■あらすじ
綿密な計画と準備を整え、ルイスは花屋を営むキャシーを白昼堂々誘拐する。ルイスは自らが作成した10×10フィートの防音室にキャシーを閉じ込め、彼女が抵抗しようものなら激しく殴りつける。彼の動機 -それは、キャシーによって隠蔽された暗い秘密を告白させること。過去のある事件が解き明かされるにつれ、本当の犠牲者が白日の下にさらされることになる…。(メーカーサイトより)
■ネタバレ
*小さな花屋を営むキャシー・ニューランドは、フィットネスクラブの駐車場で襲われて拉致される。白昼の犯行だったが誰かに見咎められる事もなく、車のトランクに押し込まれて郊外の大きな一軒家へ運ばれるキャシー。ガレージは調子が悪くシャッターが落ちないようにデッキブラシで支えられているが、他の部分は豪華で手入れも行き届いた家だ。
*彼女を連れ去ったのはルイスと言う男だった。彼はダクトテープで口を塞いだキャシーに向かって、落ち着いた声で話し掛ける。「壁はコンクリート、厚さ120cmで吸音仕様。自分で施工したから確かだ」そこは10フィート四方の部屋。床や壁は無機質な灰色のパネルで覆われていて、厚い扉の他には何もない。「叫んでも無駄だ、分かったら頷け。テープを剥がすから名前を言うんだ」キャシーが頷いたためルイスはテープを剥がしてやるが、彼女は名前を言わずに絶叫する。
*叫び続けるキャシーを10×10の部屋に残し、照明も落とすルイス。扉を閉めると外には全くキャシーの声が漏れず、そこに扉がある事さえも分からない。拉致した時に怪我をしたのだろう、廊下に飛び散るキャシーの血を拭き取れば、もう彼女の痕跡は見当たらない。部屋には監視カメラは設置していないが、音声はパソコンのモニタから確認出来る。ルイスは情報番組の録画を眺めながら銃を準備する。見ているのは入院患者の不審死についての話題だ。
*銃を手に10×10の部屋へ戻るルイス。キャシーは「お金なら持ってる、5万ドルの貯金があるの」と言う。ルイスは「君の仕事にしては大金だな」と答える。しかし彼は金に不自由していない。再び彼女に名前を言うよう促すが「キャシー・ニューランド」との返事を聞くと、不機嫌な表情で部屋を出て行く。キャシーの鞄の中身を確認すると、キャッシュカードの名前と彼女の返答に齟齬はない。鞄には携帯電話も入っている。ルイスはまたテレビの録画を見る。「墓から遺体を掘り返したが、新たな死因は特定出来なかった」とレポーターが言う。
*キッチンでルイスが料理を始めた頃、キャシーはどうにか脱出を図ろうとしていた。後ろ手に結束バンドで縛られていたが、身体を折り足を抜いて腕を身体の前に戻す。料理を作り終えたルイスが10×10の部屋のドアを開けると、キャシーは腕を突き上げて拳で彼の顎を殴る。結束バンドは外せず手足は縛られたままだが、倒れたルイスの横を這って部屋から抜け出すキャシー。立ち上がり追って来たルイスを、今度は廊下の花瓶で殴り付ける。再び転倒したルイスを残して、廊下を這い進みリビングへ。助けを求めて必死に叫ぶがここでも音は外に漏れず、そもそも周囲には他に建物がない。
*キャシーが固定電話を見付けて手に取ると、追い付いたルイスが発砲する。キャシーは悲鳴を上げて「殺さないで」と懇願し泣き崩れるような仕草を見せるが、ルイスが接近すると机の上のペーパーウエイトを掴んで彼の頭を殴り付ける。また床に転がるルイス。キャシーは自分の鞄を発見するが、携帯電話は圏外だ。キッチンでナイフを掴み、足の結束バンドを切って取り外す。移動は容易になるが、玄関の扉や窓は開ける事が出来ない。
