■あらすじ
ケリーは、母を亡くしてからずっとひとりで自閉症の弟トムの面倒を見ながら暮らしてきた。大学進学が決まり、トムを施設に預けることにしたケリーだったが、母が銀行に残していた預金は、一儲けを企む継父のジョニーがすべて使い込んでいた。その金で手に入れたのは、1頭のシベリアンタイガー。だが、ジョニーはトラの入った檻を家の中に放置したまま外出してしまう。その夜、ケリーが目を覚ますと、目の前に飢えた獰猛なトラが…!超大型ハリケーン襲来のため、外側から完全に窓や扉を塞がれ、密室と化した家の中で、ケリーと弟は果たして生き残ることができるのか!?(公式サイトより)
■ネタバレ
*ケリーは奨学金の受給資格を得ている優秀な学生。しかし自閉症の弟トムの世話を放り出す訳にもいかず、既に2回受講を延期してもらっている。幾らか弟の状況もよくなり、納得出来る施設も見付けたケリーは、今度こそ大学の授業に出る事にする。しかし口座の残額不足で、トムが施設に入るための必要経費が引き落とされていないと判明。前日に継父のジョニーが全額を引き出し、口座を閉鎖していたためだった。
*帰宅すると家には動物の入ったコンテナが幾つかと、餌を入れるための大きな冷凍庫がある。ジョニーは自宅周辺にサファリパークを作る計画をしており、何種類かの動物を既に購入している。そして今度は口座から持ち出した金で、獰猛なシベリアンタイガーを買い付けたのだった。「客は危険な本物を求めるから」とジョニーは言う。
*ケリーが「トムの施設入所はどうするの」と詰ると、ジョニーは「俺に任せて大学へ行けば良い」と言う。今まではケリーだけがトムの面倒を見ており、ジョニーにその役割が務まるとは思えない。しかし奨学金受給の延期ももう限界だった。会話の最中、ハリケーンに備えてジョニーに雇われた男達が家に板を打ち付けていく。家中の窓と扉が塞がれ、ケリー自身も八方塞がりだ。
*眠ろうとしたケリーは、トムが外に出ている事に気付く。今は家の正面扉だけが外へと繋がってる。トムはそこに佇んでいるが、何を見ているのかケリーには分からない。やがて家に戻った姉弟が寝入った頃、ジョニーは虎の入った檻を家の中へと向けて開け放つ。虎は調教のため、空腹の状態が続いている。
*深夜、家の中を歩くケリー。足音を忍ばせてトムの部屋へ。寝顔に枕を被せると、目覚めて藻掻く弟を押さえ付ける。…それはケリーの見た夢だった。まだ目覚まし時計のアラームが鳴る前の早朝、ハリケーンが上陸したらしい。外の風雨のせいで悪夢を見たのかもしれない。或いはケリーの願望なのか。
*汗をかいたケリーは2階の自室から階下のキッチンへ。冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出そうとすると、付箋に書かれたメッセージに気付く。ジョニーは嵐の夜だと言うのに出掛けてしまったらしい。呆れながら2階に戻ろうとした時、何かの気配がする。トムがベッドを抜け出したのかと思ったが、階段の半ばから1階を覗き込むと大きな虎が我が物顔で闊歩している姿が目に入る。日常とは懸け離れた光景に息を呑み、後退るケリー。
*窓から逃げられないかと考えるが、2階の窓も全て板で塞がれている。携帯で助けを呼ぼうとしても、部屋のランドリーシューターから洗濯物と一緒に階下へ落としたようだ。固定電話も嵐のせいか繋がらない。同じ2階にあるトムの部屋へ行くが、こちらも全ての窓の外には板がある。しかも布団を捲ると、そこにトムの姿はない。
*虎の様子を窺いながら1階へ。ランドリーボックスから携帯を見付け出すが、ハリケーン関係の通報が殺到しているのか繋がらない。ジョニーにも掛けてみるが、彼の携帯は車に置き去りだ。電話を取らずに済むようにワザとだろう。バーで1人呑み続けるジョニー。
*ケリーは玄関まで移動して正面扉へ。しかしそこも板が打ち付けられている。ではジョニーはどこから外へ出たのか?眠る前は正面扉は開ける事が出来た。ジョニーが出た後で扉を塞いだとしか考えられない。キッチンにある裏口もやはり開かない。
*ランドリーの扉から僅かに雨が流れ込んでくるのを見て隙間を広げようと躍起になっていると、虎が物音に気付いて接近してきた。ケリーは慌ててランドリーシューターへ這い上げる。それは上から落とす構造になっていて、下から上がる事は想定していない。何の出っ張りもなく、緊迫した状況下で汗も出るため滑り易い。やがて遂に虎が部屋に入って来た。落ちる事は死を意味する。必死に堪えるケリー。
