映画「私は、マリア・カラス」を観る | Wunderbar ! なまいにち

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まだまだひよっこですがクラシック大好きです。知識は浅いがいいたか放題・・・!?

仕事休みに入った29日は早起きしていつものKBCシネマで映画を観てきましたやった

 

「私は、マリア・カラス」(原題:Maria by Callas)

(2017年 フランス映画 114分)

 

監督:トム・ヴォルフ

製作:トム・ヴォルフ、エマニュエル・ルペール、ガエル・ルブラン、エマニュエル・シャン

朗読:ファニー・アルダン

 

 

私はマリア・カラスについては名前と顔、そして大体のことしか知らなかった。

はっきりとした顔立ち、大きな目をさらに強調する濃いアイラインが印象的で、恋多き女性、気性が激しい人というような印象を持っていた。

オペラの予習用に買ったCD(ノルマ、椿姫、カルメン)でその歌声を耳にはしていたものの、正直「これってそんなに大騒ぎするくらい上手いのかしら?」と思っていた。

 

でも・・・この映画を観て、マリア・カラスへのイメージが全く変わってしまった。

なんとすごい人なんだろう。同じ女性として、そして人間として感銘を受けるところがたくさんあった。

 

観る前は、マリア・カラスに扮した女優さんを通じて彼女の人生をたどっていく映画なのかと思っていたら(クイーンみたいに)、全然違ってドキュメンタリー映画だった。

マリア・カラスを知らない方のために、彼女のプロフィールとともに映画の内容を紹介すると・・

 

20世紀最高のソプラノと称されたオペラ歌手マリア・カラス (1923-1977)はギリシャ系アメリカ人でニューヨークで生まれ育った。野心的でシャーリー・テンプルら子役の成功に憧れていた母親は、娘の才能に気づくと歌手にしようと決意、13歳だった彼女を17歳と偽ってギリシャのアテネ音楽院に入学させた。

卒業後アメリカに再度渡り、オーディションを受けては落ちる不遇の時代も過ごしたが、1950年代に入ると頭角を現し、一躍世界的スターとなる。 

しかしノルマなど難役を歌い続け声を酷使したためか彼女の声の絶頂期は10年ほどに過ぎなかった。1958年1月にローマ歌劇場のこけら落とし公演で体調不良(気管支炎)のため第1幕のみで降板し大バッシングを受ける。 この頃から徐々にオペラへの出演も減っていき、1965年に7年ぶりにメトロポリタン歌劇場に復帰し「トスカ」や「ノルマ」に出演したが、その後はリサイタルなどの出演が多くなった。

1973-74年にワールドツアーを行い、日本公演の札幌での公演が彼女の生涯最後の公式な舞台となった。1977年9月16日に53歳で急逝した(心臓発作といわれている)。

 

マリア・カラスの名前は数々のスキャンダルでも有名になった。28歳年上の男性との結婚、大統領やセレブも駆け付けたローマ歌劇場の公演を第1幕で降板したことへの強いバッシング、メトロポリタン歌劇場の支配人とのバトル、ギリシャの海運王オナシスとの大恋愛、それがもとでの夫との長年の離婚闘争、オナシスが元ケネディ大統領夫人ジャクリーンと結婚したことを新聞で知るという衝撃の顛末などなど・・・

 

 

そしてカラスの没後40年にして初めて彼女の未完の自叙伝の存在が明らかとなった。この映画の監督のトム・ヴォルフ氏は3年の月日をかけてこの自叙伝を入手。さらに彼女の親友たちなどから、封印されてきたプライベートな手紙や未公開映像をふんだんに集めた。

ヴォルフ監督はその友人達のインタビュー映像を使うことはせず、マリア・カラス本人の「歌」と「言葉」のみで彼女の人生を再構成した。

自叙伝で語られる言葉や手紙の朗読を「永遠のマリア・カラス」でカラスを演じたファニー・アルダンが担当。半数近くが今回初公開となる素材群、写真をもとにカラー化したモノクロ映像などから、プロフェッショナルとしての信念と、ひとりの女性としての幸せに揺れる歌姫の真実の姿が描かれるーーー

 

以下一部ネタバレ含みます。

 

私は彼女は”派手な人”という印象を持っていたが、本当の彼女は内気で、1970年のインタビューでは「(本当は)幸せな家庭を築いて子供を産みたかった」と語っていた。だが、「最初は母、次は夫に歌い続けることを強制され、逃げられない運命だった」と語っていた。

