■あらすじ
VR<ヴァーチャルリアリティ>の世界を楽しむ人々が増えた近未来。VRの影響で現実世界との境界線が曖昧になり、殺人が横行するのを阻止する為に、セックスや暴力が行き過ぎているVR世界に潜入して取り締まる政府の機関Ц課(ツェー)が存在している。VR世界のNo.1プレイヤーであるスタンスとVR世界で快楽殺人者の側面を持つアレックスは、優秀なVR捜査官のパートナーだったが、任務に失敗し、どちらかしか組織に残れない状況となる。2人はVR世界で様々なガジェットを駆使して戦うことになるが、アレックスは狂気に取り憑かれ現実世界との境界線が曖昧になり暴走を始める…(メーカーサイトより)
■ネタバレ
*武装して敵地に侵入するスタスとアレックス。彼等は敵味方関係なく、救出する筈の人質さえも殺戮する。遠隔攻撃や即死よりも、接近戦や拷問…残虐な方法で殺害する事で[規制値到達]が早まる。彼等が実際に居るのは戦場ではなく、VRクラブ[ハッピーマンデー]のブースの中。2人はVR専門の捜査機関[Ц(ツェー)課]所属の検閲官だ。その日は当該ゲームを巡って、クラブの関係者やプレイヤーが逮捕された。逮捕者の中には警官も含まれている。
*VRゲームの中には現実世界を模倣したリアルな環境下で、無害な相手にも暴力を振るえるものがある。過剰な暴力を提供するゲームは残虐性を誘発させ、現実世界での反社会的行為に繋がると判断されている。実際に10代の若者達がゲーム内の行為を現実で真似て、凶悪事件が増加した。Ц課検閲官はチップを埋め込んだ状態でログインし、ゲーム内で可能な行動を記録する。その内容次第で[規制値到達]すれば、ゲームが規制対象になるのだ。
*Ц課は設立されて3年、責任者はアンドレイ・エフゲーニチ。彼の娘はVR内の非暴力を求める活動家だったが、『ゾディアック』を模倣した2人の少年に誘拐されて焼き殺された。しかし少年達も遺体で発見されており、第三者の関与が断定されている。検閲官スタスはゲーム『ゾディアック』の公式版優勝者で、多額の賞金を得た。『ゾディアック』は公的には捜査シミュレーションだが、アンダーグラウンドでは殺人鬼側としてプレイ可能だ。実はアレックスはアングラ版『ゾディアック』のプレイヤーであり、アンドレイの娘を誘拐、更に少年達も殺害した張本人だ。
*内部監査官はスタスの方の危険性を指摘するが、アンドレイは懐疑的だ。暴力的なのはアレックスで、スタスは不必要な戦闘は避けている。[VR症候群]ならアレックスの方が疑わしい。しかし監査官はその点こそを問題視している。アレックスの加点に協力するためにはBOTを残虐に殺す方が効果的だが、スタスは瞬殺しているのだ。「自分以外は単なる殺戮者だと見下していて、ゲーム制作者よりも自分が優れていると示したいのです」と言う監査官。
*先日の捜査で政府機関の人間も逮捕されたため、Ц課に圧力が掛かる。不適切な捜査の責任として、スタスかアレックスを現場から外すよう上層部から指示されるアンドレイ。より優秀な検閲官がЦ課に残る事になるが、ゲームの成績がそのまま勝敗になる。2人はそれぞれ選択したゲームにログイン、ゾンビから逃げながら或いは軍服に身を包んで殺戮を繰り返す。時には同じゲームで向き合い、直接撃ち合う事もある。出し抜かれて現実へ戻っても怒りを抑えられず、スタスの写真にナイフを突き立てるアレックス。アンドレイの娘を殺害した時にも着けていた、ゲームのゾディアックを模した仮面を被って悦に入る。