*その時、落とした携帯に着信が入る。先刻電話を入れた911から折り返してきたのだ。音に気付いた虎が携帯を踏み潰す。これで外と連絡が取れなくなってしまった。まだ虎は立ち去らない。やがてケリーの汗がシューターを通って床に落ちる。その汗を舐めて、上を見上げた虎がケリーに気付く。虎は大きな身体をシューターの中に捩じ込んでくるが、何とか間一髪のところで上へと這い上がり2階へ辿り着いた。
*肩で息をしていたケリーが我に返ると、隣りにはトムが居た。前触れなく直接身体に触れると叫んで暴れるトムをどうにか誘導し、2人で自室へ。パソコンを起動して助けを呼ぼうとするが、嵐のせいなのかジョニーの策略か、回線は繋がらない。やがて虎が部屋のドアに体当たりを始めた。
*嫌がるトムを宥めつつ抱えて、ベッドの下に潜り込む。少しは匂いを誤摩化せないかと、香水を床に撒いておく。ドアを壊して入って来た虎はベッドの上へ。一瞬気配が消えて扉から出たかと思っていると、虎がベッドの下を覗き込んで腕を伸ばしてきた。反対側へと逃げようとすると更に身体を潜り込ませ、ベッドが浮き上がる。跳ね上げられたベッドが虎と姉弟を遮るような形になり、2人は扉から逃れる。
*ベッドで少しは時間が稼げるだろうと、正面扉にチェストをぶつけてみる。しかし相当念入りに塞いであるのかビクともしない。次に冷蔵庫から肉を取り出し、睡眠薬を埋め込む。睡眠薬はトムが持ち出した母の鞄に入っていたものだ。母が睡眠薬を処方された記憶はないが、いつの間に持っていたのだろうか。出来上がった睡眠薬入りの肉の塊を適当に床に投げる。睡眠薬に効果があるかどうかは分からないし、いずれにしても身を隠している必要がある。ケリーが屋根裏部屋に上がろうとすると、収納式の梯子が付いた扉は屋外の板と同様に釘で打ち付けられていた。これもジョニーの仕業に違いない。
*部屋に戻していたトムを連れて改修中の部屋へ。チェストで扉を塞いでおくが、虎には大した障害にはならない。クロゼットに潜んでいると簡単に嗅ぎ付けられ、虎が牙を剥く。息を潜めていたが無駄だと悟り、手にしていたバールで壁を壊して廊下へ逃れる。虎の爪がケリーの脹脛を切り裂き、顔を覗かせて咆哮するが、そこから追って来れる程は壁に空いた穴は大きくなかった。
*次に2人が逃げ込んだのはジョニーの部屋だ。サファリの仕様書や雑多な冊子が乗った机でドアを塞いでおく。念のためここでも板が破れないかと試してみるが、無駄な努力に終わる。しかし本棚には弾丸があった。何処かに銃もある筈だ。抽き出しを引っ掻き回すが見当たらない。一旦は諦めて、サファリのロゴが入ったTシャツを破って傷付いた足に巻き付けるケリー。こちらを見ようともしないトムに向かって、夢見ていた大学生活について独り言ちる。
*ふと床を見ると、散らばった書類の中に保険の証書を見付ける。被保険者はケリーとトム、2人分25万ドルの保険金の受取人はジョニーだ。この保険金のために、ジョニーは2人を罠に嵌めたのだろう。気を取り直し、改めて抽き出しを探すと銃が出てきた。
*ケリーは再び洗濯室を目指す事にする。打ち付けられている板が少し緩んでいたからだ。自分が先に立って進んで行くと、トムが途中でフラフラとルートを逸れてしまう。背後に虎が迫っており、飛び出して止める訳にもいかない。息を潜めていると虎は床に転がった肉を食べ、更に先へと歩いて行く。虎の背後に回り込んで銃を撃とうとすると、1発だけ足りずに埋められなかった弾倉が空回りする。気配に気付いた虎が振り返り、ケリーは闇雲に撃ってその場から駆け出す。
*飛び込んだ部屋でテーブルの下に隠れると、虎はケリーを見失ったらしくテーブルの上に乗ってウロウロと歩いている。ガラス扉の向こう、リビングでソファに座っているトムに気付くケリー。虎の様子を窺いながら静かにリビングへ入り、ここから移動するようトムを促す。トムは「嫌だ」と腕を払い除け、お陰でケリーの頬が傷付いた。直ぐ傍には危険な虎が居ると言うのに。
*虎がこちらに気付いて飛び込んできた。薄いガラス扉など虎にとっては大した隔たりではない。慌てて駆け出して、ケリーはキッチンへ。身を潜めていたコンロに虎が飛び乗ったため点火すると、虎の足下から火が噴き出す。怯んだ虎を撃つが当たらず、吊るされた調理器具を投げ付けて逃げ出す。
*ケリーは目指していた洗濯室へ。扉の上の小窓の板を叩き割ろうと必死になっていると、虎が背後のドアから身体を捩じ込んでくる。遂に虎が室内に入ったのと、板が剥がれたのとは同時だった。小窓から転がり出るケリー。虎の前足が一瞬の差で空を切る。
*小窓は虎が外に出るには小さ過ぎる。風雨の中、ケリーは車へ走る。しかしエンジンが上手く掛からない。助けを呼びに行く方が懸命だと思う反面、家に取り残されたトムがどうしても気掛かりだ。ケリーは嗚咽し、結局は元来た道を戻って小窓から屋内へ。
