■あらすじ
悪名高い“スイート16キラー”の最初の殺人から35年後に再び事件が起こる。17歳のジェイミーは偶然1987年にタイムトラベル。殺人事件が始まる前に犯人を捕まえようとする。(Amazonより)
■ネタバレ
*1987年10月27日、閑静なバーノンの町でティファニー・クラークが自宅のガレージで16ヶ所刺されて殺された。彼女の16歳の誕生日の夜だった。
*2日後、山荘で16歳のマリッサ・ソンが16ヶ所刺されて死亡した。
*更に2日後のハロウィンの夜、16歳のヘザー・ヘルナンデスが遊園地の駐車場で16ヶ所刺されて殺された。少女達は周囲から[モリーズ]と呼ばれていたグループだった。
*[スイート16キラー]と呼ばれた犯人は、黒ずくめの服装で特徴的なマスクを被っていた。
*そして2023年のハロウィン、今もそのマスク姿は、バーノンでのハロウィンの仮装の定番になっている。自称犯罪ジャーナリストのクリス・ドゥバサージュは、スイート16キラーの関係地を巡るポッドキャストツアーを実施している。(最初の事件の現場は、現在はバーガーショップの店舗になっている。)
*女子高校生ジェイミー・ヒューズは、自室でバンド『キラー・インスティンクト』の曲を聴いている。母親パムはそれが気に入らない。バンドのボーカルが同級生なのだが「エディ・ロイヤルは最低な奴だった」と非難する。その母は『ブレックファスト・クラブ』のモリー・リングウォルドの仮装をしている。父親ブレークはザック・エフロンの仮装(隆々とした筋肉が描かれたTシャツを着ているだけ)だ。ジェイミーはこの家の1人娘。母にクリスからの着信があるが、父には誤魔化す。両親とクリスの3人は同年代で、同じ高校に通っていた。
*ジェイミーは親友のアメリア・クレストンとライブへ出掛ける。門限までには戻ると約束するが、娘が16歳になったので母は神経質になっている。[モリーズ]の呼称はモリー・リングウォルドのファンであることが由縁で、母も一員だったのだ。「今は位置情報も分かるし、催涙スプレーや防犯ブザーも持ってる。7歳の時から護身術を習わされ、ママが超能力者から買った水晶まであるのよ」と主張するジェイミー。
*父は娘をライブ会場へ送り届ける。途中でアメリアを拾い、工場へ出勤する彼女の母親ローレンとも顔を合わせる。ローレンも同じ高校だったが両家の親同士は親しくなく、ぎこちなく挨拶する。
*母が1人家に残っている時、スイート16キラーの扮装をした何者かの襲撃を受ける。自分でも護身術等を習得、家の各所に武器等も配置している母は必死に抵抗。撃退したかと思ったが、裏口から再度侵入される。相手の肩口にナイフを突き立てるが、反撃もここまで。最後はナイフで16回刺されて死んでしまう。
*警察の現場検証中、早速ポッドキャストの配信をするクリス。高校では進路カウンセラーだった母について、ダグ・サマーズ校長からお悔やみが述べられる。護身術のコーチであるランディ・フィンクルから指導もあるようだ。ジェイミーは保安官カーラ・リムから簡易的な聴取を受けるが、内容は母がクリスと密かに遣り取りをしていた件について。「父親は嫉妬深い?」と、父を疑っている口調だ。そもそも普段から、カーラは父を嫌っている様子。ジェイミーは怒って「あんたの無能な父親が35年前に逃がした犯人を、さっさと捕まえなよ」と吐き捨てる。クリスだけではなく、ダグ・ランディ・カーラも同じ年代の同窓生だ。
*下校後、ジェイミーは地元の遊園地[ビリーズ・ランド]へ。(マスコットキャラはビーバーのビリー。)敷地の一角で、バーノン高校の科学祭を実施している。閑散としていて集客は見込めないが、利用料が無料なのだ。そこではアメリアが、密かにタイムマシンを作っている。一見証明写真機のブースのようだ。元々はローレンが作ろうとしていた物で、母のノートに基づいてアメリアが作業している。近くには[量子スピン]という遊具がある。
