Runnin' down a dream. | Chapter 2,682〜

Chapter 2,682〜

非表示にしたものも含めると2,800話くらい?
これ8章。

娘がぼそっと、

 

「せいりだから」

 

そか。

だから昨日からしんどそうなのか。

それでも出掛けて行く。

また俺が寝た後、帰って来るのだろうから、何か夜食を買っといてあげよかね。

「開いてれば恵比寿で美味しいラーメン食べて来る。」とは言ってたけどね。

うん。開いてるといいね。食べといで。

 

ちっと西友行ってこよ。

夕方のバス通りとことこ。

褪せたオレンジのNIKE BLAZERにDIESELのダメージデニム(パッと見、雑巾みたいに大ダメージ)隣町の「貧乏人のアウトレット」で買った白Tに、UNIQLOのグレーのくたびれたパーカー羽織ってとことこ。

手にルブタンの鋲だらけの財布持ってとことこ。

 

ちと寒いね。

 

向かいから歩いて来る女の人。

30代か40に差し掛かったか。

見るともなく目が合ってすれ違う。

あれ俺、この人にいくらか渡してたんだっけ?盆正月、欠かさず贈り物してたっけ?ご先祖様が命の恩人だとか?前世で夫婦だった?

どなたか存じませんが、

 

 

「かっこいい・・」

 

 

いや嘘でも間違いでも「遠目夜目傘のうち」でも「実は酷い乱視なんです」でも。

ありがとうございます。

すれ違いざま呟いてくださってありがとうございます。

ひょっとしたら歩道脇の駐車場の青い4駆のことかも知れないけど、「学校いい」と言ったんだとしても、(E=mc²)と相対性理論を呟いただけの理系女性で、大きな勘違いだとしても、

ありがとうございます。

たまには何かいいことあってよ小さな幸せ。

 

 

 

ロケ焼けでヒリヒリする顔と両腕を見ながら思う。

俺はもうカメラマンだけでご飯を食べることはない。写真を撮ることすらやめてしまうかも知れない。

今でも「俺くらいの腕のやつは滅多に居ない」と本気で思ってる。

街や雑誌で広告写真を見る度に「へったくそ」と呟く。

あの平成の最後の頃、諦めてしまって良かったんだろうか?「コロナに引導渡された」と納得して良かったんだろうか?

あの熱はどこへ行っちゃったんだろう?「天才で天職だ」と嘯いて(うそぶいて)た俺はどこ行っちゃったんだろう?

そうじゃなくてね、

嫌になっちゃったんだよ。

経験の長さ、引き出しの多さ、腕の良さ、賞歴・・そういうものじゃなくて、社内政治とか人事とか。そういうくだらない糞みたいなこと、およそ感受性とか「ものを創ること」とかけ離れた生臭さ。

お前ら俺を誰だと思ってんだ? 馬鹿の為に写真は撮らない。筋を通せない仕事はしない。

したら、

 

こーなっちゃった。

 

ま、

もー

いーけどね。

 

筋を通して干されるなら、

筋を通して貧乏なら、

筋を通して独りなら、

本望だ。

ギターは下手なままだが、

どこにも恥ずかしくなく(でもないか)胸は張れてるぜ。