新しきブッダ 第十回 悟り その一 | 同胞たる、おっとりとした頬を求めて!

同胞たる、おっとりとした頬を求めて!

世界とは、貴方について書かれた書物である。

   悟り


 どんなに苦行を行なっても自身が生きるべきものを得られぬことを確信し、これ以上苦行を続けることに意味がないことを強く感じた貴方は、深い闇の底で、生きるのに苦しむ生霊たちと会った。
 最初に貴方が会ったのは、自身の耳を自ら損ない、自身を導くことができないものであった。
「師よ。わたしは、一なる胸であるもののみに導かれ、それ以外のものから導かれないために、他の胸であるものにかかわり、またかかわられる自身の耳であるものをおびただしく損なってきたのである。」
 貴方は、自身の耳を自らおびただしく損ない、自身を導くことができないようにしているのは貴方自身であると思った。そして、いかに自身の聡くあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身を高く生きるものから導きはぐくまれてきたかを理解した。

 また貴方が会ったのは、自身の脚を自ら損ない、どこにも行くことができないものであった。
「師よ。わたしは、一なる腕であるもののみに在らされ、それ以外のものから在らされないために、他の腕であるものにかかわり、またかかわられる自身の脚であるものをおびただしく損なってきたのである。」
 貴方は、自身の脚を自らおびただしく損ない、自身を在らせることができないようにしているのは貴方自身であると思った。そして、いかに自身のとらわれなくあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身を限りなく生きるものから在らされてきたかを理解した。

 またかなりたって、貴方を訪れたのは、自身の肩を自ら損ない、自身を満たすことができないものであった。
「師よ。わたしは、一なる内腑であるもののみから満ち足らされ、それ以外のものから満ち足らされないために、他の内腑であるものにかかわり、からかかわられる自身の肩であるものをおびただしく損なってきたのである。」
 貴方は、自身の肩を自らおびただしく損ない、自身を満ち足らせることができないようにしているのは貴方自身であると思った。そして、いかに自身の豊かくあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身を深く生きるものから満ち足らされてきたかを理解した。

 さらに貴方を訪れたのは、自身の背を自ら損ない、自身を庇うことができないものであった。彼らの背は数多のものからおびただしく傷つけられていた。
「師よ。わたしは、一なる皮膚であるもののみから庇われ、それ以外のものから庇われないために、他の皮膚であるものにかかわり、かかわられる自身の背であるものをおびただしく損なってきたのである。」
 貴方は、自身の背を自らおびただしく損ない、自身を庇うことができないようにしているのは貴方自身であると思った。そして、いかに自身の貴くあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身を堅く生きるものから庇われてきたかを理解した。

 さらに貴方を訪れたのは、自身の肉身を自ら損ない、自身を支え持つことができないものであった。
「師よ。わたしは、一なる骨であるもののみから支え持たれ、それ以外のものから支え持たれないために、他の骨であるものにかかわり、かかわられる自身の肉身であるものをおびただしく損なってきたのである。」
 貴方は、自身の肉身を自らおびただしく損ない、自身を支え持つことができないようにしているのは貴方自身であると思った。そして、いかに自身の重くあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身を一に生きるものから支え持たれてきたかを理解した。

 さらに貴方を訪れたのは、自身の目を自ら損ない、自身を味わうことができないものであった。
「師よ。わたしは、一なる舌であるもののみから味わわれ、それ以外のものから味わわれないために、他の舌であるものにかかわり、かかわられる自身の目であるものをおびただしく損なってきたのである。」
 貴方は、自身の目を自らおびただしく損ない、自身を味わうことができないようにしているのは貴方自身であると思った。そして、いかに自身の広くあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身をあまねく生きるものから味わわれてきたかを理解した。


 また貴方は、ふたたび同じような生霊と会った。しかしそれは前のものとはおもむきが異なっていた。なぜなら、彼らから言葉を発することはなく、貴方自身から言葉が発せられたからである。
 最初にふたたび会ったのは、自身の耳を損ない、自身を導くことができないものであった。
「わたしは、わたしと対等なわたしの同胞を超えてわたしの同胞自身を高く生きるものから導かれないために、わたしの同胞からおびただしく損なわれてきたのである。」
 それは貴方の同胞からおびただしく損なわれ、自身を導くことができない貴方であった。貴方はいかに貴方の聡くあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身を高く生きるものから導きはぐくまれてきたかを理解した。

 また貴方がふたたび会ったのは、自身の脚を損ない、どこにも行くことができないものであった。
「わたしは、わたしと対等なわたしの同胞を超えてわたしの同胞自身を限りなく生きるものから在らされないために、わたしの同胞からおびただしく損なわれてきたのである。」
 それは貴方の同胞からおびただしく損なわれ、自身を在らせることができない貴方であった。貴方はいかに自身のとらわれなくあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身を限りなく生きるものから在らされてきたかを理解した。

 またかなりたって、貴方をふたたび訪れたのは、自身の肩を損ない、自身を満たせることができないものであった。
「わたしは、わたしと対等なわたしの同胞を超えてわたしの同胞自身を深く生きるものから満ち足らされないために、わたしの同胞からおびただしく損なわれてきたのである。」
 それは貴方の同胞からおびただしく損なわれ、自身を満ち足らせることができない貴方であった。貴方はいかに自身の豊かくあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身を深く生きるものから満ち足らされてきたかを理解した。