*やがてルイスが意識を取り戻す。握ったままのナイフを突き出して「何故私の仕事を知ってるの」と訊くキャシー。ルイスは「花屋じゃ大金は稼げない」と答える。行き摺りの犯行ではないのだ。ルイスは「料理が冷めるから食べながら話そう」と椅子に座る。キャシーの分の料理もテーブルに並んでいる。「俺の聞きたい話を…先ずは君の名前だ」キャシーがまた名前を言っても、ルイスは納得しない。
*キャシーは諦めて席に着く。「君は頭が良い。分かるだろ、殺すつもりならもう殺してる。俺は名前しか聞いてない」「キャシー・ニューランドよ」苛立ったルイスが銃口を向けると、キャシーがその腕を払い除けて2人は揉み合いになる。繋がれたままの両腕をルイスの首に回して締め上げるキャシー。ルイスの動きが鈍り、キャシーはその隙に放り出された銃を取ろうとするが、回復したルイスに殴打され意識を失う。
*窓の外、接近してくる車を認めるルイス。慌ててキャシーの身体を引き摺って、10×10の部屋へ放り込んで扉を閉める。リビングへ戻ると、家政婦のアロンドラが居た。今日はどうするか電話で尋ねたのに、返事がなかったから直接やって来たのだと言う。彼女は乱闘の結果散らかった部屋や、傷付いたルイスに驚いている。「何も問題ない」と繰り返すルイス。戸惑いながらも追及はせず「明日はお泊りに行ったサマーを迎えに行きますね」と言い残して、アロンドラは帰って行く。
*床に散らばった花瓶の破片やナイフを片付けて、シャワーを浴びるルイス。そしてリビングで、録画した番組をまた再生する。「ある患者は死亡する1ヶ月前の健康診断で問題なかったが、検視報告には肝機能不全と記載されていた」と言う情報。その頃、オール・エンジェルズ病院で3件の不審死が続いた。一方、キャシーは部屋で床材を剥ぎ取ろうとするが上手くいかない。
*ルイスはまた10×10の部屋へ戻り、キャシーに名前を尋ねる。出身地・出身校・両親の職業や自分の経歴…彼女はそれ等に澱みなく答えるが、ルイスは納得せずに壁を撃つ。「次は頭を撃つ」と告げて再び同じ質問をすると、キャシーは全く違う内容を話し始める。先刻の答えは全て嘘だった。そしてルイスはキャシーの事を調べ上げている。彼女の本名はナタリーで、キャシーとは彼女の双子の妹の名前だ。本物のキャシーは自殺してしまった。
*キャシーの本名はナタリー・A・スティーブンス。双子の母親は看護師で、父親はフットボールのチームドクターだった。父はチアガールと駆け落ちしてしまい、それが原因で妹は自殺。ナタリーは看護師の資格を取った。そこまで聞いて納得した様子で、ルイスは部屋を出る。「拉致された理由を聞きたいか?…君はもうそれを知ってるな」
*リビングではホームビデオが流れている。まだ赤ん坊のサマーを抱いている妻アラーナ。部屋で1人になったナタリーは携帯電話を取り出す。リビングでは圏外で繋がらなかったが、ポケットに押し込んでおいたのだ。排気孔の隙間に携帯を翳して僅かな電波を頼りに警察へ通報する。「拉致されたの、この携帯を追跡して。トランクに入れられて運ばれたわ。車は多分ダッジよ」その頃ホームビデオの中でアラーナが携帯電話を手に取る様子が映し出されて、ルイスはふとナタリーの携帯の事を思い出す。乱れた部屋を片付けていた時、鞄の中身には携帯が含まれていなかった。
*10×10の部屋へ駆け戻るとナタリーから携帯を取り上げて、床に叩き付ける。怒ったルイスは「話を終わらせよう」と捲し立てる。ナタリーが勤務していたのはオール・エンジェルズ病院。4年前に3人の患者が不審死を遂げた。ルイスの妻アラーナが3人目の死亡者だ。看護師達も聴取されたが裁判で無罪になり、ナタリーは事件後に病院を去った。退職の理由を尋ねるとナタリーは「再出発したかった、人生を破壊されたのよ」と言う。「3人の死者は再出発出来るのか?」と訊くルイス。
