■ネタバレ
*ミズーリ州カンザスシティで息子エヴァンと暮らすレネー・モーガン。彼女の家には幾つものカメラが隠されていて、行動を監視されている。
*エヴァンと別れた夫が一緒に過ごす事になっている週末、息子を送り届けた後で仕掛けられた装置によってタイヤがパンクする。レネーが立ち往生していると[ブローナー&サンズ]と書かれたバンが通り掛かり、男達が手助けを申し出てくれる。しかし彼らもレネーを監視していた一味で、彼女は拉致されてしまう。
*車で長距離を走り、夜が明けて漸く研究施設に到着。ストレッチャーに拘束されたレネーは、同様に拘束された男から「[G10-12X]を忘れるな」との言葉を聞く。彼の名前はセス。
*電子ロックの掛かる部屋に入れられ、検査や調査を受けるレネー。長期間に渡り家を監視していたため、彼女が蜘蛛を恐れている事を施設では把握している。望んでいたが、2人目の子供は出来なかった事も。担当者の1人である男イアンは「成功するなら一瞬だ、きっと驚く。失敗すれば別の処置をする」と言う。
*レネーは施設を政府の機関ではないかと考える。彼らは疾病対策センターか何かの職員で、自分は病原菌やウイルスに感染したのではないか?しかしそれは的外れだと一蹴される。レネーの肌に代わる代わる触れる人々。「興味深い」「君はもう直ぐだ、間違いない」等と言う。
*隣の部屋にはブレイクと言う男が居るらしく、通気口を通して話し掛けてくる。彼はネバダ州デルゴの出身で、レネー同様に裕福ではなく身代金目的の誘拐とは考え難い。「奴らは[嫌なもの]を持って来る、それは人によって違う」「残りのチャンスは1回だと言われた」等と話すブレイク。レネーが居る部屋からは誰かが解放されたらしいが、何故「他にも大勢拘束されている」と通報しなかったのか疑問だ。解放されたのではなく死んでしまったのかもしれない。
*ストレッチャーのまま別の部屋に運ばれ、ラックスレン先生と呼ばれる男と対面。彼は「早速実験を始めたいが、皆の意見を尊重して手順に従おう」と話す。奇妙な色の薬剤を注射されそうになり、思わず「それがG10-12X?」と訊くが、これはプロセスを加速させる促進剤だと言う。「G10-12Xの力を知れば、君は大きく前進する」
*薬で酩酊状態になった後、別の部屋でレネーの腕が透明なカバーで覆われる。チューブから腕に向かって大きな毒蜘蛛が放出され、彼女は恐怖でパニックに陥る。スキンヘッドの男やダイアンと言う女は何らかの変化を期待しているようだが、結局何も起こらず実験は終了する。ダイアンは「直に全てが終わり新しい自分になれる。苦痛を乗り越えるの」とレネーを宥める。
*部屋に戻ると、拉致された時に偶然ポケットに入れていたカッターを使って拘束を解くレネー。通気口を這い進み、外へ出ようと試みる。途中で格子窓の隙間から、繰り返し落下させられる女や父親との思い出を強制的に見せられる男の姿が見える。彼らはブレイクの話の通り、自分が最も恐れるものとの対峙を強いられているようだ。更に別の部屋ではセスが、赤い液体に沈められている。促進剤に対する反応を確認されているようだ。セスの肌には何らかの変化が起こりつつあるが完全ではなく、担当者はDNAの汚染を危惧している。
*トイレまで辿り着き窓の外を見ると、広い駐車場があり[ブローナー&サンズ]と書かれたバンや自分の車が停まっている。人の気配が近付き身を潜めると「ブタペストで女が破裂した、成功だ」「ボストンの男を入れると47人だな」と言った会話が聞こえてくる。話しているのはバンの男とイアンのようだ。「女の妊娠能力は?」「駄目だ、不妊だった」「女が24人居て、皆不妊とはな」
*2人はレネーには気付かず姿を消し、彼女は再び通気口を這い進む。屋上へ続く階段を上ってみるが、他の場所のように金網が外れる事はなかった。落胆しつつ、別の道を探るレネー。やがて彼女は隣室のブレイクの部屋に辿り着く。彼は最後の実験の最中で、成功すれば解放してもらえると言う。G10-12Xについて尋ねると「それを持っていると言われた、肌に関するものらしい」との返事。彼が恐れているのは蛇で、体の上を這い回られている。
