■あらすじ
映像プロデューサーのデヴォンが立ち上げた、ネット・コンテンツ「モンスター・プロジェクト」。自らを“モンスター”だという視聴者を募集する、インチキ心霊番組だ。応募してきたのは、“吸血鬼”を自称するシェイラという女。獣に変身する“スキンウォーカー”を名乗る、スティーブンという男。“悪魔”にとり憑かれているという、シオリという日本人娘。月食の夜、不気味な廃屋を舞台に3人へのインタビューは開始されるが、不可解な超常現象がデヴォンたちに襲いかかる。そして…。(メーカーサイトより)
■ネタバレ
*ホラー系の動画を制作しているデヴォン・アダムスと彼に協力するジャマル。デヴォンは「新しく番組を作ろう、[本物]を探すんだ」と言い出す。ジャマルが「本物なんて居ないだろ」と尤もな意見を言うと、デヴォンは「偽物でも良い、視聴者は見たがる」と答える。企画のタイトルは[モンスター・プロジェクト]。『ドキュメンタリー番組に出演するモンスター募集中』との告知を出すと、3件の応募がある。
*1人目は自称スキンウォーカー/狼人間だと言う警察官のスティーブン。先住民居留地で対面するが、ジャマルの準備不足で充分な撮影は出来なかった。2人目は女吸血鬼シェイラ。彼女は夜間に働くタトゥー・アーティストで、取材の条件として血を要求。指定された公園のベンチに置くと、瞬く間に採血管が消えてしまう。3人目は悪魔に憑りつかれた女しおり。深夜3時に起こされたジャマルが玄関のドアを開けると、そこには[SHIORI]と書かれたディスクが置かれていた。「私の中の何かが、悪い事をしろと命令するの」と訴え、助けを求めるしおりが録画されている。
*月食の夜に3人を不気味な家に集めて、撮影する事になる。デヴォンとジャマルの他、撮影にはミュリエルとブライアンが同行する。ミュリエルはブライアンの元恋人で、彼が黙って自分の前から姿を消した事に腹を立てている。ブライアンは1ヶ月前に町へ戻って来たが、2人の仲は修復されていない。映画監督を夢見るミュリエルは、デヴォンから「スタッフではなく監督として協力して欲しい」と請われて渋々了承する。
*ブライアンは旧友であるジャマルの家に居候している男だ。俳優を目指してLAへやって来たが、ひとまずは生活のために仕事を探している。ドラッグ依存症を克服しようとしていて、先日の誕生日で素面240日を迎えた。教会に通い「聖書に『悪魔は存在する』と書かれているんだから、他にも何が居るか分からない。モンスターなんか探すべきじゃない」と主張。更にミュリエルに好意を寄せていてブライアンを嫌っているが、600ドルの謝礼のために撮影に参加。100ドルに釣られてシェイラに渡す血を提供したのも彼だ。
*撮影に使用する家はリチャードと言う男が所有している。窓が塞がれていて、外からは中の様子が分からない。60年代には悪魔を崇拝する団体が、この家を本部にしていたのだと言う。「上の階、特に屋根裏は木が腐っていて危険だから立ち入らないように」と言うリチャード。彼の妻マーサは車椅子に座り、虚空を見詰めて「月が…」と呟いているが、家の中からも外の様子は分からず、まだ月も出ていない。デヴォンは「撮影の邪魔になる」と、携帯電話を車に置いておくよう指示。多少の心細さを感じるが、数時間の事だろう。
*リチャードはマーサを連れて病院へ。鍵を預かり準備をしていると、電源が落ちて暗くなる。ミュリエルとブライアンは地下のブレーカーへ向かう。デヴォンは「撮影に趣きを添えるために」と十字架や木の杭、聖水を用意している。撮影に使うのはミュリエルが構えるものと、ブライアンの頭部装着カメラ等。ブライアンのカメラは、誕生日にミュリエルから贈られたものだ。
