■あらすじ
雪に覆われた片田舎のビーバーフィールドに赴任してきた森林警備員のフィン。とりあえず町に一軒だけの小さなホテルに滞在し、郵便配達員のセシリーの案内で住人たちに挨拶に回るが、皆変わり者ばかりでフィンは先行き不安になる。翌朝、農場を経営するトリッシュが、何者かに殺害された愛犬を抱えホテルに駆け込んでくる。何事かと他の住人たちもホテルに集まって来る中、第2の事件が起こる。ホテルオーナーのジャニーンの夫が死体で発見されたのだ。さらに、その死体には喰いちぎられた跡と、人間の物ではない毛が付着していた。フィンは警察に連絡しようとするが、猛吹雪により道路は封鎖。さらに、町の発電機は破壊されていた。(メーカーサイトより)
■ネタバレ
*ビーバーフィールド:森の中にある町。ホテルは1軒のみで、食事が可能なのもこのホテルだけ。カフェの朝食は7~9時に利用可能、正午にまた開店する。オーナー手作りのサンドイッチがお勧め品。町ではミッドランド・ガスのパイプライン建設が計画されており、実現には住民の半数以上の同意が必要。(ガス会社の人間が「全会一致が条件」と話している場面もあり。)賛成派と反対派(森林保護派)で町は二分されている。町の一角では、ミッドランド・ガスが建てたモニュメントが炎を上げ続けている。
*フィン・ウィーラー:人知れず起こった最初の事件から29日と半日後に、雪に覆われたビーバーフィールドに赴任してきた森林警備員(レンジャー)の青年。ひとまずホテルに滞在中。知人に唆されて国有林内のグラウト池で無許可で釣りをして、それがSNSで流れた結果転属になった。元カノのシャーロットに未練あり。勤務初日の夜にセシリーと盛り上がりキスしそうになるが、シャーロットからの電話に出たことで雰囲気は台無しに。
*セシリー・ムーア:郵便配達員の若い女性。町へ赴任して1ヶ月程。部屋を探すつもりだったが、ジャニーンに引き留められてそのままホテル暮らし。仕事柄、町の情報通。フィンに対しても大家族かどうか・町に来た理由等を尋ねていた。本人は7人兄弟の末っ子で「姉の誕生後、1年せずに生まれて同学年だった。玩具は全部お下がり」と話す。『斧のねぐら』という店(店名通り斧投げゲームがあり、ピンボールマシンが並んでいる)が郵便物の集積所になっていて、彼女は常時出入り可能。
*ジャニーン・シャーマン:町唯一のホテルのオーナー。パイプライン反対派。夫デイブは賛成派で「バーで知り合った女とベリーズへ逃げた」と噂されていた。
*ジェーン・エリス:ホテルの207号室に滞在する獣医・動物学博士・環境学博士。住人ではないがパイプライン反対派。フリントの商業的狩猟について、当局(フィン宛)に通報した。研究用の機器とバッテリーを持ち込んでおり、停電後も調査等を行う。
*サム・パーカー:パイプライン建設の営業マン。計画を実現しようと、町民達の説得を試みている。
*エマーソン・フリント:狩猟を生業とする気難しい男。町の住民達とは離れて、148号廃線跡の奥で暮らしている。家へ到る道には『撃たれるぞ』『侵入者は死ね』といった看板が掲げられている。エリス博士の苦情を受けて、勤務初日のフィンが訪問。(フリント宅付近まではセシリーが案内してくれたが、荷物の配達は押し付けられた。)銃口を向けて「自分の土地で合法的に稼いでるだけ」と主張、フィンを追い返す。
*ピート&トリッシュ・アンダートン:農場経営者の夫婦。パイプライン賛成派で、自宅前にその主張を書いた看板を掲げている。(看板にはインクでバツ印が落書きされた。)ピートはセシリーにセクハラ行為を働いており、セシリー曰く「グウェンとセックスした」とか。彼は敷地内で採れたというシロップを、フィンにプレゼントする。トリッシュの趣味はクラフト作りで、パイプラインの金でクラフトショップの開店を希望。初対面のフィンに手作りのオーナメント(ソープボトル製で天使風のレンジャー)を手渡す。一族は90年前から町に住んでいるとのこと。チャチという名の小型犬を飼っている。(セシリー曰く「S・キングの作品の登場人物みたい」)
*デヴォン&ホアキム・ウルフソン:自然を求めて都会からやって来た、同性同士の金持ちカップル。パイプライン反対派。デヴォンは技術系、ホアキムはヨガ関連の仕事をしている。