*家でクリスのポッドキャストを聴いていると、父が話し掛けてくる。クリスは「事件を食い物にする浅ましい奴」だが、母は事件解決のために彼と遣り取りしていたようだ。警察はとうに諦めているが、クリスだけが犯人を捜している。父は母との想い出話もしてくれる。2人が付き合い始めたのは大学生から。(高校生からだったら上手くいかなかっただろう、とも。)ジェイミーを授かったと分かったのは、ビリーズランドへ出掛けた時。量子スピンに乗ったら、母の吐き気がいつまでも収まらなかったのだと言う。「クリスの配信なんか聴かないでくれ」と静かに頼む父。
*カフェでクリスに声を掛けられるジェイミー。「1987年最後の事件の後、お母さんが受け取ったメモのことを知ってるかい?」と尋ねられる。現物を見せられると、そこには「次はお前だ、いつか殺す」と書かれている。これは初めて聞く情報だ。クリス曰く、母は「誰かに話すと現実になりそうで怖い」と言っていたらしい。手掛かりだから、クリスにだけは話していたと説明される。
*ジェイミーはその後、再びビリーズランドへ。アメリアと話していると、マスクの殺人鬼が出現。マスクに追われてタイムマシンへ逃げ込むジェイミー。システム起動中にマスクと揉み合いになり、ナイフが操作盤に突き刺さる。それまでは動作しなかったが図らずもタイムトラベルが成功し、ジェイミーは1987年へ。現在の寂れた状態とは違って、賑わっているビリーズランドに驚く。証明写真機には故障中の札を下げて、ジェイミーは高校へ。
*現在はデフォルメされた悪魔がデザインされている高校のキャラクターも、この時代はインディアンが描かれていて「酷い人種差別ね」とジェイミーはうんざりした表情。ジェイミー・ラフルールを名乗り「カナダのプリンス・エドワード島からの交換留学生」と嘘を吐いて、クラスに紛れ込む。(緩い時代なので、特に何の確認もされない。)いきなり体育の授業、内容も苛烈で「完全にコンプラ違反」とボヤくジェイミー。そこには若い頃の母パムも居るが、クラスメートから「バーノン高校で指折りの性悪女」と説明されて驚愕。
*母に接近するジェイミー。誕生日のティファニーが殺される日だったので、それとなくパーティの中止を促すが、全く相手にされない。この時代の警官(カーラの父親)に声を掛け、BTTFの話を持ち出しつつ「今夜殺人事件が起こる」と言っても勿論相手にされない。(しかも警官は映画未視聴。)
*次にジェイミーは、アメリアの母親であり現在は高校生のローレンに会う。またBTTFの話を持ち出しつつ(警官とは違ってローレンは視聴済)「あなたのアイデアを基に、自分の親友である貴女の娘がタイムマシンを完成させた」と説明。殺人事件の阻止と、タイムマシン修理への協力を頼む。自分しか知らないノートについてジェイミーが知っており、この時代にはないスマホを見せられ、ジェイミーを信じるローレン。
*ローレンを連れて、ビリーズランドでタイムマシンを確認。「犯人がモリーズ狙いなら、何故パムだけが35年後に殺されるの?」と疑問を口にするローレン。その理由は分からない。「ナイフが突き刺さった途端にマシンが動いた」と説明すると、ローレンは「金属導体が不足してたのね」と言う。ローレンは教科書は全て読み終えて記憶しており、鞄の中は工具類ばかり。中には釘打機(ネイルガン)もある。
*作業中のローレンに質問するジェイミー。「もし殺人事件を止めたら、時空連続体が壊れるのかな」ローレンは「量子力学は分かる?」と返す。「『エンドゲーム』を見ただけ、でもよく分かってない」ローレンは時の流れを川に喩える。「貴女は川を出て上流へ、そしてまた川へ飛び込んだ。流れは止まっていないから、何かを変えれば下流でも影響がある」「良い方向に変えるなら平気?」「理屈ではね」「流れが止まっていないなら、未来は今どうなってるんだろ」
*未来のビリーズランドでは、ジェイミーが忽然と消えた事件で現場検証中。父はネタ探しをしているクリスに怒り、警官カーラは黙っている。アメリアは「私のタイムマシンで過去へ行ってる」と主張するが当然相手にされない。カーラはアメリアに対して「母親そっくりね」と呆れ顔。クリスは興味を抱き、アメリアに質問しようとする。
