刈り揃えられた芝生の上を女の人が歩いて来る。
「ずんずん」と一直線に俺に向かって。
三十をちょっと超えたくらいだろうか、どちらかと言えばまぁ美人なんだろな女の人。
確か、前にも一緒に仕事したことある。
俺はと言えば、二日続きの撮影で流石にくたびれて、いや正直膝が「ぴきぴき」痛くて木陰に座り込んで『塩分チャージタブレット』舐めてる。
なんだろう?俺に用かな?あれ俺ひょっとしてまた得意の「俺なんかした?」
立膝で膝を休めてる俺の隣に「ぺたん。」と座って(え。デニム汚れるよ)
「kenさんなんでカメラマンになろうと思ったんですか?」
顔を覗き込んで言う(ち、近いよ・・)
なんでだっけかなぁ。
小学校4年の夏休み、盲腸で入院して病室の隣のベッドがカメラを修理するおじさんでカメラを1台くれたこと。
大学3年の夏休み、Canon1台ぶら下げて大陸を横切ってモンゴル国境まで行ったこと。その時撮った写真が某放送局のカレンダーに使われたこと。そこで人生誤ったこと。
などを話した。
けどさ、
今それ聞く?必要?
「kenさんの娘さんておいくつなんですか?」
(え?なんで?)
ずーっと昔、
隣に女の人が居て、身体が触れて、話をするのは当たり前だった。
それが無くなって、それでも時たま予期せぬこういうことがある。
うん。前もあった。
何なんだろうね?わざわざ話をすることかな?するほどの相手かな?
女の人と初めてそういうことをしてから二度の結婚離婚も含めて『誰も居ない日が一日も無かった』いつも誰かが一緒に居てくれた。恐ろしく恵まれてたと思う。
だけどその運も尽きて、独りが当たり前になって慣れてしまって。
でもこういう意地悪って起きるんだな。
星と楕円軌道の惑星みたいなもんかな?
いくら何でもそろそろ季節が変わるだろう。
玄関のシルクスクリーンのJohnny Winterを、Duane Allmanに模様替え。
デュアンが1971年10月にハーレーで事故死してから53年も経ったのか。
Loan me a dime. =(彼女に電話を掛けるから)10セント貸してくれ。