*現実でのスタスは妻アリョーナと平穏に暮らしている。彼は自宅で仕事の話をしないため、アリョーナはまだティムが相棒だと思っていた。嘗ての相棒ティムは事務職へ異動しており、現在はアレックスと組んでいると初めて知らされる。次のバカンスでは2人でボラボラ島へ出掛ける予定だが、スタスは次第に笑顔を見せなくなり帰宅も遅くなる。不安を感じたアリョーナは密かにアレックスに連絡を取る。「彼を知りたいなら君のデジタルコピーを提供すると良い」と提案するアレックス。
*ゲームの中で、丸腰の少女をナイフで殺せないスタス。この調子では勝負に敗れてしまう。別のゲームにログインして点数を稼ごうとするが、銃乱射の後に逃げ込んだビルでアリョーナと遭遇。それは彼女自身ではなくデータのみの存在だが、戸惑っている内にスタスは射殺される。彼のチップは視神経への伝達に障害が起こる事がある。記録には問題ないが、没入感が高いゲームをプレイしていると現実と非現実の区別が困難になってしまう。それを防ぐため、故意に左手の掌に傷を付けるスタス。
*再び同じゲームにログインする。まるで現実のようだが、掌は無傷だ。今度は立ち尽くす事なく、NPCである周囲の一般人を射殺する。アリョーナを人質にして倉庫に立て篭もると、敢えて銃を置いてドライバーを手に取る。銃で即死させるより残虐性が高くなり、得点に繋がるからだ。彼女の喉をドライバーで切り裂き、腹部を繰り返し突き刺す。不調だったチップの接続も回復しており、やがてインターフェースに[規制値到達]が表示される。
*現実世界でも、アリョーナ殺害の光景がフラッシュバックする。アレックスの入れ知恵でコピーを作った事を知り、彼女を非難するスタス。ボラボラ島への旅行もキャンセルしてしまい、妻は不安を募らせる。そんな中、アンドレイが部下2人に「事態が変わった」と告げる。成績優秀な方が残される筈が、アンドレイが解雇されて1人がその後任になるのだと言う。後釜になれるのは、より優秀な検閲官。つまりゲームでの勝負が続行される。ゲームがリアルである程に得点が高いため、スタスは『ネメシス』を選択する。それはセーブを重ねると、現実との区別が出来なくなるようなリアルな作品らしい。スパイとなって捜査をするが、舞台はこの町を模倣している。
*アリョーナや同僚の制止も聞き入れずに『ネメシス』を開始するスタス。別人のスキンは適用せず、自分自身として[完全現実]でプレイする。VRブースを出ると現実の続きのようだが、掌には傷がない。ここは仮想世界だと言う事だ。手近なブースに入っては、プレイヤーを次々に殺害する。一旦セーブしようとして「ログオフ」と言うが変化がない。装置に腰掛けてみると現実に戻る事が出来た。操作が些か特殊なようだ。血で汚れていたシャツは元通りに白く、掌には傷がある。
*再度ログインすると、また血塗れの姿になる。人を見付ける度にバンダナで首を締め上げ、ガラスの破片を身体に突き立てる。躊躇いつつ、遂には妊婦の腹を裂く。その現場をオペレーターに見付かり、駆け付けた警備員に射殺されるスタス。相手は銃を持っているため、何度挑んでも倒せない。掌の傷を確認しながらログインとログオフを繰り返し、試行錯誤を重ねて遂にVRクラブの人々を一掃する。しかしその過程で掌を怪我してしまい、傷で現実と仮想とを見分ける事は不可能になる。スタスは瀕死の警備員から「検閲官、今あんたは現実世界に居るんだ」と言われるが「戯言だ」と取り合わずに射殺する。
