二足の草鞋 -53ページ目

孤独な道標 【第十章】~不吉な予感⑥~

【第十章】
≪不吉な予感⑥≫

私は以前、長い間勤めていたデパートで知り合った職場の友人はたくさんいたが、職場での友人はそれほど深い仲になることはなかった。

高校時代の友人Y子も、淳介に身も心も奪われてからはいったいどうなったのかわからなかった。でも、私にはそれを確かめる勇気がなかったし、一度崩れた友情は、特に女同士はなかなか戻らないから諦めていた。

高校は実家のある地方だったので、女でなかなか東京に出てきて働いたりしている人は少なかった。そんな中でも、高校時代の部活で一緒だった一つ年上のK先輩が東京の渋谷区で、美容師として働いていた。

5年くらい前から時々、実験台として安く切ってもらうことも度々あったし、淳介ともそのK先輩を訪ね、3回ほど切りに美容院に訪れたことがあった。

淳介も最初の頃は、私に気を遣ってなのか先輩の美容院を利用することはそんなに嫌がっていなかったけれど、4回目はなかった。淳介いわく、ヘタだという理由だが・・・。

淳介と別れて以来、ご無沙汰していたので、そろそろ髪の毛を切りたいな・・・と思っていた矢先、ちょうどK先輩から携帯に電話があった。

「元気ぃ~?最近、切りに来てくれないじゃん!安くするからおいでよ。あっ!あとさ、メアド変えたんでしょ?送信してもエラーで帰って来たからさ。」

私は、翌週K先輩の美容院へ行く予約を入れ電話を切った。

髪の毛を切るのは本当に久しぶりだった。私は、みるきーにウキウキしながら話をした。

「あのね、来週、高校の時の先輩が働いている美容院に行ってくるよ♪」
「おっ!髪の毛切るんだ。可愛くなっておいで。」

一方で、淳介のブログは日を増すごとに書く内容が過激になっていった。諦めることのできない淳介はこれから、私を取り戻すためにどういう方法を練っているのか、この時、淳介が一番嫌っている相手はみるきーのはずだった。

淳介の勝手な思い込みで、私が淳介に別れを切り出したのはみるきーが現れたせいだと思っているから、ブログの内容もみるきーが私のことを嫌いになるような、引きたくなるような下品な内容だった。

それでも、みるきーは引くどころか淳介のブログを有難いと思っている様子だった。

みるきーの知らない私を淳介から教えてもらっていたのだろう。

翌週、私はK先輩の美容院へ向かった。

けっこう広い美容院なのでK先輩と話せるのは最初とカットのときのみだったから、あまりちゃんとした話はできなかった。少ない時間でのカットの最中、私は以前、一緒に来たことのある彼とは別れ、今は別の彼と同棲していることを伝えた。

美容師とはこういった世間話のようなことはよく聞くことだろうし、相談にも乗ってあげたりすることがあるという。だから、私と淳介の恋話なんて小さな出来事に過ぎないと思っていた。

そして、そんなK先輩だからこそ過去を笑って話せた。もちろん、みるきーと出逢ってなければ私は先輩に相談を持ちかけていたのかもしれないが、それでも、やはり、私は過去を引きずらない“女”だから、笑って話をしていただろう。
先輩には、私の携帯のアドレスの他にPCのメールアドレスも教えた。時々、先輩の実験台になるよなんていいながら、会計を済ませ美容院を後にした。
それからしばらくして、K先輩からは営業メールのような感じでの髪にいいシャンプーの紹介とか新しい整髪料の紹介の内容のメールだったから、K先輩に限ってはY子の時のようなことはないだろう。