(三)


舞い散る雪の中、僕はライブハウスに着いた。

楽屋には、既にみんな来ていた。

「外、寒すぎ。」

そう言いながら、僕は部屋の隅にあるストーブの前に行った。

「寒ぃよな。まだ雪降ってるし。」

フジが言う。

「ねぇ、今日クリスマスだよ。」

突然、リュウが嬉しそうに言った。

「フジ、何かプレゼント無い?」

「お前、突然すぎ。」

フジが苦笑いで返した。

開演時間が迫る。

衣装に着替えて、ステージ袖へと向かった。

五人で手を合わせる。

リュウの一声で気合いを入れた。



起こしちゃったかな
じゃあちょうどいいや
朝まで付き合ってよ
窓の氷が溶け出すころには
きっと帰るからさ
子供たちには悪いけど
今年は諦めてよ
これでもかなり迷って
ずいぶんと減らしたんだけど

I'm Santa Claus
君に千個のプレゼント
どれもこれも安物なんだけど
Santa Claus
一年に一度だけだから
Santa Claus
君に全部あげるよ

青いガラス玉に僕らの冒険が
どこまでも続くように
願いをかけといた

I'm Santa Claus
君に千個のプレゼント
どれもこれもまがいものだけど
Santa Claus
一年に一度だけだから
Santa Claus
君に全部あげるよ

You're the whole audience when I sing
You're all the listeners when I speak
You're everyone surrounds me
You're all that matters to me

窓の氷が溶け出すころには
きっと帰るからさ

I'm Santa Claus
僕に最後のプレゼント
Santa Claus
お別れのキスをしてくれよ
Santa Claus
I've got to go back to the place I'v living in
I'm living in the cold place


サンタクロース/ELLEGARDEN


***


ELLEのサンタクロース聴いてたら、何か書きたくなったので。

もうちょっとクリスマスっぽい話にしたかったんだけどなぁ。笑

(二)


「本当さ、お前らって凄ぇよな。」

隣で焼酎を飲みながら、カイトが笑う。

昨日から、カイトは東京に来ていた。

僕らのアパートを回りながら、数日はこっちに居るそうだ。

凄ぇと連発するカイトに、僕は苦笑いを零す。

ふと、窓の外に目を向けた。

白い雪が、ちらちらと舞っている。

積もる程ではないけど、未だに止む気配は無い。

「東京も降ってんだな。」

カイトも外に目を向ける。

「地元も降ってるの?」

「降ってるよ。うっすら積もってたぜ。」

僕の問いかけに、カイトは答えた。

「珍しいね、年明け前に降るなんて。」

「そうだな。」

そう言って、カイトは外を眺めた。

その横顔は、どこか寂しそうな、悲しそうな、そんな風に見えた。

何だか、言いようのない喪失感を抱えているような気がした。

そんな事を少し不思議に思っていると、カイトが口を開いた。

「年明け前の雪見るとさ、思い出すんだよな、ヨウが死んだ日。」

その一言に、僕は固まってしまった。

ヨウが死んだ時、僕はバンドを離れていた。

事故死したのを知ったのは、事故から数ヶ月も経った時だった。

精神的に不安定だった僕を気遣ってか、メンバーはヨウの事を話さなかった。

だけど、僕はずっとこの事を後悔していた。

ヨウは人知れず、自分の才能に悩んでいた。

あの時、僕が何か行動を起こしていたら、変わっていた事があったかもしれない。

自分の事でいっぱいいっぱいだった事が、情けなくて仕方なかった。

「あんま抱え込むなよ。」

不意にカイトが口を開いた。

「誰のせいでもねぇんだ。過ぎた事を気にしたって仕様がない。生きてくしかねぇからさ。」

そう言うと、カイトは再び外に目を向けた。

ヨウが死んだ日は、珍しく年明け前に雪が降り続き、一面銀世界だったそうだ。

最後にヨウが見た景色は、どんな感じだったんだろう。

そんな事を思いながら、僕も外に目を向けた。