*結局彼には変化が起きず、ラックスレンやスキンヘッドの男、ダイアンに帰還担当者のコレットが連れ立って部屋にやって来る。ストレッチャーの下に身を隠すレネー。ブレイクは薬を打たれ、何の実験をしていたのか説明を受けるようだ。皆がブレイクと共に姿を消し、レネーは電子ロックが作動する寸前でドアを掴む。廊下を進むと研究室らしき部屋があり、大きな地図にはブタペスト・マドリード・リノと言った様々な場所に印が付けられている。レネーが住んでいるカンザスシティにも。その部屋の中には施設職員が使用している電子ロックのキーも保管されている。しかし、ケースにはカギが掛けられていて、キーを持ち出す事は出来なかった。
*人の気配がして、また物陰に隠れるレネー。やって来たイアンはコンタクトレンズを外す。現れた目は瞳孔が濃く虹彩は極めて薄い。そして虹彩部分には、瞳孔を挟むように2つの円形が見える。それも瞳孔なのか文様なのかは分からないが、ヒトではない事は明らかだった。他のどの動物にも似ていない。
*動揺しながら移動すると、廊下にはストレッチャーに乗せられたセスが居た。既に息絶えている。彼の肌は溶解したかのような状態になっている。そこにも人の気配が近付き、倉庫に逃げ込むレネー。結局セスの実験も失敗に終わったが、まだレネーが残っている。レネーについてはダイアンが中心になって実験を続けると良い…そんな会話が聞こえてくる。彼らはレネーの部屋で実験を進めようとしているらしい。ここで不在が知られたら、逃げ道も見付かっていないのに騒ぎになってしまうだろう。レネーは慌てて通気口から部屋に戻る。
*ラックスレンとダイアンが部屋に到着する前に、どうにか拘束具も元通りに締め直す。左腕だけは少し自由がある。どうやらまた促進剤を注射されるようだ。ラックスレンは「皆に実験について知らせる」と部屋を出て行き、ダイアンとレネーの2人だけになる。ダイアンは「死の先まで恐怖を感じてほしいの」と言い、レネーの肌に触れる。「G10-12Xは遺伝子コードよ。人間の染色体の中にある。それを破裂させたいの。恐怖が骨まで達すると、あなたは根底から変わる。受け入れて、自分を解放して欲しいの」
*ダイアンは「本当の私を見せるわ。助けになるかも」と言うと、レネーに背を向け鏡を覗き込む。レネーはその隙に、ストレッチャーに置かれた注射器を握る。コンタクトレンズを外したダイアンは、イアンと同様あの奇妙な瞳を晒す。レネーの肌を味わって深呼吸すると、ダイアンの顔がぐにゃりと歪み、目や鼻の位置が出鱈目な状態に崩れてしまう。そして暫くすると、それぞれのパーツはまた元の位置に戻る。状況が理解出来ないまま、注射器をダイアンの首筋に突き立てるレネー。昏倒するダイアン。
*ダイアンの腕に巻かれた電子ロックのキーを外す事は出来ず、彼女をストレッチャーに乗せてドアの傍へ運ぶ。腕を翳して開錠すると部屋の外へ。そのままストレッチャーを押して、1人では動かせなかったエレベーターに乗り込む。しかし、全てのドアが開けられる訳ではない。実験室らしき部屋に辿り着くと、ラックスレンとスキンヘッドの男がやって来る。「レネーの卵子は他の女とは違う。人間の精子は彼女の卵子の細胞膜を破れない。我々のDNAだけを受け入れるのかもしれない」と興奮気味に話すラックスレン。2人が話している間に逃げようとするが、スキンヘッドの男が物音に気付いて追って来る。地下道の行き止まりに追い込まれるレネー。そこに硝子扉が下りてきて密閉され、ガスを噴射されて意識を失う。
*意識が戻るとベッドの上で、もう拘束されていない。彼女の覚醒を待っていたのか、ダイアン・スキンヘッドの男・ナイマン女医とテレンスと言う男が部屋にやって来る。1日半眠っていたと言われ驚くと「時の流れが人間とは違う。退化のスピードも違うのだ」とテレンスは言う。逃げ出してラボに入った事を咎められるのかと思ったが「生存本能が強く逞しいタイプは好ましい」と笑うテレンス。レネーが拘束を外して施設内を探っていた事も、彼らは全てお見通しだったようだ。
