その夜、そいつは突然あらわれた。
自室ドアを開けると、真っ暗な階段のほうから 何者かの不気味な羽音をたてる飛翔音。。蝉のようでも、蛾のようでもあるが、羽音のストロークはどちらでもない。
何か窓か天井にぶつかっているような音にも聞こえる。。。

思わず窓を閉め切り、自室に侵入しないように防護体制に。
その後 音が消えたので恐る恐るドアを開けてみる。。天井、廊下、壁、、何もいない。
階段を恐る恐る降りて周囲を確認。。。やはり何もいない。
その飛翔体は 何だったのであろうか。

本来なら 徹底的に捜索し、そいつが仲間を増やさないようにしなくてはならない。
大のG嫌いとしては 見たくない、触りたくない、という思いがあるが、そうしないと この家にそいつらの巣が出来てしまう。。葛藤。

結局 もうこの家とももう少しの付き合い(注:引っ越し2日前)なので、いやなものを避けたいばかりに 放置してしまう。。。自己嫌悪。

その2日後。。夜一人で帰宅して玄関のドアをあけ、デザートを食べようと台所の電気をつけ、冷蔵庫に近づくと、、流し付近をゆっくり動く黒茶色い物体を今度ははっきり視覚。その距離約50cm。思わずのけぞり絶叫!

ヤツだ。。。全く根拠はないが、おととい飛翔していたやつが その触覚で台所までたどり着いたに違いない。流しに残ったわずかな色のついた水たまりに口をつけている様子。

しばらくどうしようか考えて、 ここで決断。やるしかない。

防虫スプレーのありかがわかならいので 直接打撃してしとめるしかない。玄関にあったスリッパを素早くとって、物体に接近。

スリッパで一撃離脱、一発必中の決意をもって 左手を思いっきり伸ばし目をつむりながら、スイカ割りの要領で物体めがけスリッパを一閃!
初弾命中を得たものの 浅く入ってしまいヤツは素早くシンクに入ってしまった...側面から第2撃、今度は命中、相手は尾の部分を引きちぎられ、動かなくなる。

動かなくなったヤツは処分しなくてはならない。最接近、、最も苦手な部分。
必要以上に思いっきりトイレットペーパーを使って、手にその感触が直接こないようにしてから やはり左手だけを思いっきりのばし 恐る恐るGをティッシュで上から抑え込もうとしたが、、、その時、何とGさまは引きちぎられたまま素早く2、3センチ動き、なんと自分の手の甲のほうに向かってくる動きを見せる!思わずのけぞり再び叫び声をあげてしまう。

(おかげで、裏の家の奥さんから何が起きたのかと心配になり電話があったようだ)

まさか胴体を2つに割られながらもなおこのように動くとは。。何という生命力!

しばらく恐怖に震えながら ヤツを観察。死んで動かなくなったはず。。
いや、まだ長い触覚がゆらゆら動いている。。さらにまたノロノロと歩き出した!

もはやこれまで。

最後の勇気を振り絞り、 トイレットペーパー満載の左手でヤツの直上に位置転換し、
手の力で押さえつける。そのまま注意深く包み込むようにペーパーを丸めてゴミ箱へ。

やっと一見落着。とても長い時間であった。

ではでは。