アイム・ノット・シリアルキラー | m-memo

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ネタバレだらけの映画メモ。

忘れ易いので自分用にメモしてます。
ネタバレ部分は詳細を記載することもあれば、
二言三言のこともあります。

 

■あらすじ

ジョンは16歳の少年。葬儀店を営む家庭に育った影響か、死体や殺人に異常な関心を示す彼は、ソシオパス(社会病質者)と診断される。ある日、町で謎の連続殺人事件が発生。自宅の葬儀店に運び込まれた死体からは内臓の一部が消えていた…。猟奇殺人鬼が近くに潜んでいることを直感したジョンは、自ら調査に乗り出し、偶然にも殺人現場を目撃、殺人鬼の正体が隣の老人であることを知る。ジョンは自身の奥底に眠る衝動を必死に抑えながら、自分の手でこの連続殺人鬼を阻止すべく覚悟を決める。凍てつく雪に覆われた町で、追いつ追われつの予測不能な死闘が始まる。(メーカーサイトより)

■ネタバレ
*ジョン・クリーヴァーはクレイトンで葬儀店を生業とする家に生まれ、母と叔母マーガレットの仕事を手伝っている。死体から血液を抜き、ピンク色の防腐剤を注入する防腐処理。同時に彼は死体や殺人に強い関心を持っていて、ソシオパス(社会病質者)と診断された。そのため定期的にネブリン先生のカウンセリングを受けている。彼は寝小便・火遊び・動物虐待と言う連続殺人犯の共通点が自分にも当て嵌まる事に怯えていて、[普通]で居るために幾つかのルールを自分に言い聞かせている。例えば、誰かを殺したいと思ったら、まずその相手を褒める事。

