全国ご当地エネルギーリポート!

全国ご当地エネルギーリポート!

-エネ経会議・特派員:ノンフィクションライター高橋真樹が行くー

当サイト「全国ご当地エネルギーリポート!」は、「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議(エネ経会議)が主催するものです。著書『ご当地電力はじめました!』『自然エネルギー革命をはじめよう』で、全国で動きはじめた再生可能エネルギー(自然エネルギー)をめぐる面白い取り組みを伝えた、ノンフィクションライターの高橋真樹さんを特派員として派遣。各地でリアルタイムに起きているワクワクするような活動をつぎつぎと紹介していきます!エネ経会議についてはコチラ! 

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相次ぐ自然災害などにより、廃棄される太陽光パネルが増えています。太陽光パネルはどのように廃棄され、現場では何が問題となっているのでしょうか?およそ1年半前のリポートでは、北九州にあるリサイクル工場を取材し、リサイクルの技術はあっても制度が追いついていない、という課題を伺いました。

 

 今回は、長年リサイクル事業を手がけてきた「リサイクルテック・ジャパン株式会社」の名古屋工場を訪れ、改めてリサイクル事業の現状や課題などについて伺ってきました。太陽光パネルが大量に廃棄されると予測されるのは、早くても2030年代後半から。まだ時間は残されていますが、それに向けて法律を整えなければ、将来問題になってくる可能性はあります。リサイクル事業で起きていることを現場から考えます。

 

リサイクルテック・ジャパンの小林直樹さん(左)と横井誠さん

 

 ◆トピックス

 ・パチンコ台から太陽光パネルまで

 ・求められるパネルメーカーの情報公開

 ・リサイクルより埋め立て?

 

◆パチンコ台から太陽光パネルまで 

 

リサイクルテック・ジャパンは、2003年の創業以来、テレビの液晶画面やパチンコ台のリサイクルなどを手がけてきた企業です。太陽光パネルのリサイクル事業を始めたのは、2013年からです。パチンコ台をリサイクルしている企業が、なぜ太陽光パネルのリサイクルを始めたのでしょうか?

 

太陽光パネルは、大部分がアルミ枠とガラス、その他の金属からできています。テレビやパチンコ台のリサイクル工程でも、このような材料を解体、分別して、リサイクルに回してきました。そのため、太陽光パネルでも解体さえできれば、やることは今までと変わりません。

 

パネル裏側についているジャンクションボックス

 

まずは解体工程を見せていただきました。こちらの工場では、最初にパネル裏面に設置してある銅線と、電線などが配置してあるプラスチックの箱(ジャンクションボックス)を手作業で外します。次に、プレス機と人力を使ってアルミ枠を外します。

 

プレス機でアルミフレームを外す

 

次に登場するのが、このギザギザの回転ローラーがついている機械です。回転しながらパネルを送り出し、ガラスを細かく砕いて削ぎ落とします。非常にシンプルですが、この工程をなんどか繰り返すことで、シートからガラスがきれいに取り除かれていきました。作業自体は簡単なものですが、この機械は1年間に20種類近くの破砕機を試し、苦労の末に開発されたものです。

 

ガラガラと音と立ててシートとガラスが分離される

 

シートからガラスを剥離する方法は他にもいくつかあるのですが、この破砕機を使うと、コストは比較的安く済ませられます。また、いま集まってくる廃棄パネルの多くは、災害などで破損したパネルです。この破砕機は、そうした破損パネルでも問題なく解体分離できるというメリットがあります。

 

破砕したガラスの破片は、危険がないように角取りがされ、さらにサイズごとにふるいで分別されて、ガラスのリサイクル業者に運ばれます。リサイクル先では、溶かされて再び板状のガラスに生まれ変わります。

 

ガラスが剥離されたバックシートには、さまざまな金属が含まれています。これを金属のリサイクル業者に持ち込み、有用な金属を回収してもらいます。全体の作業工程は、アルミ枠を外すところから流れ作業で、パネル1枚を解体し終わるまで3〜4分です。

 

この工程が繰り返されて、ガラスとシートがきれいに分離される

 

◆求められるパネルメーカーの情報公開

 

