■あらすじ
どこまでも雪と氷が広がる南極大陸。考古生物学者ケイトは、氷の中で発見された、太古の昔に死んだと思われる生命体の調査のため、ノルウェー観測隊の基地へと降り立った。しかし、“それ”は、まだ生きていた。調査の中、ケイトたちが解き放った物体は、狙いをつけた生物の体内に侵入、細胞を同化して、その生物になりすまし、自らの生存のため人間同士を争わせようとする宇宙からの生命体だったのだ。そしてケイトと12人の観測隊員たちは、氷に閉じ込められた南極基地の中で、突如人間から変形して襲いかかる“それ”の恐怖と、誰が“それ”に乗っ取られているのかすら分からない疑心悪鬼に巻き込まれていく…(メーカーサイトより)
■ネタバレ
*1982年の冬、ケイト・ロイドは友人アダム・フィンチを介してサンダー・ハルバソン博士と対面する。彼女の専門は古脊椎動物学。ハルバソン博士は「氷からの検体採取の経験があるか」とケイトに問い掛ける。南極で建造物と検体を調査して欲しいと持ち掛けられるが与えられた情報は僅かで、翌日には南極へ出発しなければならない。躊躇いつつも興味を引かれたケイトは、その依頼を了承する。現地へのヘリの中「作業は2~3日で済ませる必要がある」と聞かされる。吹雪が近付いているのだと言う。
*トゥーレ基地に到着したケイトが目にしたのは巨大な宇宙船だった。想像を凌駕する展開に驚くケイト。その宇宙船に乗っていたのだと思われる生命体も氷漬けになっている。2×4×1m程度の大きさに切り出された氷は基地へと運ばれる。組織のサンプルを取り出そうとするハルバソン博士に対して「準備も道具も不十分で性急過ぎる」と反論するケイト。しかし結局押し切られた上に、「他の隊員の前で逆らうな」と咎められる。
*世紀の大発見の後で、基地では酒盛りが始まる。喧騒を抜け出したデレクが眺めていると、検体が氷から飛び出して外へと逃げ出してしまう。凍った死骸だと思っていた[もの]は未だ生きていたのだ。闇の中、2~3人ずつに分かれて[生きもの]を探す事にする。ラーシュの犬が犠牲になっているのを発見したヘンリクが、ヒトとしては1人目の犠牲者になる。彼は背後から胸を貫かれて[生きもの]に取り込まれる。
*[生きもの]は火炎放射器で仕留められる。解剖してみるとヘンリクの頭部が羊膜のようなものに包まれている。消化して取り込む途中だったようだ。骨折したヘンリクの体内に入っていたチタンプレートが何故か身体の外にある。細胞を調べてみると、エイリアンの細胞はヘンリクの細胞をコピーしていると分かる。ただ取り込むのではなく、対象を模倣し成り代わるのだ。無機物はコピー出来ないためにチタンプレートが体外にあったのだろう。
*その後、ケイトはシャワー室の洗面所で歯の詰め物を発見する。[生きもの]が誰かと入れ替わったに違いない。体調の悪いオラフを乗せたヘリが飛び立ったばかりだが、誰も基地の外へ出るべきではないと判断するケイト。彼女は必死でヘリを呼び戻そうとする。機内では1人の隊員の身体が割れて、無数の触手がオラフに襲い掛かっていた。パニック状態に陥ったヘリは遠く離れた尾根の裏に墜落してしまう。他のヘリは給油のために基地を離れていて、基地近辺はまだ視界が良いものの吹雪の影響で無線は使えない。結局雪上車で救出に向かう事になる。
*ジュリエットが怯えた様子で「コリンがシャワー室から出てきたのを見たの」とケイトに話す。やはり基地外に人を出すのは危険だ。ケイトはジュリエットと共に、車が使えないように鍵を取りに行く事にする。他の隊員が出発の準備をしている間に、倉庫で鍵を探すケイト達。しかし抽き出しを掻き回すケイトの背後でジュリエットが変化する。腹部と胸部が割れて巨大な牙のようなものが出現し、触手を振り回す。必死に逃げるケイト。廊下で擦れ違ったカールに向かって走りながら「逃げて」と叫ぶが、彼は反応が遅れて襲われる。ケイトは他の仲間と合流し、[生きもの]はまた火炎放射器で燃やされる。皆で雪上に穴を掘り残骸を放り込み、改めて燃やす。
