■あらすじ
ノンフィクション作家のエリソンは、一家首吊り殺人事件をテーマにした新作執筆のため、事件現場となったその家に、妻と2人の子供を連れて引越してきた。そして屋根裏部屋で古びた映写機と5本の8mmフィルムを発見する。それら【フッテージ】には、その家で起こった首吊り殺人に加え、時代も場所も異なる溺殺、焼殺、刺殺、轢殺された家族たちの凄惨な殺害現場が写されていた。一体誰が、何のために?それぞれの映像に写り込んでいた不気味な仮面の男と、血しぶきで描かれた記号の意味は? 事件の謎にとりつかれたエリソンの前に、半世紀にわたる邪悪な〈呪い〉が、遂にその正体を現わす—(メーカーサイトより)
■ネタバレ
*犯罪を題材にしたノンフィクション作品を執筆しているエリソン・オズワルトは、新しい本のため妻トレイシーと2人の子供達と共にペンシルベニア州へ引越する。娘アシュリーは元の学校を恋しがっている。「本が売れたら元の家に戻ろう」と宥めるエリソン。アシュリーは絵を描くのが好きで、早速新しい部屋の壁にも描き始めている。『絵を描くのは自分の部屋だけ』と言うのが一番大事なルールだ。
*引越の作業中に警察がやって来る。若い副保安官は本を手にしており、エリソンのファンらしい。サインを欲しがっている様子だが、上司の保安官に咎められる。元居た町でも警官に目を付けられて散々な目に遭ったため、トレイシーは夫に「愛想良くして」と助言するが、保安官は「多くは望まないが、早く出て行って欲しい」と言う。エリソンの本は警察捜査を軽視した内容だとして嫌悪されているのだ。
*エリソンが過去に出版した本は『流血のケンタッキー』、これは成功した。事件の真実を暴いた良く出来た本で、ベストセラーになった。「あれが最高傑作だったのかも」とトレイシーは言う。『凍えるデンバー』は見当違いで、『血の晩餐』は推理を誤り犯人を野放しにした。「前回のような失敗をしたらアシュリーを連れて出て行く」と妻は言う。
*エリソンは以前フィクションを書いていたが、全く売れなかった。そのため成功したジャンルに拘っている。家族には黙っているが、今回引越したのは残虐な殺人事件があった家だ。4人が死亡し、少女が失踪した事件を調査したいと考えている。トレイシーは「ここは事件現場の近くなの?」と疑うが[近く]ではない。エリソンは「違うよ」と答える。
*引越の片付け中、屋根裏で古いフィルムのリールを見付ける。『2011年/家族と一緒に』『1979年/バーベキュー』等とタイトルが書かれている。エリソンは早速書斎で作業に取り掛かる。写真や付箋等をパネルに貼り付けて情報を整理し、屋根裏で見付けたフィルムを見る。庭で楽しむ家族の風景が写っていたが、突然殺人の場面に切り替わる。
*粗いフィルムの映像。頭に麻袋を被せられ、首に紐を掛けられた4人。背の低い2人は子供のようで、そうなれば4人は親子だろうか。紐は高い枝を介して別の大きな枝に繋がっている。紐が結ばれた方の枝をチェーンソーが斬っていく。枝が完全に切れてしまうと、その重みで繋がれたものが引き上げられる。4人の身体は地面を離れて持ち上がる。彼等は苦しみ藻掻くが、やがて動かなくなる。
*それはこの家で起きた惨劇を記録したものだ。酒を呷り再びフィルムを見て『誰が撮影したのか?』『ステファニーは何処に居る?』とメモを書き込む。「何故撮影なんて…」と呟き、庭に出て木を見上げる。屋内に戻ると人の気配がするが、トイレを探しているアシュリーだった。寝かし付けて書斎に戻ると、別のフィルムを見る。今度は水辺の風景で、年代はずっと古いようだ。また突然場面が変わり、鎖が巻き付けられた車が映し出される。車内には縛られて口をダクトテープで塞がれた人達が居るが、そのまま車が燃やされ炎に包まれる。
*警察へ通報しようとするが、本棚に並んだ自分の本が目に入って電話を切ってしまう。フィルムは犯人が敢えて置いたと考えられるが、目的が分からない。他のフィルムのタイトルは『1986年/LAWN WORK』『1998年/SLEEPY TIME』『1966年/POOL PARTY』。先ず『プールパーティ』を見てみようとすると、また人の気配がする。暗い廊下の先に置かれた段ボール箱が内側から開き、半裸の少年が身体を反らせながら絶叫する。12歳の息子トレヴァーの、睡眠障害の発作だった。夫婦で宥めてどうにか落ち着かせる。
