■あらすじ
アメリカのサウスカロライナ州。離婚した母親キャシーは10才の娘リジーを元夫の家に送り届けるため、深夜の夜道を車で移動していた。徐々に嵐に変わる中、スリップした拍子に狼のような生物を轢いてしまい、車は路上で故障してしまう。救急車とレッカー車を呼び出した2人だったが、ただならぬ周囲の森の雰囲気に気付く。森の中には“何か”が潜んでいる…。おぞましい金切リ声を上げながら母娘に襲い掛かる正体不明のモンスターは人間でも獣でもない。森の中で変幻自在にその不気味な存在を示すモンスターと対峙するキャシーとリジー。キャシーは、母親としての愛の力のみで、この悪夢のような状況からリジーを守ろうとする。レッカー作業員や救急隊員が次々と獲物になる中、モンスターの“ある弱点”を見つけたキャシー。絶体絶命の状況で、果たして母娘は暗黒が支配する森の中で、サバイブできるのか!?誰も予想のつかないクライマックスに戦慄せよ!(メーカーサイトより)
■ネタバレ
*「ママは怪物は居ないと言った。でも間違いだ。彼らは直ぐそばに居て待ち構えてる。じっと見てる。暗闇に潜み、姿が見えたり、見えない事も…。今は分かる」
*リジーが、1時間寝過ごした母キャシーを起こす。リジーはもう全ての準備を済ませている。今日は母の車で父の家へ向かうのだ。幾らか走ると母が「お別れだから」と祖母の腕時計を渡してくる。ダーリントンまではまだ4時間もあるのに。
*劇の上演日、母に「来て欲しくない」と言って激しく口論になった事が思い出される。車で送ってもらいたいが劇は見て欲しくなかったのだ。母は「誰かに送ってもらいな」と言い捨てて、車で走り去ってしまった。
*森の中、雨の夜道を走る。祖母の腕時計によれば深夜0時15分。突然パンクして車が激しくスピンする。血で汚れた狼がライトに浮かび上がった。母が救急に通報して「40号線を過ぎて30分程度」「工事をしていたから古い方の道を選んだ」と説明する。父に電話して、迎えに来てもらうように頼めと促す母。自分は恋人のロイを呼ぶから平気だと。父は事故の話を聞いて母の飲酒を疑っているが、今日は飲んでいない。
*母はアルコール依存症だ。「約束したのに」と言いながら結局我慢出来ず、ゴミ箱を漁って瓶に残っていた酒を煽った。リジーは床で眠ってしまった母に寄り添った。
*狼の死骸に近寄ってみると事故とは無関係の傷があり、狼のものより遥かに大きな牙が残されている。何かと喧嘩したらしい。「一体何と?」と問い掛けるリジーに、母は「さあね、森には色々潜んでる」と答える。やがてレッカー車がやって来る。ジェシーと言う運転手に挨拶していると、いつの間にか狼が消えている。そもそも何故狼は車道に居たのだろう?車が見えていた筈なのに。ジェシーはまず荷物を預かってトラックに移してから、牽引の準備をする。思ったより時間が掛かりそうで、母が「あんたの父親に連絡するから、携帯電話を返してもらいな」と言う。ジェシーに頼むと「自分で取ってくれ」との返事。しかしトラックには鍵が掛かっている。ジェシーは道路に寝そべって作業中で、リジーは強い降りの中で暫く待たされる。近くの木の陰に狼の死体がある事に気付くリジー。先刻はなかった、何かに食べられた跡があり母を必死に呼ぶ。母は気付かず、リジーの背後に一瞬何かの影が浮かぶ。
*ソファで眠っていた母。リジーには「嫌い、憎たらしい、死んじゃえば良いのに」と呟いて、ナイフを握った夜があった。
*車に戻ると「濡れちゃったね」と母が髪を拭いてくれる。リジーの話を聞くと母は「何が居るにしても人間は襲わないよ」と言う。しかし道路で作業中のジェシーは獣の気配を感じ、そのまま何かに引き摺られて姿を消す。リジーは怯えるが、母は「待っていられない」と車の外へ。すると、母も森から何物かの気配を感じる。突然、千切れた腕がボンネットに投げ付けられる。「パパが居れば」「ママが居るでしょ」「だから車に居ようと言ったのに、ママは聞いてくれない」泣くリジーと宥める母。その時、森からジェシーが這い出てくる。助けようとする母をリジーが懸命に止める。ジェシーは必死でトラックに辿り着き、どうにか鍵を開ける。彼の背後には何かが迫っていて、クラクションを鳴らして危険を知らせるが、どうにも出来ずにジェシーは襲われてしまう。「絶対に見ないで」とリジーを抱き寄せる母。