*ジェイミーは、ローレンに付き添ってもらってパーティ会場であるティファニー宅へ。会場では未来の校長ダグが未来の護身術コーチのランディに「ガリ勉」といじられている。まだ保安官になっていないカーラも、未来での寡黙でお堅い雰囲気ではない。「ローレンにオタク仲間が出来た」と囃され「『ダンジョンズ&ドラゴンズ』でもやってろ」と笑われ、ジェイミー・アメリア・ダグの3人は閉め出される。ダグが別の入口を探そうとしてくれて、結局彼に踏み台になってもらってジェイミーとローレンは会場内へ。
*筋骨隆々で自分好みの男を見付けるジェイミー。それは若き日の自分の父親ブレークだった。そして今現在は、父の恋人は今日死ぬ筈のティファニーだ。クリスはこの頃からもう、ブレークに疎ましがられている様子。モリーズに接触するが話は聞いてもらえず、ランディに担ぎ上げられ会場から追い出されるジェイミー。入口を塞ぐカーラに「あんたの人生とことん惨めだから。幸せに見放されて、頭がピンポン玉みたいに見える不格好な髪型ずっとしてる」と捲し立てて突破。屋内へ戻ると、ティファニーがブレークに振られて泣いている。「エディ・ロイヤルとの浮気をバラされた」と。「エディ?キラー・インスティンクトのボーカルと?」と驚くジェイミーの反応から、カナダでは有名人なのだと判断したティファニー。彼女はブレークではなくエディを探し始める。
*モリーズの他の3人に「ティファニーが危険だから、今夜は彼女の傍から離れないで」と頼むが反応は芳しくない。会場から追い出すためにまたランディを呼ばれるが、今度は護身術で返り討ちに。「今のどうやったの?」と驚くパムに、「ママ直伝の護身術よ」と答える。ジェイミーはクリスのポッドキャストを確認。遺体の発見場所はガレージ・時刻は午前0時過ぎ(もう間もなく)・スマホの電池の残量は58%だ。(近くに居た酔っ払いの女子生徒がスマホを見て「あんた、未来から来たの?」と訊いてくる。)
*ジェイミーがガレージへ行くと、そこにはマリッサと男が居た。ジェイミーのタイムトラベルの影響で、過去が変わってしまったようだ。姿を消したティファニーは、エディと一緒に親の寝室に居る。トイレへ行ってしまったティファニーに雰囲気を壊され、エディは「大外れ」と呟き立ち去る。ティファニーがベッドへ戻ると、クロゼットからマスクを被った殺人鬼が出現。ナイフをティファニーの腹に突き立てる。繰り返し、16回刺されるティファニー。
*警察から事情を訊かれる高校生達。ブレークは警官からいい顔をされないが、ランディは「娘カーラの友達だから」と解放される。事前に殺人を知っていたジェイミーが疑われるがパムが「その子はティファニーを守ろうとしてた」と庇ってくれる。1人なったパムに声を掛けると「何故殺人のことを知っていたの」と訝かるが、タイムトラベルの件は信じてもらえないだろうと考え(一方、母は超能力者のことは信じているので)「予知能力で知ったのよ」と答える。「未来が見える水晶よ。今回は防げなかったけど、協力してくれたら残りは阻止出来るかも」と、母から渡された水晶も見せる。パムは「まだ殺人があるの?」と驚きつつ、水晶を握り「本物っぽい」と言う。
*ジェイミーとローレンと、3人でパムの家へ。地下室には『砂の惑星』『ブレードランナー』『帝国の逆襲』『スキャナーズ』といった映画の録画テープが積まれている。『ロボコップ』を見ながら「機械が人類を滅ぼすの?」と訊いてくるパム。「それはないけど、TikTokのダンス動画が社会を分断してる」とジェイミー。ローレンは「パム・ミラーがSFオタクだったなんて」と面白がる。「バラしたら殺すからね」
*ジェイミーは未来を見ている振りで「次の犠牲者はマリッサ。明後日、森の山荘で事件が起きる」と告げる。「モリーズに恨みを抱いていそうな人は?」と尋ねると、一旦は「そんな人、居ないわよ」と言うが「眼帯をからかったアルビンかも…ウェンディ、タイラーとエイミー・ウルフ…怪人ロンとデブトリッシュ。リサに、ジェニー・ハドソンとジェニー・グリサンテ」と枚挙に暇がなく、心当たりがあり過ぎるパム。