*翌朝、トレヴァー本人は昨夜の事は全く記憶にない様子で平然としている。以前は乾燥機の中に排尿した事もあり、それに比べたらマシだと言える。今日から子供達は新しい学校に通う事になっている。トレイシーが子供達を学校に送り、家の中にはエリソンだけになる。
*改めて、昨晩見られなかったプールのフィルムを見る。日差しの中で楽し気な家族の様子。また唐突に場面が変わって夜のプールサイド、デッキチェアが幾つか並んでいる。それぞれにダクトテープで縛り付けられている家族。チェアにはロープも括り付けられており、順番に引かれて1つずつプールに落ちる。彼等は身動きが取れず、苦し気に足掻いている。
*フィルムの最後に顔のようなものが見えるが、それはどうやら人ならざるもののようだ。近付いてその顔を凝視していると、スクリーンが赤く輝く。フィルムが突然燃えてしまったのだ。エリソンは慌てて火を消し、インターネットでスーパー8の編集方法を検索する。焼失した部分はもうどうにもならないが、残った部分を調べた方法で補修して、デジタル保存する。
*やがて妻と息子が口論しながら帰ってくる。トレヴァーがこの町で起こった惨劇を知ってしまったらしく、教室のホワイトボードに油性ペンで首吊りの絵を描いたのだと言う。トレイシーを宥めて「被害者の無念な思いを世間に伝えたい」と大義名分を言うエリソン。妻と息子は、凄惨な事件の現場がこの家だとは未だ知らないようだ。
*夜になり子供達が眠る時間になると、エリソンはまたフィルムを見る。夜の家の中、誰かが階段を上る映像。ベッドに縛り付けられている家族。口もダクトテープで塞がれている。誰かがその喉に包丁を当てては切り裂いていく。辟易としながらも映像を確認していると、壁に見慣れぬ紋様を見付けてプリントする。明るさを調整すると画面の端に『セントルイス』との文字も読み取れる。そのテープのタイトルは『1998年/おやすみの時間』。
*セントルイスでの一家殺害事件を調べてみると、ミラー家惨殺についてのニュース映像が見付かる。ミラー家の13歳の長男クリストファーが行方不明になっており、両親と弟が自宅で殺害された事件だ。階上からの気配を気にしつつもニュースを読んでいると電気が消えて、更に頭上からは何かが軋むような音が聞こえてくる。懐中電灯を手に家の中の様子を探っていると、今度ははっきりと足音が聞こえる。屋根裏からのようだ。
*念のためキッチンで包丁を調達すると、天井収納式の階段を下ろして屋根裏へ。倒れた箱を返してみると、中から大きな蛇が這い出てくる。箱の内部には子供が描いたらしい絵がある。それはフィルムの内容そのままだ。木で吊るされた『家族一緒に』やデッキチェアで水に沈む『プールパーティ』、車が燃やされる『バーベキュー』にベッドで切り付けられる『おやすみの時間』…どの絵にも殺された家族以外に薄気味悪いシルエットがあり[Mr.ブギー]と書き添えられている。
*階下へ戻ろうとした時、屋根裏の床が抜けて為す術なく落下する。事前に物音や足音がしたため、警察を呼ぶ。足の治療を勧められるが取り敢えず出血は止まったので、本人は行く気がない。以前にも会った若い副保安官に状況を説明する。足音はリスではないかと警官は言うが、そんな音ではなかった。それ以上話は進展しない。
*副保安官はエリソンのサインを欲しがる。「名前は伏せられていても構わないから、謝辞を送られるような協力者になりたい」とも話したため、それは好都合と「1998年セントルイスで一家が喉を裂かれて殺された事件の、家の住所を知りたい」と頼む。1979年の、車内で生きたまま焼かれた事件についても。
*『流血のケンタッキー』出版時の自分のインタビュー映像を見てから、またフィルムを確認する。プール以外の映像にも、悪霊のような顔が映っているのが分かる。そこへ幼い娘が珈琲を運んできて、副保安官から電話が入る。1979年サクラメントのマルティネス家が、自宅のガレージで焼死していた。当時9歳の息子が失踪。住所はビリントン通り8224。ミラー家の方はピードモントウェー通り2976だ。
