菅義偉内閣総理大臣が、自民党総裁選に出馬しないこと(事実上の退陣)を表明しました。
彼の、官僚が書いた原稿(電子カンペ)に目を泳がせて読み上げるだけの記者会見にも今さらながら失望したけれど、その後の自民党総裁選を巡るドタバタにはもうあきれるしかない。
菅さんはたぶん、ほんの10日ほど前まではこのコロナ禍でわざわざ火中の栗を拾うような対抗馬は出ないと踏み、余裕で無投票再選(首相続投)を確信していただろう。
しかし、岸田文雄前政調会長が唐突に出馬を表明し、自民党長老による事実上の支配の弊害を訴え党役員の任期を3年までとすること等を明らかにしたことで、風向きが一気に変わった。
慌てた菅さんは、もし総裁選になれば世論調査での支持率の低さや、地方選挙での応援候補の相次ぐ敗退(とりわけ横浜市長選での小此木八郎前国務大臣の18万票差の惨敗)の影響もあり自分の旗色が悪くなると判断し、重鎮の二階幹事長を含む党役員人事の刷新と総選挙向けに内閣改造(人気の回復)を図ろうと試みた。
ところが8月31日夜、総理が総裁選を先送りして衆議院解散総選挙に打って出る(官邸筋がリーク?)と報道ですっぱ抜かれてしまい、党内から「(選挙の顔が)菅さんのままでは総選挙は戦えない」と猛反発が出て人事案の打診を拒否する派閥や人が続出。
二階さんは、「総理がお決めになることだから好きにすればいい」と突き放し、安倍さん(前総理)からは「何をやっているんだ!」と一喝されたという。
もともと派閥に属さない菅さんはこうして後ろ盾(後見人)を次々と失い、あっという間に四面楚歌の状況に追い込まれた。
菅さん自身が特に目をかけていたという小泉進次郎環境大臣は、連日総理の元を訪れ、一夜にして「裸の王様」になってしまった菅さんに、国民の不支持や党内の反発の空気を伝え、「現職の総理総裁がボロボロになる姿は見たくない」と出馬を見送るよう再三進言したという。
「あれほど仕事をした総理は他にいない」と涙ながらに語った小泉さんに多少の同情はあるけれど、あれほど原稿しか読まない(自分の言葉で語らない)総理は他にいない、と僕は思う。
不出馬を表明する際の菅さんは「コロナ対策にセンニンする」と何度も言っているのに、テロップ(字幕)ではなぜか「専念」と勝手に翻訳(意訳)されているのも気になりました。
その場で、「総理、専任ではなく専念では?」と質す人が誰もいないことが、菅さんの裸の王様ぶりを如実に表していると思う。
菅さんの不出馬表明を受けて、岸田氏の他、高市早苗総務相、河野太郎行革担当相、石破茂元幹事長、野田聖子幹事長代行などが出馬を検討しているそうです。何せ次の総理大臣は、記念すべき100代目だそう。そりゃ私が俺がってもなるでしょう。
立候補には自民党国会議員20人の推薦人が必要なので、推薦人が集められなければそもそも出られない。
総裁選は、誰かが過半数を獲得するまでサドンデスで続けられるから、各派閥は自派が推す候補者が脱落した場合誰に投票するのか、予め決めておく必要がある。(もちろん派閥が拘束しない自主投票もあり)
【訂正】一回目の投票で過半数を得た候補がいない場合は、サドンデス方式ではなく、上位2人による決選投票でした。
こうした煩雑さや、コロナ禍が続くなか国政そっちのけで選挙に熱中していたら、国民にいよいよそっぽを向かれる可能性を党や派閥が嫌って、(自分の意思に反して)出馬を断念する(させられる)人が出てくるかもしれない。
9月5日(日)夜の報道バラエティ番組で、某有名司会者が「今度の総裁選は、選挙(衆院選)の顔を選ぶ選挙になるのか、それとも派閥の影響力で決まるのか、そういう選挙になります。」と当たり前だと言わんばかりに訳知り顔で話しているのを聞いて、僕は啞然としました。
今最も必要で急がれるのは、選挙の顔選びでも派閥の勢力争いでもなく、一人でも多くの命を救うためのコロナ対策なのに。
政府のコロナ政策の迷走が医療現場の逼迫や飲食店等の困窮を招いたという評価が固まりつつあり、任期満了を迎えて実施される衆議院議員選挙(総選挙)では政権与党である自民党が大幅に議席を減らすのは間違いないと言われています。
しかし、仮に自民・公明の連立与党が過半数(233/定数465)を割り込んだとしても、共産党を含むほとんどの野党や野党系無所属議員が結束して対抗馬一人(立憲民主党の枝野幸男代表?)に首班指名(総理指名選挙)できなければ、過半数を獲得することは難しく結局総選挙が行われた後も政権は自公連立から変わりはしない。
それを当たり前であるかのようにふるまう自民党の総裁選立候補予定者や党の重鎮たちをテレビで観ながら、これぞ驕(おご)りの極みだと思いました。大敗して過半数を割ることはあったとしても、総選挙後の首班指名選挙で破れて下野するなんて露ほども思っていないだろう。
森(友)・加計(学園)・桜(を見る会)問題でも、安倍さんは誰がどう見てもクロだとしか思えないにもかかわらず、自らの死を持って真実を明らかにしようとした財務省職員さえも一顧だにせず、在任期間歴代一位の前首相として影響力を誇示する態度には、いち国民として恥ずかしいをとうに超え、こんな国民不在の貧しい政治がまかり通るこの国でこれ以上生きていくのは嫌だとさえ僕は思います。
