デーモン・インサイド | m-memo

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ネタバレだらけの映画メモ。

忘れ易いので自分用にメモしてます。
ネタバレ部分は詳細を記載することもあれば、
二言三言のこともあります。

 

■あらすじ
同性夫婦のジャッキーとジュールズは結婚1周年記念に、ジャッキーが幼少期に住んでいた湖畔の家を訪れる。2人で楽しんでいたその夜、近所に住むジャッキーの幼馴染がやってくるが、微妙な雰囲気を感じたジュールズは翌日湖の向かいの彼女の家を訪ね、過去に起こった悲惨な水難事故の話を聞く。数日後、突然ジャッキーがジュールズを崖から突き落とし瀕死の重傷を負わせる。妻の恐ろしい一面を知ったジュールズは必死で逃げようとするが、ジャッキーは彼女の息の根を止めるべくライフルを持って追いかける。そして事態は幼馴染夫婦をも巻き込んで凄惨な色合いを帯びていく―。(メーカーサイトより)

■ネタバレ
*同性結婚しているジュールズとジャッキーは、結婚1周年の週末旅行でジャッキーの故郷ティンバー・ベイにやって来る。車で騒がしいロックを流すジュールズに呆れながらも楽し気なジャッキー。車はやがて深い森の中、湖畔の大きな家に辿り着く。ジュールズはその家を気に入り、到着早々「永住したい」と言う。実際には数日の滞在で街からは遠い。ジャッキーは持病のためインスリン注射を持ち込んでいる。料理していた筈のジャッキーが姿を消したため探してみると、彼女は湖に沈んでしまったボート小屋を見詰めて立ち尽くしている。ジャッキーの表情も沈んで見えるが、彼女は何も言おうとはしない。
*穏やかな夜を過ごしていると、ジャッキーがギターを取り出し歌を歌い始める。『内に秘めた悪魔を血を流して外へ出して、また私を愛する?悪魔が中に居る』2人が服を脱いでソファで重なり合っていると、窓の外に車のヘッドライトが見える。周辺に他に民家はなく時間も遅い。ジュールズは警戒し狼狽えるが、ジャッキーは躊躇わずにドアを開ける。車から降りてきたのは2人と同世代の女性サラ。湖の反対側に住んでいて、ジャッキーとは面識があるようだ。久し振りに灯りが点いているのを見て、泥棒や浮浪者なら問題だと考えてやって来たらしい。「もうここには来ないと思ってた」と言うサラ。相手が不審者等ではなく安堵するジュールズだが、彼女がジャッキーを「メーガン」と呼んだため、事態は寧ろ深刻になる。

*ジャッキーが名前を偽っていた事でジュールズの態度は硬くなり、2人は険悪な雰囲気に。夜が明けると冴えない気持ちを振り払うように、森の中を1人で走るジュールズ。湖岸に辿り着くと小屋からは離れた場所に古いボートが打ち上げられていて、船底に引っ搔き傷のようなものがある。その傷に指を這わせているとジャッキーが姿を見せて「乗ってみる?」と声を掛ける。
*湖面で揺れるボートの中、ジャッキーは「自分の名前が嫌いだった」と言う。ゲイだと自覚してからは更に自分らしくないと思えた。話しておくべきだったが、自分にとっては過去の出来事だった。そんな話をして、ジュールズの首にペンダントを掛けるジャッキー。ロケットになっているペンダントトップの中には、2人の笑顔の写真が収まっている。ジュールズが苦笑しつつ「狡いよね」と言うと、ジャッキーが笑う。「まだ許してないよ」「分かってる」
*ライフルを持ち出して、並べた空き缶を撃つ2人。ジュールズの弾は当たらず「照準器が歪んでる」と言い訳する。ジャッキーの構え方を笑うジュールズだが、彼女は見事に弾を命中させる。ここに住んでいた頃は、父親と狩猟にも出掛けていたらしい。ある夏の日、父が「命の学びが必要だ」と言い出して、友人のジェニーと共に明け方に叩き起こされた。父から離れて歩き始めると、至近距離に熊が現れた。