リサイクルテック・ジャパン統括管理部部長の小林直樹さんより、現状を聞きました。この工場は規模が小さく、現在5人で運営しています。1日に処理しているパネルの数は平均で200枚ほど。重さでは1時間に500キロを解体しています。工場の最大処理能力は倍の400枚は可能です。工場がフル稼働できれば収益も上がりますが、現在はそこまでパネルが集まっているわけではありません。

 

外されたアルミフレームは、すべてリサイクルされる

 

大変なのは、手作業で行う銅線やジャンクションボックス、アルミ枠などを外す部分です。それ以外は、基本的には機械化されています。現状のリサイクル率は80%〜90%程度。金属を取り除かれたバックシートは、ゴミとして焼却処分されています。ほぼ全てが機械化され、95%の資源をリサイクルできている北九州の工場より割合は低いのですが、コストは割安とのことです。

 

「うちの工場はまだ発展途上なので、今後はもう少し手作業の部分を減らし、一人でオペレーションが全てできるようにしていきたいと考えています。また、リサイクル率も上げていきたいと考えています。将来的にはバックシートもリサイクルできる可能性はありますが、いまは金属とガラス以外を買い取ってもらうことはできていません」(小林さん)。

 

砕いたガラスはサイズごとに袋詰される

 

課題のひとつは、パネルの製造メーカーの多くがリサイクルに協力的ではないことです。発電するセルの部分は、さまざまな金属が混ざっています。特に、20年近く前に製造されたパネルの中には、鉛やカドミウムなど有毒物質が混ざっているものもあり、場合により産業廃棄物として処理しなければなりません。

 

しかし、どのパネルにどんな金属が使われているかをメーカーに問い合わせても、多くの場合は企業秘密として情報を開示してもらえません。現在は、リサイクルテック・ジャパンが自ら測定業者に依頼して成分を調べていますが、それを続けていてはコストがかさんでしまいます。事業として自立していくためには、コスト圧縮が不可欠です。国の制度として、メーカーに情報公開を義務づける必要がありそうです。

 

細かく砕かれたガラスは砂のよう

 

◆  リサイクルより埋め立て?

 

長年に渡ってリサイクル事業を手がけてきたリサイクルテック・ジャパンですが、太陽光パネルの事業ではまだ収益があがっていません。そこには、リサイクルについての制度が未整備のままという問題があります。情報公開の問題に加え、リサイクル事業者の負担になっているのは回収と運搬にかかわるシステムの問題です。

 

たとえば、パチンコ台の場合はルールが設定され、処分する際も「廃棄物」ではなく「一般貨物」として扱われるようになっています。「廃棄物」の場合は県境をまたぐのが難しく、コストも多めにかかりますが、「一般貨物」の場合は広域認定されることでどの県に行ってもコストがかかりません。

 

ところが現状では廃棄パネルは「廃棄物」として扱われるので、移動するたびにコストが余分にかかってしまいます。リサイクルテック・ジャパンは、工場がある愛知県をはじめ、岐阜、三重、長野の中部四県については移動許可を得ています。しかしそれ以外の県から運ぶ場合には、やはり輸送費用がかかることになり、依頼主に負担してもらわなければなりません。

 

現在、「パネルを引き取って欲しい」と連絡が来るケースとしては、災害時のほか、新品を納品する際に余ってしまったということもあります。依頼主が遠方の場合、輸送コストと地元で埋め立てるコストを比較して、埋め立ての方が安いとなれば、そちらを選んでしまうことも少なくありません。

 

リサイクルテック・ジャパンへの問い合わせ自体は年々増加していますが、この輸送コストがネックとなり、リサイクルやリユースに回されないパネルも多数あるとのこと。

 

ガラスがきれいに取り除かれたバックシート

 

小林さんは、これから廃棄パネルが増えても制度がこのままであれば、リサイクル技術はあるのに、埋め立て処分が増えてしまうのではないかと懸念しています。逆に言えば、国が自動車や家電など他の分野と同じように、太陽光パネルについてもルールづくりを整備すれば、十分に対応が可能だということになります。小林さんは言います。

 

「太陽光パネルはクリーンなイメージで社会に増えてきましたが、出口の部分の問題にスポットが当たっていません。設置業者もどう廃棄するのかほとんど知らない現状は、さすがにまずいと思います。製造から廃棄まで、トータルでクリーンと言えるような仕組みをつくっていく必要があるはずです。私たちが、そこで貢献できるようであればありがたいと思います。ただ、私たちだけではどうしようもない面があります。国には早急に制度的な枠組みをつくって欲しいですね」。

 

太陽光パネルの廃棄処分の問題については、2017年9月に総務省が是正勧告を出してから、少しずつではありますが動き始めています。本当に持続可能な社会を作るために、今後もこの問題に注目していきたいと思います。

 

◆関連記事

・廃棄された太陽光パネルはどうなるの?北九州市のリサイクル工場を直撃!

