■あらすじ
ロサンゼルス近郊に位置する広大な砂漠地帯の田舎町。セールスマンのサムは、家々を訪問しても返事がなく、気配は感じるものの誰一人として姿が見えない閑散とした町の様子に違和感を覚えていた。妻のリタに電話をかけても応答はなく、唯一の情報は、エディのラジオ番組“告発の時間”から流れる少女誘拐事件のニュースのみ。異様な雰囲気を察知し、足早に立ち去ろうとしたその時、突如現れた警官がサムに向かって発砲を開始。執拗な襲撃に負傷しながら逃げ惑うサムだったが、激しいもみ合いの末に警官を殺してしまう。身元を確認しようと警官の胸ポケットを探ると、“サムは危険人物だから近づくな”と警告するエディからの手紙が。そして同時にラジオからも、“少女殺しの犯人はサムだ”とい
う音声が流れ始めて…。(メーカーサイトより)
■ネタバレ
*砂漠地帯の田舎町で、営業のために家々のドアをノックするサム・コブリッツ。廃墟と言う訳でもないのに、どの家からも人が出て来る気配はない。元々ロサンゼルスが担当地域だったサムは、営業部長リチャーズ・ジョーンズの留守番電話に「この地域はセールスには不向き」と報告し、ロスへ戻りたいと訴える。ふと見上げると、赤い光が中空に浮かんでいる。それが何なのかは分からない。
*サムの車の助手席には巨大なテディベアが座っている。間もなく娘の誕生日なのだ。ラジオを入れるとエディ・ワールドと言う放送局の[告発の時間]が流れる。電話で番組に参加するスタイルで、地域の人々が様々な意見を吐き出しているようだ。進行役のエディが「この世の悪を追放しよう」とリスナーに語り掛ける。現在話題の中心は、行方不明の少女シンディらしい。連続殺人事件に巻き込まれた可能性があるようで、叔父が自ら捜索に乗り出すとの事だ。
*車が不調で、徒歩で移動するサム。辿り着いたガソリンスタンドにも人影はなく、勝手に電話を借りる。仕事の電話は繋がらない。妻リタは電話に出てくれず、留守電に向かって「チャンスが欲しい」と伝える。ミネラルウォーター等の代金をレジ付近に置いて立ち去ろうとすると、いつの間にかカウンターに湯気の立つマグカップが置かれている。店の奥へ向かって「誰か居るのか?」と呼び掛けても何も反応がない。サムは知る由もないが、監視カメラにはトイレの物陰に佇む人影が映っている。
*店を出て次の訪問先を検討していると、ポケベルに『変態のクズ野郎』とのメッセージが表示される。罵倒の理由が分からず困惑するサム。車を停めたままだったモーテルへ戻り、今夜はそこに泊まる事にする。受付には古びた人形が置かれていて、店主は姿を見せない。客室の1つの扉には、鎖が何重にも掛けられている。不審に思いつつその隣りの部屋に入ると、ポケベルで罵倒してきた相手に電話をしてみる。留守電から流れた音声によれば、相手の名前はアンダーソン。「誰なんだ?何が目的だ?」とメッセージを残す。バスルームの壁には亀裂があり、隙間から覗くとベッドに横たわる人形が見える。夜空にも相変わらず赤い光が浮かんでいる。
*朝になっても店主は居らず[サムはここに居た/SAM WAS HERE]とのメモと代金を残す。直した車に乗り込もうとすると、窓に『サイテー野郎』と落書きされている。白いペンキが使われていて、多少擦っても消えそうにない。仕方なく窓を開けて走る。ラジオでは今日もエディが話している。ゲストとして招かれた、シンディ失踪事件の捜査担当者ペインが『警察は犯人をほぼ特定した』と言う。
*走っている途中で[告発の時間]の広告看板を見掛けたサムは、番号を書き留めて公衆電話からメッセージを送る。妻リタに向けて、家に戻れない事を詫びる内容だ。ラジオでは別の男がやはり外出中の妻へ向けて『出歩くのは危険だ』との忠告を伝えている。その時、またポケベルに『変態野郎』と表示される。続いて強い衝撃を感じ、サムは車を停める。パンクしてしまった事が分かり気落ちするが、振り返れば道路にはスパイク状のものが置かれている。誰かに意図的にパンクさせられたのだ。混乱しつつも[サムはここに居た]とのメモをワイパーに挟むと、車を置いて歩き出す。テディベアを抱えたサムの頭上には、やはり赤い光がある。
*歩いていると今度は『恥を知れ』とのメッセージが届くが、直ぐに気にならなくなる。停車しているパトカーを見付けたからだ。しかし助けを求めて手を振ると、前触れなく発砲されてしまう。右肩を撃ち抜かれるサム、血飛沫を浴びるテディベア。理不尽だが逃げるしかない。近くのトレーラーハウスへ逃げ込むと、そこでもラジオからエディの番組が流れている。警官である義弟から聞いたと言うリスナーの情報提供で、殺人事件の容疑者の名前が[サム]だと伝えている。通報をしようとしていたが、思わず受話器を置く。
*追って来た警官がトレーラーハウスに踏み込み、サムと揉み合いになる。警官は制服を着用しているが、マスクを被っていて人相は分からない。乱闘の末に警官を倒したサムはリタへ電話をする。警官に殺されそうになって逆に殺してしまった、この町は得体が知れない…そんな話をするが、今日も留守電だ。殺したと思った警官が背後から迫るが、電話のコードで締め上げると今度こそ相手は絶命する。ポケットを探ると身分証が出てきて、トーマス・ペインと言う名前が分かる。ラジオで話していた警官だ。更にポケットにはエディ・ワールドからの封書も残されていた。『サム・コブリッツとは決して接触しないでください。奴は信用出来ません。見付けたら必ず連絡を』との内容だ。何故こんな風に書かれているのか分からない。