*ジャッキーはライフルで熊を撃ち、初めて動物を仕留めた事で父に褒められるだろうと考えた。しかし熊はまだ生きており苦しんでいた。安楽死させようとしたが、弾が詰まってしまった。「20分くらい熊を見下ろしてた。熊の命が消えるのを見てた。それが忘れられない」とジャッキーは言う。後に父は、弾が詰まった時のためにと娘にナイフを渡した。「パパは言ったわ、『殺すのは生きるためにだけ』と。翌月まで掛けて、熊の肉を全て食べ切ったの。何も無駄にせずに」
*翌日ジュールズが目を覚ますとジャッキーが居なくなっていて、携帯電話には「ペンがないから留守電を残すわ。90年代っぽいでしょ?」と言うメッセージ。彼女は1人で街へ買い出しに出掛けて、戻るのは午後になるらしい。双眼鏡を覗くと、湖の反対側には1軒の屋敷が見える。恐らくあれがサラの家だろう。手漕ぎボートで湖を横切り、サラの家を目指す。甘く考えていたが対岸までは相当な距離があり、どうにか辿り着いた頃にはすっかり疲弊しているジュールズ。サラとその夫ダニエルは驚きつつも温かく迎えてくれる。
*サラの家、暖炉の上に飾られた写真には3人の少女が写っている。遠い日のジャッキーとサラ、もう1人は誰かと尋ねるとジェニーだと言う。昨晩の話に出てきたジャッキーの友人だ。彼女もまだ近隣に住んでいるのかと訊くと「写真を撮った2週間後に亡くなった」との返事。サラはジュールズがその話を聞かされていない事に違和感を覚えたようで、落ち着かない様子だ。ダニエルはその件を聞き慣れているらしく、少し困ったような顔で笑っている。「あれは忘れられない衝撃的な出来事だったわ」
*会話もないまま翌日、一旦は軟化していたジュールズの態度がまた硬くなる。ジェニーの死の原因がジャッキーにあるかのように、サラが話したためだ。自分が居ない間にサラに会ったと知って不満気な表情のジャッキーだが、ジェニーとの出来事を語る。若かった頃は体力もあり馬鹿だったため、対岸まで泳ごうとした事もある。その夏の日、ジェニーと競争して湖の中央まで泳いだら、彼女の姿が消えていた。救助隊が彼女の遺体を発見したのは2日後。警察に調べられたが罪には問われていない。
*「ジェニーを傷付けたりしない。彼女は親友だったのよ」と涙を流すジャッキーを抱き寄せるジュールズ。手を繋いで森を抜けると、見晴らしの良い場所に出る。生憎天気は悪いがジュールズの気持ちは先刻より晴れている。眼前に湖が広がる景色について話し掛けようと振り返ると、突然ジャッキーがジュールズを突き飛ばす。ジュールズが立っていたのは崖の端に近い位置で、彼女は崖下へと転落。ジャッキーが身を乗り出して覗き込むと、遥か眼下に血塗れで倒れて動かないジュールズが見える。
*歩いて家まで戻り、着ていたシャツを暖炉で燃やすジャッキー。ジュールズが落下する直前に咄嗟にシャツを掴もうとしたのだろう、袖が破れてしまっている。次いで鏡の前で「助けて、救急車を…妻が崖から落ちた」と嗚咽しながら話す。それは通報の予行練習で、どんな台詞が妥当かを模索しているのだ。通報用の台詞を反復しながら森へと戻り、崖下までやって来るジャッキー。しかしそこにはジュールズの姿はなく、血に濡れたロケットが残されている。身長の何倍もの高さから落下したが、ジュールズは死ななかったのだ。ジャッキーは森の中でジュールズを探し始める。「ジュールズ、何処に居るの?」
*ジュールズは傷付き流血し、身体を引き摺るように移動している。激痛に耐えながら外れた肩を戻すと、自分を探すジャッキーの声が聞こえてくる。「大丈夫?返事をして。ごめんなさい、ワザとじゃないの」しかし故意に突き落とされたのは明らかだ。岩陰に隠れて息を潜める。直ぐ傍にジャッキーが居る。「事故だったのよ、どうしよう」ジャッキーの嗚咽に絆され思わず身を起こそうとするが、それより一瞬早く彼女は冷たい貌になり「クソ」と呟く。ジャッキーは再び泣き始め「愛してるの、心配で堪らない」と言うが、それが芝居である事はジュールズにも分かる。岩陰に隠れ直して息を殺して、彼女が立ち去るのを待つ。
