愛車遍歴(その18)BMW_M3(6) | M3遣いのブログ

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ライカではなく、BMWのほうです(^^ゞ
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かなり間が空いてしまいましたが、蜜柑号(E92_M3_Coupe Competition)のドライブレポートの続きです。自分ならではの視点として、E46_M3(左MT)との相違点も含めて書いてみます。


今回は、車の基本三要素(走る・曲がる・止まる)のうち、「走る」についてを中心に。


蜜柑号のエンジン、S65B40A型(4,000ccV8自然吸気)の最高出力は420PS・最大トルク40.8kgmで、スポーツカーとしての性能の目安となるパワーウエイトレシオは3.88kg/ps。E46_M3(4.61kg/ps)比で+16%向上。


ちなみに、550PSの日産GT-Rは3.16kg/ps、477PSのレクサスRC-Fは3.75kg/ps。
前後重量配分も、V8搭載車としては驚異的な51:49を達成している。


その秘密は、鋳鉄からアルミに変更されたエンジンブロックの軽量化(E46比マイナス15kg)・アルミ製のボンネットフード・樹脂製の左右フロントフェンダーに加えて、フロントミドシップと呼んでもいいくらいエンジンを極限まで後方にレイアウトしていることによる。


クルマを物体として捉えると、1500kgを超える鉄の塊が猛スピードで動くとき、物体の重量バランスが慣性運動に影響することは容易に想像できる。例えばVWゴルフGTIの前軸重量が全体の3分の2に近いことを思えば、フロントブレーキにかかる負担も含め運動性能の差は歴然。話はそれるけど、FFで出る時期1シリーズの前後重量配分がどうなるのか興味津々です。


さて、いよいよ実際のドライビングに出かけてみましょう。


今はまだ朝の冷え込みも残っていて、冷間始動すると最初は自動的に1,300回転程度でアイドリングするのでかなり騒々しい。もちろん、珠玉のMエンジンだから自分にとっては嫌な音ではないけれど、ご近所さんにはちょっと気を遣う程度の大きさではある。


しかし、油温計の針は動かなくても1分ほどでアイドリングは800回転ほどに落ちて、音も気にならなくなる。ディーラーのメカニックさんから、エンジンを長持ちさせるためには、油温が低いうちは絶対に回転を上げすぎないように言われているので、丁寧にクラッチを繋いで2,000回転前後でシフトアップを繰り返す。


エンジンが温まってくるのと同時にミッションオイルも滑らかになり、ギアの入りがスムースに。肝心のシフトフィールは、E46よりも明らかに向上している。ストロークは若干短く、かつ、「ぐにゃっと」感が減って、「カチカチ」感が増している。先日試したM235iと比較すると、ストロークはM3のほうが若干長い。シフトフィールそのものは、あまり大差ないと感じました。


シフトフィールの向上は、うれしい誤算だった。以前、2008年式のE92_M3左マニュアルに試乗させてもらったとき、E46と大差ないシフトフィールにがっかりしてしまったのだけれど、同じE92で体感できるほどの違いが出るとは思わなかった。


原因は不明。特別仕様のコンペティションではあるがミッションはノーマルと変わらないはず。年式の違いによってパーツに変更があった(供給元はゲトラグまたはZF)のか、個体差か経年劣化の影響なのか。


すっかり温まったエンジンは、どこから踏んでも淀みなく十分なトルクを出してくれる。ある時、交差点で止まって発進したときにエンジンが思いのほかグズるので、あれっ?と思ってシフトを確認したら何と4速のまま発進してました。でも、エンストする気配もなく、何もなかったように涼しい顔をして蜜柑号は加速を続ける。


じつは、このことが自分にとっては数少ない不満のひとつでもある。なぜかというと、パワーバンドがめっちゃ広いので、街なかを流すときにほとんどシフト操作をする必要がない。大げさでなく、4速だけで時速10km/hから100km/hまで普通にカバーできてしまう。


クルマを意のままに操って一体感を味わいたい僕としては、やることが少なくヒマでしょうがない。自分では、「これじゃ半分セミオートマだな。」と思っています。


この特徴は、E46ではこれほど顕著には感じられなかった。もちろん、6速1,000回転から踏んでも十分な加速は得られたけど、さすがに4速発進は無理(エンスト)だったかも。


これは、エンジンの違い(直6とV8)というよりも、電子制御の進化によるところが大きそう。実際運転していても、さまざまな場面で電子デバイスが至るところで介入していることをE46以上に感じることが多い。


クルマの電子的な進化は、運転を快適かつ安全なものにするのと同時に、その一方で運転する楽しみ自体をドライバーから奪っていく。近年グーグルをはじめとした各社で開発が進んでいる自動運転車はその究極形だろう。少なくとも、僕が生きているうちは、そんな社会がまだ到来していないことを祈る。


レポートに戻ります。


さっき、どこからでも淀みなくトルクが出ると書いたけど、エンジンの性格は3,500~4,000回転を境に羊から狼へと豹変。


下で回しているうちは、静粛性が極めて高い高級サルーンそのもの。電子制御サスを一番ソフト側にしておけば、例えスポーツカーに偏見を持っている人を助手席に乗せても乗り心地や騒音で文句を言われることはまずないだろう。


ところが、4,000回転を超えるあたりからは、エンジン音が明らかに変わり、「クォーン」というV8特有の美しい(主観です)旋律を奏で、M3は水を得た魚のようにスポーツカーとしての本領を発揮。


今まではレースゲームや、映画のカーチェイスの場面でしか聴けなかった、まさにスポーツカーそのもののお腹に響く迫力ある排気音を自分自身のペダル操作によって発せられ、リアルに感じることができるというのは、快感以外の何ものでもない。また、ステアリングに装備されたMボタンによって、その世界はさらに「非日常」の世界の扉を開く。


しかし、サーキットなど限られた条件でしかそのポテンシャルをすべて解放できないのは残念でならない。例えていえば、チーターを動物園の狭い檻の中で飼うようなものだろう。いつか蜜柑号にも、持てる能力のすべてを解放できる機会をつくってあげたい。


同時に、あらためてMモデルのチューニングの絶妙さに脱帽せざるを得ない。BMWは、どんなに高性能のクルマであっても、日常の使用を決して犠牲にはしない。それは、毎日のクルマとの付き合い(買い物や通勤)こそが、『Freude am Fahren(駆け抜ける歓び)』に通じるというという自動車メーカーとしての強い信念の証でもある。


それが、僕がBMWにこだわり続ける理由のひとつです。


(つづく)