*ルイスは最初は死因に納得したが、妻の結婚指輪がなくなっていた事を不審に思い調べ始めた。アラーナはいつもなら結婚指輪を外さない。普段はそんなに飲酒しないのに泥酔状態で、血中からはドラッグが検出された。ナタリーは「病院には過失なしとの判決が出たのよ」と言うがルイスは取り合わず「君が殺したのかどうかは疑っていない。君が殺したのは確かだ、その理由が知りたい」と言い募る。「妻が死んだ理由を説明出来ないなら、君は死ぬ事になる」
*ルイスはまたリビングでホームビデオを見る。冬のある日、サマー4歳の誕生日、妻と娘が並んで笑っている。やはりこれは遣り遂げなくてはならない。銃を手に10×10の部屋へ入り、黙ってナタリーに銃口を向ける。ルイスが本気だと察したのか、ナタリーは「全て話すわ」と言う。
*双子は信心深く育てられた。神に愛され、幸せだと感じていた。しかし愛してくれる筈の父は、妹の親友と何ヶ月も浮気していた。浮気に気付いた母が問い詰めると、卑怯な父は家を出た。家族を恥の中に置き去りにしたのだ。妹は耐え切れずに首を吊って自殺、ナタリーがそれを発見した。
*ナタリーは妹を弔うため看護職に身を捧げたが、患者達から打ち明けられて秘密を知る事になった。1人目の男は重婚。2人目の女は夫の暴力を警察に訴えた後に、2階から飛び降りた。夫は逮捕されて殺人未遂で有罪に。実際には夫は何もしていないが、慰謝料欲しさに女が芝居したのだ。
*そして3人目のアラーナは、夫とは別の男と寝ていたのだとナタリーは言う。結婚指輪を外していたのはそのためだ。着飾ってホテルのバーで呑んでいて、倒れた時には身分証は持っていなかった。「仕事中だったと言う説明を信じてるの?」と畳み掛けるナタリー。見舞いに来た浮気相手にも会った。背の高いハンサムな男。密会を重ねていると男は話した。「結婚は尊ぶべきだと聖書は教えてる。奥さんは罪人だった、娼婦だったのよ。悪いのは誰?…私が彼女を殺したわ」
*罪を告白したナタリーを部屋に残して、ルイスはまたリビングでホームビデオを見る。カメラに向かって明るく話していた妻が、携帯電話の着信を見て僅かに見慣れない表情をする。ルイスは涙を零し、テーブルをひっくり返して棚に並べた花瓶やオブジェを払い落す。
*それでも気持ちは収まらず、アラーナと何度も訪れた湖畔へ車を走らせる。すると警官に声を掛けられる。ダッジについて通報があったのだと。ナタリーの電話が繋がったようだ。免許証の提示を求められ、トランクの中も確認されるが問題なしと判断される。
*ナタリーは叩き壊された携帯電話の破片を使って、床材の繋ぎ目を削り始める。やがて戻って来たルイスが10×10の部屋で蹲り「娘に、妻について何と言えば良い?俺が妻と話し合う機会を、君が奪ってしまった」と問い掛ける。「自首しろ」「それは難しいわね」ナタリーは剥ぎ取っておいた床材の鋭利な欠片を、ルイスの首筋に突き刺す。倒れて呻くルイスを繰り返し蹴り付けるナタリー。「何故邪魔をするの?私はキャシーよ。幸せに暮らしてるのに、それを諦めろって言うの?」
*ナタリーは部屋から駆け出して、キッチンでナイフを手に入れる。どうにか起き上がりやって来たルイスは先に銃を見付けるが、首筋を切られたダメージが大きい。揉み合いの結果、銃を手にするナタリー。彼女がルイスへ銃口を向けていると、サマーとアロンドラが家に入って来る。状況に気付いていないサマーは「お泊りは中止になったわ」と話している。ナタリーは銃口をルイスから外して発砲、アロンドラが倒れる。驚き、アロンドラの身体に縋り付くサマー。
