アンビュランス911 | m-memo

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ネタバレだらけの映画メモ。

忘れ易いので自分用にメモしてます。
ネタバレ部分は詳細を記載することもあれば、
二言三言のこともあります。

 

■あらすじ
ブリストル郡のパインバレンに位置するアッシュ・パイン・ロード。ここは、ハメを外した若者たちが“恐怖のドラッグレース”と称し、違法で危険なカーレースを楽しむ峠道。その一方で過去20年に渡り、この道を走行したと思われる31台もの車の運転者が行方不明になっていた。“魔のバミューダ海域”とも囁かれる危険区域だった…。母と二人暮らしのエイミーはある朝、同じ学校に通う男たらしのブルックやその恋人ジェイソンらのグループに、ケンカ中の大親友エンジェルが加わりドライブに出かけるのを目撃していた。そんなジェイソンが運転する車がアッシュ・パイン・ロードへ差し掛かるや否や、速度超過で単独事故を起こし、その衝撃で投げ出されたエンジェルが即死してしまう。ジェイソンらはすぐさま911に通報し、まもなく一台の救急車が到着するのだが…。(メーカーサイトより)

■ネタバレ
*1977年、ブリストル郡パインバレン。アッシュ・パイン・ロードは[死の罠]と呼ばれていた。20年間で31台の車と運転手が消えていたからだ。町外れのスクラップ工場の少年ダリルとジョンの父親がその原因だった。父は緊急通報を傍受しては事故現場へ繰り出していた。廃車になる筈だった救急車を乗り回し、事故現場では怪我人に「心配するな、救急隊員だ」と告げる。父は相手が安堵する間もなく怪我人の首を締め上げ、傷口に指を捻じ込む。血で汚れた指を舐める父の姿を見守り、救急車の中で震える兄弟。
*40年後の現在もアッシュ・パイン・ロードでは行方不明者が絶えない。最初は怯えていたが、スクラップ工場だけではなく救急車についても兄弟が父の跡を継いでいるのだ。本物の救急車よりも早く駆け付ける2人。「心配するな、救急隊員だ」と言うのは兄ダリルの役割で、弟ジョンはマスクで顔を隠している。今日血祭りにするのは単独事故を起こしたジョーダンと、通報してきた同乗者サムだ。
*エイミーは8ヶ月前に消防士だった父を亡くした。社交的な母メアリーは立ち直りつつあり、最近は親しい男友達も居るようだ。一方エイミーは2ヶ月前から親友エンジェルと疎遠になり、冴えない日々を送っている。エンジェルがブラッドと恋人同士になった事を批判したために、友情に亀裂が入った。エイミーから見ればブラッドは軽薄な男であり、彼の友人達も低俗に思える。エンジェルは「彼等と付き合えば考え方も変わるわ」と言ったが、エイミーは「死んだ方がマシよ」と返した。
*しかし彼等グループの中には、エイミーの気になる存在であるジェイソンも居る。ただしジェイソンはブルックの恋人だ。ブルックは派手で奔放、我儘な女王様タイプ。ジェイソンとブラッドが運転する2台の車に足を掛けて間に立ち、アッシュ・パイン・ロードを走る。危険な遊びだが、高揚したエンジェルが「私もやりたい」と言い出す。エンジェルはブラッドと付き合い始めた事でグループに加わった新入りであり、彼女が目立つのはブルックとしては面白くない。後部座席から運転席のジェイソンに戯れて、運転の邪魔をする。
*2台の均衡が崩れてエンジェルは転落。バイクで2台の後方を走っていたティムが通報する。そこは彼等の仲間だったジョーダンの事故現場に近い。救急車1台で800平方kmをカバーしているため兄弟の付け入る隙もあるが、今日到着したのは本物の救急車と警察車両だ。ブルックの提案で、ふざけていたエンジェルが車から落下した事にする。憤りながらも保身のため、真実を話す事は出来ないブラッド。捜査官ビル・ヒギンズは訝るが、それ以上の捜査は困難だ。
*葬儀で涙を流し、弔辞を述べるエイミー。ジェイソンはその姿に感銘を受け、葬儀の最中でさえ互いの髪型について話しているブルックとレイチェルには呆れ返る。ブルックはブロンドからブルネットに様変わりしているが、ジェイソンはもう彼女に対する興味が薄い。葬儀の後で、ジェイソンとヒギンズがそれぞれ気遣ってエイミーに言葉を掛ける。ヒギンズは亡父の友人で、最近母と親密なのはこの捜査官ではないかとエイミーは思っている。
*エンジェルが遺したSNSのページを眺めて泣いていると、ジェイソンがメッセージを送ってくる。その態度から、彼もエイミーに好意的だと感じ取れる。しかしなかなか積極的な気持ちになれない。コンプレックス克服のため「豊胸手術をしたい」と母に申し出るエイミー。母は手術に否定的ではないが、医師に相談して日程が決まると些か狼狽える。手術までそれ程余裕がなく、小論文の提出日とも重なっているためだ。小論文は大学進学のための大事なものだが、エイミーは手術に期待し喜んでいる。
