この1冊はかなりアート・・・色鉛筆でササッと書き上げたような
とても素朴で淡い広がりのある挿絵だったり、
まるできっちりと額におさめられている有名な画家が書いた、
油絵のようだったり・・・。
絵を描いて、彩を重ね、詩を詠う・・・銀色夏生の底知れぬ
パワーを感じてしまう私です。
銀色夏生いわく・・・
“グッとこみあげるイタズラな気持ちをおさえきれずに作った”
おさえきれなくて、思ったことを書きとめておいたような
筆跡に愛着がフツフツとわいてくるような感じが大好きです。
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口づけを下さい
この胸の もえる所へ
指先でたどって
やさしさを下さい
悲しみにたどりついたら
笑わないで下さい
あなたを
愛しているんです
口づけを下さい
どうぞ
この恋の
もろい所へ
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「すみからすみまで」
ボクね、君に出会って、楽しいよ
だってこんなに気が合うんだもん
君のはなしって、すごくおもしろい
今まで、人にキョーミなんかなかったのに
君だけはちがうんだ なんていうか
あこがれちゃうんだよ とっても
離したくないっていうのか
去っていってほしくないんだ
いつもボクのそばにいてほしいんだ
そしてボクのこと できれば愛してほしい
愛ってさ、恋とちがって、もっと深いものだろ
恋って終るけど、愛は終らないよね
ボク、ことばで君に伝えられないから
かわりに ごはんつくってあげたりしてるんだよ
ボクは はずかしがり なんだ
こんなボクを すみからすみまで
どうか 知ってね
すみから すみまで 知ってもまだ
ボクのこと すきだったら
うれしいな
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はずかしがり屋のあなたが、チラッと見せた心の奥の奥の奥
見逃さないよう・・・前を向く。
照れ屋のあなたが、ボソッと呟いた言の葉のひとかけら
聞き逃さないように・・・目を閉じる。
いたずらな春の風に、すべてをさらわれてしまわないように
そっと口を閉じてみる・・・。刹那より永劫に・・・。
*書籍名・・・・・このワガママな僕たちを
*著者名・・・・・銀色夏生
*出版社・・・・・角川文庫
*発刊年・・・・・1988年