*ローレンが「ランディは怪しくない?凄い馬鹿だし」と口を挟む。しかしパム曰く「彼はティファニーが大好きだったから。ダンスに誘ってたし」とのこと。しかし、マリッサもヘザーも自分も誘われたことを思い出す。皆に断られて恨んだのだろうか。「彼が犯人なら、付き合えば命が助かるかしら?」と言うパム。自分が生まれなくなるので「駄目よ、運命の相手じゃないから」と否定するジェイミー。「じゃあ誰が運命の相手なの?」「ブレークよ」大喜びするパム。「彼に片想いしてたけど、ティファニーに悪いと思ってたから」と言う。父の言葉を思い出し「付き合うのはまだ先だからね」と釘を刺すが、パムは「でも運命の相手なんでしょ?ティファニーも死んだし」とすっかりその気に。
*ローレンはタイムマシンの修理に取り掛かる。未来ではアメリアが、アーケードゲームの筐体をベースにタイムマシン2号機を作成中。そこにクリスが訪問。彼はポッドキャストで「1人目の殺害現場はガレージ」としていたが、実際には親のウォーターベッドの上だった。「何故こんな間違いが起こったのか?」とアメリアに問い掛けるクリス。アメリアは「マンデラ効果ね」と言う。一般的には、多くの人々が(マンデラは獄死した、というような)事実とは異なる内容を共有している現象を指す。しかしそれは単なる誤解ではなく、記憶の残像とする説もある。タイムトラベルの結果、過去が変わったせいなのだと。
*クリスが見せてくれたティファニーの現場写真には「マシンを刺せ/J」と書かれたメモが映り込んでいる。警察はメモの内容をヘヴィメタルの歌詞と考え、エディ・ロイヤルを取り調べることになった。エディは現在では(ヘヴィメタルではないジャンルの)『ウォーターベッド・アウェイ』というバンドのボーカルになっているので、アメリアは意外過ぎて笑う。クリスは「何かがおかしい」と困惑する。
*クリスが事件当日のパーティ会場を撮影した写真には、ジェイミーが写っている。タイムトラベルが成功したことを確認出来て、喜ぶアメリア。メモが金属導体についての、ジェイミーからのメッセージであることにも気付く。「ジェイミーは殺人を阻止する気なんだわ」「だが全員死んだままだ」「ヘザーとマリッサの事件はこれからよ」母と同様に、時間の流れを川で表現するアメリア。ジェイミーが過去へ辿り着いてから流れた時間で言えば、死んだのはまだ1人だけなのだ。
*過去の学校前では、クリスの父親で犯罪ジャーナリストのノーム・ドゥバサージュがテレビ局KZFDのニュースを伝えている。「エディが取り調べを受けた」との内容。誇らしげに見守るクリス。
*「もし両親が(例えば大学生からではなく、高校生から付き合うことで)結婚しなければ、自分は生まれなくなるのか」とローレンに尋ねるジェイミー。彼女は「BTTFは間違いよ、魔法じゃないんだから消えたりしない。帰る場所がなくなるだけ。誰もあんたを知らない世界になる」と説明してくれる。消えないとしても、歓迎出来る状況ではない。
*母はティファニーについて「今年の学年アルバムで追悼されるわ、デブトリッシュと一緒で」と言う。「その渾名は不味いでしょ?」と突っ込みながら「トリッシュって誰なの?」と訊くジェイミー。トリッシュは自動車事故で死亡したと言う。泥酔して木に激突したらしい。
*「流石に不謹慎かしら」と自分のパーティの開催を躊躇うマリッサ。ジェイミーは「パーティじゃなくて女子会にしよう。都会へ繰り出すの」と提案する。結局モリーズ3人とジェイミーで、マリッサの親のセカンドハウスでお泊まり会をすることに。
*ジェイミーはクリスに渡された例のメモを書いた人物を探ろうと、ティファニー追悼の植樹も提案。「署名活動を始めたから、皆も書いて」と頼むが「花粉症だったから木は嫌ってた」と反対されて失敗に終わる。
*科学の授業で、デーモンと組むよう言われるジェイミー。彼はノートを埋め尽くすように何かを書き込んでいて、中には「頭を撃ち抜け」という文字も見える。
*お泊まり会へ向かう道中、デーモンのことを尋ねると「ラーチのことね」「喧嘩騒ぎで中学時代は少年院に居た、誰も話さない」と聞かされる。「デブトリッシュの件で留年した」とも。ラーチはトリッシュの兄なのだ。
