音楽139 〜This Is Music | Remember Every Moment

Remember Every Moment

Live your life filled with joy and wonder!
(人生はチョコレートの箱、開けてみるまで分からない…。)

I Believe I Can Fly (Live)  R. Kelly

YouTubeなどの動画を保存して音楽ファイルに保存できる無料アプリとして、Clipbox→Kingboxが登場し便利使いしていたが、今回はトルミルというアプリ名に変更になった。保存のたびにしつこい広告を我慢する必要があるが、機能は依然変わりない。

そんなトルミルで確保したのが今ではすっかり変態扱いのR. Kellyが誇る崇高に悪趣味な曲"I Believe I Can Fly"のライヴ・ヴァージョン。イギリスの老舗音楽番組、ジュールズ・ホランドのLater...で2011年に披露したものだ。



オリジナルはストリングスとゴスペル・コーラスを加えて壮大に盛り上げるものの、どこか抑制された感じのバラードだが、このライヴはレコードとまったく変わらぬ声で歌いながら、生のドラムやバック・コーラスが高揚感を与えているのでオリジナル以上に熱い。最後のFlyの絶唱もまるでマイケル・ジョーダンのフリースロー・ラインからの宙を跳ぶダンクのような滞空時間で締め、マイケル・ジャクソンのようなターンを決めて見せている。

R.Kellyはもしジャニーさんが生きていたらこうなってしまったかもしれない、というほど断罪されているが、僕はやっぱり#Don'tMuteRKellyだ。


Fretless  R.E.M.

IKEAの場所にHMV渋谷があった頃、僕は洋楽のCDシングルを漁ってはよく聴いていた。R.E.M.のチャート的には最大のヒット曲"Losing My Religion"のカップリングに、同曲のアコースティック・ライヴ・ヴァージョンと並んでこの曲が収録されていたシングル盤は、記憶に残っている一枚だ。

90年代のR.E.M.は『アウト・オブ・タイム』、『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』という1000万枚クラスの2大メガヒット・アルバムで、セールス的にも絶頂。あのカート・コバーンですらマイケル・スタイプを崇拝するレベルのカリスマ性を誇っていたが、その頃に作られつつどちらにも収録されなかったのがこの"Fretless"。マイケル・スタイプかピーター・バックか忘れたが、メンバーはさすがにあとで少しもったいないと思ったのか、『アウト・オブ・タイム』のどれか1曲の代わりにこの曲を差し替えるとしたらどうする?みたいなことをファンに問うていたことがあったような記憶がある。

僕はシングル盤とのつながりから、"Losing My Religion"のマンドリンの余韻が残るあとに、寂寞としたピアノとマイケルのヴォーカルがアコースティック・ギターのアルペジオと共に響くこの曲を配している。アウトテイクにしたくせにストリングスまで加えている曲が終わったあとにはマイク・ミルズが軽やかにリード・ヴォーカルをとる"Near Wild Heaven"を続けると、我ながらとてもつながりが良いと思う。


Left Right  XG

90年代のR&Bをベースにし、ルッキズムの(特に西洋での)衰退と真逆の外見至上主義を全面に出したK-Popが、若者向けのマーケットで世界的に支持されるのは当然と考えている。「外見より中身」というのは、結局外見をあきらめた末の選択肢で、最初からブサイクや汚い外見を目指す人がいたら、それは差別とは違って何か違う気がする。

少し前、BLACKPINKのドームツアーのとき、東京ドームの周りに集ったファンの多さは、かつてドームを埋めた嵐のファン層より純粋に若さとエンターテイメントを楽しむ感じがした。それと知らずにうす汚ない場外馬券売り場から出てきた自分はその光景に、ナポレオンを見たヘーゲルのような気分になった。

そのK-Popの勢力下とマーケティング手法を踏襲して、どこか日本人的なアイデンティティを残したのが、avexが5年の歳月をかけて育成したというXGだ。

avexといえば、今や華原朋美と並んで残念ながら外見的には見る影もなくなった浜崎あゆみに代表とされる音楽レーベルだ。その全盛期は後期高齢者の自分の母親の記憶に残っているほどだが、外苑前寄りの表参道(つまり南青山で、すぐ近くに自分の好きなカレーパン屋のある所)にある本社ビル売却に象徴されるようにここ10年は明らかに落ち目だった。


XGはかつてのavexが得意としていた日本のマーケット向けの手法は取らず、韓国拠点で世界進出というやり方で、まさかの復活を遂げるのかもしれない。そんな期待すら抱かせる魅力がXGのメンバーと、この"Left Right"にはある。曲調やPVは明らかにTLCっぽい、フューチャリスティックでミニマルなR&Bだが、最終的にK-Popが受けたのは90年代から2000年頃のR&Bを臆面もなく真似たからで、メイクやファッション、そして何より音楽的に、昨今の曲より優れたものが多いからである。その路線にうまく乗せれば外れはない。