*やがて[モンスター]の3人も到着。電源は戻ったが、室内は暗めにセットされている。まずは狼男スティーブンのインタビューが始まる。彼はカメラに顔が映らない事を要求、シルエットだけが分かるように照明が調整される。「ヒトは殺人によりスキンウォーカーになる」と言うスティーブン。デヴォンは「家族の一員を殺して悪魔に魂を売った者だけがスキンウォーカーになれる」と補足する。スティーブンは「確かに殺す必要があるが、魂は売らない。力を得るために契約を結ぶ」と話す。変身後は制御不能、弱点は銀だけ。
*次いで吸血鬼シェイラがカメラの前へ。彼女は提供された血を気に入ったようで、ブライアンと話す事を希望する。年を取り、いつかは死ぬ。夜行性ではあるが日光で肉体が消滅する事はない…伝説には何かと誤解があると語るシェイラ。彼女は欲望を抑えずに血を求めると言う。「血を吸うとハイになる。あなたにはその気持ちが分かるでしょ?あなたの血の中にオキシコドンが混ざっていたわ」と言われてブライアンは動揺し、彼を信じていたジャマルとミュリエルは騙されていたのかと落胆する。240日ドラッグを摂取していないと言っていたのは嘘だったのだ。
*最後は悪魔の依代しおりのインタビュー。「生まれた時から[彼]を知ってる。ここへ来てあなたと話せば、私の中から出て行ってくれるって約束したの」と言うしおり。彼は唇がなく目が大きく、どんな時でも笑っている。今も直ぐ近くに居る…話の途中でしおりは「彼だわ」と怯え始める。
*また照明が落ちて、カメラが暗視モードに切り替わる。復旧しようとしていると、窓を塞いだ板の隙間から月を見たスティーブンが狼男に変身。シェイラは牙を剥き、しおりは憑依されて宙に浮かぶ。彼等は正に[本物]だったのだ。混乱の中で逃げ出そうとするが、リチャードから預かった鍵を使ってもドアが開けられない。外から塞がれているようだ。家の中を逃げ惑っているとスティーブンの腕が壁を突き破り、ジャマルが攫われる。
*声を辿って上の階へ。ジャマルを発見するが、背中を酷く切り裂かれている。咄嗟にスティーブンの銃を奪って逃れたが、4発撃ち込んでも倒れなかったのだと言う。4人で階下へ戻ろうとすると、シェイラが襲い掛かる。どうにかブライアンが杭を打ち込んでシェイラの身体は崩れるが、その前にミュリエルが噛まれてしまう。首からの出血が酷い。
*更にまたスティーブンに襲われて、全弾撃ち込む。一旦は退けるが致命傷には見えず、弾切れにもなる。やがて泣いているしおりを発見。憑りつかれると目や口が黒く落ち窪み牙が生えたようになるが、今は正常な状態だ。置いていく事も出来ず、一緒に逃げようとする4人。地下へ逃げ込むが、窓は封印されていて開かない。床には五芒星の魔法陣のようなものが描かれている。ミュリエルは「ここで死ぬんだわ」と泣き、しおりは「ここに居るべきじゃない」と怯えている。
*ブライアンは退路を探そうと、配管等で狭くなっている空間を進む。しかしそこにはスティーブンが待ち構えていた。慌てて戻ると、またしおりが憑依された状態になっている。悪魔祓いを真似て、十字架を手に聖書を諳んじるブライアン。しおりは構わず襲い掛かり、次の瞬間ブライアンはパーティ会場に居た。ジャマルとミュリエルが自分の誕生日に開いてくれたパーティ。他の友人達も招待していて、ケーキのキャンドルを吹き消そうとしている自分の姿も見える。勿論現実ではない。
*招待客が一斉にこちらを見ると、憑依されたしおりのような容貌になっている。やがて死んでしまった友人達が現れる。ジェームズ・サンダース、サミュエル・ロス、キャメロン・ネイサン…それはブライアンが、粗悪品とは知らずに売ったドラッグで死んだ3人だ。誰も居なくなると次にはしおりが現れ、別人の声で「お前は人殺しだ」と繰り返してブライアンを糾弾する。再びしおりに襲い掛かられるブライアン。
