二足の草鞋 -55ページ目

孤独な道標 【第十章】~不吉な予感④~

【第十章】
≪不吉な予感④≫

「ねえ、明日BARイノセントに行ってちょっと確認をしたいことがあるんだよね。行って来てもいいかな?」

私はみるきーに詳しいことは告げずに行きたかった。ただ、手紙と婚姻届を破棄したかっただけだから。

「どうして?なにしに行くの?」みるきーは不審げに聞いてきた。

「今は言えない。明日、行った後で確認が取れたら言う。」みるきーにしてみれば、何がなんだかわからなかっただろう。なぜ、別れた人との出逢った場所へわざわざ出向き自分の身を危険な目に合わせきゃいけないんだと、普通ならそう思うだろう。

「行く必要ないよ。」

「でも・・・。」

「行くんだったら、僕も一緒に行くよ。一人じゃ危険だから。」

「大丈夫。一人で行く・・・明日のBARの開店前には行きたいから。」

私は、みるきーに心配をかけたくなかったのと、こんな手紙や婚姻届を書いた存在を知られたくなかったから頑として断った。
次の日、早めに仕事を切り上げBARへ向かう最中に携帯でブログを見るとチェックリストに入れた淳介のブログが更新されていた。

もうBARに行く必要がなくなっていた。
淳介よりも先にBARに行って預けてある手紙や婚姻届を破棄しようとしたが、淳介も同じようなことを思っていたのだろうか。淳介は昨夜BARへ行き、タイムカプセルを一人で開封した。
そして、私が読まれたくはなかった手紙も読んでしまった。

『1年後の淳介へ。
お元気ですか?1年後の私は元気にしてますか?
もし、この手紙を一緒に開封できているとしたら、私は淳介の妻になるということ。
もし、一緒に開封できないのだとしたら、私は決意を決めたんでしょうね。
私は、度重なる淳介の浮気に正直うんざりしていました。
もう、この手紙を書いている時点で、1年後を予想していますが、おそらく私たちは別々の道を歩んでいるでしょう。
淳介には私なんかよりペットとして、奴隷として、彼女として、妻として相応しい人が現れていることでしょう。
淳介に、謝らなければいけないことがあります。
TDSのホテルで模擬挙式をあげた後の夕食の際に交わした婚姻届。プロポーズされたことは本当に嬉しかったのですよ。でも、何度も浮気を重ねる淳介の妻になるという実感がどうしても湧かなかった。だから、私は住所の欄に嘘の住所を記入しました。その婚姻届は何枚もコピーを持っているようだけれど、無効です。
淳介、わかりますか?
私がこんな内容の手紙を淳介に宛てていること自体、私と淳介はこの手紙を一緒に開封することはないということ。
淳介は私にいろんな楽しい想い出をくれました。
淳介が私にくれた想い出はきっといつまでも私の心に残るでしょう。
2年間ありがとう。
淳介、あなたはいま幸せですか?
みるくより。』

淳介のブログの記事は怒った内容だった。
それは私が別れを前提とした内容でこの手紙を書いていたこと。そして、婚姻届の偽造はあの当時、本当に嬉しくて10枚もコピーした淳介にとってみれば、私の嘘はかなりショックだったことだろう。
淳介のブログでは、私の今の彼氏がこの手紙を書く前に現れ、奪っていったんだと書いてあった。淳介からしたら、そう思うのは当然なんだろう。
私は、これでよかったと思っていた。なぜなら、裏切った私を怨み、これ以上、私とまた寄りを戻したいと思わなくなるだろう。淳介にとってこの私との想い出を取っておく必要がなくなること、消し去りたいと思い、新たな道へ向かい新しい彼女を作ることなんて容易いと思っていた。
私は、みるきーにメールをした。

「今日は、BARへは行かなくてもよくなった。オンゲーがブログでアップしているの見てみればわかると思うけど・・・。」

その晩、私はみるきーにその当時書いた手紙のことなど話をした。

今の私にはみるきーしかいない。昔、淳介が言っていたように「私はみるきーがいないとダメなんだ・・・。」