世界は雨と踊る(2) | Proof of...

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祈る神を持たない僕は、ただ言葉の力を信じている。全ての言葉に僕の意味を。

外に出ると思ったより肌寒く、上着を取りに戻った。
久しぶりの雨だ。もう夏のじっとりとした湿度を含んだ雨ではなく、情緒的な秋の雨だった。それはいつももの哀しい静けさを伴っていたけれど、僕はそれがまた好きだった。
グレーの傘を選んだのは、今日の世界に溶け込むためだ。今日のような勇壮な雨には敬意を払わねばならない。
もともと静かなこの街であるから、案の定、人通りも車のヘッドライトも殆ど無かった。あったとしても、舞台の脇役であることを自覚しているかのように、誰もが無機質に無言を守っていた。
傘を持たない右手をうやうやしく雨に差し出す。冷たい雨水が肌を打ち、やがて皮下に染み入り、血流に混じり、全身を駆け巡る。その儀式が終われば、晴れて(いや、雨なのだが)僕は雨の街の住人となる。
雨の街は僕の世界をぐっと狭める。感触、視界、音、声、それらは全て雨の内に遮られ、やがて僕は雨の一部となってこの街全てを知覚する。

ふと、僕の感覚がひとつのリズムを感じる。
緩やかに流れる、ステップのリズム。
それは音を無くしたこの世界に、ひとつ、またひとつと確かに刻み続けられている。
街中に響く、勿論それは雨の知覚ではあるけれど、その正体を目指して、僕は歩き出した。