すれ違う人は皆 知らない顔で(一)バイトを終えて店を出ると、暗闇の中に白い雪が舞っていた。年の瀬の迫った、クリスマス目前の夜だった。年明け前に雪が降るなんて珍しいな。そんな事を思いながら、駅前を歩いた。駅前には様々なイルミネーションが点灯していて、寒い冬の夜を照らしていた。ロータリーの中央に、クリスマスツリーがあった。何となく近付いてみる。結構大きなツリーだった。シンプルながら、そこに確かに在る存在感。綺麗だななんて、柄にもなく思った。足を止めて写真を撮る人が何人か居た。そんな人達に混ざって、僕も携帯を取り出す。一枚写真を取ると、メール画面を開いた。「メリークリスマス」と一言打ち込み、撮影したツリーの画像を添付して送信する。送信完了の表示が出ると、携帯を仕舞って駅前を後にした。アパートに着くと、メールが一件届いていた。僕がさっきメールを送った相手だった。「まだクリスマスじゃねぇよ。」メールを開くと、そう一言。その一言に、僕は吹き出した。相手はフジだった。