音楽120 〜Doin' Just Fine | Remember Every Moment

Remember Every Moment

Live your life filled with joy and wonder!
(人生はチョコレートの箱、開けてみるまで分からない…。)

サヨナラの意味  乃木坂46
曲の最後のほうのフレーズがミスチルの「イノセント・ワールド」を想わせる、乃木坂屈指のバラード曲。作曲は詩の数行とセンターを変えれば間違いなく名曲だった「君の名は希望」と同じ杉山勝彦。PVはカンヌ国際広告祭での受賞等多数のCMを手掛け、白石麻衣センターの「ガールズルール」も撮っている柳沢翔。センターは「センターになったら卒業する」という都市伝説があった橋本奈々未。最強の布陣で作られた曲のタイトルは「サヨナラの意味」で、文字通り多くの意味が曲やPVに込められています。

ヲタというのは案外有能なもので、何気なく開かれた文庫本のページに何が書かれているのかまでチェックする。

角度とシャープをかけて見やすくしたこの画像からは、2行のメッセージが読み取れる。

「マイナスはプラスにするための準備期間」
「それでも御三家は永遠だから」

乃木坂の「御三家」はもちろん白石麻衣、橋本奈々未、(不倫騒動前の) 松村沙友理の3人。ファンからすれば隠れメッセージなんかいらないのでふつうに御三家映して下さい、というところですが、PVはあいにく運営ごり押しの西野七瀬を主役に作られていて、御三家は一瞬一瞬しか映らない。

数少ない御三家の揃い踏みシーン。PVは様々なネタやモチーフを注ぎ込んだストーリー仕立てで、ななみん以下御三家は「棘人」という、村でかつて人間と争っていた差別民族の側を演じる。

PVラストへ向かうサビからはダンスシーン。ダンス不得手な橋本奈々未向けなのかシンプルな振り付け。しかし、堀 (左) は本当にいらないな。

このあたりでちらちら映るまいやんは一瞬でももの凄く綺麗。

ふつうに観ても印象に残るし、流麗なピアノ曲ながらテンポはスローではなくミドル、というバラード離れしたバラードですが、乃木坂ファンなら思わず反応してしまう箇所が無数にある。開かれた文庫本の1行目の元ネタは、元巨人のピッチャー、桑田真澄の名言だ。

人生にマイナスはないですね。マイナスはプラスにするための準備期間だと思います。」

このあとに続ける言葉といえば、やっぱりこれだろう。

「桑田真澄の野球は心の野球……」


アイドル作品でもここまでやれば立派な芸術ですわ。感動。もっと多くの人に観てもらいたいものです。


Doin' Just Fine  Boyz Ⅱ Men
最近の音楽の全てが悪い、とまでは言わないが、やっぱり今のヒット曲はそんなに魅力的だとは思わない。もちろん、それは年上の世代が若い世代の流行を語るときの定番の意見で、自分もそれだけ歳をとった、というだけかもしれない。実際、ミリオン・ヒット曲の多数出た90年代は小室サウンドがペラいと思われていた訳で、00年代あたりに小室哲哉自身が認めたように、宇多田ヒカルのような「本格派」なアーティストに引導を渡されたのだ。

宇多田ヒカルに関しては、デビュー時からタッキーと松嶋菜々子のドラマの主題歌「First Love」までをみて、別に…、という感想しか持ち得なかった。宇多田ヒカルは自分から見て4歳下だから、子供だましに見えたのだろう。コロンビア大学入学とかは、あきらかにアリシア・キーズとかを意識したのだろうが、それこそ才能が違いすぎて、野村沙知代みたいにしか見えなかった。R&Bで売ろうとして、そのあといつの間にかビョークみたいなサウンドに流れたのも、とても姑息にみえたし、シンガーソングライターにしては歌が上手いとはいえないし、アリシア・キーズみたいにピアノが弾ける訳でもない。これなら意外と皇室の御一家にも曲名が知られている小室サウンドの方がいいかも知れない。

宇多田ヒカルとこの頃のJ-POPの功績は、いわゆる黒人系の音楽を日本に根付かせたことだろう。ゴスペル・ブームは確かにあったし、ベイビーフェイス の『ザ・デイ』のようなアルバムが広末涼子からもフェイバリットに挙げられ、ファッション・リーダーの安室奈美恵がローリン・ヒルのファッションを丸々真似をする時代だ。メイクとかギャル系のファッションは明らかに黒人系のそれだし、K-POPなんかは明らかに90年代のR&Bそのものだ。もし、K-POPの質が高いというのなら、それは90年代のR&Bが高品質だっただけの話。00年代あたりのJ-POPが小室哲哉を引退に追い込むほどなら、それは90年代のR&Bを雛形にしていたから、といえる。

