心のトゲを抜いた。
スキップはしないけど（笑）
スキップしたい気分。
ずっとずっと
心に引っかかっていた
小さな、小さな、トゲを抜いた。
先日、あぶに頼んで
庭にマリーゴールドを
植えてもらった。
（自分で植えない・笑）
どうしても
マリーゴールドじゃないと
ダメだったんだ。
なぜなら
マリーゴールドは
私にとって悲しい思い出の
花だったから。
それをね
終わりにしたかったの。
私が小学生の頃
夏休みに入る前に
必ずマリーゴールドの
鉢を持たされた。
その鉢を
夏休みの間に育てて
立派に大きくして
夏休み明けに学校に持っていく
夏休みの宿題の
ひとつだったのだろう
多分。
私が持ち帰った
マリーゴールドは
ただの一度も
育ったことがなかった。
夏休み明け
今にも枯れそうな
やせ細った姿で
ひょろりと残ってるのが
なぜか毎年のことで
それを
学校に持っていくのは
気が重かったんだ。
ある年は
鉢から出して
地植えして育てて
夏休みが終わったら
また鉢に戻す
そうするといいと聞いて
それを母親に伝えたら
鉢ごと土に埋められて
それじゃイヤだ
鉢から出して植えたい
と言うと、怒られて
うん、多分
面倒だったんだろう
子どもながらに
すごく悲しかったのを
覚えてる。
自分では
育てるすべも知らず
結局マリーゴールドは育たず
貧相な今にも枯れそうな
残念な姿になったっけ。
クラスの大体の子は
マリーゴールドを
ひと回りも、ふた回りも
大きく育てて
オレンジのきれいな花が
いっぱい咲いた鉢を持ってきた。
金賞とか銀賞とかがあって
立派に育った中でも
うんときれいな鉢には
賞が与えられた。
私のしょぼい
今にも枯れそうな
マリーゴールドを見て
「なんだそれ！」
ってバカにした男子もいたな。
顔から火が出る、ってのは
そういう時なんだろう。
消えてしまいたかった。
とってもみじめな
恥ずかしい気持ちになってね。
私のマリーゴールドも
大きくなって
きれいに咲いたらいいのに…
なんで
私のマリーゴールドだけ
こんなになっちゃうんだろう…
そんな悲しい気持ちを
マリーゴールドは
私にとっては
悲しい思い出の花だった。
鮮やかな色が
ハートにそのまま
飛び込んできて大好き。
小学校を卒業してから
自らマリーゴールドを
手に取ることはなかった。
手に入らない花のような
また枯れてしまう花のような
そんな気がして
悲しい気持ちにしか
ならなかった。
大人になっても
この季節になると
あちこちで目にする
マリーゴールド
チラ、と横目に見ながら
きれいだなぁって思っても
遠くの方で悲しい気持ちが
セットになってついてきて
その場を立ち去るだけだった。
夏の気配が
遠くでし始めたこの頃
なぜか急に
マリーゴールドが欲しくなった。
そこで
あぶに頼んで買ってもらい
庭に植えてもらった。
元庭師の
あぶが植えれば
あぶが育てれば
間違いない（笑）
記憶の遠くの方にある
マリーゴールドの話をして
だから、欲しいんだ
今度は大きく育った
きれいな花が見たいんだ
そう頼んだ。
売り場に行って
あぶはたくさんある
マリーゴールドの苗の中から
ひときわ元気で
よく育ちそうな苗を
選んでくれた。
「蕾がたくさんあるのを
選ぶといいんだよ」
そう言って
２色の花びらのをひとつ
オレンジ色の花びらのをひとつ
黄色の花びらのをひとつ
それぞれを３つ選んだ。
我が家に
とうとうマリーゴールドが
やってきた。
そして
あぶの手によって
裏庭に植えられた。
そう、裏庭に植えたの。
いつでも台所から見えるから。
いつでも見ていたいんだ。
1日に何度も
マリーゴールドを見に行く。
うれしくて、うれしくて
仕方ない。
まだ植えたばかりだけど
私の中で悲しい思い出が
終わった。
この夏が終わっても
私はもう悲しい気持ちに
ならないのを知っている。
マリーゴールドを
鉢ごと土に埋めた母は（笑）
認知症が進行し
この春、介護施設に入所した。
母がいる間
マリーゴールドを
植えようなんて
思いもしなかったけど
母の入所によって
私の中で何かが
終わったんだと思う。
それが何かだとか
そういうのはもういい。
とにかく何かが終わったらしい。
母が入所して
初めての夏
我が家の庭に
小学生の夏以来初めて
マリーゴールドがやってきた。
私は心のトゲを
抜きたかった。
死ぬほど苦しいわけじゃない
だけど、ずっと私に張り付いて
離れることがなかった
遠くの方にある悲しい思い出を
終わらせたかったのだ。
子どもの頃
どんなに望んでも
手に入らなかったものを
手に入れて
もう大丈夫なのだ、と
自分に言いたかった。
きっと心のトゲは
誰にでもあるんだろう。
どこかで刺さってしまった
小さなトゲが。
致命傷でもないけど
チクチク、ふとした時に痛んだり。
どんな形でもいい
それを抜くことができるんだと
マリーゴールドを
もう一度育てると決めたことで
心のトゲを抜いた。
もしも、この夏の終わりに
マリーゴールドが枯れても
私はもう落胆しないのを
子どもの頃傷ついたのは
マリーゴールドが
枯れたからではなく
私が望むものは叶わない
私だけ叶わない
そう感じたこと
だったんだと思う。
もう今は
そんなことで
悲しむ必要がないと知ったから
だから私は
あぶに助けてもらいながら
マリーゴールドを育てると
40年ぶりに決めたのだろう。
育っても、枯れても、いい。
美しいマリーゴールドと
この夏を一緒に
過ごしたいだけなのだ。
それを自分に
許せる自分になれた
その喜び。
終わらせたいことが
終わってゆく。
奇跡のコースで
言われた通りだ。
見る世界を明確に決めた時
聖霊ははたらき
奇跡はこうして
静かに訪れ続ける。
私はもう何も失わない。
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