2018. 2. 12 (火) 19 : 00 ~ 福岡シンフォニーホールにて
<第373回 九州交響楽団 定期演奏会>
武満 徹:夢の時
モーツァルト:ホルン協奏曲 第4番 変ホ長調 K.495
(アンコール)
モーツァルト:ホルン協奏曲 第4番 変ホ長調 K.495より 第2楽章
シベリウス:交響曲 第6番 二短調 Op.104
シベリウス:交響詩「フィンランディア」 Op.26
ナチュラル・ホルン:トゥーニス・ファン・デア・ズヴァールト
指揮:鈴木優人
九州交響楽団
(コンサートマスター;三上 亮 (客演))
前日の夜遅くに東京から帰ってきて、翌日は仕事に行き夜は九響の定演に行った。
今大活躍の鈴木優人さんは九響定演に初登場。九州つながりでいうと、鈴木さんは2014年1月から学生オケの九州大学フィルのミュージックアドバイザーも務めている。
私は以前バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の「マタイ受難曲」の福岡公演のときに、鈴木優人さんのオルガンの演奏は聴いたが、その指揮を観るのは初めて。
この日前半がモーツァルト、後半がシベリウスと思い込んでいた私は、しょっぱなに聞きなれない旋律が聴こえてきてびっくりした。
「な、なんこれ!?」 と思ったら、だった・・・ 武満が演奏されることを全く失念していた。思わぬ形での武満徹初聴き
この「夢の時」というタイトルは、オーストラリア原住民に伝わる同名の神話からとられているそうだ。その神話にまつわる祭典を武満は現地で体験して作曲したそうだ。
予習も何もせず全くの初聴きだったので曲の印象しか書けないが、雅楽を聴いているような感じだった。ゆったりとした曲調で、終わりかなと思ったらまた始まる。結構長い曲だった。テレビなどでも武満の曲は時々耳にするが、私は正直まだよく理解できてない。まだ面白味がよくわからない。まだまだ勉強が必要だ・・・
2曲目はモーツァルトのホルン協奏曲第4番。
この曲はラデク・バボラークさんの演奏で聴いたことがある(オケではなく弦楽五重奏とで)。 でも今日のホルンはナチュラル・ホルンでの演奏。
ナチュラル・ホルンって昔のホルンってことくらいしか知らないけど具体的にはどんなんだろうと思い、ちょこっと調べてみました(写真はすべてwebからお借りしました)。
元々は角笛から発展したホルン。
上の左の写真がナチュラル・ホルンで、右が現在のフレンチ・ホルンといわれるもの(フレンチ・ホルンの中にもシングル・ホルン、ダブル・ホルン、トリプル・ホルンなど(単一調性~3つの調性に切り替え可能)があるみたいですが省略します)。
ナチュラル・ホルンはいわゆる古楽器の一種で、ハイドンやモーツァルト、ベートーヴェンの時代にはこのナチュラル・ホルンを想定した協奏曲や交響曲が書かれている。しかし1814年のバルブの出現によって次第にバルブ付きホルンが主流となっていく。
見てわかるようにナチュラル・ホルンには押すところ、つまりバルブがついていない。
ではどうやって音を変えるんでしょう
ホルン(ナチュラル・ホルンも)はそもそも16個の自然倍音を出すことができる。口の形や息の入れ方、筋肉の使い方など熟練されたコントロールによって16個の音は何も押さない状態でも使い分けることができる。 さらに現在のホルンはバルブによってより多くの音を出すことができる。
バルブがないナチュラル・ホルンの場合、ベルの中に入れている右手の位置(塞いだり出したりなど)(ストップ奏法)を変えることによってさらに多くの音を出せるようになった。しかしそれでも全ての音を完璧な音程で出すことはできないので”替え管”というものが存在する。現在のホルンは常にF管だが、ナチュラル・ホルンは曲によってホルン自体の調を変えるのだ。
替え管はこんな風にひとつのナチュラル・ホルンにつき5-6個がセットになっているが、組み合わせて他の調も作ることがあるそうだ。
つまり、ナチュラル・ホルンは現在使われているホルンよりも演奏が複雑でとても難しい。まず倍音列の音を確実に当てる必要があり、それ以外の音を手などで操作するので、モーツァルトの協奏曲も実は超絶技巧が必要なのだということが分かった。
この日演奏された第4番は、4番となっているものの実際は2番目に書かれた協奏曲らしい。後に書かれた第3番と第1番に比べると音域的にも難しく、最高音でE♭5が要求され、高い音へと駆け上がるフレーズが多用されより難しい曲といえる。
前置きが長くなりましたが実際の演奏について。
まず弦の音色がとても心地よかった!ほとんどノン・ビブラートで弾いていたように思う。1曲目の武満とも後半のシベリウスの時とも違う弦の音色だった。
そしてソリストのズヴァールトさんのホルン、すごすぎ
私は実はナチュラル・ホルンで吹いてるってことを演奏後に知ったのだが、普通のホルンと全然遜色なかった。あとで考えてみたらより温かい包み込むような音色だった。音程を外すことなども一切なかったように思う。ナチュラル・ホルンの演奏の難しさを知った今では、あの演奏がいかにすごいものかあらためて驚嘆!