*幾らか気持ちが上向きになったエイミーは、ブルックのパーティへ足を運ぶ。すると偶然ジェイソンと出会し、2人で会場へ。参加者達の間では、ジョーダンの行方不明が話題になっている。気持ちが離れてパーティに招待しなかったジェイソンと、元々相性が良くないエイミーの取り合わせに憤慨するブルック。エイミーの前でエンジェルの死が単なる事故ではないと匂わせた上で「エンジェルが初めてでもないのに善人面するの?ジョーダンと2人で老婆を死なせた」とジェイソンを詰る。
*それはまだエンジェルが彼等の仲間に加わる前の事。アッシュ・パイン・ロードで競い合って走っていたジェイソンとジョーダン。それぞれ助手席にはブルックとレイチェルが居た。風に飛ばされた封書を追って老婆が車道へ踏み出し、ジェイソンはそれを避けたがジョーダンが轢いてしまった。ジェイソンは通報しようとしたが、ジョーダンは「刑務所は嫌だ」と拒否。ブルックもそれに追随し、結局彼等は老婆を放置して走り去った。
*「彼も私達同様のクズよ」と言い放つブルック。エイミーは動揺してパーティ会場から立ち去り、ジェイソンとブルックの訣別は決定的になる。ブラッドはレイチェルとパーティを抜け出していたため、ティムが留守番電話に「ブルックが皆の前で秘密を暴露した」とメッセージを残す。しかしメッセージをいつ聞くか分からない。GPSでブラッドの居場所が分かるため、落ち着かないティムはそこへ向かう事にする。
*その夜暴露された秘密を、既に知っている者も居た。ダリルとジョンは、現場から走り去る車と運転手や同乗者を見ていたのだ。老婆は兄弟の母親で、常軌を逸した父親から彼等を守る存在だった。怪我をして泣いている兄の傷口に、排水管洗浄剤を注いだ父から庇ってくれた母。その母が無残に殺され、放置されたのだ。
*ブラッドとレイチェルは停めた車の中で事に及ぼうとしていたが、開けた窓からレイチェルが掴み出される。彼女を追って身を乗り出したブラッドは、肩を掴まれ咄嗟にダリルの腕にナイフを突き立てる。しかし反撃もそこまでで、電動回転鋸で首を斬り付けられるブラッド。
*やがてGPSの信号を頼りに、ティムがスクラップ工場に辿り着く。血痕を見付けて怯えながらもそれを辿って行くと、行方不明のジョーダンの車が見付かる。トランクを開くと、瀕死のブラッドとレイチェルが押し込まれている。茫然とするティムの背後にジョンが接近し、トランクを乱暴に閉める。気絶したティムは、2人と共にトランクに放り込まれる。
*附近で放置車両が見付かり、スクラップ工場を調べる事になるヒギンズ。ダリルが対応してヤードを見せると、救急車が置かれている。「親父は衛生兵だったから、血が恋しかったのさ」と嘯くダリル。ヒギンズの傍の車からは血が滴り落ちているが、ダリルがジョンに「踊ってみせろ」と嗾けて、それに笑った捜査官は流血に気付かずに帰って行く。
*ダリルはブラッドの反撃で傷付いた腕に、排水管洗浄剤を浴びせる。父を嫌っていたが、同じようにしか生きられない。少年時代には「顔を治療する」と言い出して、ジョンの鼻をペンチで掴んだ。血と涙を流す弟に「心配するな、救急隊員だ」と言い放ち、槌とノミで叩いて何本か歯を折った。警察が出動する騒ぎになり、兄は補導された。顔を痛め付けられた弟はマスクで顔を隠すようになった。
*手術を翌日に控え、母と穏やかな時間を過ごしているエイミー。一方ブルックは普段は勝手気儘に振る舞っているが、親からの愛情が薄い。両親は家を出ており、母に電話をしても郵便物でも届いたのかと訊かれるだけ。車を運転しながら「ママやパパが戻ったら料理を作るつもり」と話していると、通話が途切れる。後続車に煽られ、取り落としてしまった携帯電話を必死に掴もうとするブルック。母が折り返してくれて着信中の携帯をどうしても手に取りたかったが、ハンドル操作を誤り車道を逸れ、木に衝突してしまう。通り掛かった運転手が通報してくれるが、現れたのはダリルとジョンだ。
*ブルックはスクラップ工場に運ばれ、作業台に拘束される。抵抗し点滴を剥ぎ取り、針をダリルの左目に突き刺す。怒ったダリルはブルックの頭部にオイルを浴びせ、点火したマッチを投げ付ける。一方エイミーは手術台に横たわる。手術は無事に成功、メイクやネイルを施され髪もブロンドに染める。華やかな外見になり、気持ちも弾むエイミー。そこにジェイソンが電話を掛けてくる。「自分で考えて行動すべきだった」と言うジェイソンに、エイミーは「私もあなたを友達で判断したわ」と詫びる。