*母とその恋人ロイがリジーを𠮟責、「鍵を隠した」と騒ぎ立てた。「もう店が閉まる」と強い口調で言い、鍵を取り上げ出て行ったロイ。母はリジーを平手打ちした。
*「怪物は居ないと言ったのに」「ごめんね、間違ってた」でもトラックの鍵があればここから逃げられる。リジーは止めるが、母はトラックまで向かおうとする。しかし正体不明の[怪物]に襲われ負傷してしまい、かなりの出血になる。そこへ漸く救急車が到着。ジョンとレスリーの男女2人組は、現場の状況を見て検視官と動物管理局にも出動を要請する。これで助かったと思ったがジョンが怪物に襲われ、死体が救急車へ投げ付けられる。救急車の屋根を移動する気配がして、パニックの中レスリーも襲われる。母が救急車を運転して走り出すが、怪物に側面から体当たりされて車が横転。2人は何とか無事だが、それぞれ怪我をする。特に母は重症で、血を吐き出している。内臓に損傷があるのだろう。車載無線も通じず、怪物の気配も近い。火を起こして車内の道具で松明を作る母。「注意を引くからその隙に逃げるのよ、勇気を出して」「あんたは私が生きてた証だから、生きて欲しい」「私はもう直ぐ死ぬわ、出て行かなくてもそれは変わらない」言い募る母と泣き続けて嫌がるリジー。母は怪物を引き付けるように声を上げる。松明の炎を消すと忽ち襲われて、瀕死の状態になってしまう。リジーは逃げ出せずにいたが、母の姿を見て怪物に立ち向かう。懐中電灯の光を向けると怪物は逃げて行き、ひとまず難を逃れる。母の亡骸に取り縋って泣き「大好きだよ」と言い残して救急車に戻るリジー。ずっと抱えていた音楽が鳴る犬のぬいぐるみ。音を鳴らして怪物を誘き寄せる。怪物が姿を見せると、身を潜めていた場所から飛び出して対峙する。「私は怪物なんか怖くない、来なよ」と叫ぶリジー。ライターとスプレー缶を使った簡易火炎放射器で怪物を燃やす。炎に包まれて怪物は動かなくなる。死後痙攣で動いた事に驚いて叫びながら木の枝で繰り返し殴るが、リジー以外はもう何も動いていない。
*タオルケットの下のリジーの隣りに、母が潜り込んだ。「怒らないで」と言ったリジーと「嫌わないで」と言った母。「嫌ってないよ」「ママも嫌ってないよ。大好きだよ。あんたはママより良い大人になる。幸せになる。やりたい事は何でも出来る」リジーは「ママと居たい」と泣いた。
*朝になって1人、森を抜けるリジー。「ママは怪物は居ないと言った。でも間違いだ。彼らは直ぐそばに居て待ち構えてる。じっと見てる。暗闇に潜み、姿が見えたり、見えない事も…。今は分かる。私はもう怖くない」
■雑感・メモ等
*映画『ザ・モンスター』
*レンタルにて鑑賞(GEO先行)
*タイトルそのままの怪物系ホラー
*怪物はこっそり君を見てる、目の前にひょっこり現れるよ/1903年子守唄・作者不明(冒頭)
*軸になる部分はシンプルで、森の中で正体不明の怪物に襲われると言うだけの内容。挿入される母娘の痛々しい過去のエピソードが印象的。自堕落な母親としっかり者の娘。親子の心情がこんな風に挿入されるホラー映画は珍しいかも。
*過去のエピソードは時間軸通りで、前後したりはしてない様子。最後のパートではもう別れが決定事項になっている状態。皮肉な事に(或いはだからこそ)その時が一番絆が強く見える。そして、更に悲痛な別れを迎える事になる2人。リジーが逃げなかったから無駄死にのようにも思えるけど、母の死に様としてあれ以上はなかったのかもしれない。もしももっと長く一緒に居られても、離れてそれぞれ生きたとしても、キャシーにとってあれ以上有意義な瞬間があったのかどうか。