音楽134 〜One of Us | Remember Every Moment

Remember Every Moment

Live your life filled with joy and wonder!
(人生はチョコレートの箱、開けてみるまで分からない…。)

Cupid  112

バッド・ボーイ版ボーイズメン(またはJodeci)という感じでデビューした112のデビュー・アルバムからのバラード。アコースティック・ギターときゅぴっとした水滴の音を効果的に使った曲で、全体的にベイビーフェイス風だが、なによりもメロディーがきれい。それだけにヒットはしているし、そこそこの知名度で後続のミュージシャンに使われてもいます。



So Into You  Tamia

112とだいたいデビューが同時期(90年代後半)の、カナダ出身のR&Bシンガー。クインシー・ジョーンズのアルバムに起用されたことからも、当時わりと華々しく売り出されていたものだ。"So Into You"は当時ベイビーフェイスやジャム&ルイスほどでないが売れていたプロデューサー・チーム、ティム・ケリー&ボブ・ロビンソンが制作したヒップホップ的プロダクションのR&B曲。サンプリング・ソースはコモドアーズ(つまりライオネル・リッチー)の"Say Yeah"だが、それを絶妙にサンプルしたこの曲の人気も高く、中でもタミア本人が歌ったラッパーのファボラスの曲"Into You"がオリジナル以上にヒットしたほど。


僕は学生時代にCD盤を持っていて、下着を身につけたそばかすメイクのタミアの写真をよく覚えている。タミアは90年代中盤にはジョーダンに迫る勢いでフィラのスニーカー・ブームを巻き起こしたNBAプレイヤー、グラント・ヒルと結婚し、どちらかというとセレブ寄りのシンガーだが、この曲の魅力はジャケ写のイメージ通り、清楚で少しビッチなところにある気がする。


You and I  Stevie Wonder

オバマ大統領夫妻が結婚式で使った曲で、そのエピソードがとてもふさわしい曲。ソウル・ミュージックというよりポール・マッカートニー風のバラードで、オリジナルのアレンジはスティーヴィーのヴォーカルにピアノ、そして当時最新鋭のシンセサイザーだけというもの。マライア・キャリーにジョージ・マイケル、エリック・ベネイといった無数のカヴァーが存在するが、最近ではYouTubeと共に有名になったジェイコブ・コリアーのものが一番伝わりやすいカヴァーだろう。



よくできている。だけど所詮オリジナルがなければ存在しない。とはいえ、オリジナルにないものを多少埋めているような感じだ。


Twenty-Five  Song Jieun

K-Popの曲は初めてかもしれない。Just The Two Of Us進行を使った曲の例によく挙がっている曲で、自分もそこで知った訳だが、とにかく出来がいいな、という印象。アップテンポでキャッチーでかわいい。自分が25歳の頃にはない曲だ。



FourFiveSeconds  Rihanna, Kanye West & Paul McCartney

カニエがポール・マッカートニーに擦り寄ったこの曲は嫌いじゃなかったんですか?と自分で自分につっこみたくなるが、結局PVというか、EDMからアコースティック・ギターとオルガンのスロー・ジャムへと振り切ったリアーナの魅力がすべてを上回る。白の背景にシルエットから、ショーン・ジョンのデニムに身を包んで鎖骨と胸元をちらつかせるファッションを着こなし、サー・ポール・マッカートニーをバックに歌いこなせるのはリアーナぐらいだろう。



“Denim never goes out of style; it’s classic, it’s iconic, just like the fucking Beatles.”

デニムって流行遅れにならないの。クラシックで、アイコニック。ビートルズみたいね!

リアーナがインタビュー記事で語った言葉は、そのままこの曲を雄弁に解説している。そして、やはりリアーナが触れているように、ポジティブなメッセージがあるところがこの曲の良さであり、カニエの作風でもある。


Betcha By Golly Wow  Prince

オリジナルはスタイリスティックスのソウル曲で、無数のオリジナル曲を持つジ・アーティストことプリンスが3枚組のアルバムで発表したカヴァー。同時代を生きた人なら覚えているだろうが、プリンスが"Maybe, the prettiest melody ever written (たぶん、今までに書かれた一番綺麗な曲) "と称していて、自分が橋本駅のビブレ!で買ったシングル盤の帯にもそう書かれていた記憶がある。



スタイリスティックスはCM等でおなじみの"Can't Give You Anything (But My Love) "が有名で、この曲に甘く痺れる人はいても、プリンスのこちらの曲のカヴァーを聴いた人はほとんどが悪趣味だと思うだろう。でも、一周回って来ると、やはりBeautiful classicBeautiful Princeという気になってくる、かもしれない。


One of Us (Live)  Prince

あと一歩踏み出していたら、もう少し掘り進めていたら、手に入れたものはあったかも知れない、と振り返って思うことはある。その時に知っていれば、今よりもっといい人生かもしれないが、後になってからそれを見つけられれば、それはそれでよかったと思う。

"Betcha By Golly Wow"の悪趣味さに阻まれて、当時は気づかなかったのだが、プリンスがワーナー・ブラザースとの契約終了後すぐにリリースした3枚組のアルバム『Emancipation (解放)』には、そんなことを思わせる曲がある。ジョーン・オズボーンというアメリカの女性シンガーが1995年にヒットさせた"One of Us"という曲のカヴァーだ。そして僕は昨夏転職を決めて新天地で働き出してから、この曲のライヴ・ヴァージョンを好んで聴いている。仕事を終えた二子玉川のホームとかで。