90年代のR&Bは星の数ほどヒット曲と名曲がある。それも70年代のスティーヴィー・ワンダーやマーヴィン・ゲイに影響を受けたサウンドなのかもしれないが、のちの世代のミュージシャンからは、ベイビーフェイスのような90年代のプロデューサーがそんなレジェンド達と同じような存在になっているらしい。そのベイビーフェイスがプロデュースした曲で最大のヒット曲を持つのが、日本でもゴスペル〜アカペラ的なサウンドが受けて根強い人気があるボーイズⅡメンだ。

このボーイズⅡメンは、90年代後半に日本で人気が出てきたころ、すでに本国アメリカでは人気がピーク・アウトしていた。3rd.アルバムの『エボリューション』はアメリカ1位、200万枚のセールス。シングルではベイビーフェイスと並ぶ90年代のプロデューサー・チームで、宇多田ヒカルのプロデュースもやる事になるジミー・ジャム&テリー・ルイス“4 Seasons of Loneliness”が1週1位、ベイビーフェイス 作の“A Song for Mama”が全米7位、R&Bチャート1位。のちのアルバム・セールスの強烈なまでに露骨な落ち込みと、1st.シングルがエルトン・ジョンのダイアナ妃追悼曲「キャンドル・イン・ザ・ウインド」とかぶったことを考えればじゅうぶん売れているのだが、いかんせんそれまでがアルバムで1000万枚クラス、シングルは13週、14週No.1ヒットを連発していたために、世間に与えた印象は大爆死だった。

それでも、この『エボリューション』というアルバムは、なかなか佳曲が多いし、僕にとってはとくに1曲目が印象に残っている。“Doin' Just Fine”はメンバーのショーン・ストックマンが作曲、プロデュースをしている。サウンドや曲調はベイビーフェイスの曲に似ているのだが、ヴォーカルのコーラス・ワークは自分たちの「声」の魅力が最大限に発揮できるように、入念に、心を込めているのが伝わる。詩はメンバーの名前をオチのように使っているところもあるのだが、これまたなかなか深い曲だ。


I'm doin' just fine
僕は上手くやっているよ
Getting along very well
Without you in my life
君がいなくなっても、とても上手くいっている
(I don't need you in my life)
(僕の人生に、君は必要ないさ)

Time made me stronger
時が僕を強くした
You're no longer on my mind

僕の心に、君はもういない

サビで歌われるフレーズは、別れに特別な意味を持たせている。表現力とは、受け手に単一の解釈をさせずに、かつ、与える側に絶対的な良さがあるものだ、と思う。
I've Got You Under My Skin  Bono & Frank Sinatra
悪趣味なCDジャケットの、『ズーロッパ』からのシングル「ステイ」のカップリングB面曲として僕はこの曲を聞いた。元は1936年のミュージカル映画『Born To Dance』のテーマ曲で、フランク・シナトラの晩年のヒットになったアルバム『Duets』に収録。タイトルが複数形だけにデュエット相手はボノ以外にもいて、アレサ・フランクリン、カーリー・サイモン、ライザ・ミネリ等々豪華な面子。ロック界ではおっさんになってきていたボノも、このジャンルの中では若手のミュージシャンとして挑めたせいか、シナトラの世界を壊さずに自分をアピールする、というけっこうな難事業を軽々とやってのけています。90年代のU2のワークス中でも、外しちゃマズい曲ですが、レコーディングとしては、シナトラの録音にアイルランドからボノが重ねて録音する手法を採用しているようです。


A Man and a Woman (Acoustic)   U2
この曲の制作プロセスはちょっと変わっていて、U2が『ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム』のレコーディングでエンジニアがミックス作業をしているときにふとボノが気に入ってベースを弾きながら歌い出したらしい。曲のメインともいえるエッジのアコースティック・ギターは全く別の曲から採られて、それをチョップして一つの曲にまとめ上げたという。仕上がりだけを聴くと、U2のキャリアでも黒歴史と言われる『Pop』に収録の「ステアリング・アット・ザ・サン」のリベンジ的な曲だと思っていたのでとても意外だ。
タイトルは「一人の男と一人の女」。これも意外な盲点だが、ロックではこういう愛に忠実な曲というのはむしろ異端。ボノはQ誌のインタビューで、

The sound of sitting on a stoop in New York in the summer. I wanted a song that rolled up the Clash and Marvin Gaye into one.
夏のニューヨークのアパートの玄関前の階段に座っているようなサウンドだ。ザ・クラッシュとマーヴィン・ゲイをくるっと巻いたような歌がほしかったんだ

と答えているが、こちらも興味深い。エッジはこの曲を『ハウ・トゥ・ディスマントル・アン・アトミック・ボム』のワイルド・カード (鬼札、特別枠) だと評しているインタビューがあったが、それはこういうことをすべて踏まえた上での発言と考えれば納得する。このアルバムはシングルが糞ダサいので代表作にはならないが、個々の曲ならU2の全キャリアの中でも随一。残念なのは、U2が一番魅力的なのはアルバム収録のものより別ヴァージョンかライブ・ヴァージョンになるのが多いことで、この曲も例外ではない。名前を出すのも憚られる糞ダサいシングルのB面に入っているアコースティック・ギター (エレキもいい部分だけ使っている) Ver.は、ラテン風に情熱的で、マーヴィン・ゲイのファルセットを完璧に自分流のロックにして歌い上げるボノはやっぱり凄い。ライブでは1回しか披露したことがないらしいが、それはバック・コーラスを付けるエッジの負担がキツいからかもしれない。


