愛車遍歴(その21)BMW M4 Coupé(2) | M3遣いのブログ

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ライカではなく、BMWのほうです(^^ゞ
日々想うことをまったりと・・・

前回(その1)からの続きです。

M4の各部が十分に暖まった頃、高速に上がる。

F80系M3・M4では、ステアリングに2つ(M1・M2)用意された「Mボタン」

予め登録しておいた、最も辛口のモード(エンジン制御・ステアリング特性=Sport+)に切り換えると、瞬時に排気音が変化する。6つのシリンダー(ピストン)が奏でるアンサンブルに、低音のコントラバスが加わるような感じかな。

おそらく、エンジンのマッピング(出力特性)変更と同時に排気系に仕込まれたフラップを開閉して排気抵抗を制御しているのだろう。本来の性能を余すところなく発揮して風のように駆け抜けるその圧倒的なパフォーマンスには、運転する僕も身震いを抑えきれない。

フロントガラスに映し出されたHUD(ヘッドアップディスプレイ)には、Mダイナミックモード(MDM)専用の回転計(バーグラフ)と速度が大きく表示され、ドライバーは視線を計器盤に落とすことなく、最適なシフトタイミングを知ることができる。

その一方でM4は、4座のGT(グランドツーリング)カーとしての性格も失ってはいない。

左MTの計器盤に表示されるシフトインジケーターは、わずか1,000回転でシフトアップを促し、ターボが効き始める前の極低回転域でもトルク不足を感じることは全くない。

高速で流れに乗って法定速度で巡航すると、平均燃費はリッター14kmを軽く超える(カタログ燃費は12.2km/l)。60リッター超の燃料タンクを持つM4は、高速だけなら無給油で800km以上を余裕で走破する実力を持っている。

また、F82系M4の全幅は1,870mmにも達するけれど、BMWの美点である車体感覚の掴み易さは健在で、峠の隘路や街なかの狭い路地でもその体躯を持て余すことはない。

まさに自分の手足のように車を操り、人馬一体ならぬ人車一体の走りを楽しめます。

M4をドライビングしながら思い浮かぶ言葉は、「別格」。

これまでM4を含め6台のBMW車を所有し、E46_M3、E92_M3、E82_1Mと3台のMモデルを乗り継いできた僕でも、このF82_M4に関しては、全ての要素において、「モノが違う」と感じます。


それは、エンジンルームを開けた時に見える、異様とも思える程張り巡らされ、ボディと剛結されたサブフレームやリアルカーボンのストラットブレース(タワーバー)、クルマの挙動から感じる絶対的な安心感、シフトレバーから右手に伝わるトランスミッションの剛性感など、表現するのは難しいけれど、今まで乗ってきたどのBMW車とも異なる、まさに異次元のレベルです。

V8を搭載した先代E92_M3で、かなりラグジュアリー寄りに振れてしまったと思わざるを得ない方向性は、再びサーキットをはじめとするモータースポーツの世界で最大限の能力を発揮できるよう見直され、伝統のストレート6を再び搭載して戦闘力が高められた。

しかし、M社謹製のS55B30A型ツインターボエンジン(431馬力・最大トルク56.1kgm)は、いわゆる「情感」や「官能性」という言葉とは無縁です。言わんや、間違っても「シルキーシックス(BMW直6エンジンの代名詞)」などとは絶対に呼べない。

かつて乗っていたE46_M3のS54B32型エンジン(直6自然吸気)のことを僕は以前のブログで「獰猛でガサツ」と評したけれど、M4のエンジンと比べればまだ、作り手の想いや情緒のようなものを感じられたと思います。

一分の隙もなく精緻に組み上げられたM4の心臓部から発せられるメッセージは、性能を余すところなく発揮させる効率(パッケージ)を極限まで追求し、かけられるコストの範囲内で出されたBMW(M社)の「とにかく速ければ文句ないでしょ?」という回答のように感じます。

今は、そのポテンシャルを少しでも引き出そうと、日々クルマと対話しながら距離を縮めているところです。乗るたびに何かしら新しい発見があり、その懐の深さとまだまだ秘められた多くの可能性を肌で感じます。

愛車に情感や官能を求めるのは、もう少し歳を取ってからでもいいかな。


このクルマでサーキットを走って、持てる能力の全てを引き出してやりたい。

初めて、心からそう思える車に出逢いました。