■あらすじ
小説を執筆するため、故郷に帰ってきたトーマス。しかしそこは代々、生け贄を捧げなければ村人全員が人狼と化してしまう言い伝えのある呪われた村だったのだ…。(メーカーサイトより)
■ネタバレ
*1901年、スペインのアルガ村。マリーニョ侯爵夫人は血も涙もない地主だった。政略結婚の後、土地を守る跡継ぎを産みたいと望むが、夫との間には恵まれなかった。やがて夫人は、健康な男なら誰とでも寝るようになった。ある晩、村を旅芸人の一団が訪問。夫人はナイフ投げの男に惚れ込み、家来を使い拉致。鎖で縛って馬乗りになり[種付け]をした。望み通り妊娠はしたものの、子供の実父が誰であるか世間に知られることを恐れ、旅芸人を家来に襲わせ皆殺しにした。2児を失ったナイフ投げの男の妻は、死に際に呪いを掛けた。9ヶ月後、侯爵夫人は男児を産んだ。次第に呪いが効き始め、息子の10歳の誕生日は悪魔が降り立った。
*100年後のスペインの僻地。アルガ村出身の作家トマス・マリーニョは、まだ1冊出版されただけで知名度もないのだが「名誉村民にしたい」と15年程離れていた村から連絡を受ける。祖母ローサが住んでいた大きな家も20年程放置されていて、そのままでは住める状態ではないが、数日間滞在する程度なら何とかなるだろう。電話で話すと祖母は村の招待を怪しみ、帰郷に反対している。トマスは滞在中に執筆したいとも考えている。
*村へ到着し、愛犬ヴィトと共に懐かしい祖母の家を見て回る。薄暗い屋根裏部屋だけは大人になった今でも苦手だ。怖々足を踏み入れると、いつから待ち構えていたのか、クロゼットに潜んでいた友人カリストが驚かせてくる。カリストは村を出てから全く連絡を寄越さなかったトマスを責めるが気の良い奴で、普段は読書をしないのにトマスの本は読んでくれる。
*名誉村民の式典については、トマスの叔父エヴァリストが取り仕切っている。彼は現在村長で、本物の神父が消えた後は神父の代理でもあるらしい。叔父はトマスを酒場へ連れて行き、村人達に紹介する。式典には来賓等は居らず、参加者は村民だけだと聞かされて、些か気落ちするトマス。
*翌日は二日酔いだが、カリストに誘われて昼食へ。トマスは昔聞かされた「地下道は呪われていて幽霊が居る」「納屋には100歳を超える化け物が棲んでいる」といった怪談話を何気なくカリストに投げ掛ける。昔を懐かしんで「あの納屋を探してみよう」と提案するが、友人は乗り気ではなく「ここは人や風習が都会とは違う、信じられないことが起こり得るんだ」と真顔で言う。
*ヴィトが野うさぎを追って姿を消したため、1人森を探すトマス。やがて犬を、次いで例の納屋を発見。納屋には明りが灯っているが、扉には鎖が巻き付けられていて中に入ることは叶わない。
*式典の朝、トマスの担当編集者であるマリオが押し掛けてくる。彼は未払金を踏み倒しており、そのためトマスは弁護士を雇った。「裁判所の召喚状を渡されないように逃げてる」と言うマリオ。更に呆れたことに「数日泊めてくれ、ここで話し合おう」と申し出る。
*マリオのことは二の次にして、式典のために村役場へ出向こうとするトマス。すると叔父を筆頭に村人達が訪ねて来て、困惑している内に襲われてしまう。マリオ共々磔にされて、運ばれたのは例の納屋だ。村民に向けて「この村で100年続いた忌まわしき呪いが消滅する。マリーニョ家の血が自らの呪いを消し去り、我等を悪魔から解放するのだ」と語る叔父。トマスには何のことか分からない。
*磔から解放され、納屋の地下へと落とされるトマスとマリオ。そこは修道院へ繋がる地下道だ。怖々進んでいくと、布に包まれたヒトか動物の死骸を発見。傍には骨も転がっている。意を決して布を剥ぎ取ろうとすると、ヒトの手がトマスの腕を掴む。布が外れると男には牙や獣の耳があり、その姿からしてオオカミ人間らしい。慌てて逃げ出す2人。
