ヴァリアン・フライ・カルテット:モーツァルト、ハイドン、ショスタコーヴィチ、ラヴェル | Wunderbar ! なまいにち

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まだまだひよっこですがクラシック大好きです。知識は浅いがいいたか放題・・・!?

2018. 2. 2 (金)  19 : 00 ~    福岡シンフォニーホールにて

 

モーツァルト:アダージョとフーガ ハ短調 K.546

 

ハイドン:弦楽四重奏曲 第38番 ホ長調 Op.33-2 Hob.III:38 「冗談」

 

ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第8番 ハ短調 Op.110

 

ラヴェル:弦楽四重奏曲 ヘ長調

 

(アンコール)

菅野よう子:花は咲く

 

ヴァリアン・フライ・カルテット:フィリップ・ボーネン (Vn)、マレーネ・イトウ (Vn)、マーティン・フォン・デル・ナーマー (Vla)、レイチェル・ヘラー (Vc)

 

 

民音創立55周年記念として開催されたコンサートらしい。

1月29日の名古屋公演を皮切りに全10公演で福岡公演は5公演目(前日は松山だから移動も大変だなぁ)。

 

まずはこのカルテットについて・・・ヴァイオリン

4人とも現在ベルリン・フィルのメンバーで、4人のうち3人がベルリン・フィルハーモニー管弦楽団アカデミー在学時の2007-2008年シーズンにカルテットとして演奏を共にしており、ベルリン・フィルのチェロ奏者だった故ヤン・ディーセルホルストの指導を受けていた。2013年4月以降、ヴァリアン・フライ・カルテットとして演奏活動を行っている。カルテットの名前は、「ヴァリアン・フライ」という、ナチスの迫害から多くの人を救ったアメリカのジャーナリストに由来している。

 

Varian Fry (1907-1967)  (wikipediaよりお借りしました)

彼について詳しく知りたい方は以下をご参照下さい。

https://en.wikipedia.org/wiki/Varian_Fry

 

 

ベルリン・フィルには多くのアンサンブルが存在する。HP上で数えたところ約30くらい? 複数のアンサンブルをかけもちしている楽団員も多い。ヴァリアン・フライ・カルテットの中ではチェロのレイチェル・ヘラーさんは「12人のチェリストたち」で演奏を聴いたことがある。  

それからこのカルテットのヴァイオリン奏者のマレーネ・イトウさんは、昨年行ったベルリン・フィルの来日公演のパンフレットにインタビューが載っていた。「日本人団員が語るベルリン・フィル」と題して、第1ヴァイオリン奏者の町田琴和さんとの対談だった。マレーネ・イトウさんはカタカナ表記の名前だが、ハーフなどではなく実は「伊藤真麗音」というれっきとした日本人。父親の仕事の関係で7歳からオーストラリア→ドイツで生活している。町田さんもアカデミー出身のイトウさんもいずれもベルリン・フィルのオーディションは3度の挑戦で合格したのだそう。

 

ヴァイオリン     チェロ     ヴァイオリン     チェロ     ヴァイオリン     チェロ

 

この日演奏された4曲はいずれも初めて実演を聴いた・・というか、私はCDでも聴いたことがなく知らない曲だったのでyou tubeで予習していった。

 

最初はモーツァルトのアダージョとフーガ K.546。この曲はチラシにも載っておらず当日初めて演奏されることを知った。

この曲は1783年作曲の「2台のクラヴィーアのためのフーガ K.426」をヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの弦楽合奏用に編曲の上、52小節の前奏を付けたもの。 最初はモーツァルトぽくないなぁと思いつつ聴いていたら終盤にかけての盛り上がりがすごい。モーツァルトはやっぱり天才だ~と思った。この曲は1stヴァイオリンをイトウさんが務めた。

 

 

2曲目はハイドンの弦楽四重奏曲第38番の「冗談」。

2曲目、3曲目はフィリップ・ボーネンさんが1stヴァイオリンを務めた。この曲はyou tubeで聴いていったが、生で聴いたせいもあるだろうがyou tubeで聴いたどのカルテットよりもうまい!と思った。ボーネンさんのヴァイオリンが本当にうまい!艶やかでふくよかな音色がホールいっぱいに響き渡っていた。最終楽章のおわりの「冗談」の由来になったところは、ためにためていたずらっぽく演奏していたかお

 

ただ・・・ 各楽章が終わるたびに拍手が起こったがーん もらったパンフにも「楽章間での拍手はご遠慮ください」とわざわざ書いてあったのに・・イラ  カルテットの皆さんも最初ちょっと驚いたようだったが、2回目の拍手では苦笑していた・・がっかりためいき

この日のお客さんたち、私の周りの方々はほとんどが「招待券」で来ていたようだった。クラシックコンサートにあまり慣れていない人が多かったかもしれない。私の席の前、そして隣にも小学校低学年くらいの男の子ダウン ほんとに落ち着きなーい!怒る

 

 