*到着した警察を返り討ちにして武器を奪うと、住宅地へと逃げ込んで少女を人質に篭城する。これが仮想現実だと自信があったが、また視神経への接続が不調で[規制値]が表示されない。しかし記録はされている筈だ。無抵抗な人質の少女を殺害すれば高得点を得られる。奪った銃よりも、ナイフの方が残酷で効果的だ。周囲を包囲され「これは現実だ、人質を解放しろ」と呼び掛ける声が響く中で、スタスは次第に不安になる。もしも本当にこれがゲームでないのなら、少女を殺す事は出来ない。ナイフを手放し彼女を逃がすが、既に妊婦を含めて大勢の人々を殺してしまった。銃口を自分の顎に押し当てて、引金を引くスタス。
*彼は死なず、気付けばVRブースに居る。自殺したのは仮想現実の中で、今が現実だ。ブースの外で様子を見守っていたアンドレイが「失望したよ」と話す。いずれ誰かが同様のトラップを仕掛けたら、スタスはそれを見破れない。それでは違法なVRソフトを規制出来ないのだ。検閲官は現実と非現実を見極めて[規制値到達]しなければならない。娘を失ったアンドレイは高い志を持っている。自分を強い調子で責め立てるアンドレイに、Ц課のバッジを返すスタス。何度も着信を無視して、ブースの中で放置したままだった携帯電話を漸く手に取ると、アリョーナがこのVRクラブの近くに居ると言う。夫を心配して、ティムから居所を聞き出したのだ。そんな彼女にアレックスが接近する。
*アレックスにはスタスと逆の事態が起こっていた。スタスは仮想現実を現実と捉えたが、アレックスは現実を仮想現実と捉えたのだ。ゲームをプレイしているつもりで、実際にVRクラブの人々を殺して屋外へ出たアレックス。高潔が故に2人を追い詰める結果になった事をアンドレイは悔やむ。彼は病に冒されており余命僅かだが、死が訪れるのを待つ事は出来なかった。スタスが仮想現実でそうしたように、顎に銃口を押し当てて引金を引く。
*アレックスはBOTだと思い込み、アリョーナを捕らえて人質にしている。廃墟に立て篭もり、手榴弾に繋いだワイヤーを握るアレックス。そのまま倒れるような事態になれば、アリョーナも爆発に巻き込まれる。スタスは現場でアレックスとの接触を試みるが、特殊部隊に阻まれる。隊長はアリョーナを救う事は困難だと考えておりアレックスの射殺を優先、間もなく部隊が突入予定だ。そこでスタスはティムに協力を頼み、部隊長を銃で脅して突入命令を阻止する。
*廃墟の中、必死に「これはゲームじゃないわ」とアレックスに訴えるアリョーナ。しかし彼はこれは現実ではなく、スタスと同様にチップの不調のせいでインターフェースが表示されないだけだと考えている。全く聞く耳を持たず、単なるデータだと思っているアリョーナにスタスへの不満をぶつけるアレックス。「スタスはクソ真面目で、ゲームの素晴らしさを理解出来ない」と。
*そこへ発煙弾が投げ込まれ、煙幕に紛れて弾倉のみを手にしたスタスが廃墟に接近する。不自然な状況で、相手を[スタスのスキンを使っているアンドレイ]だと勝手に解釈するアレックス。それはスタスの狙い通りで、自分達の上司のように振る舞う。期待されている行為は何なのか、思案したアレックスは「自死する事だ」との結論に到る。完璧な自殺をしてみせるのは、どんな検閲官も成し得なかった快挙なのだ。スタスは自害したが、それは現実世界だと信じての事だったため評価されない。
*「爆破してしまったら台無しだ」と忠告するスタス。手榴弾で即死でもしたら、残虐性が高いとは言えないからだ。実際には自分やアリョーナが巻き込まれないための言葉だったが、アレックスはそれに納得して、ワイヤーを手放しナイフを握り直す。高揚して、戯れのようにスタスにナイフを突き刺すアレックス。スタスは痛みを表情に出さす「いつまで遊んでいるつもりだ」と冷静に告げる。「ボスは見届けたいんだよな」とそれ以上スタスを傷付ける事はせず、アレックスは自分の身体を切り付け始める。腹部を横一文字に切り裂くと、大量の血が流れ出す。