*それを聞くとエリソンは動揺する。「何か思い当たる事が?」と副保安官が尋ねるが「いや何でもない」と電話を切る。手元の資料を確認すると間違いない、自分が住んでいるこの家で殺されたスティーヴンソン家は、ミラー家が殺された家から引越してきていた。その事実に驚いているとPCの中の静止画の[悪霊]がエリソンの方を見る。違和感を覚えてPCを見るが、その時にはもう変化はない。
*更に資料を見ようとした時、動画再生のインターフェースに何故か自分の姿が現れる。屋根裏から落下する時の映像だ。こんな映像が存在する事は有り得ない。更に自分の身体を掴んで引き摺り下ろすかのように、幾つもの手が現れた。白くぼんやりとした小さな手が幾つも自分の身体に張り付いている…エリソンは堪らずノートパソコンを閉じる。
*深夜、妻と同じベッドで眠っていると何かの気配を感じる。また子供達のどちらかだろうか。書斎まで行くとフィルムが回りPCも起動されている。電源を切り、ボードに貼り付けてあったプリントを手に取る。庭に佇む[悪霊]の姿…丁度書斎の窓からもそれに近いアングルの庭が見える。紙を窓に翳してそれを下ろしてみると、丁度悪霊が居た位置に人影が見える。
*動揺しながらもバッドを手に庭へ出ると、人影が見えたその場所にはトレヴァーが居た。また発作だ。息子を抱えて家へ戻ろうとすると、異変に気付いたトレイシーも駆け付ける。「明日病院へ連れて行く」と言う妻に息子を託して、自分は置き去りにしたバットを取りに戻る。すると野犬がバットの近くに居て唸り声を上げる。何とか犬を宥めようとするエリソンの背後には、5人の子供のシルエットが浮かぶ。犬は影に怯えるようにその場から立ち去るが、エリソンはそれには気付かない。
*夜が明け、副保安官が地元警察から取り寄せた資料を届けてくれる。熱心な様子で協力を申し出る副保安官。彼は事件の連続性を感じ取っていた。エリソンも折れて、書斎に迎え入れて概要を話す。分かっている中で最も古い事件は1960年代。「犯人は70代とか?」「60代かも。薬物反応が出た事件もある、それなら腕力も必要ない」実際どの犯行手口も、力がなくても容易な方法だ。全ての事件に共通しているのは、1人を除いて殺されている事・残る1人の行方は分からない事・悪霊のような人影が写っている事。儀式的な様子もあり、複数の現場で紋様が見付かっている。
*副保安官は「オカルト的ですね」と言い、地元の大学教授ジョナスについて教えてくれる。オカルト犯罪に詳しく猟奇的事件で捜査協力もしてくれているのだと言う。副保安官を信頼し、プールパーティについても調査を依頼する。一方トレイシーはトレヴァーの様子以上に、エリソンの酒量が急激に増えている事を気に掛けている。執筆を始めてから1週間も経っていない。「家を出たい」と訴えるが、エリソンは「大きなチャンスだ」と妻を説き伏せる。
*夜にはまた新たなフィルムを見る。タイトルは『1986年/芝刈り』。リビングで寛ぐ家族の姿を隠し撮りしているらしき映像。その後、誰かがタイトル通りにガレージから芝刈機を持ち出す。夜の闇の中、ライトに照らされる部分だけが見えている。庭を刈り進む芝刈機。ふいに芝以外のものが見える。横たえられた人間だ。エリソンは思わず椅子から立ち上がり、慌ててフィルムを止める。
*副保安官が紹介してくれたジョナスから連絡が入る。ビデオ通話で会話をすると、教授は例の紋様について知っているらしい。それは邪教の神への崇拝と関係があり、古くはバビロニア王朝時代にまで遡る。悪霊名前は[ブグール]。意味は『子供を喰うもの』。現存する数少ない文献によれば、ブグールは生き続けるために子供の魂を食べている。言葉巧みに子供を誘惑し、現実世界から攫って彼の支配する霊界に引き込むらしい。そして時間をかけて魂を食べる。彼を崇拝する者は、子供の血を捧げたり肉を食べたりするようだ。「ではこの記号を描いた者は子供を食べたと?」「文献と一致する」教授は、個人的な殺人と言うよりは宗教的な儀式だろうと話す。
*エリソンはフィルムや映写機を箱に放り込み、書斎に鍵を掛ける。深夜3時過ぎ、何かの気配で目覚める。書斎の扉が開いており、首吊りのフィルムが回っている。バットを手に家の中を確認して回っていると、背後に何人かの子供が代わる代わる現れる。子供達の顔は汚れて、ひび割れているかのようだ。明らかに生者ではない。