*疲れて眠ってしまったジェイミーが目覚めると、辿り着いていたのは森の山荘だった。都会の別宅だと思い込んでいたジェイミーは愕然。更にもう1台の車が接近して殺人鬼ではないかと狼狽えるが、乗っていたのはブレーク・ランディ・カーラだった。
*ドアや窓に鍵を掛け、外には出ないようと念押しするジェイミー。しかし、彼等は構わず野外でジャグジーを楽しみ始める。食べたブラウニーはマリファナ入り(カーラが警察の証拠品保管庫から盗んだもの)で呆れるジェイミー。しかもこの時代のドラッグは粗悪品で、大麻グミで耐性のあるジェイミーにはまるで影響がない。
*口うるさいジェイミーは、ここでもランディに閉め出される。屋外から確認していると、いつの間にか2階の窓が開いている。危険を訴えるが中に入れてもらえない。
*寝落ちてしまったヘザーの居る部屋。ランディが居なくなると、マスクの殺人鬼が出現。ジェイミーが窓を叩いても起きないヘザー。予知能力の件を思い出し、危険を感じたパムは別の部屋でブレークと籠城中。そこから屋内に入れてもらうジェイミー。本来殺される筈のマリッサは、ランディとまたジャグジーへ。
*殺人鬼に襲われる直前に気付いたヘザーが、相手を蹴り飛ばす。階段から突き落とされて、身体を痛めつつ這い逃げるヘザー。しかし、直ぐに追い付かれて繰り返し刺される。ブレークが部屋から飛び出して殺人鬼を殴るが、ナイフで胸を刺される。外へ逃げようとする殺人鬼を、待ち構えていたジェイミーが薪で殴打。ジェイミーが反撃に遭うと、パムが殺人鬼に花瓶を叩き付ける。更に素手で立ち向かおうとするが、まだ護身術を習う前のパムでは歯が立たない。ブレークが火掻き棒を振り回すと、それを綺麗に避けて殺人鬼は姿を消す。
*警察で事情聴取を受ける面々。ジェイミーは容疑者の血液を提出。殺人鬼を殴った薪に血液が付着していたので(相手はマスクをしていたが、呼吸用の穴から血が流れていた)キッチンペーパーに染み込ませたのだ。「DNA採取用に」と伝えたが、カーラの父には意図が伝わっていない。警官に「他に山荘行きを知っていたのは誰か?」と問い掛けられる。ラーチが科学室で傍に居たから、聞いていた可能性はある。ブレークは内部犯の可能性を仄めかす。姿の見えなかったカーラを疑うと、彼女は「ジェイミーが脅すから、クロゼットに隠れていた」と主張。怒って立ち去るカーラ、警官(且つ父親)が追い掛ける。
*ティファニーの時には殺害場所が変わった。山荘ではマリッサが死ぬ筈だったが、死ぬ人物が変わった。もう未来を予言する[超能力者]ではなくなってしまったジェイミー。「殺害は阻止出来なかった、殺される順番が変わっただけ」と気落ちするジェイミー。「それにスクリームみたいに複数犯かも」とローレンに言うが、彼女には伝わらない。あれは10年近く未来の映画なのだ。
*今日は学校の前で、ノーム・ドゥバサージュが容疑の晴れたエディ・ロイヤルにインタビューしている。ローレンは、ジェイミーが山荘へ行った間にタイムマシンの試作機を作っていた。ジェイミーのスマホには何故かWi-Fiの電波があるが、インタビューが終了すると電波も消えてしまう。「テレビ中継車の電波があれば、タイムマシンが動かせそう」と言うローレン。タイムマシンはスマホと連動させて使用するのだ。しかし電池の減り具合からして、7時間半後には帰還不能になってしまう。それは丁度ヘザーがビリーズランドで殺される筈の時間。既にヘザーは殺されており、もう何が起こるか分からない。ビリーズランドからのテレビの中継があるため、電波を乗っ取ってジェイミーを帰そうと考えるローレン。「犯人を止めないと帰れないよ」「じゃあもし帰り損ねたら、レーガノミクスの復習しなよ。水曜日に社会科の試験だから」
*パムとブレークは(つまり母と父は)はすっかり盛り上がっているが、ジェイミーは「まだ早い、発情しないで」と2人を止めようとする。