*どうにかその場は遣り過ごしたが、ジャッキーは諦めない。夜になり暗くなった森で、ジュールズを探し続けている。もう敵意を隠さない。「混乱してるでしょ?だって私達愛し合ってるもの。…ここは私の森よ、絶対に見付ける。時間の問題よ」雨が降り出して、漸く家に戻るジャッキー。ジュールズは堪えていた息を吐き出して嗚咽する。カラスの真似をしてジャッキーを笑わせた事が思い出される。「カラスは鳥の中で1番頭が良い」「それなら私は白頭ワシよ。怖いでしょ」
*夜が明けるとジャッキーは最早殺意を剥き出しにライフルを握る。ジュールズは必死に痛みや眠気と闘い、昨夜の雨で出来た水溜りで水を飲む。幾らか体力が回復し、痛む身体で移動を始めるジュールズ。やがて家に辿り着き、転がるように屋内へ。必死に携帯を探すが、隠されたのか処分されたのか見当たらない。パソコンは見付かるが回線は繋がらない。
*外部と連絡を取る事は一旦諦めて、救急セットで応急処置をする。錠剤を服用して痛めた脾臓を確認すると、幸い破裂はしていない。元医師だったジュールズは、裂けた腹部を自ら縫う。折れた足首は捻挫だと思い込もうとし、本来曲がらない方向を向いている指を力任せに元へ戻す。やがてジャッキーも家に戻る。ジュールズの居た痕跡があるが、もう彼女自身の姿はない。その頃ジュールズはボートで湖へと漕ぎ出していた。
*ジュールズの動向に気付いたジャッキーが岸から発砲するが、ボートまでは既に幾らか距離があり命中しない。ジャッキーもジュールズを追って湖へ。難なく距離を縮めたジャッキーが「あなたと話がしたい」と声を張り上げるが、先刻発砲されたばかりのジュールズはそれに応じる訳がない。しかし懸命にオールを漕いでも、満身創痍では分が悪い。時には「死んだも同然ね、殺してやるわ」と呟き、時には楽し気に笑いながら距離を詰めるジャッキー。対岸に着く前に追い付かれ、ボートに乗り移られる。オールで応戦しようとしても、今のジュールズは万全の状態ではない。容易く捻じ伏せられる。
*「ここで騒がないで」とナイフを突き付けるジャッキー。もうサラの家が近くなっている。家の外に出ていたダニエルが2人に気付いて声を掛ける。ジュールズが血塗れである事までは認識出来ていないが、ジャッキーの怒声は聞き咎めたようで「大丈夫か?」と気遣わしげな声だ。ジュールズを「余計な事を言ったら終わりよ」と威嚇しながら、ダニエルには明るく挨拶するジャッキー。ジュールズがサラとダニエルを日曜日の夕食に誘っていたため「また明日の夜に」とダニエルが笑う。「実は都合が悪くなったの」とジャッキーが言うと「今夜が良い」とジュールズが叫ぶ。「うちもその方が良い、じゃあ8時に伺うよ」ジャッキーは不機嫌な顔だが、ひとまずジュールズはその時までは生き永らえた。
*ジュールズはジャッキーがおかしくなってしまったと感じているが、ジャッキーには計画通りだ。「結末は1つだけよ。あなたは転落死をして私は保険金を手に入れる。だから当然、事故に見せないと」家に戻り、バスタブでジュールズの血を洗い流しながらジャッキーは言う。「愛はなかったの?」「ない。簡単に騙せると思った」「このままじゃ済まないわ。サラ達が来たら死ぬ程大声で叫ぶ」それを聞くとジャッキーはジュールズの頭を押さえ込んでバスタブに沈める。苦しみ足掻くジュールズの動きが鈍くなると漸く開放してナイフを突き付け「僅かでも何かが変だと匂わせたら、このナイフをサラの胸に突き刺す」と言い放つ。ここよ、とジュールズの身体で示しながら「みぞおち辺りを刺して、お腹まで引き裂く。そして胃や腸を引っ張り出してやる。分かった?」と続けるジャッキーに対して、怯えて無言で頷くしかない。