*一方カリストは、ヴィトに臭いを追わせてトマスの行方を捜している。犬の反応を見つつ墓地で穴を掘ると、誰かの死体が出てくる。別の場所を掘ると、今度は地下道に居るトマスとマリオを発見。墓石が落下してオオカミ人間の頭部にぶつかり、窮地の2人を救う。ロープ等はないので見付けた死体を穴に差し込んで、2人を掴まらせて引き上げてやる。高さがあるので、オオカミ人間は出て来られないだろう。
*3人はカリストの家へ。状況が飲み込めないトマスに、カリストが100年前の呪いについて説明する。トマスの祖母の伯母であるマリーニョ侯爵夫人が、子供欲しさに旅芸人の男を無理矢理犯した上、相手を含めて一団を皆殺しにしたこと・男の妻に「女の息子は10歳で人食い狼になる」という呪いを掛けられたこと・100年後にマリーニョ家の血を引く男を食わせれば、侯爵夫人の息子は元の姿に戻ること・その機会を逃せば、村には更なる悲劇が起こること。
*トマスは戸惑いながらも「阿呆らしい」と反発、マリオは「トマスの小説並みだ」と笑い飛ばす。しかしカリストは「その目で見ただろ。変身後60年で100人以上の村民が食われた。どうにか納屋に監禁して、通りすがりの巡礼者を餌として与えて、40年が経った」と畳みかける。村人達は「呪いの邪魔をすれば罰が当たる」と恐れているので、オオカミ人間を殺すことはしないようだ。今夜が丁度100年目。彼等は100年経つのを待って、トマスを村に呼び寄せたのだ。
*叔父は曾祖父系で、条件に該当しない。カリストは亡母から数年前に呪いについて聞かされたと言うが、それをトマスには黙っていた。村人達が具体的に何をするかは知らなかったらしい。それでもトマスが「僕に黙ってた、見殺しにするつもりだったのか」と詰ると、カリストは「15年前は親友だったのにお前は突然消えて、それ以来音信不通だったじゃないか」と反論する。「とは言え見殺しは良くないな」と混ぜっ返すマリオ。
*カリストの祖父母は火事で亡くなったとされていたが、実際には狼男に食われて死んだのだと言う。村人は皆、子供が成人したら都会へ送り出す。老人だけで村を守っているのだ。カリストには村を出る機会がなかった。トマスは通報しようとするが、警察には電話が繋がらない。
*翌朝までに、納屋の見張りや就寝中の村人等4人がオオカミ人間に襲われ死亡。呪いは解かれなかったのだと察する村人達。トマス捜しが開始され、便宜上カリストも捜索隊に加わる。叔父はカリストが匿っていないかと疑い、実際のところ2人は彼の家に身を潜めている。どうにか見付からずに捜索を遣り過ごすが、叔父は2人の車を壊して道を閉鎖したようだ。逃がすつもりはないらしい。
*結局何処を捜しても2人は見付からず、村人達は次にオオカミ人間を捜すことに。納屋以外に戻る場所はないだろう。地下道へ無理矢理送り込まれるカリスト。彼は納屋から、自分が穴を開けた墓地の方向へ進む。すると最初にオオカミ人間が居た場所に、裸の少年が居る。恐らくこの子がオオカミ人間なのだろう。カリストは地上へ引き戻されると「誰も居ない」と報告。改めて叔父も確認するが、地下では何も見付からない。
*一方、トマスは祖母に電話が繋がり「オオカミ人間が居る、警察に通報して」と頼むが、電波状況が悪くメッセージが伝わらない。落胆していると、カリストが少年を連れて帰宅する。墓地に開けた穴から少年を一旦地上へ逃がしておいて、村民達と離れてから迎えに行ったのだ。「地下に居たから多分、化け物だ」と言うカリストに「何故連れて来たんだ?化け物なら殺せよ」と喚くトマス。「自分で殺せ」と猟銃を渡されるが、少年の姿のままでは躊躇してしまう。
*カリストは「少年にトマスの身体の一部を食べさせてみよう」と提案。部外者だが「試す価値がある」と賛同するマリオ、勿論抵抗するトマス。カリストとマリオがトマスを抑え込む。「執筆に差し支えるから、せめて足の指の方が」「足の指は、ここから逃げるときに困る」「読者のためにも手の指が良い」結局、左手の小指を強引に切り落とされるトマス。