*始まった時と同様に、パーティは突然終わってまたあの家の中に居る。デヴォン達がしおりを押さえ込み、我に返ったブライアンはまた悪魔祓いを試みる。悪魔の声で「友達が地獄で待ってるぞ。私も待っている」としおりが言う。ブライアンが祈りの言葉を唱え終わると、家が激しく振動して軋んだ音が響く。それが終わるとしおりは動かなくなる。生きてはいるようだが、正常な状態と憑依された状態の中間のような風貌だ。代わりにミュリエルの身体が痙攣し、表情が豹変。「ブライアン、お前のものはいただく。私の名前はバフォメットだ」と悪魔の声で言うミュリエル。今度はミュリエルに対して悪魔祓いをするブライアン。「神に世界は救えない。[彼]が来る」と言うと、ミュリエルは意識を失う。デヴォンは「[彼]とは?」と疑問を口にするが、ブライアンにも分からない。更にさおりが再び憑依されてしまう。ブライアンは先端を尖らせた十字架を、さおりの胸に突き刺す。
*ミュリエルは悪魔から解放され、いつもの彼女に戻る。首からの出血は続いているようだ。しおりは息絶えて、魔法陣に横たわっている。まだ確認していない2階の窓からの脱出を試そうと、4人は上階を目指す。次第にジャマルの状態は悪化し、身体に変化が起こっているようだ。自分を支えていたブライアンを突き飛ばして「俺はもう進めない、ミュリエルを頼むぞ」と言うジャマル。そこにスティーブンが襲い掛かり、ジャマルを奪い去る。
*デヴォンとミュリエルは2階の1室に身を隠す。ミュリエルは体調が悪くなり、吐血し身体の痛みを訴える。今度は悪魔ではなく吸血鬼の影響だろう。「私はどうなるの?」「君は噛まれた、死ぬんだ。このために君が必要だった」怯えて助けを求めるミュリエルを、その場に残して立ち去るデヴォン。
*ブライアンはスティーブンの追撃を逃れるが、デヴォンとミュリエルを見失っていた。家の中を彷徨っていると、ローブを身に纏い獣のマスクを被った何者かに遭遇。相手は「彼が来る」と呟くと、ドアを閉めて姿を消す。困惑しつつも、やがてミュリエルを発見するブライアン。彼女は意識がなく、瀕死の状態に見える。狼狽えている内に突如ミュリエルが起き上がるが、その姿はヒトとは違って見える。吸血鬼と化したようだ。ブライアンは襲い掛かるミュリエルに必死で抵抗し、最後には壊したドアノブを彼女の頭に突き刺す。
*ミュリエルは息絶えるが、まだスティーブンが残っている。ブライアンは疲弊していたが、スティーブンが現れると慌てて駆け出す。屋根裏へ逃げ込むとここも殆どの窓は塞がれていた。板が1枚だけ打ち付けられている窓を見付けて、その板を剥ぎ取る。窓を開いて身を乗り出すブライアン。足場を確認したいところだが、スティーブンが背後に迫り、為す術もなく転落する。身体にダメージがあるが、スティーブンも窓から飛び出したため止まる訳にはいかない。懸命に走って逃げ続けても、林の中では狼男の方が優位に思える。ブライアンは結局あの家に戻り、火掻き棒を掴んで床に寝転がる。スティーブンが窓から飛び込みブライアンに覆い被さろうとすると、突き上げた火掻き棒が狼男の身体を貫く。
*モンスター達を倒し、覚束ない足取りながら歩き始めるブライアン。壁には見慣れないシンボルが描かれている。奥に進むとモニタが並んだ部屋がある。家の中に設置された監視カメラの映像を映し出しているらしい。地下にあった魔法陣と同じものが壁に描かれていて、自分達の写真が貼られている。その中央にはデヴォンの写真。困惑していると、獣のマスクが姿を見せる。そして別のドアからはデヴォンと、黒装束の人々が現れる。「まるで音楽だろ?オーケストラだ」と言うデヴォン。彼は「もう逃げられない。神は無力だな」とブライアンに十字架を投げて寄越す。さおりに突き立てたあの十字架だ。不穏な空気を感じ取り、その尖った先端を今度は自分の身体に突き刺そうとするが、デヴォンが「止め
