二足の草鞋 -64ページ目

孤独な道標 【第八章】~強請~

【第八章】
≪強請≫

このまま淳介の家を出られないと思っていたが、「帰ってもいい。」と言われた。私は何も後先のことを考えずに家を飛び出した。

まだ、みるきーは家に帰ってる時間じゃない・・・。私は無我夢中で家に帰り、お風呂に入った。淳介に弄ばれた穴の中を涙を流しながら「ごめんなさい・・・。」と何度も何度も洗った。洗っても洗っても、心の痛みまでは洗い流すことが出来なかった。
夕飯を作り、みるきーの帰りを待っているとなんだか頭が痛くなってきた。私にはそれがちょうどいい口実になった。

みるきーが帰ってくる頃、私は頭が痛いと言い、先にベッドで寝ていた。だから、今日のことはみるきーに知られることはなかった。
週明け、淳介からメールがあった。

「みるく。どうだ?この前の久しぶりの快感は?雑魚にはバレたのか?」

このころから、淳介はみるきーのことを“雑魚”と呼ぶようになった。おそらく私を久々に抱いたことで勝ち誇った様に感じ、私がやっぱり淳介じゃないと駄目なの!と泣き縋ってくると思っていて、本当に自分の欲の塊の棒に自信があったのだろう。
「私・・・この前はどうかしてた。この前の時のことは忘れたい。」私は、淳介にメールをした。
すぐに淳介からは返信があった。
「おまえ、自分で何を言ってるのかわかっているのか?この前、俺に抱かれたときビショ濡れだったじゃないか。」
「彼との行為のときは、もっとビショ濡れになるの。ごめんなさいね!」私も負けずにメールを返した。
「俺のことをまた欺くのか?おまえ、いい加減にしろよ!」
「欺く?人聞きの悪いこと言わないでよ!Y子を使って欺いたのは淳介のほうでしょ?」
淳介は主だから自分がすることはすべて正しいと思い込んでいる。私がどんな正しいことを言っても聞く耳は持たない。
「みるくがそう思うなら勝手にしろ。その代り、それ相応の報いは受けてもらうから覚悟しておけ。」淳介は一方的にメールを中断した。
報いとか、覚悟とか・・・そんなこと、出来やしない。私が淳介に抱かれた証拠なんて何もない。淳介の言うことなんて誰も信用する訳がないじゃないの。

しばらく淳介からのメールは来なくなった。

すると今度はY子から久しぶりにメールがあった。

「また飲まない?」

これは、もしかしたら淳介の命令なのかもしれないと思った。Y子とのことをみるきーに話すと絶対に罠だと・・・。淳介のことだからY子を出しに使ったのだとすぐにわかった。

私はY子に確認をしたけれど、Y子はもう・・・淳介の手の中で転がされているんだろう。私があんまりしつこくY子に聞きたてると、「淳介くんの悪口をいうのはやめて!淳介くんはみるくが思ってるような人じゃない!みるくのことを真剣に愛しているのがわからないなんて、あまりにも可哀想。」と、Y子までもが私の言うことには聞く耳を立てなくなった。そして、高校時代からの友情で固く結ばれていたはずの私とY子の友情に、ヒビが入り始めていた。

Y子との待ち合わせ当日、私は淳介にメールをした。
「今日は、どこで飲む予定?久しぶりだね!」そう・・・私は、淳介に鎌をかけた。淳介がY子のことを利用し、私との友情までも引き裂くつもりなら、私にだって考えがあるんだから。

淳介は私の鎌かけにまんまと引っ掛かった。

「Y子から聞いてたのか?そうだな・・・みるくに逢えるならどこでも良いが、洒落た個室のお店を何店かピックアップしてあるんだ。それと、Y子には悪いが俺はみるくと話がしたいから、Y子には後で退場してもらうことになっているから。まあ、Y子もわかっていることだが。それにしても、やっとおまえもわかってくれたんだな。今日は、いい日になりそうだよ。」

返信はすぐにあった。淳介はY子が私に話した内容の確認を取らずに、私の鎌かけに乗った。淳介が私のことを好きなのを逆に手玉に取らせてもらったわ。

待ち合わせ時間が迫った頃、私はY子に「今日は淳介が来るなら行かない。Y子も今後一切、淳介に協力しない方がいいよ。私との友情を大切にしてほしい。最も、淳介の奴隷になるのならもう、Y子とはこれで終わりだけど。」

賭けだった。下手したらY子は淳介に弄ばれ捨てられることになるかもしれない。それがわかっていたから、Y子を救いたかった。私との長い友情をチラつかせれば、Y子が私との友情を取ってくれると思っていたから。

でも、Y子からは連絡がなかった。連絡があったのは淳介から。

「覚えておけ。俺は、みるくにもう一度・・・ご主人様と呼んでもらえるまで諦めない。」

この日を境に、Y子からも淳介からもメールが途絶えた。そして、おそらくY子は淳介の欲の塊の棒によって支配されたんだと思った。自分がY子を救いだせなかったことに自己嫌悪に陥った。Y子も、私との友情を取ってはくれなかった。でも、私もまた、付き合っていたみるきーを取り、Y子を捨てた。

Y子も私も、友情ではなく愛を選んだ。ただそれだけのことだけど、私の胸は強く痛んだ。

女性とはいざという立場に置かれたとき、男をとるか、女をとるかと選択されたら、たいがいの人が男をとるのだ。