「それ違うだろ。」
この人が「むっ」としたのを初めて見た。
柔和でいつもにこにこしてて仕事が出来て『人物』と呼ぶにふさわしい。
こうありたいよね。
いつも穏やかな人の顔色が一瞬で墨っぽくなった。
これこそ「気を悪くする」ってやつだよね。
誰かみたいにしょっちゅうイライラしてて当たり散らして。そんなんじゃ誰もわかってくれないよな。俺なんであんなだったんだろ?
じゃなくて、
いやそれはそうなんだけど。
慚愧(ざんき)に耐えない猛烈に自己嫌悪。
今朝、
出勤して来た上司に、
申し訳ありません。
色々お骨折り頂きましたのに私の力及ばず、
金曜日に不採用通知が届きました。
「なわけあるかっ」
「それ違うだろ。」
(あわわわ)
いえ、あとひとつあるにはありますが二週間経っておりますし、結果同じか通知入れ忘れか(←こないだこれ)と。
「kenさんちょっとその話し保留。」
「俺聞いてくるから」
あ。いえ。その・・
(つかさ、上司の異動先でもあるわけだよ。本庁内じゃないし。気持ちはもの凄くありがたい足向けて寝られない。けどさ、あまり異動前に波風立てない方がいいんじゃないかと思うんだよ。しかも非常勤のおっさんの為になんか)
ま。
ま。
まぁ、
筋トレして(俺の体調崩壊の原因はこれらしい。でも辞めないよー)
ギター弾けりゃいいわけだから。
ぷー太郎に毛が生えたくらいの稼ぎでもね。
有り。っちゃあ、有りなんだよな。
昼休み。
久しぶりに、
懐かしの、
文化裏の公園でセブンのラテ。
空を見上げて呟く。
有り。
むしょくあり。
ありおりはべりいまそかり
「kenさんあと5分で定時だね」と普段に戻った上司。
「ちょっといい?」
上司席脇の打ち合わせイスを指差す。
座る俺。
上司、口を手で覆って小さな声で、
「さいようになってるから」
「じんじにきいてきた」
さ、
あ、
てっ、
ギター買おうか。
買いません。
56GT素晴らし過ぎて。
充分過ぎます身分不相応です。
調子に乗らない。
なんか、
すごいなあなた。
「kenさんはすごいな」て言われたのを思い出す。
そう思ったら離れるんじゃねぇよ。
そりゃ、
毎日同じこと考えてるさ。
夜勤明け?