*どうやらブルックとの縁も完全切れているらしいジェイソンと、エイミーはドライブの約束をする。エイミーは上機嫌だが、母が小論文の件を思い出させる。進路を左右するものなのに、完全に失念していたエイミー。動揺していると母に迎えがやって来る。家に招き入れられ紹介されたのは、エイミーが怪しんでいたヒギンズではなくダリルだった。看護師である母は、病院でダリルと出会っていた。彼の母がジョーダンの車に撥ねられた時の事だ。
*ダリルはブルックに潰された左目を隠すため、片方だけが黒いレンズの眼鏡を着けている。彼は残された右目でエイミーを凝視する。自分の母親が撥ねられた現場から走り去った車、その助手席に座っていた女…ダリルが記憶しているのはブルックだったが、偶然にも今のエイミーの髪型や髪色が当時のブルックに酷似している。ダリルはエイミーが轢き逃げ犯の一味だと誤解。更に彼女を迎えに来た車に見覚えもあり、記憶の中の女の姿がエイミーに書き換えられる。
*久し振りにエイミーと再会したジェイソンは、すっかり印象が変わった事に驚いている。容姿だけではなく、進路について尋ねると「1年休もうと思ってるの」との返事だ。思わずジェイソンは「エイミーは何処に行ったんだ?」と口走る。「ここよ、変身しただけ。あなたに凄いと思われたくて」と言うエイミーに「頑張らなくて良い」とキスするジェイソン。2人が夜の森を歩いて車へ戻ろうとすると、路肩に停められた救急車から「クソったれ、失せろ」「この間抜け」等と声がする。救急車には不似合いな言葉だ。不審に思ったジェイソンが近付いて様子を見ようとすると、車両の後部ドアが開いて2人は中に引き込まれる。
*ダリルの運転で、スクラップ工場へ運ばれる2人。車内でジョンと揉み合いながら、ジェイソンが「逃げろ」と叫ぶ。停車した救急車から飛び出すエイミー。暗いヤードの中を、ダリルに追われながら逃げ惑う。やがて開けた場所に出ると、母が磔にされているのを発見する。内臓を引き摺り出されていて、明らかに絶命している母。泣き崩れるエイミーにダリルが接近、彼女にナイフを突き刺す。胸から血とシリコンが流れ出る。シリコンのお陰で通常よりはダメージが軽減されている。エイミーは再びダリルから逃げ出す。
*一方ジェイソンはジョンと揉み合い殴り合い、マスクを弾き飛ばす。ジョンの顔にはまだダリルからの暴力の傷跡が残っている。それでもいつも、兄に従って生きてきた弟。少年時代の兄弟は暴力的な父に逆らえなかったが、成人以降は優位になった。ジョンの体躯は父を凌ぎ、小柄なダリルはあらゆる本を読んだ。ある時、母を殴る父を弟が押さえ込み、兄が経眼窩式ロボトミー手術を施した。本からの独学の上ドリルを用いた乱暴な方法だったが、父は命は落とさず自我を失った。
*エイミーは兄弟の住居に足を踏み入れる。兄弟の母の亡骸と、もの言えぬ父が居るだけで助けを求める事は出来ない。納屋へ辿り着くと、そこには無残に燃やされたブルックが居る。彼女は酷い火傷で身動き出来ない状態だが意識はあり、痛みに耐えている。エイミーはブルックと逃げようとするが、移動させるのは難しそうだ。別の誰かの気配を感じ、エイミーはひとまず姿を隠す。
*やって来たのはヒギンズだ。捜索令状は取れなかったが、彼は兄弟を怪しんでスクラップ工場にやって来た。すると悲鳴が聞こえてヤードに潜入、エイミーに続いてガレージでブルックを発見する。そこに背後からダリルが接近し、後頭部を刺されてしまうヒギンズ。ダリルは次いでブルックの頭部にもナイフを突き立てる。
*エイミーは転がっていたシャベルを掴み、ダリルを殴打する。しかし大したダメージは与えられず、逆にダリルに組み伏せられる。エイミーに襲い掛かる兄の姿を見て、弟の脳裏に過去の出来事がオーバーラップする。父は兄を、兄は弟を暴力で捻じ伏せていた。それが爆発し、弟は兄の身体を掴むと粉砕機の刃に押し付ける。兄の血を全身で浴びる弟。その隙に駆け出すエイミー。
*覚束ない足取りで外へ飛び出し、林を抜けて舗装された道路へ辿り着く。彼女に迫る車。危うく轢かれそうになるが、間一髪のところでジェイソンが助けてくれる。彼はジョンと揉み合いになり首を締め上げられて意識を失ったが、幸いそのまま放置されたのだ。スクラップ工場目指してやって来たのは警察車両で、ヒギンズが応援を要請していたために駆け付けたらしい。捜査官の同僚がエイミーとジェイソンを助け起こす。安堵したのも束の間、別の車が3人に迫る。先刻は偶然エイミーを助ける恰好になったが、ジョンは味方ではない。彼の運転する救急車が、3人を目掛けて突っ込んで来る。

