2017. 1. 12 (木) 19 : 00 ~ 福岡シンフォニーホールにて
ベルク:ピアノ・ソナタ ロ短調 Op.1
シューベルト:ピアノ・ソナタ 第19番 ハ短調 D.958
ショパン:24の前奏曲 Op.28
(アンコール)
ショパン:ポロネーズ 第6番 変イ長調 Op.53 「英雄ポロネーズ」
ドビュッシー:ベルガマスク組曲 第3曲 変ニ長調 「月の光」
ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番 ト短調
ピアノ:チョ・ソンジン
今年の5月で23歳になるチョ・ソンジン。
6歳から趣味レベルでピアノを始め、10歳から本格的にピアノに取り組むようになり、なんとその5年後の15歳の時に史上最年少で浜松国際ピアノコンクールに優勝、17歳の時にはチャイコフスキー国際コンクールで第3位、20歳でルービンシュタイン国際コンクールで第3位、そして翌年にはショパン国際ピアノコンクールで優勝という輝かしい経歴をもつ。
浜松国際ピアノ・コンクールの審査員長だった故中村紘子さんが15歳のチョ・ソンジンのことを、「久々に聴いた、桁外れの才能。」と評したそうだ。
そしてセミ・ファイナルの彼の演奏終了後に審査員たちが中村紘子さんに「おめでとう。今回のコンクールは大成功だ。すごい才能を見つけることができた。」と絶賛したそうだ。
「本選を前にみんなが彼の圧倒的な才能を認めてしまっていたのです。」(中村さん)
ショパン・コンクールに優勝以来、チョ・ソンジンの活躍は雑誌や映像でもたくさん見かけていたが、生で聴いたら一体どんな音を出すピアニストなんだろう、と楽しみだった
会場はほぼ満席。韓国の方もたくさん来ていたように思う(なんせ福岡は近いですから)。
ステージに現れたチョ・ソンジンは思ったより小柄でスマート。客席の方はあまり見ずにまっすぐピアノの方だけ見て歩いてきた。お辞儀をする際にほんのちょっと客席を見ると、椅子に座って右手に握りしめていた黒っぽいハンカチでまず鍵盤を一様に拭いた。
それから両手を膝の上に置いて上を見上げ、じっと集中しているようだった。
そしてゆっくりと鍵盤の上に手をのせて演奏が始まった・・・
1曲目はアルバン・ベルクのピアノ・ソナタ。
この曲、ポリーニなどのCDを聴いて予習したのだが・・・わからない
何度も聴いて幾分わかるような気がしてきても、次に聴くとまたわからなくなる。
シェーンベルクとかベルクとか・・・正直今の自分にはつかめていない
この日チョ・ソンジンの演奏を聴いてもこの曲に対する感想はやはり変わらなかった。
なのでこの曲の演奏についての感想をどうこういえるレベルではないので割愛します
次に聴いたときは自信を持って感想をかけるくらいになりたい
2曲目はシューベルトのピアノ・ソナタ第19番。
これがこの日私が一番聴きたかった曲だった。この曲があったからチケットを買おうと思ったくらい。
雑誌「音楽の友」1月号にチョ・ソンジンのインタビュー記事が載っているが、ご本人いわく、
「私はこの作品をたいへん技術的に難しいと思っています。とても弾き難い。ですから、若いうちにやっておく必要があると思ったのです。」 と語っている。
単刀直入に個人的な感想を書くと、第2楽章での弱音がもう少し均等に響けばいいなと思った。音によっては小さすぎて聴こえがたいときがあって、自分の好みを言えばピアニッシシーモでも凛と響くクリアな音を聴きたかった (ただこれは自分の席のせいもあるのかな?チョ・ソンジンの背中越しに聴くような席だったので。)
全体的には自分の好みのシューベルトというほどではないのかなぁ・・・と思っていたら、第4楽章に入るとうってかわって目の覚めるような演奏!
個人的にはこの第4楽章が一番よかったと思う。
シューベルト独特のタランテラのような躍動感あふれるリズムそのままでありながらも、内に何か陰鬱さが漂う感じ。それがよく表されていた気がしてとてもよかったと思う。
ただ、前半はピアノの一音一音が(ペダルなしでも)響きすぎているのか、音がダマになるように聴こえることが多々あって少々聴きづらかった。
席によるものか、ピアノによるものなのか・・・と思っていたら、休憩時の調律のあと、後半に入ったらそれが解消されていた。
前半と後半で本人の指示で意図的に変えたのか、それとも前半終わったところで本人の指示で調整したのかわからないが、後半の方が聴きやすくなったように感じた。
休憩後はショパンの24の前奏曲。
ショパン国際コンクールでも第3次予選で演奏して話題となった。
ご本人は「昔からたいへん好きな曲で弾くたびに新たな発見がある作品」だそうで、さらに彼にとっては 「幻想ポロネーズ」 「バラード第4番」と並んで "ショパンの三大難しい作品”なのだそう。
この24のプレリュードは彼の独自性あふれる演奏ではなかっただろうか。
私が持っているこの曲のCDのどの演奏スタイルとも違う気がした。
簡単に書くなら、遅いテンポの曲は非常にゆっくりと、タメてタメて弾き、一方軽快な曲は爽快に見事に疾走する。そして強音で激しい感情をぶつける。
その対比が際立っていて聴いていて面白かった。
昨年11月にDG(ドイツ・グラモフォン)との専属契約成立後初のアルバムも発売されていて、
コチラ ↓
私も会場で買って帰って早速聴いてみた。
これには24のプレリュードは収録されていないが、バラード第1番~第4番を聴いてみて納得。
曲は違うが、24のプレリュードと同じ彼の解釈のようなものを感じた。
このバラード4曲は初めて聴く曲かのようにとても新鮮、斬新。
とてもゆっくりとした音色に心を落ち着けて聴いていると、突然前の視界が開けたようにパァーッと壮大な世界が広がるかのよう。
そういうところが24のプレリュードと共通している気がした。
アンコールにこれを弾くんじゃないかと予想していたのがまさにこれ。英雄ポロネーズ。
この曲で彼はショパン・コンクールで「ポロネーズ賞」をもらっている。
この演奏はまさに圧巻! 勇壮で強靭かつ華やかな英雄ポロネーズに会場も沸いた。
当初はアンコールは2曲の予定だったようだが、拍手が鳴りやまずご本人が「じゃあもう1曲ね」というように人差し指を立てて、ハンガリー舞曲を演奏した。
この演奏にも大いに沸いて、最後はスタンディングオベーションしている人も多数いた。
終演後、当初は予定になかった(?)サイン会あり。しかもCD購入者だけじゃなく誰でもOKとのこと。 楽屋口でのサイン会は今まで見たことないほどの長蛇の列!
でもお若いからかサイン書くのも早いっ!どんどん列が進んでいた。
お疲れのところ申し訳ないと思いながらも貴重なサインをパンフレットにいただいた
初めてチョ・ソンジンさんのピアノを聴いたが技術的には本当にすごい!すごすぎてほれぼれするほどだった。
そして彼の真面目さ、素直さがそのまま表れているようなまっすぐで高潔な音色。
まだまだ進化をとげていくに違いない。
ショパン・コンクール優勝直後のインタビューで、
「有名ではなく、卓越した演奏家でありたい。」と語ったというチョ・ソンジン。
(21歳くらいでこんなこと言えますか~?私なんか21歳のころはファミコンばっかしてました)
まっすぐに自分の演奏を追求する真摯な姿勢が観ているこちらにも伝わってくるように思えた。
今後も益々注目だ~