2023. 5. 3 (水・祝) 17: 00 ~ 福岡シンフォニーホールにて
~ROHM MUSIC FOUNDATION 30th ANNIVERSARY PROJECT Vol.2~
<九州交響楽団 プレミアム・コンサート in 福岡>
岩代太郎:東風慈音ノ章 (ロームミュージック ファンデーション設立30周年記念曲)
モーツァルト:ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488
10分でわかるレスピーギ「ローマの噴水」と「ローマの松」~構成:新井鷗子~
レスピーギ:交響詩「ローマの噴水」 Op.106
レスピーギ:交響詩「ローマの松」Op.141
ピアノ:菊池洋子
指揮:高関健
九州交響楽団
(コンサートマスター:西本幸弘)
司会:朝岡聡
今日は石川県の能登半島で震度6強の大きな地震がありました。その後も何度も大きな余震があっているようです。かなり広い範囲で揺れが観測されているようですのでどうぞくれぐれも気を付けてください。被害が大きくならないように祈っています。
5月3日に行ったコンサートの話です。アクロス福岡がある天神は博多どんたくで大賑わい
毎年どんたくの間は家から出ないようにしてるんですが この日は九響の公演があるとあっては出不精の私も意を決して激込みの天神へ(大げさw)
高関&九響を聴くのは二度目。前回もとてもよかったし、レスピーギの ”ローマ” シリーズも生で聴くのは初めてだったのでとても楽しみでした
最初はローム ミュージック ファンデーション設立30周年の記念曲として岩代太郎氏が作曲した「東風慈音ノ章」。岩代氏は映画「キネマの神様」、大河ドラマ「義経」、天皇陛下御即位二十周年奉祝曲などを作曲した方です。
この日もらったパンフレットに書いてあった岩代氏の記載によると、委嘱の際に岩代氏に対して「芸術性を探求するがゆえの難解かつコンテンポラリーなアプローチではなく万人にとって親しみやすい曲調を基本として欲しい」という要望があったそうで、たしかにとっても聴きやすくて流麗な旋律がとても心地よかった。冒頭で弦とともに木琴が鳴らされるのが面白いなと思ったのと、後半あたりでコーラングレのソロの旋律がとてもよかった。最後にコントラバスがビン!とはじいて終わるところもかっこいい!
岩代氏は「プロフェッショナルなオーケストラによる演奏プログラムとしての作品性」と「アマチュア・オーケストラにも活用できる音楽性」とのバランスも考慮して、演奏における難易度も過度に上げ過ぎないように配慮したそうだ。 きっとこれからも何度も演奏されていくにちがいない。
岩代氏は日ごろから『教育と文化が国の将来(カタチ)を創り出していく』と信じていらっしゃるとのこと、文章の最後に
『 分断された世界において、「音楽は心在る場所に宿る」と信じております。』とあった。
次はモーツァルトのピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488。ソリストは菊池洋子さん。
菊池さんは2008年の第8回モーツァルト国際コンクールで日本人初の優勝を飾ったそうだ。
菊池さんは以前どなたかのリサイタルのピアノ伴奏者として聴いたことがあり、またラデク・バボラークさん (Hr)との共演のCDも愛聴しているがソリストとして聴くのは初めて。
ステージに登場した菊池さん、光沢のある刺繍(?)を施した薄い金色ぽいノースリーブのスリムなドレスを着てらして長身でスタイルのいい菊池さんにすごく似合ってらした。相変わらずお美しい~
演奏もうまくまとめていらしてとてもよかったが、個人的な好みをいえば、もすこし粒立ちがよくてもすこしコロコロしたクリアなタッチだったらさらに好みだったかなと思った(あくまで主観です。席などの関係もあると思います)。
ただモーツァルトのピアノ協奏曲ってラフマなどのように超絶技巧で弾くわけではない、むしろ技巧的には難易度がそこまで高くはないゆえに演奏が最も難しいのではないかと私は思っている。音色やタッチがもろに出る、ピアニストはごまかしがきかない、丸裸にされるような気がして色んな意味でとても難しいのではないかと思う。
後半はオットリーノ・レスピーギ (1879-1936)の「ローマ三部作」シリーズのうちの二つ、「ローマの噴水」と「ローマの松」。
レスピーギについては彼の生誕日の7月9日に書いたことがあります。
また、今回のこの2つの作品については前記事に詳しく書いています。
演奏前にこの日のMCを務めた朝岡聡さんから「10分でわかる「ローマの噴水」と「ローマの松」」と題して曲解説があったのだが、これが予想外にわかりやすくて面白かった!
