『アトポス』
島田 荘司、講談社文庫、1996年
「まずいことに、思い出したんだよ。いつだったか、馬鹿なことを口走った。もし君をトラブルが襲ったら、救けにいくとかなんとかね」
アメリカ・ハリウッドに血塗れで爛れた顔の「怪物」が出現、売れっ子ホラー作家が首を切断されて殺され、さらには嬰児が次々と誘拐された。
さらにハリウッド女優・レオナ 松崎が主演する映画「サロメ」の収録が行われる死海でも惨劇は繰り返される。劇中で使う生首は本物とすり替えられ、撮影スタッフは60フィート上空に串刺しにされていた。
すべての謎はレオナへと集約され、彼女は絶対絶命の危機に陥る。人知を超えた現象、現代に蘇った吸血鬼を前に御手洗 潔はレオナを救えるのか。
御手洗シリーズ長編。
舞台はハリウッドから死海までグローバルな感じです。相変わらずのド級の舞台設定や超常的な謎、そこに秘められた現代の矛盾や病巣といったものがミックスされて、事件全体を彩っています。
そして御手洗 潔の登場はまさかの終盤、971ページ中753ページから。レオナにとっては、かつて恋愛感情がありましたが今や信仰の域に達しています。まさに救いの神にも似た存在。
全体のテーマは吸血鬼。けっこうハードな内容なので、読まれる場合は注意です。
ちなみに「アトポス」という意味を調べるとけっこうネタバレになります。調べるなよ、絶対だぞ!