*クレイトンの地方紙に[TORN APART/切り裂き殺人事件]の記事が載る。53歳の修理工ジェブ・ジョリーが殺されたのだ。現場は、野生の動物に襲撃されたかのような状態だったと言う。ジョンは規制線の中に入り込み、黒い油か泥のような物が路上に零れているのを見る。また、葬儀店に運び込まれた修理工の死体は内臓が不足していた。犯人が持ち去ったのか警察が入れ忘れたのかはっきりしないが、腎臓が足りないのだ。
*友人の少ないジョンだが、向かいの家の少女ブルックが気になっている。その隣家に住んでいるのはビル&ケイ・クローリー。仲の良い老夫妻で、ジョンは何かと頼られる事が多い。今日はビルから「写真を撮って、妻にキスを送りたい」と携帯電話の操作を頼まれる。
*小さな町で続け様に殺人事件が起こる。今回の現場にも黒い油のような物が落ちていた。同一犯ならまた臓器が欠けているのではないかと考えるジョン。葬儀場の処置室に入り、勝手に死体を確認する。内臓ではなく腕が切られている事が分かるが、母の怒りに触れて処置室には出入り禁止になる。
*ハロウィンの夜、ジョンは数少ない友人マックスと町を歩く。殺人事件の影響もありマックスの過保護な父親が少し距離を取って2人の背後を歩いていて、時々声を掛けてくる。クローリー夫妻の家にも立ち寄ってお菓子を貰う2人。ジョンはその時、青いジャケットの男を見る。オレンジ色のフードを被っていて、顔は確認出来ない。修理工が殺された頃に初めて姿を見たため、ジョンはその男が気になっている。その後はパーティ会場で同級生ロブに絡まれる。いつもジョンをいじめてくるため「誰かを殺したいと思ったら衝動を抑えるために褒める事にしてる」と伝えてから相手を褒める。ロブはジョンの態度に気圧される。
*季節は冬になるが、ジョンは青いジャケットの男を注視している。路地裏でゴミを漁っている事もあるようで、ホームレスかもしれない。ある日、男がビルの穴釣りに同行したいと申し出ているところに遭遇して尾行を開始。自分は自転車だが路面が凍っていて車もスピードを出さないし、行き先は予想が出来る。目的地に到着すると、2人はチェーンソーで氷に穴を開ける。ビルは調子が悪い様子で、終始咳をしている。彼が背を向けると青いジャケットの男が襲い掛かるような動きを見せるが、それより早くビルが相手を攻撃する。チェーンソーではなく、右腕が木の枝か刃のように変化して、相手の胸を貫いたのだ。そこから黒い油のような物が垂れる。「恩知らずめ」と言いながら、死んだ男の身体を切り裂くビル。彼は自分と相手の肺をその場で取り換えたようだ。
*テレビのニュースでは、42年前にアリゾナで失踪したエメット・オープンショーについて伝えている。当時30歳、自宅に争った形跡があったが遺体は未発見。現場には黒い油が残されていたと言う。更に、今回の殺人現場からエメットのDNAが発見されたらしい。
*ある夜、老夫妻はダンスフロアが併設されたバーに出掛ける。ジョンも店に入って様子を窺っていると、ビルは足が痛むらしい。理髪師から「ケイとダンスを踊りたい」と申し出があり快諾するが、1人になると悔しそうだ。後日、理髪店を訪れるビル。店主が店の奥に行った隙に、ブラインドを下して閉店のサインを出す。店の外から様子を見ていたジョンが慌てて警報器を鳴らすと警官2人が駆け付けるが、既に理髪師は殺されてしまったようだ。更に警官2人も犠牲になってしまう。ビルはその場でステップを踏み、足の具合を確認している。片足を取り換えたのだ。
*どうにか凶行を止めようと、ビルの車のワイパーに『正体を知っている』とプリントした紙を挟み込む。効果があったのか彼は塞ぎ込み、1週間程外出していない。ケイに頼まれて訪ねてみると、ビルはウィリアム・ブレイクの詩を呟く。「いかなる翼で求めたのか/いかなる手で炎を掴もうとしたのか/虎よ夜の森で赤々と燃える虎よ/いかなる不滅の手や眼が恐ろしい均整を作ったのか」それは誰によって如何にして作られたかと、虎に問い掛けている詩だとビルは言う。ブレイクは同じような主題で『子羊』と『虎』を書いた。子羊は優しさと愛から成り、虎は恐怖と死を体現する。
*暫くは何事もなく過ぎたが、ビルの体調が悪化する。肩を貸して階段を上らせ、トイレや入浴も手伝うジョン。「妻を独りにするのは心配だ」とビルは言う。この体調だと彼はまた殺人を犯すかもしれない。
*クリスマスに貰ったパンダ柄の目出し帽を被り、町角の公衆電話からビルに電話をしてみる。「誰だ」と訊かれて「手紙を置いた」と告げると直ぐに切られてしまう。掛け直すと「お前を探し出すぞ。お前が知っている以上に殺してる。死体を放置したのは修理工が初めてだ」と言う。足や肺の件を持ち出して「アリゾナのエメットからは何を盗んだ?」と訊くと「人生だよ」との答え。
*話の途中で、相手が車を走らせている事に気付いて慌てて逃げ出すジョン。マックスの家が近いため転がり込む。窓から外を見ると、ビルが自分を探して歩き回っている。冬休みに入って2週間も会わなかったのに、クリスマスの夜に突然やって来たジョンを不思議がってマックスがあれこれ話し掛けてくる。ジョンは思わず「不味いんだ、自分のルールを破ってる。今は普通の事がしたい。君とつるむのは普通の事が出来るからだ」と口走る。マックスは真顔になり「3年間一緒に居たのは普通で居るため?」と訊いてくる。正直に「そうだ」と答えると、家を追い出されてしまう。
*再び目出し帽を被り外に出ると、マックス宅の近くの道端に車が停まっている。ライトは点いたまま、ドアが開いている。車の陰に回り込むと、ビルがマックスの父親を襲っていた。「お前のものじゃない」と叫んで引き剥がそうとするが、ビルは獣のような雄叫びを上げて威嚇してくる。どうしようなく、ジョンはその場から逃げ去る。