・使われなくなった太陽光パネルの使い道は? 3万枚以上の使用済みパネルを再活用! ネクストエナジーの検査工場へ行ってみた!

 

◆お知らせ:映画「おだやかな革命」上映情報!

 

日本で初めて、ご当地エネルギーの取り組みを描いたドキュメンタリー映画「おだやかな革命」が全国で公開中です。(当リポート筆者の高橋真樹は、この映画のアドバイザーとして関わっています)

 

詳しい場所と日程は映画のホームページから上映情報をクリックしてご確認ください。

 


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千葉県を拠点に、ソーラーシェアリングを広げてきた「千葉エコ・エネルギー株式会社」。代表の馬上丈司さんは、千葉大学の研究者から事業者へと転身した異色の方です。馬上さんは、ソーラーシェアリングでどんな未来をめざしているのでしょうか?FITの価格が下る中でこれからの事業をどうするのか、耕作放棄地が増えている農業のあり方をめぐる話など、食とエネルギーに関わるお話をお聞きしました。

 

千葉エコ・エネルギーの馬上丈司さん

 

◆トピックス

・なぜ研究者がソーラーシェアリングをやるのか

・FITから自立した電源に

・農業に担い手の受け皿になる

・非電化地域に電源を届けたい

・ソーラーシェアリング推進連盟を設立

 

◆なぜ研究者がソーラーシェアリングをやるのか?

 

高橋:研究者から起業して、自ら事業を始めた理由は何でしょうか?

 

馬上:ぼくは、自分でやってみることが大事だと考えていました。実践が伴わない研究では、観測者になってしまいますから。きっかけは、2011年3月に原発事故が起きたことです。そのあと自然エネルギーが急速に世の中に広まっていく様子を見て、エネルギーの分野ではこれまで日本が経験したことのないステージに入ったと直感しました。これからは大学で研究だけをしていても世の中の動きがわからないから、実際の事業をサポートして新しい現実を作り出していこうと思ったのです。

 

2012年10月に千葉エコ・エネルギー(以下「千葉エコ」)を起業して、当初は自治体や金融機関などを対象に、自然エネルギー事業のコンサルタントをしていました。そして2014年からは、自らプレーヤーとなって発電事業も手がけるようになりました。

 

高橋:自然エネルギー中で、特にソーラーシェアリング事業に力を入れている理由は何でしょうか?

 

馬上:ぼくの大学での専門は、エネルギー問題と食糧問題です。日本のエネルギー自給率はおよそ8%(一次エネルギー換算)、食料自給率はおよそ40%(カロリーベース)とされています。しかし、もし海外からのエネルギー供給が途絶えてしまえば、トラクターは動かせないし、流通もできない。食料自給率が40%あると思っていても、エネルギーがなければ限りなくゼロに近づいてしまいます。この不安定な状態を変えたい、というのは研究者時代から考えてきたことです。そんなとき、農地で農業を続けながら自然エネルギーを生み出すソーラーシェアリングのアイデアを知り、「これはすごい!」と感じました。 

 

 

化石燃料によるエネルギーがなければ回らない農業は、環境負荷がすごく高い産業です。でもソーラーシェアリングは、それを根底から変える可能性がある。いまはソーラーシェアリングの電気を全量売電していますが、これからは農地で生まれた電気でハウス栽培のエネルギーをまかなったり、EVトラクターを動かせたりするようになるはずです。ぼくは、「農業を化石燃料から解放する」と宣言していますが、その転換ができれば、農業の持続可能性が高まります。よく「なぜ研究者が発電ビジネスを?」と聞かれるのですが、ぼくの中ではぜんぜん別のことをやっている意識はなくて、大学でしていた研究を現場で実践しているにすぎません。

 

◆FITから自立した電源に

 

高橋:「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)」で売電して、その収益で農地を活性化というのは最終目的ではなく、その先に農業そのものの転換を考えているということでしょうか。

 

