『よみがえる神武天皇ー日本書紀の暗号を読み解く』
牧村 健志、PHP研究所、2016年
戦後の自虐史観もあり、架空の人物とさえされてしまっている初代・神武天皇。ほかにも2〜9代までのいわゆる欠史八代。
そんな歴代の始めの頃の天皇を様々な観点から見直し、歴史の闇に封じられてしまった神武天皇をよみがえらせてくれています。
よく言われるのが、初期の天皇の異様なまでの長寿。こちらは長浜浩明さんと同じように春秋暦によるものと説明されています。
要するに、21代・雄略天皇の御代くらいまでは春と秋で年齢のカウントをしていたので、今で言えば一年に2歳加算されていたわけですね。これは魏志倭人伝でも「日本人は春分と秋分頃で一年の区切りにしていた」と書かれているそうなので、そういうことだったのでしょう。
そんなところから始まり、神武天皇の旅を追いかけ、そこから歴史天皇の御代にも触れられています。
2代・綏靖天皇〜9代・開化天皇は記紀でも記載が少なく、これをもって後世の捏造だなんて言う向きもあるようですが、神武天皇の建国といってもこの当時はまだ一つの村を興したくらいの規模だったわけで。今や世界のパナソニックの初代・松下幸之助さんのお名前は知られていても、二代目の社長さんのお名前は初代ほどは広まってはいない。これと同じじゃないですかね。
ほかには仁徳天皇でもお馴染みの古墳ですが、あれは古墳のための古墳ではなく、灌漑工事で出た残土を盛ったことが始まりだろうと書かれています。
この当時は水田の開拓を盛んにしていて、めっちゃ土が出たでしょうからね。要は大量の土が先にあり、そこに天皇を埋葬したという順序。
とまぁ、ほかの方の意見とも重なる感じで説得力のある一冊でした。