*ジョンは質店でGPS追跡装置を購入する。ケイが荷物を運ぶのを手伝い、装置を車のトランクへ仕込む。これでビルの動向を掴む事が可能だ。現在ビルは心臓の具合が悪いらしい。ある夜ビルが出掛けたのを確認して、ジョンはクローリー家の寝室に侵入する。ケイの携帯電話で写真を撮って、ビルへ画像を送るのだ。それが脅しになるだろうと考える。しかしケイに気付かれ騒がれたため、置時計で殴って
しまう。死なせてしまったかと狼狽えてネブリン先生に電話を入れると、どうにか落ち着きを取り戻す事が出来た。確認してみると、幸いケイは怪我をしただけで死んではいない。彼女の写真を撮影して送信すると、ビルは慌てて家へ戻って来る。入れ違いに出て行くジョン。
*ビルの車からGPS追跡装置を回収すると、後部座席に人影が見える。それはネブリン先生の遺体だった。まだ心臓は取られていない。ジョンはネブリン先生の遺体を車から運び出し、林に横たえる。夜が明けた頃に家へ戻ると、丁度ビルが車から死体が消えている事に気付いた様子だ。そしてジョンが秘密を知っている事にも気付いたらしい。2人は互いに何も言わず、ジョンは家に入る。
*葬儀場で、ロジャー・ボーエンの葬儀が執り行われる。そこへビルもやって来る。スタッフの1人として会場の後方に座っているジョンの隣りに腰を下ろすと「お前は妻を襲った」と囁く。「僕のセラピストを殺した」と返すと「だからあの男はあんな時間にガウン姿で外に居たのか。必死に少年を探してた」と言う。ネブリン先生はジョンの電話で思わず外へ飛び出し、ビルの餌食になったのだ。話しているとビルは苦しそうに咳き込み、血を吐き出す。ぐったりとして意識もないように見える。参列者が式場の外へ出ると、ビルを残してドアの鍵を掛けるジョン。このまま絶命すれば良いと考えたが、ビル以外には誰も居ないと思っていた屋内には、母が残っていると姉ローレンが言う。慌てて戻ってみると、ドアが壊され食器等も散乱している。
*母とビルは処置室に居た。気絶して処置台に横たえられた母と、苦し気に喘ぐビル。ネブリンの遺体の在処を言わないなら別の心臓を使うと、母を指差す。彼が執拗に人間の身体で生き永らえようとするのはケイのためだった。ネブリンの遺体は冷凍庫の中にあると言い、隙を突いて死体吊り下げ用のフックでビルを殴る。母が意識を取り戻し、ビルの変形した腕を見る。警察へ通報しようとする母を「以前にも警官が殺された」と必死で止め、手伝ってくれるように頼む。母は息子の言葉を信じ、死体に対するのと同じ処置をビルに施す。血を抜き防腐剤を注入するのだ。黒い油のようなものが排出され、ピンク色の液体で身体が満たされていく。痛みを訴えるビル。電気が不安定に明滅する。やがて黒く染まったビルの体内から[悪魔]が姿を見せる。咄嗟に血液排出用の管を手に取るジョン。ビルだったものは「俺の代わりに妻を頼む」と言う。そしてジョンが手にしていた器具を掴んで、自分の身体に突き刺す。排出される黒い液体。「虎よ夜の森で赤々と燃える虎よ」と詩を呟くと、悪魔とビルの肉体は共に黒く朽ち果てる。ビルは行方不明となり、ネブリン先生の遺体が発見される。
*ケイを訪ねるジョン。ビルについて訊いてみると、お互い30代の頃に出会ったと言う。ある日曜日にケイの実家で夕食会をした。兄弟とその家族もやって来て賑やかに過ごしていると、彼が席を外した。探すとキッチンで泣いていて「今ここで気付いたよ、君を愛してる。天国と地獄の何よりも」と言ったのだ。
*ネブリン先生の遺体がクリーヴァー葬儀店に運び込まれる。ジョンも手伝いに復活している。「遺族カウンセラーを呼んでも良いのよ」と母が言う。「自分のセラピストの事を心理療法士に話すのは、裏切りみたいだ」と言うジョン。自分の言葉について「先生、喜ぶね」とジョンが笑うと、3人はいつものように防腐処理を始めた。

