世界は雨と踊る(1) | Proof of...

Proof of...

祈る神を持たない僕は、ただ言葉の力を信じている。全ての言葉に僕の意味を。

目が醒めると、ひと続きの音が世界中に轟いていた。
世界というのは、僕の手の届く範囲、視界に収まる範囲、音の届く範囲、そして声の届く範囲、だ。
鳴り止まないひとつの断続した音というのは、それは言うなれば無音だ。
遮光性のカーテンはその性能を発揮し、僅かながらの光すら部屋への侵入を許さないでいる。
僕は無音と暗闇の世界の中に現れた異物であった。
僕はその静寂を壊さないように、ゆっくりと体を起こす。そして申し訳なく思いながらもカーテンを少し捲る。案の定、光を避けた闇がすっと部屋から抜け出した。失敗した。あれほどの暗闇はもしかしたら暫くやってこないかもしれない。もう暫く味わうべきだったか。
しかし、それよりも確認しなければならないことがあった。窓の外に目をやる。
「…雨」
空は厚く暗いグレーの雲、地面は跳ねる水滴の霧で覆われている。空中を高速で落ちる雨水はあらゆる空気震動を断ち切って、全ての音を飲み込んで唄っていた。「聴け。僕の唄を聴け。今日は僕の唄で踊れ。」僕は暫くその力強くも優しい旋律に耳を傾けた。