*サムは警官が持っていたライフルを抱えて移動する。駐車されていた車に乗り込むと、そこにもエディからの手紙がある。車は動かず、人影の見えた家に入ってみるとそこにも封書。テーブルの上の新聞には『殺人犯が逃走中』との見出しで、ガソリンスタンドで変死体が発見されたと言う記事が掲載されている。サムが立ち寄ったあの店だ。
*サムの侵入に気付いて老婆が逃げようとする。「止めて、助けて」「何もしないよ」老婆を何とか宥めようとするが、騒がれて揉み合いになり、火に掛けられていた鍋の中身が老婆に降り注ぐ。泣き叫ぶ老婆の様子に狼狽えていると、窓の外に2人の男達が見える。彼等もまた警官と同様に、頭部を覆い隠すマスクを被っている。危険を感じて外へ逃げ出すと、男達が追って来る。走るサムの傍らに立つ郵便ポストには、エディからの封書が何通も押し込まれている。襲い掛かられて已む無く発砲。1人は倒したがサムは更に血塗れになり、そこでライフルは弾切れになる。
*もう1人に追われて車の修理工場へ逃げ込み通報しようとすると、受話器からは『落ち着いてちょうだい、これからレイプしてあげるわ』と女の声がする。この場所も安全ではないと感じて外へ出ると、男に掴み掛られて揉み合いになる。殴られ傷付きながらも相手を倒し、頭部を蹴り潰す。男は動かなくなったが、サムは更に攻撃を加えて返り血を浴びる。赤い光は強さを増しているように見える。
*火傷を負い重傷の老婆が、家から這い出て繰り返しサムを呼ぶ。近付くと老婆は「甥っ子達に何て事をしてくれたの」とサムを罵る。「モーテルで見たでしょう?殺され腐っていく可哀想な少女の姿を…恥を知りなさい。少女が苦しむ姿を見たいの?私もこんな目に遭わせて、酷い男ね。楽しかった?」と言い募る老婆。サムは「お前がやらせたんだろ」と吐き捨て、老婆を踏み付ける。「エディは何処だ」と訊くと「あの中よ」と言う。遠くに見えるモーテルの看板には、黒いスプレーで『エディはお見通し』と落書きされている。
*動く車を見付けてモーテルへ戻る。鎖の掛けられた部屋へ入る事は出来ず、その隣りの自分が泊まった部屋へ。バスルームには亀裂ではなく大きな穴が開いていて、ベッドに横たわる人形が見える。部屋の中には車椅子に座ってミイラ化した少女の死体がある。呼出音が鳴り電話に出てみると、相手はエディだ。隣の部屋には、スキンヘッドにヘッドホンだけを着けた裸の男が居る。『殺人鬼め』『罰を受けろ』『サムを消してしまいたい』…様々な人達の声で罵られるサム。録音されたそのままの音声なのか、加工され作られたものなのかは分からない。「誰も殺してない」と言うと、老婆と自分との遣り取りが聞こえる。『止めて、助けて』「何もしないよ」怯える声は老婆ではなく、幼い少女のもののようだ。部屋のテレビには、自分の後ろ姿が映し出されている。自分の影に隠れているが、僅かに見えるのは少女の姿だろうか。首を締め上げているのか少女は苦し気な呻き声を出すが、サムには覚えがない場面だ。やがて番組のゲストとしてリタの声が流れる。『私の夫は5年前に死んでしまった。留守電のメッセージの男は知らないわ』サムは混乱して電話を切る。
*再度受話器を取ると女性の声で『エディ・ワールドです。今は受付出来ません。町中がサムを殺しに行ってます』と案内メッセージが流れる。窓の外には無数の人影が見える。やがて複数の人々が部屋に押し入り、サムをバスルームへ運ぶ。「何かの間違いだ、俺は殺してない」と必死に叫ぶサム。その声は聞き入れられず、酸性の薬剤を浴びせられて身体中から血を流す。サムは血塗れでシャワーカーテンに縋り付く。
*翌朝、モーテルの従業員が客室の清掃をする。部屋には大きなテディベアが残されていて、遺失物として回収される。シャワーカーテンは血で汚れていて、従業員の手を煩わせている。どの部屋の扉にも鎖は掛かっていない。空はただ青く晴れている。
■雑感・メモ等
*映画『キル/オフ』
*レンタルにて鑑賞
*不条理系サスペンス
*予告編を見てレンタルしたけど、もっとコミカルな雰囲気なのかと思ってた。予告編に『町中がサムを殺しに行ってます』との台詞が使われていたから、次々に敵が襲い掛かるような展開なのかと。台詞は嘘の翻訳ではなく本編通りだし、あらすじも正しい。ジャケットにも律儀に赤い光が使われていて真摯。でも思っていたのとは違ってた。敵は警官と2人組の男、最後にモーテルにやって来る人々だけ。全体的にはかなり静かで地味。
*自分にとっては意味不明でも、宗教的なモチーフだったり特定の国や地域の情勢だったりを反映している作品もある。この映画にも何か隠された意味があるのかもしれないけど、現状自分にとっては意味不明。妻リタの台詞を踏まえるとサムは既に死んでいるのか?でもそうなるとテディベアやシャワーカーテンの血痕が余計。それにあの台詞では、リタはそもそもサムを知らない様子。リタの言葉も本当に彼女自身のものなのかどうか判断出来ない。(エディは音声を編集して使用しているように見える。)捏造・冤罪がテーマなのかもしれないし、実際にサムは殺人鬼なのかもしれない。判断材料が不足していると感じる。
*赤い光についても特に言及がないんだけど、オンエア中を示すライトのイメージとかだったらどうしよう。異空間でラジオ放送中。