馬上:その通りです。だからFITの買取価格が下がっても、慌てる必要はないと思っています。もちろん、ソーラーシェアリングは農地の保全と一体の事業なので、関係省庁には、売電収入だけを目的にした野立ての太陽光(地面に設置する設備)とは異なる扱いをして欲しいと考えています。これについては、ソーラーシェアリング推進連盟(下記参照)でもアピールしていくつもりです。

 

匝瑳市のメガソーラーシェアリング設備(空撮)

 

ただぼく個人としては、近い将来にFITに頼らなくても、事業として自立できるのではないかと考えています。いまお話した農業のエネルギー転換だけでなく、電気を売るにしても自然エネルギーの環境価値を高く買ってもらう可能性は十分にあります。たとえば、企業などで使用するエネルギーを100%自然エネルギーにすることをめざす「RE100」というネットワークが急速に広がっています。アスクルやイオン、マルイといった大手も「RE100」の宣言をしました。 そのような企業にとっては、地域の農業と共生するソーラーシェアリングの電気は、山林を開発した太陽光発電所で作った電気よりも価値が高くなります。

 

そういう中で、いまは原発か石炭か、自然エネルギーか、という分け方でどこから電気を買っていると思います。でもこれからは、自然エネルギーの中でも単に「太陽光の電気」というだけではなく「どこで作ったどんな太陽光の電気か」ということに価値がでてくる。電気のトレーサビリティをはっきりさせる「発電源証明」をつけることが一般化すれば、それが可能になります。そのとき、農地を守りながら発電するソーラーシェアリングの電気は、もっと価値が高くなるはずです。そのような意味で、いつまでもFITで売っているだけだとその価値を活かしきれなくなり、ビジネスにとってはむしろリスクになる可能性さえあります。

 

◆  農業の担い手の受け皿に

 

高橋:千葉エコでは、発電事業だけでなく農業にもチャレンジされていますが、実際に土に触れてどのように感じましたか?

 

馬上:自分で土をいじるのは嫌いではありません。ただ、トラクターの運転は最初は難しく感じました。うちのスタッフには農業学校に通っているメンバーがいるので、彼に指導を受けてやっています。自分も携わってわかってきたのは「農業は科学」ということです。いつに種を蒔いたらいつごろ収穫できて、市場にいくらで出るのか、といったことが定量化して数字でわかるというのが面白い。

 

みずからトラクターを運転する

 

もちろん、毎年の天候の変化や気候変動の影響などで予定通り行かないこともあります。しかし、データを取って種を蒔く時期をずらすとか、ある程度のシミュレーションができるので、対応は可能になるでしょう。いまは10日先の天気予報の的中率が50%くらいですが、これが進化すれば1ヶ月先、3ヶ月先などをほぼ予測ができるようになってくると思います。

 

高橋:ソーラーシェアリングの課題のひとつとして、農家の高齢化があげられています。どのように農業者を増やしていけばよいでしょうか?

 

馬上:確かに、うちの畑の周囲の農家はほとんどが高齢の農家さんです。体力的にやりきれないということで、千葉エコに土地を貸していただきました。ある意味で、ぼくらのような若手が農業をやるチャンスは、そこにあります。農業をやりたい人は潜在的にすごく多いのですが、いままではその受け皿がなかった。これからは、ぼくらのような新参者が入ることで、若い人と農家をつなげる、受け皿の役割を果たすことができたらと考えています。匝瑳市の農場などですでに始めている若手の農業者との協力作業(前回の記事参照)も、広げていきたいですね。

 

全国で、農地をつぶして野立ての太陽光発電を設置する件数がものすごく増えています。面積にすると、およそ7000ヘクタール(70平方キロ)というとんでもない広さです。田んぼに換算したら、お米3万5千トン分、サツマイモなら14万トン分が生産できるだけの農地が消えてしまいました。こんなことでいいはずがありません。発電は、農地を活かしながらできることを知ってもらえればと思います。

 

◆  非電化地域に電源を

 

高橋:ソーラーシェアリングをめぐって、今後はどのようなことをやっていきたいですか?