 

↑ そのときのインタビューの様子(カラスは当時47歳)

 

このインタビュー映像では、カラスはそれまでの波乱万丈の自分の人生を淡々と語っているが、私が最も感銘を受けたのは、カラスが毎日神に祈る言葉として、

「(神様が存在するかどうかは分からないけど、いるとするなら)幸福も不幸も神の御心のままに受け入れます。ただ神様お願い、私にそれ(不幸)に打ち勝つ力をください。」

 

カラスは世界的に有名になるころに40キロの減量をしたそうだが、映画で観たカラスの映像はどれを見ても本当に魅力的。その美貌もさることながら、ヘアスタイル、ファッション、美しいスタイルが本当に素敵。それは40代になっても変わっていなかった。

それから驚いたのが、カラスはどこに行ってもマスコミと大勢のファンに取り囲まれているのだが、いつも満面の笑みをうかべているのだ。こんなに大スターになったら、プライベートでは仏頂面をしていてもおかしくないと思うのに、いつの映像を見ても大きな笑顔でカメラやファンの歓声に応えていた。

 

 

カラスの特筆すべきは、その個性的な声質だけでなく、オペラの登場人物に血肉を与え血の通った人間として目の前にいる聴衆に感じさせたことなのだろう。

映画の中ではカラスの歌う映像がふんだんに出てくるが(私は歌うカラスを観たのは初めてだった)、私はそれを観ていて何度となく涙が出た。「トスカ」のアリアなんか、私はトスカのストーリーもよく知らないのに歌っているカラスの表情を観ているだけで胸に迫ってくるものがあり泣けてきた。

1962年(だったかな?)の「カルメン」のハバネラを歌う映像なんかもうほんっとにうまくて!私はこないだ実際の「カルメン」を観たが、そのとき歌われたハバネラとは申し訳ないが比べもんにならないくらい魅惑的でうまかった!! やはり本当にすごい人なのだと再認識した。

 

他にも劇中にたくさんの歌唱シーンが出てきます。登場順に紹介すると、

「蝶々夫人」より ”なんて美しい空!” (プッチーニ)

「シチリアの晩鐘」より ”ありがとう、愛する友よ” (ヴェルディ)

「ノルマ」より ”清らかな女神よ” (ベッリーニ)

「椿姫」より ”さようなら、過ぎ去った日々よ” (ヴェルディ)

「マクベス」より ”早く来て、明かりを” (ヴェルディ)

「カルメン」より ”恋は野の鳥(ハバネラ)” (ビゼー)

「カヴァレリア・ルスティカーナ」より ”ママも知るとおり” (マスカーニ)

「トスカ」より ”歌に行き、恋に生き” (プッチーニ)

「夢遊病の娘」より ”おお花よ、お前がこんなに早く萎んでしまうとは” (ベッリーニ)

「アンドレア・シェニエ」より ”母が死に” (ジョルダーノ)

「ジャンニ・スキッキ」より ”私のお父さん” (プッチーニ)

 

急逝のため未完となった自叙伝は、観客へのメッセージで途切れていた。

ー 「私にあるのは感謝のみです。」

 

バッシングを受けたときは、「カラスをオペラ座から追放しろ」とまでファンから言われた彼女なのに。ファンや劇場側の思惑によってどんどん歌うことを余儀なくされ、そのために歌手としての寿命を縮めたとも言えるのに、なんという人なのだろうと思った。

 

カラスの歌は愛していても色恋沙汰の話は観たくなかったという方々もいるかもしれないけれど、私はそうは思わなかった。なぜならこれもカラスの人生の一部だったから。カラスの歌とは切り離せないものではないかと思ったから。

 

 

 

 

ところで最近はクイーンの映画や、エリック・クラプトンの映画も上映されてるみたいだし、自叙伝的な映画が流行ってるんでしょうか。

この日の予告観てたら、(こちらでは)年明けにホイットニー・ヒューストンやピアソラの映画があるみたいです。どっちも観に行きたい!!

 

          

「ホイットニー~オールウェイズ・ラヴ・ユー~」  「ピアソラ 永遠のリベルタンゴ」

 

他にも観たい映画が目白押しですビックリマークsao☆