*洗濯室の床に落とした銃を拾い上げるケリー。トムを探すと、虎に壊されたクロゼットに蹲って亡き母の服を抱え込んでいた。「母さんが居なくなって寂しいわよね。私は居なくならないわ、あなたを見捨てない。これからはずっと一緒よ」と話し掛けるケリー。トムは大人しくケリーについて来る。
*バスルームで濡れた服を着替え、ジーンズを穿いた腰に銃を差し込む。その場にあったライターとスプレー缶で火炎放射器のような物が作れないかと模索するが、ライターの炎では上手くいかない。折ったモップの柄に布を巻き付けてオイルを掛けると、なかなか立派な松明が出来上がった。
*照明が落ちて暗くなった屋内を、松明で照らしながら進んで行く。そこへ虎が飛び出してくる。松明で牽制しながら発砲すると、虎の額を銃弾が掠めた。致命傷にはならず、しかもそれが最後の1発だった。2人はジリジリと後退してキッチンへ。松明のお陰で虎も一定距離を縮めてはこない。
*やがてジョニーが買った冷凍庫へと辿り着くと、まずはトムを中に入らせる。続いて松明を投げてケリーも冷凍庫の中へ。虎が冷凍庫に飛び乗り転がすが、頑丈な冷凍庫を壊すには至らない。
*虎の気配が消えた頃、冷凍庫から這い出すケリーとトム。板の隙間から日が差し込んでいる。嵐が通り過ぎて晴れているようだ。やがて正面扉の釘が抜かれて、ライフルを抱えたジョニーが慎重に顔を覗かせる。生き延びた2人を見て些か驚いているようだ。バーから戻らなかった言い訳をするジョニー。
*ケリーは「トムは何も分かってない、だから誰にも言わないわ。外へ出ても良い?」と訊く。するとジョニーは「母親と一緒だな。俺を捨てようとした」と呟く。自殺したと思われていた母、見覚えのない睡眠薬。「殺したのね」と怒りを含んだ声でケリーが言うと、虎が踊り掛かってジョニーの首に喰い付いた。咄嗟にトムを抱えて虎に背を向けるケリー。虎は2人に襲い掛かる事なくジョニーの身体を引き摺っていき、まだ息がある彼の身体を噛み砕き始める。姉弟は虎を刺激しないようにゆっくりと外へ。ケリーと視線が合い虎が一声吠えるが、追ってくる事はなかった。
*外に出てみると、サファリが出来る筈だった広い敷地はハリケーンで大きな被害を受けていた。2人は外よりも危険な状況を生き抜いたのだ。安堵するケリーの手にトムの手が繋がれる。ケリーは笑みを浮かべ、2人で歩き出す。
■雑感・メモ等
*映画『バーニング・ブライト』
*レンタルにて鑑賞
*完全な密室と化した自宅で飢えた虎に狙われる虎パニック・ホラー。家の中で獰猛な虎に襲われる状況を作るにはどうすれば良いか?と言う出発点からアイデアを捻り出したんだろうなと推察されて楽しいよね。
*主人公ケリーが冒頭から圧倒的に可哀想な感じ。虎が居なくても不幸。弟については仕方がないとしても、自宅周辺でサファリパークを開園しようなんて無謀な継父を持ったのが運の尽き。しかもその継父に虎の餌にされると言う。(allcinemaでは「ふとした不運の連続から」と記載されてるし、公式サイトのあらすじでも「ジョニーはトラの入った檻を家の中に放置したまま外出」となってるけど、実際には故意に密室を作って虎を屋内に放り込んでる。)
*CGではなく本物の虎で撮影しているとの事で、そこ(逞しい前足等)は見所。特にランドリーでの攻防は面白い。しかしお話全体としては、物陰から覗いて様子を窺い部屋から部屋へ逃げては板が外れないか試す…の繰り返しで尺は短いのに飽きてしまう。(因みに虎 vs. 姉弟の構図に到達するまで30分程度掛かる。全編85分しかないのに。ついでに導入部分では白いモヤが3分半程流れる。それが上空から捉えたハリケーンに、続いて走る車のホイールになって本編開始。)
*ケリーは前日までサファリの件について知らなかったようだけど、サファリの準備自体が姉弟を殺すための仕掛けだった…なんて事は流石にないよね。ハリケーンが上陸するかどうかも不明だし。保険金は予め掛けていたようだけど。
*階段で耳慣れた音がして振り返ると弟が居る、と言うエピソードが序盤にあって、虎でも同じ事が起こるか振り向いたらまた弟か、どちらかのパターンだろうと思っていたのに効果的に使われる事はなかった。睡眠薬入りの肉についても、虎は食べていたのにそれっきり。あの程度の量では効かないのかもしれないけど、一時的に動きが鈍くなる程度の流れはあっても良かったのでは。
*作戦が上手くいった場合、ジョニーは「高額の虎だからハリケーンに備えて室内に入れておいたばっかりに」とでも言い訳するつもりだったのだろか。ちょっと無理がある。
*モンゴメリー郡が舞台、とメモしてたから調べてみたんだけどモンゴメリー郡て18もあるの。