*互いに出血多量で、意識が朦朧とする2人。アリョーナは腕を縛られ拘束されたまま嗚咽している。これが現実だと気付かれては水の泡になるため、スタスはどうにか意識を保とうとする。アレックスの方は、言葉少なになったスタスに不信感を抱く。この状況なら痛覚は遮断しておくのが無難だろう。今のスタスは本当に苦し気に見える。「ログオフ」と呟いても変化はない。「これは現実なのか?」と漸く思い至るアレックス。せめて2人を道連れにしようとワイヤーを掴むが、手榴弾のピンが抜ける前に絶命する。
*無線の不調でティムへの伝達が上手くいかず、出遅れたものの特殊部隊が突入する。ティムが部隊長から手酷く殴られたものの、スタスとアリョーナは無事に救出される。大変な不祥事にЦ課の存続も危ぶまれたが、次の責任者が検討されている。決定権はティムにあるが、アンドレイの後継者はまだ決まっていない。アリョーナはスタスを心配して、VRに戻らない事を望んでいる。一方VRクラブ[ハッピーマンデー]も再開される事になり、オーナーは『ゾディアック』の導入を指示する。
*新しい生活を始めるスタスとアリョーナは、引越準備を進めている。そんな中、スタスにアレックスからメッセージが届く。死後に動画が送信されるように設定しておいたらしい。「何故ボスの娘を殺したと思う?」と問い掛けてくるアレックス。「あの目障りな活動家は、俺達の楽しみをゲームから奪おうとしたんだ。アングラのプレイヤー達は、仮想と現実を区別せずにプレイする。俺はあの女を殺して闇の王者になった。そして今、王が死んだ。だが新たな闇の王が誕生する。今頃『ゾディアック』の掲示板に試合のルールがアップロードされてるぞ。お前が死ぬ時に見る物を教えてやる。あの女も見たんだ」モニタの中のアレックスが、ゾディアックの仮面を掲げて嗤っている。
■雑感・メモ等
*映画『バトル・プレイヤー1』
*レンタルにて鑑賞
*ロシア製のゲーム系サスペンス・アクション
*『レディ・プレイヤー1』は劇場で2回観たので、これは別に紛らわしいタイトルに騙されたとかではないよ。元々ゲームが好きで、ゲームネタの映画もつい見てしまう。とは言え最近のゲームには疎くてVRも未経験だけど。
*ゲーム内での殺戮場面にかなりの時間が割かれているから、もう少しコンパクトにして全体の尺も抑えて欲しかった。内容に対して127分は長い。(IMDbでは133分になっているけど、微妙なカットをされてるんだろか?)スタスの危険性とか2人の内1人を現場から外すとか、削除しても影響なさそうなエピソードだとも思う。
*どのVRゲームでも単なる実写映像を仮想世界と言う体裁にしているから、『ネメシス』がリアル過ぎて危険と言われれも差異が分からない。画質とか加工とかでちょっと変化を付けて欲しかったな。あとVRクラブで殺し続けるだけだったけど「軍のウイルス兵器[ネメシス]が盗まれた」と言うゲームの本筋も見たかった。ゾンビ系とか紛争系とかそれぞれの映像は結構予算潤沢に見える。『ゾディアック』の雰囲気も良い。
*他の部分は普通だけど、スマホやタブレットで未来感を出してる。厚めのアクリル板で縁が蛍光色に光る感じ、あれは割と可愛い。靴底がジグソーパズルな人が一瞬映るけどあれも可愛い。
*序盤からアレックスの正体を暴露、それ以外の影響で2人が早々に対立状態。前半はアレックスの裏の顔を隠して、もう少しパートナーらしい部分を出しても良かったのでは。
*全体的に容姿良好で監査官も美人。アレックス役のパイヴェル・ミケイロフは薄くトムヒに似ていると思った。