
嬉しいながらもしかし。
今回当たった写真係(女性)は、とにかく注文の多い写真屋さんでした。
曰く
「(肩にかけた)バッグをおろしてください」
「フードが映ってしまうのでコートを脱いでください」
「メガネをもっと上げてください」
こんなに注意されてる人が他にいなかったってことは、よくよく私が不注意だからでしょうか???
メガネはこれ以上上がらないところまで上げても
「もっと上げてください」
都合四回言われました。
なんですか、お給金に対する不満とか、胸の谷間に関する鬱憤でも溜まっておられたのかしらん。
しかしそれを私にいわれてもなぁ。
結局、「こういうデザインのメガネなんです、すみません。」と言えば
「じゃあ、メガネも外してください」
もちろんこの後、満遍なく生クリームを塗りこんだり、体中に塩を揉みこむように言われ、恐怖のあまり顔をくしゃくしゃの紙屑のようにして泣きじゃくったのはご想像の通りですが、地元の猟師さんが助けてくれました。
こうして、猟師の持ってきた団子を食べ、途中で十円だけ山鳥を買って、お家に帰ったのです。
しかし、いっぺん紙屑のようになった顔だけは、お家に帰っても、お湯に入っても、もう、元の通りにはなりませんでした。
免許の写真がくしゃくしゃに見えるのは、この様な顛末の所為なのです。
ええ、ええ、ええ。
おや?
よもや、今日がエイプリルフールだからと言って、私の話をお疑いではありますまいな?
私が金の免許を貰えたのは、免許を泉に落とした時に、「私が落としたのは普通の免許です」と正直に答えたおかげなのです。
こんなに正直者の私をお疑いになるだなんて、あなたもお人が悪いなぁ。
あ、もっと正直に言えば、銀の免許は手元にありません。
帰り道、何でも「王子のお使いで貧しい人々に金箔を配っている」とかいうツバメさんに出会ったものですから、何かの足しになるかと思い差し上げてしまったのです。
ええ。
なにしろ私は正直者の上に、慎み深ーい人間ですからして。
ええ、ええ、ええ、ええ。
参考文献:宮沢賢治 注文の多い料理店【青空文庫】