*登校時のラーチを見掛けると、彼が乗っているのはティファニーのパーティでも見た不審車。気になったジェイミーは、授業中にトイレへ行きたいと偽って駐車場へ。ラーチの車を調べてみると、ドアが開いたので何か証拠はないかと中に入り込む。するとドアが開き何者かに足を掴まれ、必死に蹴り飛ばすジェイミー。相手はラーチで「『サンダーキャッツ』だけは奪わないで」と言う。「ビデオゲームなんか欲しくない」「ゲーム以外に盗る物ないけど…」
*ティファニーのパーティへ来ていたことを問い詰めると「入りたかったけど勇気がなくて、ずっと車に居た」との答え。自分が疑われていると察して「僕は不気味だから怖がられてるけど、人殺しはしない」と言うラーチ。そこへダグがやって来る。彼は授業中でも外へ出られる[監視員]らしい。車内に散らばるゲームを見たダグは、将来はゲーム制作者希望のラーチに「『スーパーマグナム』って映画のビデオゲームは良いぞ、人を撃つとピンクの霧状の血飛沫になる」と薦めてくる。怯えて「早く教室へ戻ろう」と言うラーチ、ダグは「安心しろ、僕は空手を8年習ってる」と余裕の表情だ。
*夕暮れ、ジェイミーはビリーズランドへ。ローレンと落ち合うが、タイムマシンはまだ動かせていない。証明写真機はスイッチの役割だが、新しいスイッチが必要らしい。莫大なエネルギーを生み出し、重力を振り切れるような物。そこでジェイミーは量子スピンを提案、ローレンも納得する。
*ジェイミーが市役所職員を装って運行停止を促すと、係員は嬉しそうに「休憩してこいってことだな?」とアッサリ退出。有難い反面「流石、80年代って適当」と呆れるジェイミー。量子スピンは円状の施設が高速で回転、利用者は遠心力で壁に張り付くという遊具。タイムマシンはローレンに任せて、ジェイミーは犯人捜しに向かう。
*2人目の事情聴取の時にパム以外にも[超能力者]と伝わったので、ブレーク・マリッサ・ランディにも協力を依頼。本来は今日、駐車場でヘザーが殺される筈だったが、既に死んでいるので恐らくマリッサが狙われると説明。「予知が誤りなら実際には誰が殺されるか分からない、逃げても良い」と促す。パムは「犯人を捕まえたい。もしマリッサが殺されて自分が助かっても、残りの人生を怯えて暮したくない」と言う。ブレークとランディも賛同、マリッサは怯えつつも囮になることを承諾する。
*この辺りでエコー&ザ・バニーメンの『The Killing Moon』が流れる。
*園内を移動中、ジェイミーとパムは死神の仮装をしたカーラに遭遇。「山荘の後、皆冷たいよね。ブレークの差し金?ヘザーが殺された時に、私が居なかったからって」とパムに文句を言うカーラ。ジェイミーには「あんたが現れるまでは殺人なんてなかったのに」と不満をぶつけて立ち去る。
*怖がりながらお化け屋敷へ向かうマリッサ。マスクの殺人鬼が密かにそれを追う。クリスもその場面に居合わせている。ジェイミー・パム・ブレーク・ランディは、お化け屋敷内の物陰に隠れて待ち受ける。ジェイミーが見付かり、マスクの殺人鬼と揉み合いに。ナイフを奪い取ると、山荘の時と同様に全員で波状攻撃を仕掛ける。殺人鬼の背中にナイフを突き立てるジェイミー。マスクの殺人鬼はそのナイフを引き抜き、逆にジェイミーに突き刺そうとする。その時殺人鬼は背中から、ナイフより大きな刃物で貫かれる。カーラが駆け付けてくれたのだ。父親が「危険だから、護身用に」と殺傷能力のある鎌を持たせたらしい。
*動かなくなったマスクを剥がすと、中身は未来の校長ダグだった。彼に恨まれる理由が分からないパム。そこへローレンが「漸く準備が出来たけど、もう時間がない」と駆け込んでくる。しかし事件の謎はまだ解明出来ていない。ダグが首から下げたロケットには、トリッシュの写真が入っている。2人は付き合っていたのだ。
*トリッシュが死んだ夜、同性愛疑惑を確かめようとしてティファニーがトリッシュを酔わせた。トリッシュは泣いて部屋に閉じ籠もったが、その時ダグに電話したのだろう。トリッシュはその後、酔ったまま帰って事故を起こした。「あんた達は人を殺したんだよ」とパムとマリッサを咎めるジェイミー。否定するパムを再度責めるが、マリッサが「パムは居なかったのよ」と庇う。その夏パムは、ティファニーと喧嘩中だったのだ。困惑するジェイミー。それなら何故ダグに脅されるのか?あのメモは何なのか?