When You Believe  Whitney Houston & Mariah Carey

80年代後半から90年代、90年代初めから2000年代にかけてそれぞれ「歌姫」としてピークを迎えていた2人が『プリンス・オブ・エジプト』というアニメーション映画のサウンドトラックで共演したのがこの曲。プロデュースはホイットニー、マライアの両者と関わりのあるベイビーフェイスの名前がクレジットされているが、後にアカデミー賞の「ベスト・オリジナル・ソング賞」を獲得したのは曲のメインの作曲者であるスティーブン・シュワルツのみ。

スティーブン・シュワルツはミュージカル劇の作曲者で、この曲にも多くの部分を作っているのは間違いない。このように、確かにベイビーフェイス色の薄いバラードなのだが、盛り上がりにいまいち欠けるこの曲にブリッジを加えたのはベイビーフェイスらしい。そして、ベイビーフェイスを介して共演したマライアとホイットニーは、ブランディーとモニカのようなライバル的関係やムードになることもなく、真摯に好意をもって歌入れしたことが伝わっています。



ただしこの曲は全米では極めて反応が鈍く、世紀のディーヴァ同士の競演にもかかわらず15位止まりのチャートアクションに終わっている。そのせいか、この曲の扱いはどちらかというと砂漠に埋もれた王墓のようになっている。それでも、得意の高音のアドリブを交えるマライアに、中音域のゴスペル色のリード・ヴォーカルとハーモニーを加えたホイットニーの歌声は十分に名作として聴く価値はある。というより、なんか精神的に落ち着きを与えるバラードだ。


愛は薬 wacci

顔にそばかす入りの貧乳設定の女子が主人公のアニメ『薬屋のひとりごと』の第2期エンディングテーマ曲。アニメで往々にしてあるようにオープニング曲より世界観に寄り添った歌詞や雰囲気のある曲で、彩色のよいアニメーションにも調和しています。全体的に既聴感のあるJ-Pop系ロックだが、その中でも一番印象的な裏声を使ったサビの最後のほうのメロディーが何かに似ている・・と思って引っかかっていた。

同じような感覚になった人はいるようで、ネットで調べるとあっさり「中島みゆきの『糸』の一節ですね」と正解が見つかった。

J-Popを含め、あらゆるジャンルの音楽には元ネタが存在する。結果としてどの程度のパートを使い、どの程度のリスペクトがあり、我が物顔をしていなければ、それは許されると言えるだろう。

『薬屋のひとりごと』はライトノベル原作の漫画化→アニメ化で、2人の作家のコミカライズが存在します。僕は小学館から出ているものを電子書籍で読み、かなり初期から単行本を追っている。ポイントは言われてみれば「なろう系」でありながら、設定を盛りすぎていないところだろう。そう感じさせるのは倉田三ノ路作画の主人公猫猫がヒロインにあるまじき顔で描写されるからであり、それが原作者の意向に沿ったものだからだろう。また、本作のもう一人の主要キャラクターである翠苓の描き方がアニメよりも優れていて、特に最近アニメ化されたばかりの偶然が幾重にも重なって必然に・・という回のスリリングな高揚感の出し方が絵とせりふだけで雄弁に伝わっている。(といっても、世間的にはもう一つのコミカライズの方がよいという意見がやや多いようだ)。


This Is Music / On Your Own / History  The Verve

3曲まとめて挙げるなら、最近よくやるようにアルバムで取り上げればいいものを、バラ売りで。

ザ・ヴァーヴと言えば、当時のオアシスやレディオヘッドよりも上に行った97年リリースの『アーバン・ヒムス』が最高傑作扱いだが、実は一つ前の2ndこそ傑作かもしれない。

特にヴェルヴェット・アンダーグラウンドのようなノイジーなギターにリチャード・アシュクロフトがUKロックらしいアンセム風の詩とメロディーをクラブ系を経てロックに帰還したようなビートにのせた"This Is Music"。これが決定的だ。そのあとに続く黄昏れた感じの"On Your Own"、『アーバン・ヒムス』への序曲といえるストリングスを入れたアコースティック・ギターのバラード"History"は、2年後にオアシスを喰うほどの人気になる予兆がくっきりと出ている。


Let It Flow  Toni Braxton

"You're Makin' Me High"との両A面で全米No.1になっているが、アメリカで受けたのは圧倒的にこちらだろう。1st albumに収録の"Breathe Again"をさらに進化というか「深化」させた作品で、おそらくはプロデューサーのベイビーフェイス自身が爪弾く循環コードのギターに、ブレスを交えて極めてアーバンに洗練された情感を歌うトニ・ブラクストンの歌唱には、どこかセラピーのような感じを抱くリスナーが多いようだ。