■雑感・メモ等
*映画『アンビュランス911』

*レンタルにて鑑賞
*救急車系殺人一家ホラー。ラストはヒギンズの同僚は茫然・状況が把握出来ているエイミーとジェイソンは逃げようとするが…と言うところで暗転。
*アラン・スミシー名義の作品。日本語版wikiでは「アメリカ映画で1968年から1999年にかけて使われていた架空の映画監督の名前」「2000年以降全米監督協会は個々の案件について、毎回異なった偽名を選ぶようになっている」とされているけど、IMDbによれば最近もスミシー名義の作品はあれこれあるみたい。IMDbのこの作品の頁では、監督名スミシーの横に[really Christian Winters]との添え書きがある。しかしこのChristian Wintersもまた同名で沢山登録されていて、正体はよく分からない。
*原題は『Old 37』なんだけど、これは何かの略語とか頭文字とかではなく[旧型の救急車]くらいの意味で良いのかな?[37]は車体に書かれている数字。
*ホラー映画には性質上、病院・医師・救急車と言った要素が結構出てくるけど、中でも[悪い救急車]は楽しい。命を繋ぐものが恐怖の対象になる感じ且つ病院や医師より能動的に恐怖が生み出せそう。とは言え救急車を中心に据えたホラーは多くないよね。サスペンスなら『アンビュランス』、本筋とは無関係だけど『トワイライト・ゾーン』ラストが印象的かなと言う程度。
*そんな状態だから浮かれてレンタルしてみた1本だったけど、生憎と救急車が活かされてない。兄弟もその先代である父親も胡散臭過ぎて、怪我人に警戒されてる。まずは相手を安堵させてこそだと思うんだけどな。救急車の内外で応急措置する素振りも見せないとはどう言う事。
*救急車描写は薄めなのに対して、キャラクター設定は無駄に盛られてる。兄弟の過去エピソードが幾つか挿入されて、彼等なりの抑圧や憤り等を描写。一方で主人公エイミーは軽薄なグループを蔑視していて、真面目で堅物な感じなのかと思ったら「豊胸手術したい」、進路が怪しくなると「1年間遊ぼうかな」とか言い出す。我儘身勝手な女子には親に放置されてるエピソードが。
*諸々の設定は活用されないまま、髪型と髪色を変えたエイミーが、兄弟の復讐対象の一味であるブルックと間違えられると言う脱力展開。見覚えのある車にジェイソンと一緒に乗ってる状態なら勘違いしてもまあ理解出来るけど、エイミーの自宅で自分達の母親の仇を見間違えるとは雑だなあ。他のメンバーにしても母親を殺したグループだと分かって標的にしてた訳でもないみたいで、それなら轢き逃げエピソードは必要なのか?標的の末路の描写も甘くて、救急車要素の薄さを差し引いてもホラー映画として盛り上がりに欠ける。