二足の草鞋 -52ページ目

孤独な道標 【第十章】~不吉な予感⑦

【第十章】
≪不吉な予感⑦≫

回春店での仕事の帰り道、歌舞伎町のホテル街を抜け家路を急いでいると、ホテルの塀にもたれ掛り腕組みをして待ち伏せる淳介がいた。

私は目があまりよくないから近くまでいかないとわからない。始めは、ホストクラブの勧誘かと思った。でも、ニヤリと笑う淳介は、遠くからでも私の足を立ち止らせた。

「お疲れ、みるく。家まで送っていくよ。一緒に帰ろう。」淳介の横にはバイクがあった。

淳介には私が回春店で働いていることはもうバレているとわかっていたから、いつかこうやって待ち伏せをされることに不思議と動揺はなかった。私は淳介を無視し横を通り過ぎようとしたら、腕を掴まれ強引にホテルの壁に私を追いやり、抱きしめてきた。
「こんなに男の匂いをプンプンさせて帰るのか?」

「関係ないわ。放して!」私が淳介の胸元を押すと、淳介は私の髪の毛を引っ張り顔を上げさせ強引にキスをしてきた。私は、頑として拒否したが、舌をねじ込んで来たのでその舌を噛んだ。
「痛っっ!!」淳介の手が緩んだすきに私はその場から離れた。
淳介はニヤリと笑いながら私の胸座を掴み、「おまえ、多少は強くなったんだな。」と、言った。

その胸座を掴む強さは首を絞められる感じがした。唾をゴクリと飲み込んだ時、血の味がした。

「みるく。俺はおまえを救おうとしているんだぞ。わからないのか?あんな雑魚に操られ、慕う理由がどこにあるんだ?」

「淳介とは比べ物にならないくらい私を愛してくれているわ。」

「ふっ。まだ付き合って1年も経ってないんだろ?俺とみるくは、2年も続いたんじゃないか!」

「愛に年数なんて関係ないの。もう、いい加減・・・つきまとったり、待ち伏せしたり、ブログも・・・やめて。」

淳介は納得がいかない様子だった。

「それなら、なぜ去年、別れた後なのに俺の家に来た?俺の家に来るという事がどういうことなのかわかって来たはずだ!なぜ来たんだ?なぜ、俺にまた抱かれたんだ?」
「あの時は、淳介が風邪を引いているっていったから・・・。」私は、淳介の言っていることは最もだと思った。自分が淳介の立場だったら同じように思っていただろう。自分にまだ、愛情の欠片でも残っていると思うだろうし、同情でもいいから感じたのは間違いではない。淳介は私の優しさを利用したんだと思った。
「俺が、雑魚になぜ言わないかって思うだろ?いいか、俺はな、そんな女々しいことはしたくないんだ。寝取るも何も、最初からみるくは俺の奴隷なんだからな。」
淳介の自信はすごい自信だった。普通ならこんなことを言えば、引いてしまうのだが、淳介にはよほど自分の全てに自信があったんだろう。私はたとえ、みるきーと別れても淳介のところへは戻る気すらないのに。

「さあ、みるく。バイク乗れよ。」淳介はバイクに跨り、私にヘルメットを渡してきた。

私はその受け取ったヘルメットを投げ捨て、駅の方向へ走って逃げた。

淳介、もうやめて。お願いだから・・・これ以上、私や周りの人を巻き込まないで。

歌舞伎町のネオン街が涙で霞んでいた。霞んだ眼を擦りながら私は、みるきーに電話をした・・・。

「オンゲーがいるの。助けて・・・。」