*そこへマリッサの背後からマスクの殺人鬼が現れ、彼女の首をナイフで切り裂く。マスクが古く傷付いていたため、咄嗟に未来のダグなのかと考えるジェイミーだが、ダグはもう死んでしまったので未来がない。マスクが未来の物だとすると、何者であれどうやって過去へ来れたのか。未来のアメリアが、タイムマシンを再び作ったのだと思い至るジェイミー。カーラは父に銃も持たされており、マスクの殺人鬼を追い掛ける。しかし障害物の多いお化け屋敷の中では上手く狙えず、弾が尽きて逆にマスクの殺人鬼に追われる。カーラは皆のところへ駆け戻って、揃って逃げる。殺人鬼は先刻は首を切り裂いただけの、マリッサを必要な回数刺す。
*その頃の未来では、母ローレンがガレージで倒れている娘アメリアを発見。ガレージからはゲームの筐体が消えている。
*犯人の正体は分からないまま、量子スピンへと走るジェイミーとローレン。中継放送中のノーム・ドゥバサージュの背後を通り過ぎる。それを追うマスクの殺人鬼は、通りすがりにノームのこめかみ付近にナイフを突き刺す。
*ジェイミーは「このまま帰ればママを救えない」と訴えるが「未来へ戻る時間を、事件より前にしておく」とローレンは言う。「未来で救って」
*遠心力の影響を避けるため、装置の加速後は遊具中心部のポッド内に居るよう指示される。もしポッドの外へ出れば、ロケット発射と同等の勢いで壁に叩き付けられて破裂する。「娘によろしく」と言って抱き合い、ジェイミーを送り出すローレン。ジェイミーは着ていた母のジャケット(未来から着てきたもの)をローレンに預ける。
*装置を起動すると、マスクの殺人鬼が飛び込んで来る。「ここに置いていくよりはマシだわ」と、一緒に未来へ戻る決意をするジェイミー。ローレンは外へ退避。入れ違いにパムがやって来て、殺人鬼にしがみ付く。揃って犯人に弾き飛ばされる母と娘。ここへ来た理由について、壁に張り付きながら「量子スピンで一大事が起こるって言ってたから」と言うパム。それは妊娠判明の件だ。「以前に一緒に乗ったことがあるよ」
*遠心力に逆らって動こうとするが、犯人の方が強靱で、遠心力を利用して壁に足を付けて立つ。そのままパムに向かって移動。ジェイミーは中心部、遊具の操作パネルへ移動。ジェイミーが加速途中のドアを開けると、パムが外へ吸い出される。一瞬早く犯人が、パムの腹部を刺す。母は無事なのか。
*ドアが開いた拍子にマスクが外れる。こちらの中身は未来のクリス・ドゥバサージュだ。ジェイミーが「ママを殺したわね」と叫ぶと、クリスが「多分2回もな」と嗤う。「自分の父親も殺すなんて」「あれはオマケだ、これで1987年のクリスはクソ親父から解放された。あいつは息子より名声が、過去の栄光が大事なんだ」
*母は1987年に、メモを見付けていなかった。未来で母を殺した後、クリスが書いたものだったのだ。動機について、クリスは「物語を続けるためだ。35年前の殺人事件への関心は、やがて薄れる。だがスイート16キラーは戻ってきた。ブギーマンになれる」と話す。「奴は何処にでも現れ不死身、マイケルマイヤーズも真っ青だ。私はその権威、最初の殺人鬼がダグとは見抜けなかったがな。スイート16キラーの知名度を借りて、私はいつかピュリツァー賞を獲る」と捲し立てる。ジェイミーが「あんたは無名で終わるわ、ここで死ぬからよ」と声を張り上げると、クリスも中心部へ移動。揉み合いになり、持っていたナイフも奪われる。「過去を変えた報いだ」と勝ち誇るクリス。「これは私の家族に手を出した報いよ」と、彼にネイルガンを連射するジェイミー。「楽しい旅を」と笑って力の入らなくなったクリスの身体を押すと、壁に叩き付けられて粉々になり、ピンクの霧状になる。
*やがて装置が止まると、そこは寂れ切った未来のビリーズランド。家へ駆け戻ると、母は無事だった。ちゃんと結婚もしたようで父も居る。抱き合う親子。アメリアとローレンも駆け付け、3人で抱き合う。「何故うちに?」と思わず訊くと、母が「ハロウィンには毎年集まるじゃない」と不思議そうだ。両家の関係は変わっているらしい。
*ローレンに「話がある」と言われて玄関先で2人になると「量子スピンで到着を待つつもりだったけど、夏時間のことを忘れてたの」と謝罪される。彼女は足首に銃を隠していて「誰が出てくるか分からないまま、35年待ってたのよ」と笑う。「今日やっと、勝者が分かった」