 

馬上:3つあります。ひとつは、これまで千葉県で培ってきたソーラーシェアリングのモデルを全国に広げていくことです。自分たちの実践例のほとんどが千葉にあるので、違う県でも盛んにしていきたい。また畑より水田の方が、より耕作放棄の状況が悪いので、水田農業地帯をソーラーシェアリングで救いたいと考えています。

 

千葉エコが運営する大木戸アグリ・エナジー1号機

 

その次は、先程もお話した農業の脱化石燃料化です。これは、太陽光発電だけではなく、バイオマスなど他の自然エネルギー源とも連動する必要があります。千葉エコでは「アグリ・エナジープロジェクト」と名付けていて、ソーラーシェアリングがFITから自立する意味でも大切になってきます。

 

3つ目が、海外の非電化地域への輸出です。アフリカや中南米などの農村では消費電力が少ないので、ソーラーシェアリングくらいの電源でも、十分に集落の電源をまかなうことができます。農地の上でやれば、土地をつぶす必要もありませんし、日射の強い地域では作物を守ることもできます。すでにこうした地域に、小さな太陽光パネルを届けるプロジェクトなどはありますが、集落全体に電気を届けることも、ソーラーシェアリングを使えばそれほど困難ではありません。  

                                                         

◆ソーラーシェアリング推進連盟を設立

 

高橋:最後に、2018年4月にソーラーシェアリング推進連盟が設立されました。馬上さんはその代表理事に就いていますが、連盟の役割は何でしょうか?

 

馬上:ソーラーシェアリング推進連盟の運営事務局は、私たち千葉エコ・エネルギーが担っています。ソーラーシェアリングについては、まだまだ実践者が少なく、情報も散逸しています。推進連盟の役割は、そうした情報にまとめてアクセスできる場をつくり、必要に応じてつなげていくことです。それによって、業界全体が活性化したり化学反応が起きたりすることもあるはずです。これから、質と量の両面でソーラーシェアリングの普及を加速していくための推進力になれればと考えています。もちろん、農家や実践者の現場の声を実際の政治に反映させるための政策提言も行っていくつもりです。

 

 

3人の元首相もソーラーシェアリングに注目。左から菅直人氏、小泉純一郎氏、細川護煕氏。

 

農地をつぶしてまでつくったり、山林を大規模に開発したりする野立ての太陽光は、地域に存在する理由がわからなくなっています。ぼくは5年間の取り組みを通じて、ソーラーシェアリングこそ地域と結びついて、「エネルギーと農業」という2つの大きな問題を解決する方法だと確信しています。

 

高橋:いよいよこれから、新しい展開に入っていきそうですね。これからもソーラーシェアリングの行方を取り上げていこうと思います。どうもありがとうございました。

 

「千葉エコ・エネルギー」の記事前半はこちら

小田原のソーラーシェアリングの記事はこちら

 

◆お知らせ:映画「おだやかな革命」上映情報!

 

日本で初めて、ご当地エネルギーの取り組みを描いたドキュメンタリー映画「おだやかな革命」が全国で公開中です。(当リポート筆者の高橋真樹は、この映画のアドバイザーとして関わっています)

 

詳しい場所と日程は映画のホームページから上映情報をクリックしてご確認ください。

 


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いま、全国の発電事業者からソーラーシェアリングが熱い注目を浴びています。ソーラーシェアリングとは、農地の上に太陽光発電を設置することで、太陽の光を発電と農業の両方に活用する事業。以前のリポートでは、小田原の取り組みも紹介しています。売電が主な目的ではなく、農業を持続可能にしていくためのツールとして取り組まれています。

 

 

 

 

 

今回は、そんなソーラーシェアリング発祥の地で、現在も全国でダントツの設置数を誇る千葉県を訪問しました。2018年3月に稼働を始めたばかりの設備に案内してくれたのは、「千葉エコ・エネルギー株式会社」代表、馬上丈司さんです。千葉エコ・エネルギーは、ソーラーシェアリング事業に加えて、各地の自然エネルギーの取り組みのコンサルタント事業も手がけてきました。ソーラーシェアリング事業が始まって5年、全国の取り組みをサポートしてきた馬上さんに、ソーラーシェアリングをめぐる環境がどのように変化してきたかについて伺いました。

千葉エコ・エネルギーの馬上丈司さん

 

◆  トピックス

・パネルの下の作物の方がよく育つ?

・よみがえった耕作放棄地

・5年間で乗り越えた課題とは?

・ソーラーシェアリングは次のステージへ

 

◆パネルの下の作物の方がよく育つ?

