■あらすじ
閉館前の市民プールで仲良く泳ぐ姉妹。姉のブリーは、結婚を控え幸せに満ち溢れていた。一方、妹のジョナは、過去に罪を犯し保護観察中の身。このプールの清掃員として働いており、心の底では幸せな姉に嫉妬していた。閉館時間を迎え皆がプールから上がる中、ブリーはプールで婚約指輪を失くしたことに気付く。姉妹は協力して水中を探すが、既に全員がプールから上がったと勘違いした館長は、プールの電動カバーを作動させ帰宅してしまう。プールに取り残された姉妹は、外に出ることが出来ない。明日からプールは休館になる。姉妹は助けを求めるが、叫び声は誰もいない館内に響くだけだった—。(メーカーサイトより)
■ネタバレ
*ケテア市民プールで泳ぐブリー。彼女は糖尿病を患っていて、プールサイドで休憩しながら血糖値を測っている。右腕には大きな火傷の跡がある。ブリーが再び泳ぎ始めると、妹のジョナもやって来る。ロッカーに空きがなく、ジョナは自分の車の鍵を、観覧席に置かれている姉の鞄に入れる。
*市民プールは祝日は休館で、祝前日の今日はいつもより閉館時間が早い。館長は早く片付けたがっていて気忙しい態度だ。従業員のクララは落し物の財布の中身を物色している。所長はそれを責めず、やんわりと咎めただけで見逃してやる。
*閉館時間が迫り、次々と人が消えていく。姉妹だけが残されるが、ブリーの大事な指輪が見付からない。泳ぎの合間に外して、確かに鞄に入れておいたのに。館長から早く帰れと急かされるが、諦める訳にはいかないものだ。
*やがてジョナが、水底の排水口に挟まっている指輪を見付ける。ブリーが飛び込むが、指輪は鉄蓋からなかなか外れない。ジョナも飛び込んで手伝うものの指輪は鉄の格子に挟まって動かず、更にジョナの髪が排水口に巻き込まれてしまう。
*髪を外そうと2人が四苦八苦していると、頭上でプールの蓋が閉まっていく。監視室からプールを確認した館長が、水底の2人に気付かずに蓋を操作したのだ。漸くジョナの髪を排水口から引き抜いた時には、プールは蓋で完全に塞がれていた。蓋は不透明で外の様子は分からないが、どうやら周囲にはもう誰も居ないようだ。助けを求めて叫んでみても何の反応もない。
*ジョナは不機嫌に喚き散らし、ブリーはそれを宥めて解決策を探そうとする。まずは足が着く場所へ移動して2人で押し上げてみるが、蓋は持ち上がらない。蓋はグラスファイバー製で、所々に小さな穴が開いているが簡単には割れそうにない代物だ。それでも弱い部分がないか、使えそうな物はないかと探ってみる。誰かが忘れたタオルや割れた表示パネル等があるが、役に立ちそうにない。
*ジョナは相変わらず不機嫌な態度で、不平不満を言い募る。彼女は施設でリハビリしていたが、戻った時には家に姉が居なかった。恋人デヴィッドにプロポーズされて家を出ていたのだ。ジョナの態度から、彼女が婚約指輪をプールに投げ込んだのだと気付くブリー。だからこそ見つけ難い水底の指輪にも気付いたのだろう。今度はブリーが激高する。
*それでも何とか打開策を見付けようとするブリー。水底の排水口の鉄蓋にネジの緩いものがあるが、1人の力では動かない。重い鉄蓋を外せたら、それでプールの蓋を割れるかもしれない。また髪が吸い込まれるのが嫌なのか、ジョナは積極的ではない。
*そこへ携帯電話の着信音が聞こえてくる。プールサイドの観覧席に置いたままの、ブリーの鞄の中からだ。鞄は観覧席の隙間に挟み込むような形になっていて、監視室からは見えなかった。電話はデヴィッドからだったが勿論それに答える事は出来ない。それでも幾らか元気を取り戻したブリーは、再び排水口の蓋を外そうとする。しかし、やはり1人で動かす事は出来ない。
*時間が経過し、タイマーが作動したのかプールが少し暗くなる。その時ブリーの携帯に再び着信があり、それを切っ掛けにデヴィッドに対する不満を並べ立てるジョナ。そんなジョナにブリーも苛立って口論になるが、姉の体調が悪い事にジョナが気付く。ブリーは3年前に糖尿病だと診断されたが、姉妹は疎遠になっていたためにジョナはそれを知らなかった。直ぐにでも注射を打つ必要があるが、今の状況では不可能だ。