*ローレンは「あなたも情報に目を通してね、変化の全記録よ」と厚みのあるノートを渡してくれる。彼女は「推測の域を出ないこともあるけど、要点は押さえたつもり」と言う。そこへ見知らぬ男がやって来る。「遅れてごめん、ジェイソンとベロニカも直に来るよ」と言われ、適当に挨拶して遣り過ごしてから「あれは誰?」とローレンに訊くジェイミー。言い辛そうに「あなたは頑張っていたけど、高校時代のご両親を結局引き離せなかったのよ…あれは34歳のお兄さん、名前はジェイミー」とローレンは答える。
*「ジェイミーが2人居るの?」と混乱していると、母が「コレット、お兄ちゃんを手伝ってあげて」と声を掛けてくる。この未来では、自分の名前すら変わっているのだ。ジェイミーは溜息を吐いて「タイムトラベルって面倒くさい」と呟く。
*ローレンが渡してくれたノートを読むと「お兄さんの名前はジェイミー、彼の夫はジェイソンで娘はベロニカ」「私は生物工学の専門家、しかも優秀。アメリアは今も貴女の親友で天才」「ランディは高校の校長」「カーラは警察署長で大麻を合法化。ブラウニーが大評判」「ラーチはゲーム帝国を築いた。妹を偲んで反いじめ団体も創設」「エディ・ロイヤルのバンド名は殺人事件での経験に由来した『ウォーターベッド・アウェイ』」「クリスは父の死を生放送で見て、心に傷を負った。噂によればインドで修行中」と綴られていた。
■雑感・メモ等
*映画『ハロウィン・キラー!』
*配信にて鑑賞
*Amazon製ホラーコメディ
*スラッシャー+タイムトラベル。この設定は好物。
*簡単まとめ:過去の3件の殺人事件は、いじめが原因で恋人を亡くした未来の校長の復讐だった。未来で母が殺されたのは、殺人事件を飯の種にしている自称犯罪ジャーナリストの延命狙い。校長は変わってしまった過去で死亡。便乗犯はタイムマシンの中で霧状になって四散。主人公は未来へ帰還。周囲の人々は元々の未来と変化がないか、概ね良い状態になっている。1人娘だった主人公には兄が居り、自分の元の名前(ジェイミー)は兄に付けられているのだった。
*テンポ良く見易く、丁寧に作られている。コメディ部分は主に、現在と80年代のギャップネタ。
*キービジュアルにも写っているのが作中に登場するマスクなんだけど、映画用のオリジナルなのかな。それとも何かベースがあったりするんだろうか。
*「過去に旅した主人公が未来へ戻ると、何もかも完璧に修正されている」的な結末が気持ち良く飲み込めない日もあるんだけど、この映画の場合は「良いニュースと悪いニュースがある」的な匙加減なのが割と好き。(そう言えばローレンも「良いニュースと悪いニュース」て言ってたな。)
*新しく築かれたその未来には、主人公は介在してなくない?というのはこの作品でも同様なんだけど。昨日まで居た筈の人格は何処へ行くんだろ。と言うかもう1人ベッドで寝てたりしないのか。
*パムの地下室にあるビデオ、字幕で表示されるもの以外では『ターミネーター』『死霊のしたたり』『バカルー・バンザイ』『トロン』『インナースペース』『スターファイター』が確認出来る。
*実際にある映画作品のタイトルが色々出てくるけど[ザタバーガー](1件目の殺害現場跡に出来たバーガー店)は架空かな?
*元の未来でカーラが父を嫌っているのは、元の過去でも殺人事件発生時に隠れていたせいで父に疑われたのが原因、とかなんだろうか。
*16回刺すこと、自体には特に理由はないのかな。
*校長は空手を習っていたけど、自称犯罪ジャーナリストは強過ぎじゃない?
*Lurchは渾名?「急に不安定になる」「ふらつく」とかの意味があるみたいで、教師はデーモンと呼んでいたので。でもジェイミーもローレンもそのまま呼び続けていたからよく分からない。
*自分はモリー・リングウォルドが出演している系統の作品にはあまり興味がなく、そもそもモリー・リングウォルドが何となく苦手だったんだけど、出演作を確認したら見事に『Cut カット!』しか見たことなくてちょっと笑った。
*『Killer Instinct』てゲームがあるけど、作中出てくるバンドはInstinctじゃなくてInstinkt、みたい。