『写楽 閉じた国の幻〈上・下〉』
島田 荘司、新潮文庫、2013年
「写楽とは、だから閉じた国ゆえの幻なんです」
葛飾北斎の研究者でもある元大学講師の佐藤が手に入れた肉筆画。江戸の時代の紙に描かれた北斎らしからぬ絵には、欧文が記されていたのだ。
それは、江戸の時代にわずか10ヶ月だけ存在していた世界三大肖像画家の一人・写楽のものである可能性が出てきたのだ。
長きに渡り謎とされてきた写楽の正体への道筋を掴んだ佐藤は、出版社の編集者、息子の事故がきっかけで知り合った美貌の大学教授らと共に、美術史上最大の謎の証明に挑む。
そして突き止める「真犯人」の名とは。
誰でも、一度は聞いたことがあるだろう覆面浮世絵師「写楽」。様々な説が出されていますが、本書でも一人の人物の名前を提示しています。
改めて写楽の謎を見ると、存在した痕跡すらない、自分が写楽だと言う者や周囲の人間も誰一人言わなかった、すぐに消えた等、本当に謎の人物なんですね。
それらをミステリー的な視点で、物的証拠を用いて行なう証明は、素人ながら納得できるものでした。