二つの作品内の各曲の聴きどころをオケの短い実演を交えて解説してくださったのだ。
朝岡さんのお話もとっても上手いし、なんせオケの実演があることできっとお客さんたちは俄然興味がわいたと思う。こういう試みってとってもいいと思う こういうの九響の通常の演奏会でも時々やってくれないかな~
というわけで、最初は「ローマの噴水」。
曲解説があったおかげで、夜明け、朝、真昼、黄昏とそれぞれの情景を思い浮かべながら聴くことができたが、もしなんの前知識がなかったとしてもきっと十分楽しめると思えるほどそれぞれの雰囲気がでていてとてもよかった。第3曲のトレヴィの噴水の盛り上がるところあたりは R.シュトラウスの「アルプス交響曲」をちょっと思い起こすような感じもしたけど レスピーギやっぱすごいな。
私が一番いいなと思ったのが終曲の「メディチ荘の噴水」。第1曲の夜明けはオーボエのソロで始まるが、終曲はコーラングレのソロで始まる。郷愁ただよう夕暮れの様子が、ゆったりとなる晩鐘の響きや小鳥のさえずり、木々のざわめきなどがグロッケンシュピールやヴァイオリンソロなどで奏でられ、ローマの街にゆっくりと夜のとばりがおりていく様子が思い浮かんだ。
ヴァイオリンなどの調べにのって最後までかすかに鳴らされる鐘の音(伊藤さんうまい!)が胸にぐっときた。
最後は「ローマの松」。
こっちは「ローマの噴水」より起承転結がさらにはっきりしていてわかりやすい。
第2曲の「カタコンブ付近の松」がとてもよかった。最初の低弦中心の厳かな響きが一瞬合唱のような人の声のように聴こえてハッとなった。バンダで松居首席が吹くトランペット🎺が本当に素晴らしくって そのトランペットに寄り添うように奏でられる高音のヴァイオリンの音色と相まってまるで天上の音楽のように美しかった。
そのあとの祈りの声を表すともいわれる執拗に繰り返される音型が次第に盛り上がって、また木管の賛美歌が次第に静かに終わっていくすぐあとからの「そよ風」のピアノ⇒宇根さんのクラリネット、弦の伴奏 もぉ~ここらへんがたまりませんでした このあたりの幻想的な弦の旋律を聴いているとドビュッシーみたいだ。
ナイチンゲールの鳴き声は天井から降り注ぐように聴こえてきて心が洗われるようだった。とにかくこの第2曲と第3曲はとても感動しました。
終曲の「アッピア街道の松」、これはもう否が応でも盛り上がりますよね~
レスピーギ、よくぞこんな曲を書いてくれたありがとー と叫びたくなるくらい高揚しましたw
バンダで吹かれる金管は舞台の下手側に6人ほどズラッと並んで演奏されたが、やっぱりこの金管が入るとより一層盛り上がる。
九響はここぞというときの爆発力がすごいなといつも思うんだけど、この日もこの終曲はめちゃめちゃすごかった 最後の最後に森さんのティンパニがこんなにすごい音が出るのかというくらいの強打!! ホール全体が音の渦に飲み込まれるようで圧巻でした。
ブラボ~~
この日は配信のためのカメラが入っていたためか、2階と3階のサイド席にはお客さんを入れてなかったようでしたが、他はほぼ満席に近かったのでは。
若い方や子連れの方も多くみかけました。これで九響のファンがもっと増えるといいな。
「ローマの噴水」と「ローマの松」は今シーズンの定期演奏会でも演奏されます(指揮は小泉監督)。小泉さんはどんな演奏になるかな?とても楽しみです