*マーカス&グウェン:粗暴な整備士夫婦。金目当てで、パイプライン賛成派。注文して3週間経ったのに、除雪車のスターターとインジェクターが届かずグウェンは不機嫌。
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*「愛は耳を傾けることから始まる。自分自身の声を聞き、それから隣人の声にも耳を傾けよ」(ミスター・ロジャース)
*フィン到着の翌朝4時、排泄のために家の外へ出された犬のチャチが殺される。日が昇ると、雪で道路が塞がり電気や電話が繋がらず、町中の発電機が壊されていることが判明。(発電機には大きな爪のような、牙のような痕跡がある。)送電網が被害に遭えば、最低1週間は電気のない生活になる。
*更にフィンが、ジャニーンの夫デイブの死体を雪の中から発見。エリス博士曰く「傷が深い、狼の仕業ね」とのこと。怯える住人達は自然とホテルに集まっている。
*除雪車でなら雪で埋まった道路も通れるかもしれないが、スターターとインジェクターが届いていないため動かない。フィンはエマーソンに狼用の罠を仕掛けてもらうことを提案、セシリーを伴って再び猟師の家へ。「ミスター・ロジャースみたいに[よき隣人]になって欲しい。貴方も町の住人の1人だから」と説得するが拒絶された上、セシリーが家の中でチャチの首輪(血塗れ)を発見。彼が犯人だと察して、2人は怯えて退散。
*ホテルへ戻って、エマーソンの件を住民達に報告するフィンとセシリー。今日は安全のため、全員でホテルに泊まることにする。集まった者の多くは銃を持参している。
*深夜にピートが襲われ、廊下を引き摺られた挙句に指を食い千切られる。混乱の中、グウェンが発砲しピートに命中。(彼の意識はある。)動きの速い獣の目撃者は居らず、まだ正体不明だが、どうやってホテルに侵入し、どうやって脱出したのか?
*遺留品である動物の体毛を調査していたエリス博士は、イヌ科だが狼ではない犯人の正体に気付く。「エマーソンじゃない、貴方達の中に犯人が居る。[ライカンスロープ/人狼]よ」と言い残して博士は自殺。喰われるのを恐れたのだろうか。
*殺伐とした雰囲気の中、銃を1箇所に集めて施錠。住人達は疑心暗鬼になり、ジャニーン(夫の死体が敷地内で見付かった)・トリッシュ(夫に浮気され動機がある)・パーカー(彼が裏口から部屋に入った時に博士が自殺、他に目撃者は居ない)が疑われる。フィンが結束を呼び掛けるが、結局住民達は各々の家へ戻る。
*ホテルに残ったのはオーナーであるジャニーンと、ホテル暮らしのフィンとセシリー。パーカーもホテルから立ち去っている。ドアや窓を板で塞ぐ等して、3人で防御を固める。
*出て行った筈のパーカーの部屋から物音がする。ジャニーンには部屋へ戻るよう促し、フィンとセシリーが調べてみると、窓が開いたままになっている。そこで『グラウト池で2人が襲われ死亡』との新聞記事を見付けるセシリー。グラウト池のことを会話中に聞いていたので、彼女はフィンに対して疑念を抱く。
*一方フィンは、ディーゼルの匂いがするナイフを発見。パーカーの部屋の中からは印の付いた地図も見付かる。彼はどうやら、ビーバーフィールドで起きているのと同様の事件を追っているようだ。人狼を捕まえるために、ナイフで発電機を壊したのか。
*帰路を急ぐデヴォンとホアキムは、何者かに襲われはぐれてしまう。ホアキムはホテルへ駆け戻り、デヴォンはトリッシュに襲われ首を刺される。
*フィンとセシリーにホアキムが合流。やがて猟銃や暗視スコープ等、狩猟用の装備を身に着けたパーカーが戻って来る。身を隠している3人に向けて、彼は「狩猟は昔からの趣味」と話す。標的はやはり人狼だ。
*パーカーが立ち去ると、3人はデヴォンを捜しにトリッシュの家へ。彼女の家の近くで襲われたため、デヴォンが逃げ込むならここだと考えたのだ。すると、指にナイフを取り付けたマーカスに遭遇。彼は空き巣を働いて、それを人狼のせいにするつもりらしい。呆れているとマーカスを迎えに来たグウェンの車が、家から飛び出した彼を撥ね飛ばす。そして待ち構えていたトリッシュが、グウェンを射殺。