*子供部屋も確認する。トレヴァーもアシュリーも大人しく眠っているように見えるが、実はアシュリーは息を殺して目を見開いている。彼女の部屋の壁、ベッドの陰には4人の首吊りの様子とブグールの顔が描かれている。そしてその壁の前に生きてはいない少女が身を隠しており、アシュリーに向かって「秘密を守れ」と言うように、唇を人差し指で封じて見せる。
*翌日エリソンは副保安官を呼び出し「スティーヴンソン家に奇妙な出来事はなかったか?意味の分からない通報や噂話は?」と尋ねる。副保安官はそれを否定し、エリソンが[気味の悪いもの]を見たのだと察する。「全て吐き出した方が良い」と促され、昨夜奇妙な気配を感じてバットを抱えてソファで眠ったと打ち明ける。「この家に住んでいる限りはその恐怖心は消えない」と副保安官は言う。
*「アシュリーが、自分の部屋以外にも絵を描いた」と妻が怒っている。「あの部屋じゃ駄目なの、彼女のお兄ちゃんの部屋だから」と言うアシュリー。娘が描いたのは、タイヤで作られたブランコで遊んでいる姿…それはフィルムに写っていた少女だ。アシュリーは「前に住んでいたステファニーよ」と言う。遂にこの家が殺人の舞台だったのだと知ってトレイシーは激怒、エリソンと激しい口論になる。その後若い頃の自分のインタビューを見ながら、エリソンは結婚や家族の意味を考え直す。
*夜更け、ソファではなくベッドで眠るエリソンに近付く人影。ライトをあてて撮影している。微かな音と共にライトが消えると、気配に気付いたエリソンが目を覚まして起き上がる。書斎に入ってみると映写機やフィルムが消えている。家の中を慎重に歩いていくと、廊下の途中で天井収納式の階段が下りている。上から明滅する光が漏れており、階段を照らしている。「どう言う事だ?」と思わず呟き、怖々階段を上る。
*屋根裏ではひび割れた顔の子供達が映像を見ている。子供達はエリソンを振り返り、「シー」と指を唇に当てる。[内緒]のポーズ。スクリーンに写るのは悪霊ブグールの姿。目の前の光景が理解出来ず茫然とそれに見入っていると、スクリーンとエリソンの間を遮るように、ブグールが横から顔を出した。驚き階段から転がり落ちる。直ぐには動けずにいると、大きな箱に入ったフィルム・映写機等が屋根裏から落とされる。箱には『ホームムービー』と書かれている。我に返ってフィルムを抱えて外に出ると、ゴミ箱に全て放り込み火を放つ。
*異変に気付いてやって来たトレイシーに「この家を出るぞ。君が正しい、この家には来るべきじゃなかった」と伝える。有無を言わさず仕度をさせて、真夜中に家族4人で車に乗り込む。幸い元の家はまだ売れていない。残っている荷物は業者に運ばせる事にする。急ぐ余りスピードを出し過ぎていて、途中で保安官に捕まる。「あなたの助言に従って出て行きます」「それは自主的にだね?怒った住人に追い出されたなんて本に書かれては困る」「本はもう出ない」その言葉に保安官も妻も満足そうだ。
*元の家に到着して荷物を運び込んでいると副保安官から着信があるが、もう彼に何かを頼む事もないだろう。夜になるとジョナス教授からメールが届く。ブグールの印のスキャン画像が数点添付されている。連絡してみると「図版は殆ど残っておらず、これで全てだ」と言う。ブグールの印はそれ自体が彼の世界への入口だと信じられていたため、多くは燃やされたそうだ。教授に礼を述べて、送付されてきた画像を削除する。また副保安官から着信があるが再び無視する。
*屋根裏に雑多な物を片付けようとすると、そこには黒い『ホームムービー』の箱が置かれている。単に似た箱かもしれない。しかし箱の中にはフィルムが詰まっていた。堪らず箱を倒すエリソン。すると前にはなかった物が転がり出る。封をされた茶色い封筒。表には『未公開エンディング』と書かれている。珈琲を流し込みながら、細切れのフィルムを繋いで見れる状態にする。
