよけいにかかってしまうなどといったことです。

また、経営者の方が積極的になれない理由には、従来の省エネ診断への不信感も混ざっているようにも感じます。例えば、公共の省エネ診断では、費用はかからなくても言いっぱなしが多く、その後の面倒を見てくれません。逆にシステムのメーカーさんがやっている省エネ診断では、自分の商品を売りつけたいという意図がミエミエのものがあります。私はそういった事業者とは異なり、中小企業の側に立って、できるだけお金をかけないでできる省エネサービスが提供できればと考えています。

設備投資については、通常は3年で元が取れるように設定していますが、ものによっては1年とか、投資ゼロで省エネができるというもののたくさんあるということを伝えようと考えています。また、人の手間などの問題は、小さなレベルの省エネであればそれほど手間もかからず、かえって設備機器についてきちんと学ぶことができるので、従業員を育てる環境づくりができるのではという面もあります。こうした動きを通して、従来の企業の省エネの常識になっていた「業者任せ」であったり「設備任せ」であったりを変えていくことができるのではないでしょうか。

それを私自身が全国を回って手がけるというのは、商売としては難しいので、私のような小さな省エネ事業をめざす人たちがいろいろな地域に出てきて、それがネットワークでつながることが理想ですね。まだまだ始まったばかりで、商売としては手探り状態ですが、こういう仕事でも十分成り立つのだということを証明したいと思っています。

中小企業が使っているエネルギーの量そのものは、日本全体で考えるとそれほど大きくはないかもしれません。でも、電力会社に任せきりにするのではなく、中小企業でもまだまだやれることがあると感じてもらうことはできます。そうやって人々の意識が変わっていくことにこそ、こういったサービスの意味があるのではないかと思うのです。そこには、エネルギーをつくる「ご当地電力」の創エネの活動と同じ意味があるのではないでしょうか。

◆関連リンク
株式会社エナジー311
小野村さんもテクニカルアドバイザーの一人になっているエネ経会議のエネルギーなんでも相談所(エネ経の会員でなくても相談いただけます)


2015年最新刊。エネルギーをみんなの手に!
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(岩波ジュニア新書)

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