拍手が鳴りやまずアンコールまでしてくれた。鈴木さんが指揮台に上がりながら客席に向かってVサインのように として、同じ曲の第2楽章が演奏された。
アンコールの第2楽章はさらにしっとりと聴かせてくれてすごくよかった。
この日は協奏曲のときのオケのふたりのホルンもナチュラル・ホルンだった。
真ん中がズヴァールトさん、右端が指揮者の鈴木優人さん。一番左と右から2番目が九響のホルン奏者の木村睦美さんと岡本秀樹さん。
(写真は木村さんのツイッターよりお借りしました)
この日は開演前のロビーコンサートでもズヴァールトさんが登場し、モーツァルトのホルン五重奏曲を演奏(鈴木さんも解説したみたい)したそうだが、私は間に合わず聴けなかった。貴重な機会だったのに残念!!
後半はシベリウス。
最初は交響曲第6番。この曲はシベリウスが58歳(1923年)になる年に完成された。
私はシベリウスの交響曲といえばまだ第2番くらいしか知らなくて、前もってCDでこの6番を何度も聴いたものの、すぐ途中で寝てしまう 弦はとても美しいんだけど全体としてはなんとなくとりとめもない曲だな~という印象だった。
でも実演を聴くと(大体このパターンですが)すごくよかった!
全体を通して弦のフレーズがやはりとても美しい。聴いていると広大な草原に爽やかな風がそよいで草々をたなびかせているような、広々とした光景が思い浮かんでくるようだった。第1楽章などヴァイオリンがタタタタと細かく刻みつつ音階を行ったり来たりするような旋律があってそれがすごく印象的。
第4楽章の最後は消え入るように終わっていく。終わったあとも指揮者の手が降りるまでは拍手も起こらずシーンとしていてよかった。
個人的にはやはり掴みどころのないような曲ではあったが、実演で聴いた方がよりよかった。
最後は「フィンランディア」。
この曲の実演は初めてだが、有名な曲なので聴き馴染みはある。だけど私は個人的にこの曲がなぜかあんまり好きじゃない・・・なぜなのか自分でも分からない
ただこの曲は当時ロシアの支配下にあったフィンランドの愛国独立運動の一環としての民族的歴史劇の音楽から抜粋・編作された作品で、国民にとっては第二の愛国歌のような曲なのだ。
冒頭の金管群の重々しい序奏が始まったときに、サイドの2階席にいた制服の女子高生たちがぐぐぅっと身を乗り出して見ていた(最後列の席なので問題なし)。吹奏楽部などの生徒さんなんだろうか、なんか微笑ましかった
繊細さが前面に出ていた6番と打って変わっての力強い音楽。鈴木さんの指揮もより大きくなっていた。感動的に高らかに終わったあとは大きな拍手が起こっていた。
ただ、あくまで個人的にはですが、私はフィンランディアと第6番の順番が逆の方がよかったかな~と思いました。
鈴木さんの指揮は初めて観たが、すごくいいと思った。九響との相性もよさそうな気がした。超ご多忙のようだけどまたぜひ振りに来てほしい!と思ったら、今年6月にまた九響を振る予定があるみたいだ。ヴィヴァルディの「調和の霊感」やメンデルスゾーンの「イタリア」など。こちらも楽しみです