*「生だとグロいな」と、カリストとマリオは指を調理。皿に盛って少年に差し出すが、ヴィトが持ち去り食べてしまう。次は右手の小指を切って、少年に食べさせることに成功。結果は夜にならないと分からないが、いずれにしてもここから逃げ出す必要がある。叔父は村民達に「オオカミ人間を仕留めるまでは夜を一緒に過ごす事にしよう」と言って、7時半に酒場に集合するよう呼び掛けている。その隙に古い駅まで行けば、隣の村へ続く道がある。
*4人と1匹(トマス・カリスト・マリオ・少年とヴィト)が逃げ出そうとしていると、村人達に見付かってしまう。酒場の主人が殺されていたため、捜索が再開されてしまったようだ。カリストが「この少年がオオカミ人間だが、トマスの指を食べさせた」と必死に事情を説明する。「それなら夜まで待とう」という事になり、路上で睨み合いに。やがて日が落ち月が昇るが、少年は変化なし。しかし叔父は「本当に呪いが解けたかは分からない、目撃者は殺すべきだ」と言い、無慈悲に4人へ銃口を向ける。
*するとその時、叔父や村人達が苦しみ出し、オオカミ人間へと変化を始める。100年目の夜を1日過ぎたために、呪いの解除が間に合わなかったのだろう。[村には更なる悲劇が起こる]という、第2の呪いが発動したのだ。村民は数十人は居り、その全員がオオカミ人間になる。倒すことも逃げることも困難だろう。
*絶体絶命のそのタイミングに、車で颯爽と現れたのはトマスの祖母ローサだった。電話ではトマスの訴えを聞き取れなかったが、厭な予感がして駆け付けたのだと言う。祖母も村に伝わる話は知っていたが、本気にはしていなかったようだ。4人と1匹を車に乗せ、オオカミ人間を次々に跳ね飛ばす祖母。車に張り付いた追手は、カリストが猟銃で撃退する。しかし途中で車が壊れて、村の外へ出る事は失敗してしまう。
*結局、5人(4人+祖母)は祖母の家に逃げ込む。少年は祖母が身に着けていた侯爵夫人のペンダントに反応する。祖母にとってはいとこになる、名前はディエゴ。村人全てがオオカミ人間になっているが、マリオに変化がないことを訝かるトマス。マリオは冗談で苦しむ振りをするが「俺は両親の新婚旅行先で生まれたから」と弁解する。
*祖母が警察に通報しておいたため、2人組の警官がやって来る。彼等は村に転がるオオカミ人間の死体を発見、状況を確認している内にオオカミ人間に囲まれる。若い警官は逃げようとして襲われ、老いた警官は「こんな時は敵の不意を突くのが1番」と呟き自らの頭部を撃つ。
*祖母の家では、窓も扉も締めてオオカミ人間を警戒。トマスは杭を尖らせている。「杭は吸血鬼を殺す道具じゃないのか?」「銀の弾丸は作れないし、聖水もないからな」夜明けまでは3時間。
*そんな中、祖母が自分の伯父(侯爵夫人の夫)が書き記した本を発見。それによると侯爵夫人は、恨まれていた男に殺された。侯爵は弟(祖母の父)を連れて逃亡。マドリッドに住み、祖母の父は祖母の母に出会って結婚した。侯爵は数年後に死亡。その前に呪いについて詳しく調べ、祖母の父に伝えた。侯爵夫人に襲われた旅芸人の男はルーマニア出身で、オオカミの血が流れていると言われる一族の出身だった。ディエゴは半分オオカミで、半分人間なのだ。
*その時、屋根裏から物音がして、トマスとカリストが様子を見に行くことに。屋根裏部屋を覗き見ると、窓からオオカミ人間が大量に傾れ込んでくる。1階へ逃れるが、そちらからもオオカミ人間が侵入。追い詰められた時、老警官が助けにやって来る。彼はオオカミ人間を騙すため、自分の頭皮だけを撃っていたのだ。警官はオオカミ人間を何体か射殺し、ランプを投げて屋敷に火を放つ。追って来たオオカミ人間は、車を撃って爆発に巻き込んで撃退。
*それでもまだ残ったオオカミ人間が追って来る。「聖なる場所に呪われた獣は入れない」と考えて、6人(4人+祖母・警官)は教会に逃げ込む。ここでは電波が届くが、携帯電話の電源が落ちる。そして思惑は外れて、オオカミ人間は難なく教会に侵入。トマス達は主に杭を用いて必死に抵抗、カリストが噛まれるがトマスが助ける。しかし1体が祖母とディエゴに接近し、祖母が首を締め上げられて犠牲になる。