 

猛暑が続く2018年夏に訪れたのは、千葉エコ・エネルギー株式会社(以下「千葉エコ」)が設置し、2018年3月に稼働を始めた「千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機」です。発電出力はおよそ777キロワット、およそ2800枚のパネルが農地の上に並びます。農作業はプロの農業者ではなく、馬上さんをはじめとする千葉エコのメンバーが新規就農して手がけています。

 

栽培している作物は、落花生、サトイモ、サツマイモ、ナス、シシトウなどさまざま。たくさんの光を必要としないイモ類や葉物野菜は、ソーラーシェアリングと特に相性が良いとされています。どれもパネルの下で青々と成長していました。特にサトイモは大きな葉っぱを繁らせ、パネルのない所で育てている通常のサトイモよりもずっと発育状態が良好です。特に今年のような猛暑では、暑すぎる直射日光が作物に悪影響を与えるため、ソーラーシェアリングの日陰を作る効果は現れているようです。

 

また、夏でもイチゴを採れるようにと、近隣の農業法人と共同で試験栽培をしています。通常、イチゴは冬にビニルハウスの中で育てられます。夏の太陽の下では熱すぎてダメになってしまうのですが、パネルによって遮光・遮熱される効果により、いまのところ順調に育っていました。

 

 

人の背丈ほどもある植物は、ソルゴーという名のトウモロコシの仲間で、食用ではなく有機肥料として使われます。千葉エコが運営するソーラーシェアリング農場では有機農法を目指しているため、この植物を草刈機で刈って地面にすき込んでいきます。化学肥料を使う農業ではあまりなじみがないのか、周囲の農家からは雑草と間違われることもあるとのこと。刈り取った跡地には、ニンニクを植える予定になっています。

 

馬上丈司さんと、青々と茂ったソルゴー

 

◆  よみがえった耕作放棄地

 

千葉エコが自社で保有するソーラーシェアリングの設備は、上で紹介した「大木戸アグリ・エナジー1号機」(千葉市)の他に千葉県匝瑳市飯塚地区に3ヶ所あり、合計出力は955キロワットになります(2018年8月現在)。その他にも、一部出資している案件がいくつかあります。

 

匝瑳市の3施設では、「スリーリトルバーズ」という若手の農家グループが大豆や麦などを育てています。スリーリトルバーズは、ソーラーシェアリングを広げるために千葉エコや地元農家が出資して、2016年2月に設立した農業法人です。千葉県匝瑳市で有機栽培を手がける農家が中心で、雇用の一部には売電収入も使われています。農地はいずれも耕作放棄地だったところです。

 

「売電収益は順調に入ってきていますが、大変なのは農業です。耕作放棄地だった農地を回復させ、事業として回していくのはひと苦労でした。最初は設備投資もあるので人手とお金がかかります。そこを売電収入でサポートできればいいと思います」(馬上さん)

 

ナスも順調に育っていた

 

飯塚地区の土地は長いあいだ耕作放棄地だったので、土も固くあまり良い畑にならないと言われていました。しかし、2〜3年かけて丁寧に土作りを行ったことで、最近では大豆や麦がきれいに生え揃い、収穫量も安定してきました。麦は、大麦と小麦を栽培し、大麦はビールに、小麦は製粉して国産小麦として出荷していく計画です。

 

「千葉エコも含め、匝瑳市飯塚地区の各地にソーラーシェアリングができたことで、同地区内にある耕作放棄地の半分が解消するめどが立ってきています。この規模は通常の農業政策だったらありえないことです。ソーラーシェアリングが新しい現実をつくっているのです」(馬上さん)

 

千葉エコが出資するプロジェクトでは、2018年8月現在、匝瑳市飯塚地区の耕作放棄地だった20ヘクタールのおよそ半分である10ヘクタールを、ソーラーシェアリングによって回復させました。これは、東京ドーム2個分以上の面積です。

 

ソーラーシェアリングの下のサトイモ。葉っぱが元気に伸びている。

こちらはすぐ近くにある普通の畑のサトイモ。生育状況はパネルの下のほうが良い。

 

◆5年間で乗り越えた課題とは?