 さらに貴方をふたたび訪れたのは、自身の背を損ない、自身を庇うことができないものであった。
「わたしは、わたしと対等なわたしの同胞を超えてわたしの同胞自身を堅く生きるものから庇われないために、わたしの同胞からおびただしく損なわれてきたのである。」
 それは貴方の同胞からおびただしく損なわれ、自身を庇うことができない貴方であった。貴方はいかに自身の貴くあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身を堅く生きるものから庇われてきたかを理解した。

 さらに貴方をふたたび訪れたのは、自身の肉身を損ない、自身を支え持つことができないものであった。
「わたしは、わたしと対等なわたしの同胞を超えてわたしの同胞自身を一に生きるものから支え持たれないために、わたしの同胞からおびただしく損なわれてきたのである。」
 それは貴方の同胞からおびただしく損なわれ、自身を支え持つことができない貴方であった。貴方はいかに自身の重くあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身を一に生きるものから支え持たれてきたかを理解した。

 さらに貴方をふたたび訪れたのは、自身の目を損ない、自身を味わうことができないものであった。
「わたしは、わたしと対等なわたしの同胞を超えてわたしの同胞自身をあまねく生きるものから味わわれないために、わたしの同胞からおびただしく損なわれてきたのである。」
 それは貴方の同胞からおびただしく損なわれ、自身を味わうことができない貴方であった。貴方はいかに自身の広くあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身をあまねく生きるものからあまねく味わわれてきたかを理解した。


 また貴方は、三たび同じような生霊と会った。しかしそれはさらに二つのものとはおもむきが異なっていた。
 最初にみたび会ったのは、自身の耳を損なわれ、自身を導くことができなくなったものであった。
「わたしは、自身を超えて自身を高く生きるもののみに高く導かれ、それ以外のものから導かれないために、自身を超えて自身を高く生きるものとは異なるものから高く導きはぐくまれる、わたしと対等なわたしの同胞であるものをおびただしく損なってきたのである。」
 それは貴方がおびただしく損ない、自身を聡くあることに導くことができなくさせられた貴方の同胞であった。貴方はいかに貴方と対等な貴方の同胞の聡くあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身を高く生きるものから導きはぐくまれてきたかを理解した。

 また貴方がみたび会ったのは、自身の脚を損なわれ、どこにも行くことができなくなったものであった。
「わたしは、自身を超えて自身を限りなく生きるもののみに限りなく在らされ、それ以外のものから在らされないために、自身を超えて自身を限りなく生きるものとは異なるものから限りなく在らされる、わたしと対等なわたしの同胞であるものをおびただしく損なってきたのである。」
 それは貴方がおびただしく損ない、自身をとらわれなくあることに在らせることができなくさせられた貴方の同胞であった。貴方はいかに貴方と対等な貴方の同胞のとらわれなくあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身を限りなく生きるものから在らされてきたかを理解した。

 またかなりたって、貴方をみたび訪れたのは、自身の肩を損なわれ、なにものからも満たされることができなくなったものであった。
「わたしは、自身を超えて自身を深く生きるもののみに深く満ち足らされ、それ以外のものから満ち足らされないために、自身を超えて自身を深く生きるものと異なるものから深く満ち足らされる、わたしと対等なわたしの同胞であるものをおびただしく損なってきたのである。」
 それは貴方がおびただしく損ない、自身を豊かくあることに満ち足らせることができなくさせられた貴方の同胞であった。貴方はいかに貴方と対等な貴方の同胞の豊かくあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身を深く生きるものから満ち足らされてきたかを理解した。

 さらに貴方をみたび訪れたのは、自身の背を損なわれ、自身を庇うことができなくなったものであった。
「わたしは、自身を超えて自身を堅く生きるもののみに堅く庇われ、それ以外のものから庇われないために、自身を超えて自身を堅く生きるものと異なるものから堅く庇われる、わたしと対等なわたしの同胞であるものをおびただしく損なってきたのである。」
 それは貴方がおびただしく損ない、自身を貴くあることに庇うことができなくさせられた貴方の同胞であった。貴方はいかに貴方と対等な貴方の同胞の貴くあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身を堅く生きるものから庇われてきたかを理解した。

 さらに貴方をみたび訪れたのは、自身の肉身を損なわれ、自身を支え持つことができなくなったものであった。
「わたしは、自身を超えて自身を一に生きるもののみに支え持たれ、それ以外のものから支え持たれないために、自身を超えて自身を一に生きるものと異なるものから支え持たれる、わたしと対等なわたしの同胞であるものをおびただしく損なってきたのである。」
 それは貴方がおびただしく損ない、自身を重くあることに支え持つことができなくさせられた貴方の同胞であった。貴方はいかに貴方と対等な貴方の同胞の重くあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身を一に生きるものから支え持たれてきたかを理解した。

 さらに貴方をみたび訪れたのは、自身の目を損なわれ、自身を味わうことができなくなったものであった。
「わたしは、自身を超えて自身をあまねく生きるもののみにあまねく味わわれ、それ以外のものから味わわれないために、自身を超えて自身をあまねく生きるものと異なるものから味わわれる、わたしと対等なわたしの同胞であるものをおびただしく損なってきたのである。」
 それは貴方がおびただしく損ない、自身を広くあることに味わうことができなくさせられた貴方の同胞であった。貴方はいかに貴方と対等な貴方の同胞の広くあることを損なうことと引き換えに、自身を超えて自身をあまねく生きるものからあまねく味わわれてきたかを理解した。