*5人(4人+警官)は徐々に後退。祭壇の下には地下へ繋がる入口があり、地下道は無政府主義者の武器庫へ繋がっている。祭壇の下からダイナマイトを引き摺り出すカリスト。トマスは皆を先に行かせてオオカミ人間と対峙、ダイナマイトで一掃する。
*4人と1匹(カリスト・マリオ・少年・老警官とヴィト)は地下道を走って逃げる。トマスは逃げ遅れたかと思ったが、墓から気配がする。マリオが助け出そうとして穴に腕を差し入れると、無残に食い千切られてしまう。オオカミ人間の生き残りが飛び出してきて、その背後からはトマスが現れる。オオカミ人間をスコップで殴り倒し、十字架の墓石を引き抜いて胸に突き刺すトマス。最後のオオカミ人間が死ぬと、ディエゴは急速に老いて息絶える。
*夜が明け、警察や救急車がやって来る。やがて傷が癒えた頃「マリオと俺は噛まれたから、変身するかも」と心配するカリスト。そこでオオカミ人間に変身するかどうか、満月の夜に確認することに。2人を背中合わせにして鎖で縛って、銃を準備するトマス。「トマスの指を味見したか?」「塩加減をみた時に皮を食べたかも」「俺もだ、だとしたら呪いには掛からない」「トマス、解いてくれ」と口々に言う2人。
*やがて2人ではなく、トマスが苦しみ出す。噛まれていたのか、それともこれも呪いなのか。狼狽えるマリオに対し、カリストは「噛ませよう、俺達も変身して3匹で群れをなすんだ」と覚悟を決める。「俺は腕1本のオオカミ人間かよ」「スペインの田舎町を脅かす、夜の獣になるんだ」
*そんな遣り取りの間に、トマスは完全に変身。カリストとマリオは絶叫し、オオカミ人間と化したトマスは雄叫びを上げる。
■雑感・メモ等
*映画『人狼村 史上最悪の田舎』
*レンタルにて鑑賞
*狼人間を題材とした(人狼ゲームとは無関係な)スペイン製ホラーコメディ
*ホラーとしての面白味は殆どなく、割とコメディ寄り。登場人物の年齢層高め(ノリは悪ガキ的)で雰囲気緩め。犬は無事です。
*あらすじに「生け贄を捧げなければ村人全員が人狼と化してしまう」とあるけど、これは割と後半の展開だよね。
*ネタバレでは端折っているけど、終始おふざけが挿入される感じ。例えばトマスが「羊で[性欲を発散]させたら、その後羊が妊娠。「羊人間が生まれるかも」と2ヶ月眠れぬ夜を過ごした」というカリストの秘密を暴露する場面がある。(『LAMB/ラム』みたいな?)(因みにそこでマリオは「誰でもペットとヤったことくらいあるよな。俺はペットのハムスターを…」とか言う。)(何したの。)ラスト付近ではカリストが「スペインの田舎町を脅かす夜の獣になるんだ」の後「羊を襲って子供を産ませる」と続ける。
*あとマリオは搬送される時に「警察に訊かれたら、俺の名前はアレハンドロ・サンズだと言ってくれ」と言う。トマスの祖母の墓前には、盲目の男が亡き妻のために用意した花を奪って供え、トマスから「お前は人間の屑だな」とか言われる。他にも細かいネタが色々。
*冒頭で100年前の発端を[1901年の出来事]としているので、お話の舞台は2001年なのかな。それとも侯爵夫人の息子が10歳になってからカウント開始?2011年製作の映画なのでそちらかも。祖母が「15歳まで毎年、夏休みを過ごしていたわね」と言い、カリストが「15年前は親友だったのに」と言うので、トマスとカリストは30歳前後の設定か。
*祖母が村に住んでいてトマスは夏休みに遊びに来ていただけなのか、自分の家は別にあって夏休みは祖母の家で過ごしていたのか。遊びに来ていただけで[名誉村民]は厳しい?あと祖母曰く祖母宅は「20年空き家」なのに、カリスト曰く「15年前は親友」だから、やっぱりトマスの家は別にあるのかな。(どうでもいいことが割と気になる。)