*すると真夜中だと言うのに、またしても副保安官から着信がある。挨拶もなしで「何時だと思ってる?」と言うと「ずっと繋がらなかったので…すみません」と返ってくる。何の用かと尋ねると「引越した事が問題です」と言う。副保安官はエリソンから頼まれた事件について調べ、関連性を発見したのだ。その関連性は日付と住所にあった。殺害された家族は皆、1つ前の殺人が起きた家に住んでいた。5つの家族全てがだ。スティーヴンソン家はミラー家に住んでおり、そのミラー家が以前住んでいたのは芝刈り機事件のデルシオ家、デルシオ家は焼死事件のマルティネス家に住んでいた。そして最も古い溺死事件にまで繋がるのだと言う。オズワルト家は最後の事件の家から引越してしまったのだ。それは犯行のペースを早め、事件の連鎖に加わる事を意味する。
*茫然としつつ電話を切ると、補修の済んだフィルムを壁に映し出す。それは忌まわしいが既に見慣れてしまった首吊りの映像だった。一家の苦しみ足掻く動きも止まった頃、驚くべき光景が続く。木の上から失踪した少女ステファニーが下りてきたのだ。無邪気な様子で父親らしき遺体の足にぶら下がっている。そしてカメラに近付くと、指を唇に当てて[内緒]のポーズをする。次いで燃える車が映し出される。カメラの前には少年が現れやはり[内緒]の合図をする。プール・寝室・芝刈り機…それぞれ殺害後の場面に失踪した少年少女が姿を見せては、秘密の共有を促して指を立てるのだ。
*姿を消した少年少女は、生贄として食べられた訳ではなかった。一家惨殺はブグールに誘い込まれた子供達の仕業だったのだ。立ち上がるとショックのせいか足許が覚束ない。何か様子がおかしいと感じてマグカップを覗き込むと、珈琲に蛍光色の液体が混ざっているのが見える。先刻の『未公開エンディング』の途中にも同じ液体が映っていた。マグカップの下にはメッセージが置かれている。『おやすみ、パパ』と書かれた紙片。それはアシュリーの文字だ。
*床に倒れ込むエリソン。泡を吐き出している彼の背後には、アシュリーが立っている。「パパ、エンディング付けてくれたんだ。これで映画が面白くなったね」意識を取り戻すと身体を縛られ、口にはダクトテープが貼られている。妻と息子も同じ状態で転がされている。そこへ斧とカメラを手にしたアシュリーが現れ、膝をついてエリソンを覗き込む。「良かったね、パパ。もう一度有名にしてあげる」斧を構えるアシュリー。それがエリソンに振り下ろされる。
*壁や扉に血で絵が描かれている。もう自分の部屋だけで我慢する必要はない。カメラに向かって指を立てて[内緒]だと伝えるアシュリー。その様子を今までの5人の子供も見守っている。映像が終わるとアシュリーは、[ホームムービー]の蓋の内側に新しい絵を描く。自分の[作品]について。描き終えると流れ続ける映像に向き合うアシュリー。少年少女が首を傾ける。アシュリーも同じ方向に首を捻ると、背後にはブグールが立っている。彼はアシュリーを横抱きにすると歩き出し、そのまま壁に映し出される映像の中へと入って行く。新しいフィルムが出来上がる。タイトルは『2012年/お絵描き』だ。
■雑感・メモ等
*映画『フッテージ』
*レンタルにて鑑賞
*引越系+vs.悪霊系ホラー
*最後のフィルムが流れている時に、横からブグールが顔を出す。エンドロールの導入には、ブグールについての文献のようなものが映し出される。
*惨劇があった家から引越す事で、新しい標的となると言うルール。どんな発端でそうなったのかは不明。ブグールについての記録は『バビロニア王朝時代にまで遡る』らしいけど、映像作品制作以前はどんな活動をしていたんだろうか。
*『ブグールの紋様を描いた者が子供を食べた』辺りはミスリードだから、文献等もどこまで参考になるのかは分からない。因みにミスリードについては効果が薄いと感じる。一家が惨殺されて1人だけ行方不明となると、圧倒的に姿を消したその1人が怪しく思えてしまう。(とは言え少年少女だけで準備するには厳しい部分があるから、ブグールが多少は手伝ってくれるのかな。)
*それを差し引いても、子供が加害者で殺人を記録に残すと言うのは不穏で好き。映像も不気味な出来映えで好印象。音や音楽も気に障る感じが良い。
*実際に見たのはレンタル開始の頃で、書き掛けだったものを仕上げた。続編も見たけど、ブグールの下僕になった子供達との会話があるのが興醒め。フィルムの出来も新味に欠けて平凡。副保安官が主人公になると言う繋ぎ方は良いけど、1作目に出てきたフィルムやアシュリーの作品が出てくればもっと良かった。