*ナイマンは背後を振り返り「42/67/44」と微かな声で囁く。この施設に到着間もない頃、スキンヘッドの男も同じように呟いたのだがその時は聞き取れなかった。今は正確に繰り返す事が出来る。更に、離れた位置からナイマンがタブレットを見せるが、表示されているのが自分のカルテだと直ぐに読み取れる。聴力や視力が上がっているのだ。「白色光を眩しく感じないか?我々はもっと柔らかい光を好む。紫や黄色をね」と嬉しそうな様子のテレンス。「私を変えるつもり?」「君を変えるのは君自身だ。内側からな」「変わりたくないわ」「素晴らしき変異を何故拒む?[破裂]すれば恐怖を忘れ、進化の梯子を一段登る事が出来る。人間のくだらない感情と決別出来るんだ」
*テレンス達の言う事はレネーには理解し難い。「帰りたい、息子に会いたい」と懇願するが、タブレットでネット回線越しの映像を見せられるだけだ。「最近は医療情報もネットで分かる。あなたの遺伝子マーカーや血圧、アレルギーもね。家族の履歴も調べて、G10-12Xが破裂しそうだと分かった」「昔は君と同様に人間だったが、我々は破裂した。恐怖が変化をもたらし、新しい自分になれる。人間は全てを破壊している。地球も海も、空さえも」「人間はウイルスで、私達は救世主なのよ。地上に秩序を取り戻せるのは私達だけなの。あなたも破裂すれば全て理解出来るわ。そしてこの使命に協力する」「まず人数を増やしたい。君が破裂すれば仲間が1人増える」テレンスとナイマンが言い募る。「破裂しなければ?」「見込み違いで破裂しない事もある。それでも生き延びれば家に帰すわ。生き延びなければ…」「肌が腐るのね」「DNAが汚れているからだ。汚れたDNAの選別は社会のためになる。所謂[間引き]だよ」
*対話は終わり、実験の最終段階に入る。カッターでは到底解けない頑強な拘束。透明なカバーを、腕ではなく頭部に被せられるレネー。そして、カバーの内部に沢山の蜘蛛が放たれる。恐怖で泣き叫び、壁に頭を打ち付けてもカバーが割れる事はない。絶叫し、やがて疲弊した彼女はふいに動きを止める。顔がぐにゃりと崩れてカバーが割れて、そしてまた顔が元に戻る。レネーは遂に破裂したのだ。
*週末が終わり母と息子は再会するが、レネーの様子が以前とは違っている。メイクも服装も話し方も、どこか奇妙な雰囲気だ。蜘蛛も恐れなくなっており、エヴァンは違和感を覚える。レネーは人間らしい感情と決別してしまったため、テレンスからの電話で話し方等の指導を受けている。また、彼女はネットでブレイクの動画を見る。未確認飛行物体に攫われた体験を話しているものだ。彼は薬剤を投与された上で、アブダクションに遭ったと刷り込まれて解放されたのだ。
*やがて2人の家にテレンス達が訪れる。彼らはレネーの遺伝子を受け継ぐエヴァンの資質に期待しているのだ。部屋から出てこないエヴァンに業を煮やし、ドアを蹴破ろうとするテレンス達。密かにメールで危機を知らせ、エヴァンを逃がすレネー。テレンス達はエヴァンを見失うが、彼に焦る様子はない。自分とレネーでエヴァンを見付けるつもりだ。「今は辛いだろう、人間としての感情は簡単には薄れない。しかし、やがて消える。君が考えるべきは我々のために産む子供の事だ。我々は確信している、君は新世代の母になると。人類が知っている世界は、永遠に姿を変える」テレンスはレネーの肌に触れると「君をずっと以前から待っていた。そして漸く君を手に入れた」と囁いた。
■雑感・メモ等
*映画『ラプチャー 破裂』
*レンタルにて鑑賞
*人間こそがウイルス系+監禁系サスペンス。
*タイトルの[RUPTURE]とは、破裂・決壊・裂開…と言った意味。一瞬 RAPTURE なのかと思ってあれこれ考えそうになったけど直球だった。
*ジャケットの絵面や色味がちょっとSAWに寄せてる感じだなと思いつつレンタル。見た目の印象では精神的拷問系なのかと思っていたけど、トラウマを抉る場面はレネーの場合は2回だけで意外とアッサリ風味。他の被験者についてもそんなに苛烈な描写はなし。
*恐怖によりヒトを破裂(進化)させようと言う集団に巻き込まれるお話…なんだけど、彼らの言う進化の結果、何が起こるのかが分からない。顔を崩して元に戻せるからってどうなのか。組み替えて別人になれるとかではないんだよね。視力・聴覚は上がっていたから、身体能力全般が良くなっているのかもしれないけど。
*取り敢えず、進化しちゃうと服のセンスが面白くなるみたい。