*暖炉の前で座る2人。ジュールズは「お父さんは『殺すのは生きるためだけ』って言ったんでしょ?これは違うわ」と言うが、ジャッキーは何も答えない。「あなたは病気よ、一緒に治療しよう。全部忘れて一緒に居るから」と懇願すると、ジャッキーは「最初の妻の話をしてなかったわね」と冷たく言う。「エリカよ。19歳で結婚した」「殺したの?」「休暇中だったわ。お酒を飲んだ後、泳ぎに出た」それはジュールズの状況ともジェニーのケースとも一致する部分がある。「私は彼女を悼み、彼女の両親と祈り、葬式で泣いた。あなたの時もそうする」絶望の表情を浮かべるジュールズ。「彼女は幾らだったの」「値打ちものだった」
*ジェニーの死以降ジャッキーに懐疑的なサラは、ドアをノックする前に「メーガンとまた食事するなんて」と漏らす。ダニエルは「リラックスして行儀良く。直ぐに帰れるさ」とアドバイスする。明るく夫妻を迎え入れるジャッキー。充分に身体を動かせないジュールズだが、2度湖を横切ろうとした結果の筋肉痛だと取り繕う。食事は表面的には和やかに進み、サラは2人の馴れ初めを尋ねる。「一番惹かれたのは考え方が全然違うところ」と答えるジュールズ。「でも相手が本当は何を考えてるかなんて分からない。それでも飛び込んで、幸せだと信じる。失敗しないように祈る」涙を浮かべてそう話すジュールズ。重苦しくなる空気。慌てて「勿論メーガンとは幸せよ」と微笑む。
*食後にワインを楽しむ4人。ポーチに居るジャッキーにダニエルが声を掛ける。「秘密だけど、妻は君の事で勝手な思い込みをしてるんだ」と。「君の事を誤解してるようなんだ。君が謂わば…」「サイコパスだと?」それまでの笑顔から一変したジャッキーの鋭い眼光に戸惑うダニエル。しかしジャッキーが再び笑顔になると「ワインのせいでビビったよ」と笑い返す。一方ジュールズは、リビングでサラに何かを耳打ちする。その内容は屋外に居るジャッキーには聞こえない。しかしジャッキーが見ている事に気付いた時の2人の表情で察しはつく。
*堪らず「メーガンから離れて」と叫ぶサラ。ダニエルは妻が何を言っているのか理解出来ない。ジャッキーは躊躇わずに隠し持っていたナイフでダニエルの首を切り裂く。そしてリビングに踏み込み、2階へ逃げたサラを追い掛け引き倒して馬乗りになる。「殺さないで」と泣き叫ぶサラ。ジャッキーはサラのみぞおちにナイフを突き立てて「ジェニーより弱い」と呟くと、繰り返しナイフを振り下ろす。
*返り血を浴びた姿で1階に戻るジャッキー。ジュールズは自由にならない身体で、サラを助ける事も逃げる事も出来ずリビングのソファに座っている。ジャッキーはジュールズの指を掴み、先ずジュールズの首筋に、次いで自分の首筋に指を当てさせる。「分かる?あなたは心拍が乱れてる。私は?」「乱れてない」「その通りよ」ジャッキーは薪割り用の斧で、夫婦の死体を解体する。「湖の深さを知ってる?私は知ってるわ、調べたから。あなたを湖に沈めるか崖から突き落とすか決め兼ねていたのよ」世間話でもするような調子で、斧を振り下ろすジャッキー。嘔気を堪えるジュールズに「吐かないで。次はあなたにやらせるわよ」と鋭く言う。