*トリッシュは家の中で3人を並べ、銃口を向けて喚き散らす。彼女がデヴォンを殺したと知らされ、怒りに震えるホアキム。やがて、ソファで休ませていたピートが既に息絶えていると気付いて、トリッシュは動揺する。その隙を突いて、ホアキムが火掻き棒で彼女を殴打。燃え盛る暖炉にトリッシュが倒れ込み、部屋が炎に包まれる。
*家から駆け出す3人。そこに立ち塞がるパーカー。セシリーが7人兄弟の末っ子だと知ったホアキムは彼女を疑い、捕まえて殺そうとする。パーカーはそんなホアキムが邪魔だったのか、クロスボウで彼を射貫く。パーカーが疑っているのは、過去の事件現場に悉く立ち寄っているフィンだ。揉み合いになるフィンとパーカー。パーカーがナイフを振り上げると、フィンはクマ除けスプレーで対抗。最後は瀕死のホアキムが、パーカーの傍で燃えているモニュメントに向けて発砲。大きな爆発が起こる。
*周囲は爆発で酷い有様になるが、同時に電気が復旧。フィンとセシリーも生き残っている。フィンが怪我をしているため、近くにある『斧のねぐら』へ。セシリーが「電話が繋がるかどうか確認する」と言って姿を消すと、1人になったフィンはスターターとインジェクターを見付ける。グウェンが届かないと言っていた物だ。これがあれば、除雪車が使えた筈の。
*更にフィンは、セシリーの前任者の名札を発見。そこには[郵便配達員/デイブ・シャーマン]と記載されている。ジャニーンの夫で、1ヶ月程前に姿を消した男。彼と入れ替わりにセシリーが町にやって来たのだ。
*セシリーを捜して「君なのか?」と問い掛けるフィン。彼女は「そうよ、人狼は実在するの」と認める。発電機の破壊は勿論、フリントの家にチャチの首輪を置いたのも彼女の仕業だった。「貴方には困ったわ、他の人とは違って病的に良い人なんだもの。この町には裏表のある卑しい人間ばかりが住んでいるのに」と話すセシリー。「死んだ住人達はちゃんと後で食べるわ。道路が封鎖されてて最高ね。春までの食糧確保よ」
*やがてセシリーが人狼へと変身、フィンに襲い掛かろうとした時、彼女はシャベルで殴り倒される。現れたのはフリントだ。彼は「よき隣人になる、ミスター・ロジャースみたいに」と笑う。しかし勿論シャベルでは致命傷にはならず、セシリーの逆襲に遭うフリント。激しく締め上げられ投げ飛ばされ、動かなくなる。
*咄嗟に身を隠したフィンは、斧投げゲームの斧を次々にセシリーに投げ付ける。物ともせずフィンに圧し掛かるセシリー。床に転がっている折れたラクロスのスティックを掴み、柄の部分をセシリーの首に突き刺すフィン。
*フィンが茫然と立ち上がると、幸いフリントも意識を取り戻している。「助かったよ」「俺も町の住人の1人だからな」2人の背後で、セシリーもまた立ち上がっている。「ジャニーンは無事かな」「多分な」「サンドイッチを作ってもらおう」2人に襲い掛かろうと、高く跳び上がるセシリー。彼女はボウガンで射貫かれて倒れる。矢を放ったのは、不敵な笑みを浮かべるジャニーンだった。「サンドイッチは、自分で作りな」
■雑感・メモ等
*映画『人狼ゲーム 夜になったら、最後』
*レンタルにて鑑賞
*UbisoftのVRソフト『Werewolves Within』を映画化したホラーコメディ
*原作ゲームや一般的な人狼ゲームのような特殊能力はなく、映画版の住民は普通の人々。緩くて軽めの仕上がりで気楽に見られるけど、人狼の存在感も軽め。
*人狼は犬とホテルオーナーの夫を殺して、セクハラ野郎の指を噛み千切る。住民の中には1人で複数殺している人も居てるので、バランス的にそれで良いのかという気持ちに。人狼の目的は殺人ではなく食事、とは言えね。
*アルゼンチンには「7番目の子は人狼になる」と言う伝承があるそうで、郵便配達員は7人兄弟姉妹の末っ子との設定。
*人狼の首に突き刺すの、ラクロスのスティックと書いたけど違う物かもしれない。分からない。皆ナイフとかドライバーとか箸とか、分かり易い物で刺して欲しい。
*電気が復旧したのって何故なんだろ。単に雪の被害が思ったより酷くなかったのかな。それとも爆発の影響?(そんな昔の家電みたいな。)