■雑感・メモ等
*映画『アイム・ノット・シリアルキラー』

*レンタルにて鑑賞
*作品同士は無関係だけど[松竹エクストリームセレクション]と言う企画の第2弾だった模様。第1弾は『ジェーン・ドウの解剖』。どちらも主人公が、死体に相対する仕事が家業と言う共通点あり。業務の内容は違うけど。
*青春+ホラーと言う風情の1本で、ドラマ成分多め。
*原作はダン・ウェルズの同名小説。現時点では日本語に翻訳されてる作品はないようだけど、ジョンを主人公とする作品が複数ある模様。タイトルにMonsterとかDevilとかDead Bodyとか入ってて気になる…どれも今作のように人外が絡むお話なのかな?

*ネタバレは事件に関するエピソードに絞って書いてる。台詞が多めの作品で、そこにこそ面白味があるのかなと思うけど。ジョンと母・ジョンとネブリン先生は特に色々と会話があって、例えば母に話し掛けられて「マックスの父親が死んでも母さんが死んでもどうでも良い、黙ってろよ」とナイフを突き付ける場面なんかもある。
*恐らく母と離婚したのであろう、父サムからのクリスマスプレゼントのエピソードが絶妙。「思い出の曲を入れておいた」と言うメッセージ付で送ってきたプレイヤーはパッケージが未開封で、つまり中身は空だった。姉に送ってきたのは子供番組のDVDソフト。昔一緒に見たからだとか。でも姉には記憶なし。切ない。
*ジョンから母・叔母・姉へのプレゼントは液体石鹸で、ちょっとお歳暮感ある。
*ネタバレには全然書いてないけど、姉は母と強い確執あり。ジョンと姉はそれぞれJohn Wayne CleaverとLauren Bacall Cleaverと言うのがフルネームらしいけど(母は映画の話とか全然してないから)もしかして父の意向で名付けたのかな。
*除雪作業の時に、どんな風に声を掛けようかとジョンが事前に練習するけど、実際に訪ねてみると何も言えない…と言うのは大変共感出来る。
*ネタバレには『ダンスフロアが併設されたバー』て書いたけど、これ何か適当な名称はあるのだろうか。過去に映画等で見た記憶がない造りだなと。バーだとすると16歳は入店可なのか。
*このダンスの後にクローリー夫妻が食事中の中華ビュッフェにも入って監視してたら、同じ店で母とネブリン先生がデート中…と言うエピソードもあり。相手が母親とは言えセラピストは喋り過ぎでは?と思ってたらこれだよ。相手が親でも守秘義務てないのかな。聞いたとしても母がそれをジョンに言うのもどうかと思ったんだけど。

*最初はブルックに気がある風だったのに、殺人事件が起こって完全に興味が消え去るジョン。ハロウィンの夜は「『イット』の仮装なの?」「何?」「スティーブンキングのピエロなの?」「違うよ、本当は母さんの扮装をするつもりだった」て会話をしてたけど、結局あれは何の仮装なの。
*ケイを襲った時、枕カバーを被せて何をしたいのか分からなかった。顔を隠して撮影しても意味はないし、顔を見ないで怪我をさせたかったとか?でもそれなら上から乗せるだけでも良いのでは…頭部全体をカバーに入れようとしてたのは何故だろ。

*ケイの語った「天国と地獄の何よりも」から単純に[悪魔]としたけど、ビルは実際何物なのか。あの姿を見せるのは好き嫌いが分かれそう。でも出さないとそれはそれで居心地の悪い幕切れになるなと思う。

*最後のパートの空気感好き。エンドロールの序盤はピンク地(防腐剤の色)に白文字。