*[生きもの]はここから出たら瞬く間に増殖するだろう。ウイルスと同様に隔離して死滅させるべきだ。しかしまず誰が本物なのか、[生きもの]に取って代わられているのか分からない。ヒトの血液をエイリアンの細胞に混ぜると反応がある筈だと推測するハルバソン博士。彼とアダムとで検査の準備をする事になる。ケイトはラーシュと共に、車が使えないようにコードを切る。ケイトに手榴弾の置き場所を見せるラーシュ。
*そこへ墜落したヘリに乗っていたカーターとデレクが戻って来る。「あの墜落で生還出来る筈がない」「エイリアンに違いない」と騒ぎになるが、ケイトは「検査が可能になるまで閉じ込めておけば良い」と隊員を宥める。しかし部屋が放火され、検査出来なくなってしまう。ケイトは機転を利かせて、歯の詰め物を確認する事を提案する。[生きもの]が成り済ましているのなら詰め物がない筈なのだ。
*各々の口の中を調べると、アダムとコリンには詰め物がない。ハルバソン博士は「セラミックだ」と主張、エドバルドは言い訳もせずに[生きもの]かもしれないグループに加わる。4人には人間としての決め手がない。エドバルドは「賢い女だ、彼女がボスだな」と呟く。
*ヘリの墜落から帰還後、小屋に隔離されていた2人をラーシュとヨナスで確認に行くが、床が壊されて逃げられている。ヨナスは「皆のところへ戻ろう」と言うがラーシュは「奴らを探す」と譲らない。吹雪の中、ヨナスを置いて先を急ぐラーシュ。結局ラーシュは何かに引っ張られて物陰に姿を消す。
*1人で戻って来るヨナス。ラーシュが外で襲われたと知って、アダム達は「敵は外に居るんだ」と騒ぎ立てる。そこへアメリカ人達も建物内に入ってくる。睨み合いになり火炎放射器を持っていたペデルがデレクに銃で撃たれる。火炎放射器のタンクに引火してデレクは黒焦げになり、エドバルドも爆発に巻き込まれる。
*火炎放射器を手にしたカーターに促され、皆で娯楽室へ移動する。ヨナスが肩を貸していたら、エドバルドの腕が千切れて襲い掛かってくる。アダムとデレクも触手のような管を突き刺される。カーターが持つ火炎放射器が上手く動作せず、アダムがエドバルドだったものと融合する。腕を失くしたエドバルドには、代わりに多足類の歩肢のようなものが生えている。エドバルドとアダムの顔面が混ざり合い、奇妙な雄叫びを上げる。
*悪夢のような騒ぎが収まり、ケイトとカーターが残る。燃えている建物内を移動していると叫び声がする。途中で逃げ出していたハルバソン博士が[エドバルドとアダムの融合体]に襲われたのだ。ケイト達にはエドバルドの[腕だったもの]が襲い掛かる。カーターが[腕]を切り裂き、ケイトが火炎放射器で仕留める。壁に突き立てた斧を再び手に取ろうとするカーターだが、ケイトが「触らないで、そのままにして」と言う。[生きもの]は簡単には死なず、流れ出た血も同様だ。斧はもう[生きもの]の血で汚れている。
*その後[融合体]はケイト達も襲う。カーターは思わず1人で逃げ出すが結果として彼が囮になったような形になり、ケイトは横手から[生きもの]に火炎放射器を浴びせる。壁を突き破った[生きもの]を追って外へ出ると、雪上車が1台基地外へと滑り出すところだった。無表情なハルバソン博士が運転している。逃げ出すと言うよりは冷静に目的地を目指している様子だ。既に[ハルバソン博士だったもの]になっているのだろう。「放っておけば良い、凍死する」「しなければ?大勢が死ぬわ」「行き場はない」「あるわ」