 

農林水産省がソーラーシェアリング事業を認可したのは、およそ5年前の2013年4月です。その後、ソーラーシェアリングをめぐる環境はどのように変化したのでしょうか?ソーラーシェアリングには「自然エネルギーを増やしながら、地域の農業振興に結びつける」という一石二鳥のコンセプトがあります。しかし当初は実践例が少なく、「本当に二兎が追えるのか」という不安の声が外部の企業や金融機関などから出ていました。

 

影の部分も移動するので、さまざまな作物の栽培が可能だ。

 

「疑問視されていたのは事業としての採算性です。すき間を開けた太陽光発電で元が取れるのかということと、ソーラーパネルの下でちゃんと作物が育つのかという2点です。そのため、金融機関からの融資が受けにくい状態が続いていました。また、当初はチャレンジ精神のある個人の農家が、自分の土地でひとつずつ設置するところから始まりましたが、農家はすでに農業機械の購入などで複数のローンを抱えている人が多く、新たな融資が受けにくいという事情もありました」(馬上さん)

 

2014年になると、耕作放棄地の問題を解消したいと考えていた千葉県匝瑳市飯塚地区が、地域ぐるみでソーラーシェアリングに取り組むようになります。また、原発事故の影響を受けて地域の農業の行方に頭を悩ませていた福島県南相馬市でも、「えこえね南相馬」という団体が中心となり、ソーラーシェアリングを実験的に広げていきました。手がける人は少しずつ増えても、事業への信用と資金調達の問題はついて回りました。

 

転機となったのは2016年。匝瑳市で出力1メガワット(=1000キロワット)の大規模施設、「メガソーラーシェアリング」のプロジェクトが動き始めてからです。最終的に城南信用金庫などの金融機関が融資したことで、設備は2017年3月に完成しました。なおこの事業には、千葉エコも出資をしています。かつてない規模の事業に金融機関が融資したことは、大きな実績となりました。

 

メガソーラーシェアリングの稼働式には、小泉元首相(中央右側)らが駆けつけた。左端が馬上さん。

 

また、2013年や14年あたりに始めていたソーラーシェアリング事業で、さまざまな実証データが揃うようになりました。太陽光発電で収益が上がることや、パネルの下で数十種類もの作物が栽培できることが証明されるようになったのです。そのような積み重ねが、企業や金融機関の信用を高め、資金調達ができるようになりました。

 

馬上さんは、この5年間の変化についてこう語りました。「これまでのソーラーシェアリングは、お金持ちか、あるいは良い意味での変わり者しか手を付けられませんでした。でもこれからは、やりたいと思えば誰でもできるステージに入ってきたと思います」。

 

◆ソーラーシェアリングは新しいステージへ

 

試行錯誤を経て、ソーラーシェアリングは新しいステージに入りました。次の課題は、認知度の低さです。発電事業者には知られるようになりましたが、農業者にはまだまだ知られていません。そこで馬上さんは、ソーラーシェアリングを積極的に支援している城南信用金庫の吉原毅顧問とともに、全国をめぐってセミナーやシンポジウムを昨年から開催しています。

大木戸アグリ・ソーラーでは、さまざまな実験も行っている。これはビニルハウスに見立てた倉庫の上に設置できる可動式のソーラー。発電しながら、強すぎる日差しをカットすることもできる。

 

「以前より増えたといっても、ソーラーシェアリングを実施しているのは日本の農地面積450万haの0.01%以下にすぎません。情報も実績も不足しているので、全国で農業に携わっている人たちには、まだまだ知られていない。そこで千葉エコとしては各地で取り組みを紹介し、可能性を感じてくれた農家さんにコンサルという形で協力しています。それも単なるコンサルではなくて、自分たちで発電も農業もやっているプレーヤーとしての実績がありますから、一緒に取り組みを進めていくことができます」(馬上さん)

 

ソーラーシェアリングをめぐる状況は、めまぐるしく変化しています。数多くの発電事業者が参入してきたことで、農業がおまけのような扱いをされている事業も増えてきています。また「再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)」の買取価格が下がってきたことで、今後のあり方をどうしていくのかという模索も始まっています。持続可能な農業を実現するために、ソーラーシェアリングで何ができるのか、課題と可能性について、次回も馬上さんに話を伺います。

 

◆お知らせ:映画「おだやかな革命」上映情報!

 

日本で初めて、ご当地エネルギーの取り組みを描いたドキュメンタリー映画「おだやかな革命」が全国で公開中です。(当リポート筆者の高橋真樹は、この映画のアドバイザーとして関わっています)

 

詳しい場所と日程は映画のホームページから上映情報をクリックしてご確認ください。

 

 

 

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