*ナタリーは再び銃口をルイスへ向ける。サマーが父に駆け寄ろうとすると、ナタリーがそれを捕まえて抱え込む。どうにか宥めようとするルイス。「俺の娘を傷付けないでくれ」「あなたの娘?そう信じてるの?裏切られてたのに」ルイスは一瞬躊躇うが、説得を続ける。「自首しなくて良い、元の生活に戻れ」「携帯から通報したから警察が来るわ。彼等に何と言えば良いの?」彼女の足元にはアロンドラの死体が転がっている。「悪いけど、こうするしかないのよ」ナタリーは銃口をサマーの頭に押し付ける。
*「1つ見落としてる、君が言った事は全部録音してるんだ」とルイスが告げると、ナタリーは動揺を見せる。その隙を逃さず、サマーが自分を抱き込んでいるナタリーの手に噛み付いて拘束を逃れる。また揉み合いになる2人。ナタリーが首筋の傷を攻撃するが、ルイスは必死に彼女の首を締め上げる。気絶したかと思ったが、僅かな時間で立ち上がるナタリー。ルイスはナタリーの打たれ強さに困惑の表情を浮かべて、彼女を撃つ。
*サマーを探すと、娘はあの部屋に逃げ込んで蹲っていた。手を繋いで部屋の外へ連れ出し、ルイスは録音した音声データを握る。その時サマーが、ナタリーが姿を消している事に気付く。弾が当たって倒れていたのに。彼女の所在は分からないが、親子はガレージへ向かい車で逃げ出そうとする。しかし、そこにはナタリーが待ち構えていた。銃を向けられるが、もう弾は残っていない。
*2人はまた揉み合いになる。ナタリーはナイフをルイスの太腿に突き刺し、ルイスは頭突きで応戦。するとナタリーは手近にあったレンガでルイスを殴打する。更にガーデンフォークを掴んで振り下ろそうとするが、ルイスはどうにか堪えて逆に持ち手部分でナタリーの頭部を突く。ふらついたナタリーがガレージを支えていたデッキブラシを弾くと、シャッターが落ちて彼女の身体が地面との間に挟まれる。
*満身創痍のルイスだったが立ち上がり、駆け寄って来たサマーを抱き締める。警察車両の赤色灯とサイレンが近付いて来る。「愛してる、お前は大切な娘だ。俺の娘…」
■雑感・メモ等
*映画『10x10 テン・バイ・テン』
*レンタルにて鑑賞
*監禁系密室サスペンス
*主人公は監禁側。ルーク・エヴァンスは『NO ONE LIVES』でも女性を監禁していて無闇に強かったけど、本作では監禁されるケリー・ライリーが矢鱈に強い。あらすじを読むと監禁される方に問題がありそうだと分かるから展開に対する意外性は薄いけど、ライリーの逞しさには驚かされる。お話の方は、名前を尋ねる・録画された映像を見る・揉み合いになる…の繰り返しで単調。
*エンドロールでは黒地に白いラインで、物語を彩ったものが描画されていく。(部屋の図面・結束バンド・携帯電話・銃・車等。)それを見ても、途中で出てきたのが本当にペーパーウエイトなのかレンガなのかは不明。
*主人公がどうやって標的を発見したのかも不明。腕力は標準或いはそれ以下だけど、索敵能力が桁違いなのかな。
*妻の生前のビデオ映像に映っているのは、現在も住んでいる自宅みたい。妻の死後、容疑者監禁目的であの部屋を増改築したと言う事かなと思うんだけど、リスクが高い気がする。字幕で「厚さ120cm」てなってたからそのまま書いたけど、これは間違いではないんだろうか。
*娘は冬生まれ(感謝祭辺り)みたいだけど名前はSummer。結局実の娘なのかどうかは分からないけど、主人公は受け容れた様子。