*ジョナは割れたパネルで穴を拡げようとするが、蓋の方が硬いため状況は芳しくない。ジョナはブリーの火傷について尋ねる。母や姉から断片的に話を聞かされただけで、何が起こったのか詳しく知らないのだ。酔い潰れた父が煙草を吸ったまま寝込んでしまった。炎は円状に燃え広がったが父は寝込んだまま気付かず、どうにか助け出そうとしたが無理だった。ブリーの火傷はその時のものだ。
*2人が火事の話していると、人の気配がする。館長が帰った後も清掃作業を続けていたクララだ。彼女はブリーの鞄を見付け、忘れ物だと思い喜んで物色する。すると、蓋で塞がれたプールから助けを求める声がする。「指輪を探している内に蓋を閉められた」と訴える姉妹。何時間も閉じ込められていた2人は必死だが、クララはブリーの財布の方に興味がある。監視室へ行くと、監視カメラのスイッチを切るクララ。
*クララは2人に名前や出身地を尋ねる。直ぐにでも外へ出たい2人は困惑。更に彼女は携帯電話のロックを解除するためのパスワードを聞いてくる。ジョナは制止するが、他に手段はなくブリーはパスワードを伝える。クララは携帯に保存された画像を眺めてあれこれ話し掛けてくるが、蓋を開けてくれる様子はない。
*9ヶ月前に刑務所から出た事・パート勤務に格下げされて家賃も払えない事を話すクララ。「チャンスは活かさないと」と言い、ブリーの銀行口座のパスワードも聞き出そうとする。助けてくれる保証もなく流石にそれは躊躇するが、ヒーターを切られて已む無く番号を教えるブリー。
*クララは姿を消し、2人の身体が次第に冷え始める。体力を消耗するのは避けたいが、ジョナは「動いていないと身体が冷える」とプールの蓋を割るべく再び試行錯誤する。自傷行為を繰り返しカウンセリングを受けているジョナに「本当に怖いものは何なの」と問い掛けるブリー。ジョナは「そこら中に居る怪物よ。黒くて醜いものが自分の中にも居て、それが私を食べてる」と話す。ブリーは「もう怖がらなくて良い、終わったのよ。パパはもう死んだわ」と言う。
*ジョナが蓋を割る作業に戻ろうとすると、そこにクララが居た。蓋に寝転がって、ずっと2人の話を聞いていたようだ。「望み通りにしたんだから助けてよ」と訴えるが、相手は「口座に80ドルしか入ってないなんて」と不満気だ。一向に助けてくれる様子がないクララに腹を立てるジョナ。クララがその場を離れた隙に、割れたパネルを蓋の穴に擦り付ける。研いで尖らせるのだ。「あなたに話があるの、姉さんには聞かれたくない」とクララを騙して耳を寄せさせると、鋭利にしたパネルを穴から押し出して突き刺す。
*クララが傷を負い一矢報いたジョナは喜ぶが、事態の解決にはならない。怒ったクララは清掃システムを作動させる。大量の塩素が吐き出され、2人は堪らず許しを請う。次いでクララはブリーの婚約指輪を要求。これにも従う他なく、ブリーは涙を流して指輪を差し出す。「準備が出来たら蓋を開けるわ」とクララは言う。
*大事な指輪を奪われ傷心のブリーは、ジョナから離れてコースロープに凭れる。僅かな時間眠ってしまい夢を見るが、助けに来てくれたデヴィッドは「ジョナを1人にしたら駄目だ」と言う。目を覚ますとジョナは、鋭利にしたパネルを首筋に押し当てている。「姉さんにはデヴィッドが居るけど、私には何もない。私が死んだ方が皆が楽になる」と言うジョナ。ブリーは「あなたが必要よ、乗り越えられる」と必死に説得してジョナを思い留まらせる。
*指輪を手に入れ、このまま逃げようかと考えるクララ。しかし人殺しになるのは本意ではない。逡巡していると、デヴィッドがブリーの留守電にメッセージを残す。彼はブリーからの返事がなければ、直ぐにも警察に通報するつもりのようだ。クララも決断する必要がある。姉妹はクララに反省や感謝の言葉を並べ、クララは「あなた達は教訓を得たようね」と答える。彼女は「蓋を開けたら立ち去る」と言う。そして今後お互い会う事はないと。クララの罪を追及するなと言うのだ。2人はそれを受け容れ、助かる事に安堵する。