Yesterday  Toni Braxton feat. Trey Songz

「イエスタデイ」といっても、ビートルズのカヴァーではなくオリジナル曲。プロデュースはDJ Frank Eという名の人物で、ディスコグラフィーを見るとカニエ・ウェストの"Blame Games"といった曲名や、エド・シーランの名前がある。フィーチャーされているのはトレイ・ソングスという当時アトランティック・レコードから売り出し中の男性R&Bシンガーで、細マッチョというには余りにも精悍な身体つきに甘いソウルフルなヴォーカル。曲調はビヨンセの"Halo"に似ているという評価もあり、それを上手く隠すためか相乗効果のヒットを狙ったのかはわからないが、いずれにしても黄金期の90年代R&Bを凌ぐほどの逸品だ。


トニ・ブラクストンの高級感をストレートにアピールしたPV。「今は女の子でいられる時間が長い」というのは芦原妃名子の漫画『Bread & Butter』にある名セリフだが、痛々しさがまったくなくbeautiful & youthful。


vestige-ヴェスティージ-  T.M.Revolution

T.M.レボリューションといえば扇風機とガンダムのイメージに浅倉大介サウンドだが、とりあえずこの頃に扇風機は使っておらず、過剰なビートは抑えられ、あくまで世界観とバラードで勝負をしている。といっても、脳からアドレナリンが出て、空間をグルーヴが満たすようなシンセ・フレーズは不変で、宇宙世紀にふさわしい音色をしている。


Hot Limit  T.M. Revolution

#時代を先取りしたジョジョ立ちのポージング

#衣装が黒いガムテープ、#滋賀のレジェンド


B'zの曲をglobeのビートとグルーヴで演ったような感じですが、実はB'zのウルトラソウルよりずっと早いし、歌詞はもっとやばい。扇風機と衣装は言わずもがなだが、Wikipediaはもっと面白く、


撮影においては水中で高電圧の装置を用いることになったが、日本国内で使用許可が下りなかったため、フロリダで撮影を行った。


とある。リリース前にCMタイアップの付いていた曲で、商品は三ツ矢サイダー。オリックス時代のイチロー・デザインだ。冷静に考えてみると、これだけの一発屋になっていないのはすごいし、ドナ・サマーとイギー・ポップを混ぜたような感じだし、大谷さんがこれを超えるタイアップをやるとも思えない。僕の葬式に参列者が何人いるかわからないが、いたらこの曲を流してほしい。と一瞬考えた。名前的に。


Breaking Into Heaven  The Stone Roses

ストーン・ローゼズの2ndといえば、失敗作の呼び声が高いが、実はギター・アルバムとしてひすひそかに気に入っていて3曲目のComingとなる。どこかATCQの1stのオープニング・トラックを想わせるイントロの、環境音楽みたいなパートはカットして聴いている。ジョン・スクワイアのうねるようなグルーヴのギター、レニのブレイクビーツを生に戻したようなビート、超絶ヘタクソだがこれ以上この曲に合った歌メロはないレベルのイアン・ブラウンのヴォーカル、すべてをまとめて疾走するマニのベース。マンチェスターという街のバンド・イメージを作ったのはストーン・ローゼズだ。


Auld Lang Syne  Shaylee Mary

ストーン・ローゼズの1stアルバムにはサイモン&ガーファンクルで有名な「スカボロー・フェア」の替え歌が入っている。替え歌の趣旨は英国のミュージシャンなら通過儀礼でやっていそうな女王批判ですが、日本でも英国発祥の民謡「蛍の光」をディスソングに使っている阪神タイガースの応援がある。

阪神ファンの場合はKOした相手チームの投手の降板時に、閉店BGMのイメージに重ねて演奏するアレだが、自分は最近昭和天皇を中心とした歴史に興味があって聴いている。昭和天皇は皇太子時代に訪欧し、スコットランドのアソール公の気さくなもてなしを受けて、庶民的な皇室像をイメージした、というエピソードがあり、その晩餐で蛍の光、"Auld Lang Syne"が歌われたという。

僕は昭和産まれだから、昭和天皇をきちんと覚えている。「あ、そう」よりも天皇陛下のご容態と大喪の礼。中学生くらいになると戦争責任は?みたいな無知な見方をしたこともあるが、少しでも調べればよくあの時代を乗り切られて平和に辿り着いたものだと思う。



昭和天皇の陵墓は高尾山の少し手前にあり、去年の8月15日にはじめて参拝をした。人がいないのを選んで撮ったけではなく、片手で数えるほどの人しか見かけなかった。


曲の感想(解説?)が飛んだが、歌手のシェイリー・マリーは東日本大震災以降、ケルト風の癒しの歌声で日本の歌、自然を歌う活動をしているとのこと。震災のたびに聞くことになる、復旧ではなく「復興」という言葉も昭和の前史に関わりがあり、元々は関東大震災の帝都「復興」計画が源らしい。