前半最後はショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲第8番。

まずこの曲について・・・

この曲は作曲者自身が「ファシズムと戦争の犠牲者へささぐ」と記した1960年の作品だが、実はそれは表向きの表題で、本当は「圧政によって精神的荒廃に追い込まれた自身への献呈」ともいわれる。 ショスタコーヴィチはこの曲を書く直前に不本意ながらも共産党に入党することを余儀なくされている。そしてソビエト軍のドレスデンのナチスからの解放を描いた戦争映画の音楽を書くためにドレスデンに行った彼は、戦争の惨禍を目の当たりにして自身の精神的荒廃と重ね合わせてこの曲を作曲した。わずか3日間で書き上げたといわれる。 彼が友人に宛てた手紙には、映画音楽の仕事は進まずひたすらこの弦楽四重奏曲の作曲をしていたと述べ、「この曲を書きながら、半ダースのビールを飲んだ後の小便と同じほどの涙を流しました。帰宅後もこの曲を二度弾こうとしましたが、やはり泣いてしまいました」と書いている。(たとえもすごいが・・・)

ショスタコーヴィチの「Dmitri Schostakovich」より、D-S (Es)-C-Hの音形が全曲のテーマとして現れ、自身の過去の作曲の引用(本人の手紙によると6曲ほど)やワーグナーやチャイコフスキーの「悲愴」なども引用されている。この曲を書いたあとに自殺するつもりであることを示唆するような手紙も書いている。

 

このようなショスタコーヴィチの自伝的要素も強いこの曲、そのような背景も知って聴いたせいか心に重々しく響いてきた。最近同じ時代の映画や本を見ていたせいか余計にその様々な場面が思い出されて胸が詰まるような思いがした。

この4人は皆若くて戦争体験者ではもちろんないが、「ヴァリアン・フライ」という名をカルテットに冠したというところからしても作曲者やこの曲への何かしらの思いがあるのかもしれない。 何も知らないで初めて聴いたときは「ショスタコぽくて暗いなぁ」と思っただけだったが、何度も聴いてその上で生で聴いたときはその迫力に圧倒された。とても、とてもよかった。

 

ところでこの曲は5楽章であるものの、通して演奏されるためハイドンのときのように途中で拍手が起こらずその意味ではよかった。

ただ、私の前と隣にいたそれぞれの男の子、もうだめしゅんためいき* 元々ショスタコを聴いて理解しろっていう方が無理だろ。親も全く注意しないので野放し状態。子どもたちももう限界だろう・・・ってなことで、休憩時に席を移動した。主催者にいって席を変わるとまたあれこれうるさいので(こないだで懲りた)、ほとんど無人状態の2階の横席に勝手に移動した。(アクロスはシューボックス型) ステージは柵で見えにくくなったものの、周りに誰もいないので後半は落ち着いて存分に堪能できてよかった。

 

 

後半はラヴェルの弦楽四重奏曲。

この曲は再びイトウさんが1stヴァイオリンを務めた。

この曲はラヴェルがまだ27歳のころ作曲したものなのでが、さすがラヴェル!と叫んじゃいたいくらいの見事な曲で、この曲を実演で聴けて本当に幸せラブラブ

ラヴェルの先輩のドビュッシーもこの作品に対して熱狂的な賛辞をおくったという。

第1楽章に登場する第1主題と第2主題が4つの楽章を通じて登場するのだが、その登場の仕方というのか(専門的なことはわからないけど)、そこからの展開の仕方というか、ほんっとに天才!!欲を言えばもっと室内楽の曲も書いてほしかったなぁ。

 

ラヴェルかっこいい~音譜

 

で、この演奏も本当に素晴らしかった!

特に第3楽章で多々あるヴィオラのソロ、そしてチェロがもぉ~すごくよかった!!

チェロのヘラーさん、「12人のチェリストたち」のときも思ったが、小柄な身体でどうしてあんなに豊かで響き渡る音が出せるんだろう。ベージュのドレスが可愛らしい顔に似合っていてますますファンになっちゃいましたハートフェイス

 

ただ・・やっぱりここでも楽章間の拍手が。第1楽章が終わったときは拍手がなかったので、「おっ、やっとわかったか」と思っていたらなぜか第2楽章以降は毎回拍手が起こっていた・・ダウン

主催の民音スタッフも(曲の合間や楽章間ではなく)演奏真っ最中のときによろよろのおじいちゃんを3列目あたりの演奏者の目の前の席まで案内したり(よろよろなので着席までえらい時間かかっていた汗)、とスタッフがたくさんいる割には全然冴えてなかった。

 

 

アンコールはヴィオラのナーマーさんが日本語で紹介。

イトウさんも最初のメンバー紹介などマイクを手に日本語であいさつしていたが、日本語が若干たどたどしい。7歳で日本を離れたらもうすっかりドイツ人なんだなぁと興味深かった。

 

カルテット全体の感想を書くと、ベルリン・フィルの若手演奏家といってもめちゃめちゃうまい。3年ほど前にフィルハーモニア・カルテット・ベルリンという同じくベルリン・フィルの首席たちによるカルテットを聴いたことがあるが、両者ともうまいのはいうまでもないが、大御所たちのカルテットに比べると若いだけにむしろ情熱的でのびのびと自由度が高い気がした。

そしてやっぱりベルリン・フィルならではの音圧の高さ、骨太さ、アンサンブルの精緻さ、響きの豊かさなどピカイチだと思う。ほんとに4人だけの音なのか?と思うくらい。ベルリン・フィルはこういう人たちがゴロゴロ、というより全員がこういう人たちばかりなのだなとあらためて思った。

 

これに懲りずに汗また福岡にぜひ来てほしいです。

 

(ベルリン・フィルのHPより)