*しかしクララが監視室で蓋を操作しようとしても、機械は何の反応もしない。以前に館長から教えてもらったコードが無効になっているようだ。姉妹が「警察へ通報してくれるだけで良い」と懇願しても「刑務所へ戻る訳にはいかない、警察は駄目よ」とクララは聞き入れない。「助けるつもりだったけど、自分達で何とかしてちょうだい」と言い捨てるとクララは立ち去ってしまう。
*ブリーの体調は悪化し、ジョナに「嘘を吐いてた。本当の事を言うわ」と話し始める。「知ってたらもっと早く行動したのに、ごめんね。パパがあなたの部屋に入るのを見た。火事になった日、起き上がろうとするパパを私が押さえ込んだの、動かなくなるまで。もう二度とあなたの部屋には入れないように。…私は怪物を殺した」
*それ以上は話せなくなるブリー。ジョナは排水口へ向かう。繰り返し持ち上げるが上手くいかない。指を痛め、置き去りになっていたタオルを格子に引っ掛けて更に繰り返す。やがて漸く蓋が外れる。ジョナがブリーの元へ戻ると、姉は水に沈み意識を失くしている。慌てて人工呼吸するジョナ。意識を取り戻したブリーをコースロープに掴まらせると、ジョナは鉄蓋でグラスファイバー製の蓋を叩き割る。
*割れて尖った蓋で右腕を傷付けながらも、穴を押し広げるジョナ。ブリーを抱えて漸くプールの外に出る。しかしブリーは昏睡状態に陥っている。鞄から取り出した注射器を打ち、必死で姉に呼び掛ける。やがてブリーが意識を取り戻し、ジョナは胸を撫で下ろす。
*ジョナが安堵の涙を流していると、銃を持ったクララが戻って来る。「車で逃げたけど、あなた達の事が頭を離れなかった。死ななかったらどうしようって」ジョナは「私から姉さんを奪わないで、姉さんが居なくなったら私には何も残らない」と訴える。泣きながら姉の身体に覆い被さるジョナを、結局撃つ事が出来ないクララ。彼女も涙を流し、奪っていた指輪も差し出す。
*ブリーの携帯電話で通報するジョナ。市民プールに居て、姉が死にそうだと伝える。クララには「早く行って」と促す。やがて救急車が到着し、意識を取り戻すブリー。2人はそれぞれ傷跡のある右手を握り合う。ジョナは婚約指輪をブリーに渡すと「2人で怪物を殺したの」と泣きながら笑った。
■雑感・メモ等
*映画『プール(2017)』
*レンタルにて鑑賞
*制作年はIMDbによる(allcinemaでは2016年)
*特殊密室系サスペンス
*ホラーやサスペンス系の映画が好きだから非現実的な設定とか日常茶飯事だけど、そんな中でもこの映画の状況は無理矢理過ぎると感じる。スキー場のリフトやバカンスでダイビングツアー中に取り残されるなら非日常感もあって幾らか納得も出来るけど、市営プールでそんな馬鹿な。休館日前なら尚更、人は勿論だけど遺失物の確認とか念入りに行ってから蓋をすると思うよ。
*それでもこの類いの、主人公が不自由な状況に陥る作品を見てしまうのは、どんなエピソードでお話を構成するのかと言う興味から。まあ大体手札が足りなくてダラダラ緩むんだけど。この作品では質の悪い登場人物を配置して強引にお話を動かそうとするけど、この人物がまた不安定で一貫性がない。妹もまた不安定で、矢鱈に喚き散らして騒がしいのもいただけない。
*因みにメーカーサイトのあらすじでは、妹ジョナが保護観察中のプール清掃員て事になってるけど大胆に違う。クララの名前についてはIMDbにて確認。この状況なので姉妹には勿論名乗ってない。館長との会話の中では名前が出てきたのかな?
*人の心の中に棲む怪物を、姉は父の肉体を殺す事で倒した。妹は姉を守ろうとして結果的に追い払った。そんな骨子だけどそれはそれとして、取り敢えず1回くらい2人で協力して鉄の蓋を持ち上げたらどうなのか。
*ところでプールに置き去りになっていたのは、タオルじゃなくてキャミとかサーフパンツとかかもしれない。