第47回:自然エネルギーの火を消さないために、年末年始はパブコメを書こう! | 全国ご当地エネルギーリポート!

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-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー

みなさま、本年は大変お世話になりました。2014年最後のリポートとなる今回は、自然エネルギーの扱いをめぐって激しく動く制度についてです。

2014年9月末に九州電力が、再エネによる電気をつなぐことを保留すると発表するいわゆる「九電ショック」というものが起きてからというもの、事態は専門家でさえ追いついかないほど急速に展開していっています。これは、2012年7月に施行された自然エネルギーの固定価格買取制度のために太陽光発電などが急速に増え、各電力会社が「このままでは対応できない」と所轄の経済産業省にSOSを出したものだと言われています。

そして、その現状をなんとかするために経産省はワーキンググループを設けて、「本当はどこまで送電網に自然エネルギーが入るのか?」という算定を行い、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の改定案を出しています。その案は公表され、12月19日から1月9日までパブリックコメントにかけられているのです。

が、世の中のほとんどの人はそんなことは知らなかったという方が多いのではないでしょうか?ということで、みなさんも1行でも良いので、何か意見を書いて送って欲しいというのが今回のテーマです。

パブリックコメントは、こちらの窓口から意見を書いて送れるようになっています。ちなみに、非常にわかりにくい内容ですが、改定案の内容は同じページからダウンロードできるようになっています。

詳しくは、FOEジャパン自然エネルギー財団などが、意見を表明しているので、各団体のページを参考にしていただければ幸いです。(自然エネルギー財団のページでは、12月26日の欄の最後の行にある「資料はこちら」というところから見解を読むことができます)

とはいっても、送電網をめぐる議論は複雑で多岐にわたっているので、なかなか理解しにくいものです。そこで、ごくごく簡潔に今回の改定案の最大のポイントをご紹介するので、上記の資料と合せて参考にしていただけたらと思います。

確かに、固定価格買取制度には、いろいろな課題が指摘されています。たとえば、規模別にきめ細かく買い取り価格が設定されているわけではないので、大規模な事業者ばかりが儲かる仕組みになっていることや、全国にまんべんなく広げようという視点がみあたらないので、太陽光ばかりが偏った地域に集中してしまったことなど、改正すべきポイントは多いのです。

しかし、今回の改定案は自然エネルギーをもっと広めるための改定ではなくて、目先のトラブルを緊急に対処するための処方箋のような内容になっています。しかもその根拠となる算定をしているのが一方の当事者である電力会社になっています。

今回の改定のキモは、その電力会社の計算に基づいて、送電網にどれだけ自然エネルギーを入れることができるのか(=接続可能量)を割り出したものを基準にしています。その計算には、福島第二原発を除くすべての原発を稼動させた数値で計算されているのです。中には、建設中の大間原発や島根原発3号基の電力まで含まれています。自然エネルギーの電力をできるだけ少なくしたい電力会社の立場としては、そのように計算してしまうのもわからなくはないのですが、そこをちゃんと指摘し、第三者的にチェックするのが本来は監督官庁の役割なのではないでしょうか?

経産省としては、原発をフル活用することを前提とした電力会社の計算の根拠を、政府が策定した「エネルギー基本計画」で原発をベースロード電源とすると決めてあるからと言うのでしょうが、それではあまりにビジョンがなさすぎるでしょう。

自然エネルギーをめぐる今回の混乱や、これからどうなるかがわかりにくい最大の原因は、大きなビジョンを示せず、将来の自然エネルギーを導入する目標値を定めない政治にあるのですが、それについては改めて述べたいと思います。

パブコメでは、「接続可能量」の計算に、現在すべて停止している原発がフル稼働を前提にされていることが問題であり、原発ゼロのケースに関しても計算してほしいという指摘をするのも良いように思います。

ちなみに、「パブリックコメントなんか書いても政策に反映されないんじゃないか」と言う意見があります。確かに、それで何かかがすぐに変わるわけではありませんが、反対意見が多ければなんらかの検討理由が発表されることになっているため、それを考慮して、次のステップにつなげられるはずです。沈黙することは、現状を認めてしまっているのと同じこととされてしまうので、それだけは避けられればと思います。

この接続の問題については複雑なのですが、ご当地エネルギーにとっても非常に重要なので、来年は何度かに分けて特集していきたいと思っています。

関連して、FOEジャパンでは、1月10日に「パワー・シフト・シンポジウム」と題したイベントを開催する予定です。こちらにもどうぞご参加ください。


ではパブリックコメント書いて、すっきりと新年をお迎えいただければ幸いです。(締め切りは9日なので、年明けでも構いませんが)みなさま、よいお年を!

パブリックコメントは、こちらの窓口からどうぞ