*深夜の湖に浮かぶボートに乗る2組のカップル。1組は切り刻まれている。ジャッキーは死体を湖に投げ入れ「これで良し」と満足そうな様子だ。やがて朝になり、家に戻る2人。ジュールズは痛む身体で、血で汚れた床や壁を掃除させられている。「殺す必要はなかったのに」と静かに訴えると、ジャッキーは「殺したのはあなたよ。安易な逃げ道を求めた。そんなものないのに」と言い放つ。「何度も言わせないで。擦らずに拭き取るの。擦ると染みになって鑑識捜査でバレる」ジュールズはぼんやりと抜け殻のような貌で「何故急に父親の話をしたの?避けてた話題なのに。彼に何かされた?母親が犠牲に?」と訊く。何か原因があれば納得も出来るだろうか。しかしジャッキーは笑って否定し「何もされてないわ。両親は幸せだった」と答える。「それじゃ何故?何があなたを悪魔に?」「生まれ付きよ。環境じゃない」
*ジャッキーはジュールズをベッドに拘束しておき、自分で血の跡を消していく。どうにか逃れられないかと身を捩っていると、やがてジュールズの腕がロープから抜ける。隣りには掃除を終えたジャッキーが眠っている。ジュールズはジャッキーの身体を跨いで馬乗りになり、ベッドサイドテーブルに置かれたナイフを掴む。ナイフを振り上げてみぞおちに突き刺すが、それは夢だった。朝になるとジャッキーはジュールズにトーストを差し出す。検視されて胃が空だと困るからだ。テーブルにはペンチも置かれている。崖から転落死するのに、腹部が縫われていたら不自然なためだ。冷静で抜かりないジャッキー。
*僅かな時間リビングで1人になったジュールズは、壁に飾られた熊の剥製の陰に何かがある事に気付く。熊の頭部と壁の隙間に捻じ込まれていたケースを開いてみると、中にはジュールズが贈られたものと同じ形のロケットが幾つも入っている。ジャッキーが戻って来て、怯えてケースを取り落とすジュールズ。ジャッキーは無表情だ。その後、ジャッキーの運転で森の中を走る。「楽しんでるのね。お金のためじゃない」「猫にでも悪戯すれば?変態のやる事でしょ」「分かったわ、あなたが必死だって。何かを感じたいんだよ、何でも良いから」あれこれ言い募ってもジャッキーは冷淡に「言葉は無駄よ。落下を止めてくれない」と嘲笑う。ジュールズもそれを認め「そうだね、言葉じゃ無理」と返す。
*そこでジュールズは隠し持っていた注射器を、ジャッキーの首筋へ突き立てる。ジャッキーはブレーキを踏み、ジュールズは森へ逃げ込み懸命に走る。辿り着いたのは崖の上。ジャッキーにとってはお誂え向きの場所だ。そこへ覚束ない足取りながらジュールズに追い付いたジャッキーがやって来る。「このクソ女、これで終わりよ」と毒吐くが、ジュールズを突き落とす事は叶わず倒れ込む。ジュールズはジャッキーが落としたナイフを拾って慎重に接近。確認してみるとジャッキーが意識を失っているのは確かなようだ。安堵や落胆が入り交じり、嗚咽するジュールズ。
*ジュールズは元の場所へ戻って車に乗り込み、1人で走り始める。しかしカラスの鳴き真似をした時の事を思い起こす。ジャッキーは自分を白頭ワシだと言った。彼女からこのまま逃げ切る事が出来るのか?結局ジュールズは崖まで戻る事にする。しかしそこにジャッキーの姿はない。困惑しつつ家に戻っても無人だ。ライフルを手に警戒するが、周辺に気配はない。ジュールズは窓際にスピーカーを置き、お気に入りの歌を大音量で流す。ジャッキーが嫌がっていた騒がしい曲。
*その音は静かな森の中で遠くまで届き、ジャッキーもそれに気付く。彼女が家に帰り付いた頃にはまた夜になっている。密かに侵入するのではなく堂々と姿を見せたジャッキーに、背後から接近してライフルを突き付けるジュールズ。「皆あなたを信じて殺された。私も信じてた。もう同じ事はさせない」ジャッキーはジュールズの言葉を聞き流し「引金を引けばあなたが死ぬ事になるわ」と言う。ジュールズが手にしているのは2人で射撃をしたジャッキーの愛用品とは違い、壁に飾られていた骨董品だ。「50年は使ってないから、弾丸トラップが破裂して顔が吹っ飛ぶ」とのジャッキーの言葉に逡巡するジュールズ。彼女が撃たないと踏んで、振り向いて向き合うジャッキー。ジュールズが意を決して引金を引くと、寸前に銃の先端を払って躱す。