総裁選に出馬を表明・検討している面々や、自民党の要職者たちからは誰一人として、コロナ禍を歯を食いしばって耐え忍んでいる国民に向かって話しているとは微塵も感じられない。
彼らの関心は、ただただ目の前の総裁選で、どの馬に乗れば選挙が楽に戦えるのか、そして予想が的中して勝ち馬に乗れたら組閣でどんな論功行賞にあずかれて美味い汁を吸えるのかしか頭になく、とてもコロナ禍で長い間苦しんでいる国民のことなど考えているヒマはないのだろう。
同じ意味で、反自民の受け皿として名乗りを上げた立憲民主党の枝野さんが昨日(9/7)発表した主要政策にもがっかりしました。
コロナ対策は、誰でも考えつきそうな官邸に新型コロナ対策室を設置することと、30兆円規模の補正予算という漠然としたもので具体的には何も示されていない。
カネさえ積めば病床が増えてコロナが収束に向かい、国民の不満も収まると考えているとしたら、今の政権と何も違わない。
今の政府がコロナ対策用に慌てて調達した予算がどれだけ使われないまま放置されているか。(2020年度から2021年度に使われずに繰り越された国の予算は、奇しくも枝野さんがぶち上げた金額とピタリ一致する30兆円(国民一人当たり25万円)です)
テレビ各局の報道番組で、出馬が予想される面々を競馬予想のようにマークを付けて本命とか対抗とか穴とかパネルにして評論家にコメントさせているのも、メディアとしての神経を疑う。
そんな予想屋みたいな報道するくらいなら、「コロナ対策に専念するため」と迷言(誤字ではありません)を遺した菅さんの今の仕事ぶりを密着取材してその成果とやらをぜひ国民に見せてもらいたい。
結局誰が自民党総裁になっても、よしんば総選挙後に政権交代が実現したとしても、自分たち国民の生活は何も変わらないのだとあきらめているのは僕だけではないと思います。
東京オリンピック・パラリンピックも、連日のメダルラッシュに湧いたのはメディアと一部の人たちだけで、束の間のお祭り気分の後に残ったのは、僕らの税金で穴埋めされる莫大な赤字と、新型コロナ第5波の感染爆発(パンデミック)という置き土産(負のレガシー(遺産))。
菅さんは五輪をコロナ禍のなか強行開催するに当たって、オリンピックを国民の命と引き換えにはしないと何度も強調していたけれど、オリンピック開催によって失われた命は一人もいないと誰が言えるだろう。
今さらだけど菅さんの言葉って本当に軽くて薄くて、最初から最後まで何も響かないし信用もできなかったなって思います。菅さんが辞任直前にアメリカに外遊に行くと聞いて、涙で説得した小泉さんの顔に泥を塗る行動だと思いました。
「実は私、月末で退職するんですけど心配事があるんで後はよろしく」って、誰がまともに話を聞くだろうか。
オリンピック開催と同時に進行した医療現場や各地域の保健所業務の戦場のような逼迫の中、昼夜を問わず今この瞬間も奮闘している方々や、自宅療養のまま入院すらできず亡くなってしまった方々、ご家族の気持ちを思うと、出場した選手たちには申し訳ないけれど、オリンピックをやって良かったなんて僕はとても言えない。
ここ2週間ほど感染者数は減少傾向で、「第5波はピークアウトした」と見る向きもあるようです。
もし本当にそうなら、第一波が収まった時に繰り返し言われていた、感染者数が落ち着いている間に医療体制の充実(病床と医療提供体制の確保)を、というコロナ対策の基本のきを、どの党の誰が次の首相になろうとぜひとも実現してもらいたい。
少なくとも、入院が必要と判断された患者が救急車の中で何時間もたらい回しにされたり、どこにも入れず自宅療養にされて放置される状況はもう二度と繰り返さないで。
保健所のミスで、陽性判定を受けた自宅療養者が個人ファイルさえ作成されず2週間放置され死亡した状態で発見されたというニュースは、衝撃を受けると同時に日本全国どこでも起こり得る、と他人事ではない気がします。
まさかこの日本で、必要な医療を望んでも受けられない事態に陥るなんて、想像もできませんでした。
その一方で政治家の中には、感染者数の減少傾向を受けてコロナ収束を早くも口にする大臣が。
同じ福岡県民として恥ずかしい。この人に、医療現場の切迫した現状や、そもそも収束とはどのような状態を指すのかちゃんと説明してやる人はいないんだろうか。(いても聞かんやろうけど)
悲しいけれど、これがアメリカ・中国に次ぐGDP(国内総生産)世界第三位の国の政治の現状です。
総裁選や衆議院議員選挙では、どの候補者もどの党も国民の歓心を買いそうな分かりやすい政策(減税とか給付金のバラ撒きとか)を掲げて得票を伸ばそうとするのだろう。
例えば給付金などで、どんなに一時的に楽になろうとも、結局はすべて国民から搾り取る税金と国債(将来数百年に渡る未来の国民の税負担)で賄われるのだ、ということを頭の片隅に置いて、冷静に選挙権を行使したい。
自分の一票が、この国のクソみたいな政治を変える小さいけれど確実な一歩になると信じたい。(乱暴な言葉遣いですみません)