Saving Forever For You  Shanice

シャニースと言えばナラダ・マイケル・ウォルデンがプロデュースした"I Love Your Smile"が圧倒的に有名だが、僕は以前にあげた"Turn Down the Light"のライヴ・ヴァージョンと、『ビバリーヒルズ90210(高校白書)』のサウンドトラックからのシングル曲"Saving Forever For You"が好きで、わりとよく聴いている。

作曲者はダイアン・ウォーレン。プロデュースはデヴィッド・フォスターでR&B色は薄く、エンパワーメント系のポップス。TVはアメリカのみならず世界的にヒットしているのでこの曲も全米4位を記録しているが、白人寄りのバラードに高音域のパフォーマンスを入れるシンガーとしてはマライア・キャリーが出現したこともあってか、シャニースとしては最後のヒット曲になってしまった。


Wishing on the Same Star (Live)  Namie Amuro

こちらの安室奈美恵のシングル曲もダイアン・ウォーレン作曲だが、書き下ろしではなく90年代初頭にアメリカのマイナーなシンガーに提供したもののカバー曲。ダイアン・ウォーレンの曲を選んだのはこの頃すでに小室哲哉から離れていたことのほかに、ダイアン・ウォーレンが提供した『アルマゲドン』の主題歌がエアロスミスに実は初めてのNo.1ヒットをもたらしたこと、さらに少し前にトニ・ブラクストンに「アンブレイク・マイ・ハート」を提供しデヴィッド・フォスターのプロデュースで大ヒットさせたこと、それをきっかけに安室奈美恵が好きそうなR&Bシンガーがアルバムに1曲くらいの割合でダイアン・ウォーレンのペンによる曲を収録するようになったからだと思う。

この曲は安室奈美恵にとって明らかにターニング・ポイントになった曲で、引退から数年して突如配信が消えた最近になっても、まるで意思表示のように動画が消されずに残っている。

まだテレビが絶対的な「権力」として在った時代にテレビの露出を減らし、ライブで勝負するというスタイルは、時代の先を行くことで先駆者が失敗するケースがほとんどの中、驚異的なカムバックとなった。振り返ってみれば成功の転機になったテレビから離れた理由がこの曲を披露したFNS音楽祭にあるという。


一瞬歌唱が飛ぶ。高音が出ない、は口パクを平気で許容するはずの日本においてタブー中のタブーだが、そこでは歌う本人が困惑の表情でそれが起きていた。


まだネットの実況もなく、ただテレビを観るorビデオに録画するという時代に、スタッフの嫌がらせと見る向きもあったようだが、いずれにしてもこれを機会に明確な意思を持って辞めたのは明らかだ。だから、ステージで輝きを取り戻したあと、ダンス曲とは違ってちょこんと月のオブジェに座ってこの曲を歌い上げるのは特別な想いがあるような気がする。

ライヴの集音は悪くても、この音源は声量も最後のはにかむような笑顔も最高にかわいいので保管して聴いています。


Anytime Anywhere  milet

薬屋のひとりごとと並んで今期のアニメの代表作になっているのが『葬送のフリーレン』で、2期に渡ってもOPと違ってED曲に変更はなくこの曲が使われています。

これも「愛は薬」と同様、2期目で流れる部分を聴くと少しよく出来すぎている感じがするので何か元ネタがあるのでは?と勘ぐったが、見つける人は気づくもので、スピッツの「ありがとさん」との類似が掲がっていた。


原曲では長いヴァースの末に照れ隠しのように短く終わるフレーズだが、間奏をはさんだ2回目を聴くともうこれは確信犯だな、と思わざるを得ない。しかも、


いつか常識的な形を失ったらそん時は化けてでも届けよう ありがとさん君と過ごした日々は やや短いかもしれないがどんなに美しい宝より 貴いと言える


この詩。ほとんどフリーレン用に転用できそうなレベルの術式・・。肝心のスピッツの方の動画コメントが現時点で荒れていないのは①管理されている②早送り文化ではフルに聞かれることがないタイプの曲なので類似に気付きにくい③民度が高い(または寛容)のどれか、またはすべてといったところだろうが、僕はこれもヒップホップのようにサンプリング・ソースを明確にクレジットしたものならありだと思う。あのフレーズは心に響くし、その部分を食い溜めするように盛り上げてアレンジした人は表彰モノだろう。



とクレジットを調べると、アニメ全体の音楽を手掛けるEvan Callがプロデュースをやっている。作曲者に草野マサムネの名前はなかった。どんな英雄も忘れ去られ、本当の姿は残らず忘れ去られたり改変されていく、という作品の裏のテーマの音楽的表現だとしたら、これはかなり驚異的だ。