*揉み合いになり倒れ込むと、万全ではない身体のジュールズは直ぐには立て直せない。その隙に2階へ駆け上がるジャッキー。少し遅れてジュールズが2階へ上がると、天井収納式の階段が下りている。上に居るのか罠なのか。暗い屋根裏へと進むと、背後からジャッキーが襲い掛かる。激しく揉み合う2人。戦いに勝利したのはジャッキーだ。意識のないジュールズの身体を引き摺って崖まで運ぶ。横たえたジュールズの傍に座り足で押し出していると、彼女は落下の寸前に漸く意識を取り戻す。「止めて」と叫ぶが、身体は悲鳴と共に崖下へ消える。
*「お願い助けて、妻が崖から落ちたの」ジャッキーは練習済の台詞で通報する。家に戻ってインシュリン注射を腹部に打ちながら、ジュールズとの会話を思い出す。「混合型インスリン製剤にすれば?」と言うジュールズに「何故医者を辞めたの?」と訊いた。「その話はしないって言ったでしょ」と言うのが返事だった。テーブルの上にはジュールズのパソコンが置かれている。開いてみると、ジュールズが動画を残している。「これを見ているなら、私は死んだんだね」と話すジュールズ。「伝えたい事がある。今頃どんな気分かな。そろそろ身体に異変を感じてる?注射する時は気を付けないとね。漂白剤が血中に流し込まれると血栓が出来る。血栓は血管の中を移動する。血栓が脳に届くと何が起きる?…脳卒中だよ。今のあなたの顔が見たい。値打ちものだよね?」
*森の中を走るジャッキー。彼女の前に大きな熊が現れる。少女時代のジャッキーが熊に発砲する。衝撃を受けて倒れるのは現在のジャッキーだ。こちらを見下ろす過去の自分の貌が見える。それはダメージを受けたジャッキーの脳内で起こっている。一方、崖の下で倒れたまま微動だにしないジュールズ。静かな森の中でも至近距離で注意深く聞かなければ分からないが、僅かに息を吐く音がする。

■雑感・メモ等
*映画『デーモン・インサイド』

*レンタルにて鑑賞
*カナダ製サイコスリラー

*女性のシリアルキラーがメインに据えられているのは珍しいかなと思ってレンタル。同性夫婦なのは、ジャッキーが獲物として御し易い相手を選んでる結果なのかな。全体的には妥当なテンポで緊張感もあり、それなりに楽しめる。夜の森でジュールズを捜すジャッキーはなかなか怖い。
*細かい部分では幾つか謎もある。例えばジャッキーが名前を変えているのにその点を説明せずに、わざわざ故郷に戻って来るのはリスクもあって不自然に感じる。ボートの傷についても詳細説明なし。(ジェニーが付けたんだろうけどどんな状況だったのか気になる。)サラが深夜に大きな湖の対岸から、敬遠してる相手の家にやって来るのも不思議。泥棒や浮浪者かもと思ったのなら尚更単身での訪問は危険では。そしてジュールズが医師を辞めたエピソードも思わせ振りで気掛かり。ジャッキーへの対応が何かと甘いのは未練もあって仕方ないんだろうけど、見ていて些か苛立つ。
*何より疑問なのはあの高さから落下して2度も助かるのかと言う点だけど、あれでジュールズが死んでしまっては胸糞悪いのでラストは正解だと思う。皮肉にもジャッキーの通報で助かると言う展開なら良いんだけど。
*劇中ジャッキーが歌う曲の歌詞はこんな感じ。『内に秘めた悪魔を、血を流して外へ出して/また私を愛する?悪魔が中に居る/街に1人残し森に1人残した/そしてあなたを置いて川を越えここに来た/朝に置いてきた2人の驚いた表情/夜に舞い戻り祈る者を襲う/内に秘めた悪魔を、血を流して外へ出して/悪魔が中に居るよ、早くお逃げ/悪魔よ出ておいで/私と顔を合わせたら目をくり抜くよ/1人は赤ん坊のようにひたすら泣いた/1人は罪人のように許しを請うた』映画の内容に沿ってる感じだけど、これはキャスリーン・マンローの『Bloodlet』と言う曲みたい。