Adagio  R.E.M.
R.E.M.のワーナー時代初のベスト・アルバムからのシングル「バッド・デイ」のB面曲。「アダージョ (ゆるやかに) 」は音楽の速度記号で、楽曲なら「弦楽のためのアダージョ」が有名だが、マイケル・スタイプはクラシックの中でもこの曲が好きらしいので、ここから連想したのかもしれない。ただし、ヴォーカルはなくインスト曲であり、ブライアン・ウィルソンっぽい雰囲気の曲にマイケルは上手く歌詞とメロディーをのせられなかったが、没にするのは惜しい旋律の曲なのでB面に入れたというところだと思う。
「弦楽のためのアダージョ」はマイケル・スタイプというより、アメリカ人に好まれるクラシック曲らしく、ケネディ大統領の葬儀や、次に書くパフ・ダディの大ヒット作『ノー・ウェイ・アウト』のイントロに使われたりしている。どっちも死や追悼の意味合いで使われているが、作者のバーバーは葬式のために作った訳ではないため不満らしい。


Victory  Puff Daddy feat. The Notorious B.I.G. and Busta Rhymes
悪名高いパフ・ダディ1997年のヒット作『ノー・ウェイ・アウト』の事実上1曲目。シングル・カットもされているが、19位どまり。ただし、PVは巨額の金が注ぎ込まれていて、270万ドル (まあざっと3億円でいいですかね) 。人のカネの話になると大したことないんじゃない?とも思ってしまうが、PVの長さが8分足らずということを考えると、ハリウッド映画の制作費クラスということになります。僕はこの時代の成金主義のヒップホップのメンタリティーがわりと好きで、引いて構えてメインストリートを批判するのが格好いいと思っているような似非オルタナティブ思考よりはずっと健全だと思う。ロック界でこの時代に唯一それをやれていたのがオアシスで、売れてビッグになることを芸術的に悪しとしない姿勢は2000年のU2の地球上最大のロック・バンドへの回帰に影響を与えたとも思う。
曲のプロデューサーは全盛期のバッド・ボーイのヒット曲を手掛けたスティーヴィー・J。ポリスの“Every Breath You Take”のネタ使いで物議を醸した特大ヒット曲“I'll Be Missing You”もスティーヴィー・Jのプロデュース。あれから20年以上の月日を経て今年、元バッド・ボーイ・レコード唯一の女性ソロ・シンガーにしてノトーリアスB.I.G.の元奥様のフェイス・エヴァンスと結婚した、というから驚きだ (リアリティ・ショーのためのビジネス結婚説もあるようですが) 。


内容は置いといて、スティーヴィー・Jが結構歌えるのに驚く。

さて、“Victory”のサンプル・ネタは「ロッキーのテーマ曲」。ボクシング映画の『ロッキー』といえばまずアレですが、ヒップホップのサンプルで使われるのは一般的にはちょうど中間部分が誰もが聞いたことある級に超有名なこの曲。サンプル・ネタとしてはやっぱりそのまんまなんですが、ネタの配置がラップとの相乗効果で最高にテンション上がるようになっています。


“Going The Distance「最後までやり遂げろ!」”。名作映画には名曲ありです。

ラップはビギーのイントロのカウントに続いてパフィ→ビギー→バスタの順に2回マイクを回します。いつもならパフ・ダディのパートは下手なんで要らないところですが、元々最高級のゴーストライターが書いているライムなのでかっこいいし、あのNASが褒めて「ヘイト・ミー・ナウ」にパフィをゲストに呼んでいるほど。この曲は「カルミナ・ブラーナ」をサンプルしていますが、この壮大な歌劇調のトラックは「ヴィクトリー」と同じ路線です。


が、やっぱり主役はビギーで、生前最後のレコーディングになってしまったこの曲ではこれ以上ないフロウを聴かせてくれます。

I perform like Mike
Anyone, Tyson, Jordan, Jackson

ジェイ・Zが自分の曲で好んでパクる超有名マイケル3連発は「ヴィクトリー」のハイライトですが、韻の踏み方とかが独特なのがノトーリアスB.I.G.がスペシャルな存在たる所以。


あめにはさかえ  チェコ少年少女合唱団
讃美歌です。オルガンに導かれて歌われる無垢な歌声ときれいなメロディが汚れた迷える子羊の心に染みるように響きます。クリスマス・ソングの部類でも、場所や時期を選ばす聴ける名曲だと思いますが、東欧の教会とかで聴いてみたいです。