会議室に1人取り残されたヴェローニカはアーデルベルトとイルムヒルデに強い憎悪を抱いた。
(なんてこと!このわたくしを騙すなんて!絶対に許さない!子供ですって!そんなの認めない!殺してやるわ!絶対に許さない!)
と、鬼の形相で呟いていた。
アーデルベルトとイルムヒルデ、ボニファティウスは領主会議報告会を行うためにホールに来ていた。
「領主会議の報告を開始する。」とアーデルベルトがアウブとして宣言する。
ホールに居る貴族たちはヴェローニカがいないことを訝しんだ。
「先ずは今年の順位は18位だ。これから徐々に順位を上げていきたいと思っている。皆の協力を願う。そして…領主会議にて私とイルムヒルデの婚約が承認された。来年の会議において星結びを行う。それに伴い夫人の順位はイルムヒルデが第1位。ヴェローニカは第2位になる。これよりイルムヒルデの事は第一夫人として扱うように。星結びまではイルムヒルデは自分の邸に留まる。以上だ。」
会場は騒然とした。ヴェローニカ派は憤り、ライゼガンク派は歓喜の声を上げた。
アーデルベルトはイルムヒルデを邸に送り届けた。
そこにはフェルディナンドとエリザベスが居る。
「フェルディナンドよく眠れたか?」
「父上!とてもよく眠れました!」
「そうか…」
護衛としてアウブに付き従ってきたボニファティウスはフェルディナンドを見て…
「此奴がアーデルベルトの息子なのか?」
フェルディナンドの容姿は先代のツェントによく似ていた。水色の髪に薄金の瞳王家の血を色濃く引いているのは年を取っている貴族ならば明らかに分かることだった。
「本当にあの離宮の…」
「ボニファティウス!フェルディナンドは私の息子だ!昔其方にも言った事があったと思うが私には心を寄せた女性がいた。しかし底辺領地の領主候補生の私には望んでも無理だったのだ。それが7年前にツェントからお話がありやっと想いが遂げることができたのだ。私にはかけがえのない息子だ!その息子を貶める虐げる事をするならば其方を解任する!」
「アーデルベル…それほどか?」
「ボニファティウスお兄様…わたくしはアーデルベルトお兄様がずっと1人の方を思っているのを知っていました。わたくしはそんなアーデルベルトお兄様をずっとお慕いしておりました。1人の方をずっと思い続ける強さを持ったお兄様はなんて素敵なんだと。」
「イルムヒルデ其方はフェルディナンドの母になることに戸惑いはなのだな?」
「はい。わたくしは幼い頃の病気で子を持つことができません。でもずっとお慕いしていたアーデルベルトお兄様の愛する方とのお子の母になれるなんて神の御慈悲に感謝申し上げたいのです。」
「そうか…アーデルベルトの気持ちは分かった。しかしイルムヒルデの事は私は幸せになって欲しい。だがあのヴェローニカが黙っていると思うか?」
そこに女神ローゼマインが姿を現した。
「ボニファティウス。」
ボニファティウスは突然姿を現した女神を目の当たりにして身体が硬直したようになってしまった。
アーデルベルトもイルムヒルデもエリザベスも黙ってひざまついた。
「フェルディナンドいらっしゃい。」と、傍らに招いた。
「ボニファティウス。フェルディナンドはわたくしの大切な人です。彼を蔑んだり貶めたりするのは絶対に許しません。エーレンフェストだけでなくこのユルゲンシュミットにとっても大切な存在です。心してフェルディナンドを護りなさい。ヴェローニカはこのあともっと苛烈になるでしょう。アーデルベルトもイルムヒルデももちろんフェルディナンドも危険に晒されます。それを貴方は護りなさい。神に誓いなさい。それができないのなら…」
「わかりました!このボニファティウス、この命に代えてもここに居る全ての人を護ります!」
ボニファティウスは女神ローゼマインの美しさに目も心も奪われたのです。
「では貴方の息子カルステッドはフェルディナンドの護衛騎士にしなさい。」
「しかしカルステッドはジルヴェスターの筆頭護衛騎士になっています。」
「カルステッドを守るためにもジルヴェスターから離しなさい。」
「カルステッドを守る?」
「そうです。ジルヴェスターの護衛騎士のままならヴェローニカにリンクベルク家は蹂躙されます。」
「はっ!女神様の仰せの通りに。」
「ボニファティウス。いつも見ていますよ。約束を違えることのないように…」
一言告げると女神ローゼマインはフェルディナンド以外の目から消えた。
「ボニファティウス。来年の星結びまではイルムヒルデはここでフェルディナンドと暮らす。ヴェローニカが城に居る限りフェルディナンドは北の離れには置かない。この邸は女神様が護りを固めてくれた。ここに居れば安全だ。ヴェローニカの悪行の証拠を其方が集めてくれ。」
「分かった。カルステッドにはアウブから話すのか?」
「あぁ。このあとカルステッドを呼んでくれ。」
「こちらの女性は見たことがないが…新しい側仕えなのか?」ボニファティウスは今気づいたかのようにエリザベスを見て言った。
「フェルディナンドの家庭教師を兼ねた乳母だのエリザベスだ。フェルディナンドの筆頭側仕えはリヒャルダの息子のユスクトスだ。」
エリザベスはボニファティウスに貴族の挨拶をしてフェルディナンドの後ろに控えた。
フェルディナンドもアーデルベルトに促され改めてボニファティウスに挨拶をした。
昨日はできなかった貴族の挨拶を今日はもう出来ていた。アーデルベルトとイルムヒルデは賢いフェルディナンドを眩しそうに見ていた。
と、ここまで。