*2人は壊しておいた車のコードを繋ぎ直し、宇宙船へとやって来る。ハルバソン博士が乗ってきた雪上車も乗り捨てられている。[ハルバソン博士だったもの]を探していると宇宙船のシステムが起動したらしく、足場が動いてケイトはカーターと離れ離れになってしまう。単身で周囲を探っていると、青や黄色に輝きモザイク状のパーツが蠢く塔のようなものを見付ける。これが船の中枢だろうか。
*見慣れぬものに戸惑っていると、背後に[生きもの]が現れる。ハルバソン博士の顔と、歪な手足を複数持っている。顔だった部分が裂けると中から牙や触手が飛び出す。隠れた物陰からケイトを引き摺り出して覆い被さる[生きもの]。ケイトはラーシュに教えられた手榴弾を持ち込んでいた。彼女が手榴弾を[生きもの]の巨大な口に放り込むと、その歪な身体が四散する。
*無事だったカーターも駆け付ける。80km先にロシアの基地があり、燃料も足りそうだ。2人はそこへ向かう事にする。しかしケイトはカーターと向き合って表情を変える。彼女がヘリの墜落から帰還したカーターを信じたのは、ピアスをしていたためだった。それは[生きもの]には再現出来ない部分だから。でも今は着けていない。ケイトの言葉に思わず右耳に触れるカーターだが、ケイトは「反対側の耳だったわ」と言う。ケイトは制止を聞かず、雪上車の運転席に座るカーターを火炎放射器で燃やす。[生きもの]特有の雄叫びが聞こえた気がするが確かではない。1人残った彼女は別の雪上車に乗り込む。
*夜が明け、給油を済ませたヘリが基地に戻って来る。基地の惨状に茫然とするパイロットに、生き残っていたラーシュが発砲する。ラーシュは[生きもの]ではなく、カーター達に捕まり拘束されていただけだった。事情が分からず困惑するパイロットに口を開かせて詰め物を確認していると、1匹の犬が基地の外へと走り出す。ラーシュはパイロットと共にヘリに乗り込み、逃げ出した犬を追う。アメリカ基地がある方角へと向かって。
■雑感・メモ等
*映画『遊星からの物体X ファーストコンタクト』
*レンタルにて鑑賞
*ジョン・カーペンター監督作品『遊星からの物体X』の前日譚。
*『本作は1951年版や1982年版のリメイクではなく、1982年版の冒頭で触れられたノルウェー調査隊の「物体X」と円盤の発見、隊の全滅、生き残った隊員2名が犬に姿を変えて逃げ出した「物体」をヘリコプターで追跡するまでが語られる前日談(prequel)である。そういったことから本作オリジナルの要素を加えつつも、建物の構造や位置関係、顔が2つに割れた異様な焼死体、氷の下のUFOが映った記録映像、爆破された小屋の跡、内側をくり抜かれた巨大な氷塊、壁に刺さった斧、氷漬けの自殺死体など、1982年版で登場した事物との整合性が図られている。また、そのままオマージュしたシーンやアイテムも多く登場している』(wikiより)
*1982年版が好きだから、斧等の細かい部分もそこへ繋がるように構成されているのは見ていて楽しかった。[オマージュ]と言う事なのか既視感を覚える場面もあり、全体的な雰囲気もなかなか似ている。(1951年版や1982年版の「氷上で手を伸ばして大きさを確認する」と言う場面が好きなんだけど、ケイトが到着前に済んでいると言う事らしくて今回は登場しない。)比較してしまえば遠く及ばないけど、[前日譚]としてはそれなりに無難な出来映え。わざわざ作る必要があったのかどうか、と言えばまあ微妙だけど。
*ケイトがその後どうなったのかは疑問だけど、マクレディとチャイルズのその後については触れないで欲しいから続編とか出来なければ良いなと思ってる。