ベースにルーツ・ミュージックというか、オルタナティブ・ロックの要素があって、いい意味でスピリチュアル(宗教的)なメッセージを持つこの曲はプリンスによく合う。要所で入るギター、特に間奏や最後のギター・ソロはまさにプリンスならでは。そして「ゴーリー・ワウ」との違いでもあるが、オリジナルのリリースから四半世紀経ったようなカヴァーではなく、オリジナルのヒットがごく最近のものを選んでいるところだろう。


I've Just Seen a Face (Live)   Paul McCartney

ビートルズの『ヘルプ』に収録されているカントリー風のアコースティック曲だが、僕が聴いているのはMTVアンプラグドでポール・マッカートニーが披露したセルフカバー。バックには妻のリンダを入れている一方で、ロビー・マッキントッシュのような実力派がギターを弾いているので、あのイントロの弾けそうで弾けないフレーズもきれいでとても印象的だし、ポールものびやかに愉しげに歌っている。ギターのストロークの部分は簡単なので、それっぽく弾きやすい曲でもある。学生時代に僕がこの曲を弾いていたら、ボクシングでインターハイ2位になった経歴のある4つ上の先輩(つまり途中でケガして卒業できないでいた)がコードだけを聴いて曲名を言い当てたから、好きな人はそこそこ多く、知名度のある曲なのだろう。

Official Bootleg (公式海賊盤)』と称されるアルバムはけっこうな良盤で、ジーン・ヴィンセントの"Be-Bop-A-Lula"を敢えてトップに据えるなど、選曲も凝っている。もちろん、ジョン・レノンの1975年のアルバム『ロックンロール』の曲順に合わせたものだ。


With  中島みゆき

「タワー・マンションにはゴキブリが出ない(いい会社に行けば変な仕事のできないクズはいないだろう)」という希望的観測は、入社して3ヶ月経たないうちにあっさりと裏切られたが、そんな時に耳を傾けて聴いてみたくなるのがこの曲。With、淋しさと虚しさと疑いとのかわりにwith。ま、変なやつとは極力一緒にはいたくないけど。

中島みゆきといえば僕の世代は「同情するなら金をくれ」のフレーズで有名なドラマの主題歌のイメージだ。そしていま、自分が同じ船に乗りたくなくても乗っているのははっきりいって、カネのためである。冬に貰ったボーナスは本来評価期間が試用期間のしかも2ヶ月分であるのに、自分史上最高額だったのだ。

中島みゆきは欧米の外国人が聴けばパティ・スミスが日本語で歌っているようにきこえるのかもしれないが、アジア系の外国人には日本人と同じようにきこえるようだ。中島みゆきが香港の田舎でビデオ撮影をしていたら、民家から中国語で歌われる、だけれども紛れもなく「With」が流れてきたというエピソードがあるそうだが、この曲の良さは普遍的ということだろう。歌もいいが、ギターのようなキーボードのような音色の伴奏も、最後のギター・ソロもいい。

まあ、手帳にはいつも「旅立ち」とメモしてあるけど。


Distance (Live)   FictionJunction

ガンダムSEEDT.M.Revolutionとか玉置成美のイメージがあったが、そろそろサービスが終了になるGYAOの無料動画を昔観ていて琴線に触れたのは、HDリマスター版のエンディング曲のこちら。まどマギに代表される明るいような暗いような、独特の世界観に梶浦語のコーラス、ワルツのリズムが印象的で、昔から色んな意味で名作の多い日本のアニメ音楽を意識的に高いレベルに引き上げたのはこの頃の一連の作品だろう。そして、YouTubeから削除される前に捕獲してmp4にしたものを聴いて感じるのは、生歌のほうがいいということだ。


Goodbye to Love  Carpenterps

ラッパーのNAS"Bye Baby"という曲のサンプル・ネタをスマホで検索していたら、偶然カーペンターズの曲が引っかかって、元ネタのGuyのニュー・ジャック・スイング系バラード"Goodbye Love"がどうでもよくなった。聴いたきっかけはそんなものだ。洋楽の中でも古典中の古典、カーペンターズの『愛にさよならを』という邦題のこの曲は、映画「愉快なリズム(Rhythm on the River)」で登場人物の作曲家による偉大な作品として口にされるタイトルだけをモチーフに作曲されたとのこと。

バート・バカラック風のサウンドと、カレン・カーペンターの世代を超える声の魅力は言わずもがなだが、この曲のハイライトはカーペンターズの曲では異色なことだが、間奏とエンディングを支配するファズを効かせたギター・ソロだ。リチャード・カーペンターのアイデアだという。


'No, no, no, not like that. Play the melody for five bars and then burn it up! Soar off into the stratosphere. Go for it!'

違う違う違う、そうじゃないって。5小節メロディを弾いたら燃えあがって!成層圏まで舞い上がるんだ。やってくれるよな!



完成したヴァージョンはその熱い注文通りという感じで、ハル・ブレインのドラムと絡まって、なんとなく"Let It Be"みたいだが、カーペンターズの牧歌的なイメージをいい意味で超えている。