ろ」と手を振ると、ブライアンの身体が浮き上がって天井に叩き付けられる。
*黒装束に引き摺られて運ばれるブライアン。気が付くと椅子に座らされ、拘束されている。五芒星の魔法陣の上にはスティーブン・シェイラ・さおり・ミュリエル・ジャマルの死体が置かれている。「ミュリエルを愛してなかったのか?」とブライアンが訊くと、デヴォンは「愛とは犠牲だ。彼女やお前達が必要だった」と言う。「モンスターも月食も屋敷も、全て計画の一部だ。俺には儀式があるから、殺しは出来ない。だから武器を持たせて、舞台を整えた。番組作りは口実だった。お前は最高の仕事をしてくれたよ」
*泣き始めるブライアンを宥めるデヴォン。その声は悪魔のもので、瞳は黒く染まっている。「何故俺を選んだ?」「神を信じてるからだ。あいつにこれを見せてやる。…聞こえたか?ちゃんと見ていろ。私の甦りを」天に仰いでデヴォンは言う。獣のマスクを被っていたのはリチャードで、彼はそれを外すとデヴォンに被せる。「我らが父なる悪魔、ルシファレ・セントス。人類荒廃の源、業火の神、純真の反抗者、今宵覚醒されよ。罠に堕ちた王は月の力により地獄の火から立ち上がり…」リチャードの言葉を遮るように、祈りの言葉を詠唱するブライアン。しかしリチャードは構わず続け、最後には「神に破滅を」と言う。マーサがブライアンの首を切り裂き、その血が杯に注がれる。「儀式は執り行われた。悪魔が来る」リチャードの言葉に続きデヴォンの呻き声が響き、周囲が震えて明るくなると、角を持ち翼を広げた影が部屋を覆った。
■雑感・メモ等
*映画『モンスター・プロジェクト』
*レンタルにて鑑賞
*vs.悪魔系POVホラー
*最後に、床に転がったカメラの映像が映る。奥にある扉がゆっくりと開いて、そこから悪魔が姿を見せる…のではなくもっと手前から悪魔が顔を出して威嚇(シャー!)みたいな感じの。悪魔がそれやったら笑えるから駄目では…ブグールさんなら何となく許せるけど。エンドロールでは本編のダイジェスト(名場面?)も流れる。
*モンスターを募集したら本物がやって来た。と言うプロットが分かり易く馬鹿馬鹿しくて楽しそうだなと思ってレンタル。後半はその期待に応えるように、なかなか勢いがある。でもその後半の映像が最後まで殆ど無彩色(暗視カメラの映像的)な感じになるから、流石に見難い。何をやっているのか分からない場面も複数ある。前半はと言えば、モンスターではない4人(実際には1人はヒトではないけど)の人間関係を描いているけど、些か長くて怠い。
*ブライアンのカメラはウェアラブルと書く程には恰好良くなかった。スティーブン視点のカメラの映像も挿入されるんだけどあれ何なんだろ。カメラについて「我々も身に着けている」て台詞があるんだけど、必要性が分からない。(でも取り敢えずこちらは所謂ウェアラブルぽい。)狼男のカメラを悪魔が回収して編集したの?現実ではない幻覚の映像(パーティの場面)があるのもPOVとしては異例では。悪魔の念写なのかなスゲエ。
*ミュリエルは分かり易かったけど、ジャマルも狼男に変化しつつあったと言う事で良いのかな。「モンスターも計画の一部」みたいな台詞があったけど、人外を5人集める必要があったのなら流石悪魔の復活はハードルが高い。
*ルシファレ・セントスてのはこの映画の創作?ルシファレはルシファーからの派生みたいな感じだけど、セントスは(苗字みたいに表記されてたけど)そもそもあれ名前の一部なんだろうか。